第10話


目の前を見ると、チビザルの彼が、目をギラギラさせながら、私のポーズを見 ていました。 そして同時に、手で股間の中をいじっていました。 さきほどのものが、今は7センチくらいになっていました。 皮は、あいかわらず少しだけかぶっています。 「見ろよ! チビザル、シコってるよー!」 「女のシコ見てシコってるー!」 「わはは、くだらねー!」 色々なセリフが周りからはやし立てられます。 彼は私の軽蔑しきった視線に気がついたのか、さらに興奮したように自分のを いじり始めました。 「さ、そろそろ始めましょうか」 「そうね」 私はその言葉に、ホッとしながら、足をおろします。 「いい?」 「見合って見合って?」 その言葉と同時に、チビザルの彼が、足を横に開き、状態を落としました。 もちろんそんなカッコをしたら、アレが丸見えです。 小さく、勃起したものが私の方をまっすぐ向いています。 それがとても嫌な感じでした。 「あなたも、構えないと」 「…は?」 「彼と同じカッコよ」 「相撲、なめてんの?」 相撲をなめる。 そんなつもりはまったくありません。 しかし彼女は私に言いました。 「いいから、やるんだよ」 私はチラっと後ろを見ます。 後ろにはたくさんの男子中学生たちが、目を血走らせて陣取っています。 「やらなくてもいいんだよ? そのかわり不戦敗ね」 「や…やります…」 私は足をガニ股に開き、腰を落とします。 そして手を地面につきました。 私のタオルはお尻までカバーしていましたが、そんな格好をしたら、当然腰ま でまくれ上がります。 「おおおおおおおおおおおおおおおおお!」 後ろから大きな声がします。 「うわー! ケツの穴が丸見え!」 「あそこもパックリ開いてるー!」 「や…ッ!」 私はあわてて左手で、そのままの体勢で前から隠しました。 「あら〜?」 すると女性の一人が、私のその手を取りました。 「手は前…。だよね?」 私の目から、また涙がわき出てきます。 私は手を前に回して、両手を地面につきました。 「すっげー!」 「観念して下げるのがまたイイー!」 また大歓声が上がります。 まるで直腸診を受けるような。自分の全部を見せつけるような、屈辱的な格好。 「ううっ…。うううっ…」 私はつい声を上げて泣いてしまいました。 「あらあら、まだ始まってないのに、泣いちゃうなんてねぇ」 「そんなことじゃ、負けちゃうよ?」 女性たちの、無責任な声が響きます。 そんなときです。後ろから、こんな声が聞こえました。 「な、俺、こいつ覚えてるぜ?」 「え、マジかよ?」 「ほら、今日、駅から来たじゃん?」 「あぁ」 「そのとき、階段でミニはいてた女、いなかった?」 「あ、いたいた」 「そいつさ、俺たちがパンチラ撮ろうと思って下からのぞいてたら、スカート 押さえてギロってにらんでこなかった?」 「………」 「……あれ、もしかして……」 「こいつじゃね?」 「あーーーっ! この女だよーー!」 その言葉に、私は今朝のことを思い出しました。 彼と二人で、電車から降りたときのこと。 後ろから視線を感じて、スカートを押さえたこと。 「………………」 しばらくの沈黙の後、後ろからこれ以上ない大歓声が響きました。 「うわーーー! こいつだーー!」 「すげーー!」 「パンチラさえ見せなかった女が、今全部脱いで大股開きだよー!」 「やるー!」 「そう思うと、すっげえ感慨深いよなぁ」 「あぁあぁっ!」 みんな大喜びで叫んでいます。 「やっ…!」 私はまた手を出そうとしましたが、女性の視線に気づき、途中で止めました。 その両手は左右の腰骨のところで止まり、それがまた彼らの気持ちに火をつけ たようでした。 「うおー! エロイー!」 「どう?見て? のポーズじゃね?」 「すっげー!」 「おいカメラもってこい、カメラー!」 すると先ほどのデジカメを持ってきて、私のその写真を撮ろうとしました。 「やめて…。やめてください………」 しかし私はそのポーズを動かすことはできません。 彼らは好き勝手に私の写真を撮り始めました。 「パンチラどころじゃなくて、全部撮れるなんてなー!」 「最高だー!」 「しばらく俺、オカズいらねー!」 みんな大喜びで写真を撮っています。 「ううっ…。やだぁ…。やだぁぁ…」 私は声を上げて泣きました。 これは夢だ…。夢なんだ…。 私は自分に言い聞かせます。 しかしサウナの中の熱気が、現実であることを伝えていました。 「もう…。もう、負けでいいです…。これ以上つらいことなんて…。 ないですから…」 私は思わずそう言いました。 すると女性は、にこやかに言ったのです。 「ここで負けたら、飲んでもらおうかな」 「…は?」 「チビザルくんのオシッコ」 私の背筋が凍り付きました。 「どう? 負けでいいの?」 私はあわてて言います。 「や、やります! 勝負します!」 女性は笑いながら言いました。 「じゃあ、勝負開始するわね」 そして二人の方を見て、言ったのです。 「はっけ………」 私はあわてて、体をこわばらせます。 「よいっ!」 その瞬間、私はただひとつのことだけを考えながら、そいつに向かってぶつかっ ていきました。 「絶対に負けられない。」 (つづく)


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