性獣の家 第1回

沼 隆(ヌマ・タカシ)

登場人物

 寺前 悠斗  電気学校生 美利のいとこ
 塩津 美利  美容師
 塩津由紀江  美利の母  良江の姉
 寺前 良江  悠斗の母  由紀江の妹
 丸岡  稔  自動車修理工


(1) 悠斗と美利 思い出

悠斗(ゆうと)が、中学生の夏のことである。
いとこの美利(みり)は、肥薩市にある美容学校に通っている。
美利も、夏休みになった。
日曜日。
午後の陽射しが照りつける中を、
悠斗と美利は、川に泳ぎに行った。
学校のプールよりも、黒井川の清流のほうがずっと気持ちがいい。
小さな子供連れの母親たち、
小学生や中学生が、遊んでいる。
美利が、ワンピースを脱いだ。
ハイレグのしゃれた水着を着ていた。
真夏の陽光の下で、美利の水着姿がまぶしかった。
その時だった。
悠斗はうろたえた。
ペニスが、硬くなっている。
子供の時から、ずっと一緒に遊んできたのに、
姉と弟のような関係でいたのに、
6つ年上のいとこに、突然〈異性〉を感じたのだ。
胸のふくらみ、尻の張りだし、太もも、ふくらはぎ、足首……
うなじ、二の腕、指先……
水着のVゾーンがくっきりと際立ち、
ふっくらと盛り上がっていて、
それは、恥骨が張りだしているのだが、
悠斗は、ゴクンとつばを飲み込んだ。
ペニスは、かちかちになっている。

突然おそってきた感覚に、悠斗は戸惑っていた。
目の前にいる美利は、きのうまでの美利とは、
別人のようだった。
そんな悠斗を置き去りにして、美利は川に飛び込んで、
「ユウくん、何してるの、早くおいでよ!」
と叫んだ。
悠斗は、水着になると、美利の後を追った。
ペニスは、硬いままだ。
早く水に飛び込みたかった。

悠斗は、川から戻ると、風呂に入った。
髪を洗いながら、美利の水着姿を思い出していた。
美利の胸は、グッとふくらんでいた。
水着が尻のワレメに食い込んでいた。
なまめかしかった。
そして、美利の恥骨のふくらみ。
ぷっくりと盛り上がっていた。

浴室の戸が開いた。
はだかの美利が入って来た。
「いっしょにはいろ、ユウくん」
悠斗の返事を待っているわけではなかった。
小さいときから、一緒にお風呂に入ってきた。
美利は、普段のままに振る舞っているのだが、
さっき、川で水着の美利を見たとき、悠斗は変わった。
一緒に風呂に入ることに、
一緒に裸でいることに、
どぎまぎしている。
美利は、平気なのだろうか。
このあいだまでは、悠斗も、平気だった。
じゃれ合って、美利の胸に触ってしまうことがあったし、
じゃれ合って、キンタマを蹴られて悲鳴を上げることもあったけれど、
子供らしい戯れに過ぎなかった。
いまは、違っていた。
なんで?
どうして?
ペニスが、硬くなっている。
ま、まずいよ……
悠斗は、シャンプーを洗い流しながら、股間をタオルで隠した。

美利は、かけ湯をしていた。
美利の尻、脇腹、乳房……
昨日までと、違わないのに、
何も、変わっていないのに、
ぜんぜん違うのだ。
湯船につかった美利が、こちらを見ている。
悠斗が、頭を洗い終わる。
「ユウくん、はいんなよ」
と、美利に呼ばれて、
悠斗は、股間をタオルで隠しながら、立ち上がった。
ボッキしたペニスが、タオルを突き上げている。
美利は、気がついているのか、いないのか、
悠斗のために、湯船の端に体を寄せる。
悠斗が体を沈めると、ザーッと湯があふれ出した。

「ユウくん、泳ぎ、うまくなったね」
「そんなことないよ」
「去年は、うまく泳げなかったじゃない?」
「まあ、そうだけどさ」
「ねえ、髪、洗ってくれる?」
「あ、ああ、いいよ」
美利が、先に湯船を出た。

悠斗は、腰の周りにタオルをまいて、ペニスを隠すと、
美利の背後に中腰になって、美利の髪を洗い始めた。
「ああ、じょうず、ユウくん、キモチ、いいよ」
「かゆいところ、ない?」
「うん、ないよ……すごく、じょうず」
「ありがとう」

ふたりは、湯船に並んで浸かっている。
美利の腕が、尻が、太ももが、足先が、悠斗に密着している。
美利がのぞき込むようにして、言った。
「ユウくん、おチンチン、むけてないんだね」
いきなり言われて、悠斗はうろたえた。
「う、うん」
「もう、むけてても、いいころなのに」
「そ、そうかな」
「そうだよ」
美利が、じっと見つめている。
「むけてなくても、たつんだね」
「なんだよ!」
美利の指が、すっと伸びてきて、
悠斗は、慌てて腰を引いた。
「やめろよ」
「見せてよ」
「やだよ、美利、ヘンなこと言うんだもん」
美利が、ペニスをつかんだ。
「あっ」
美利が、右手の親指と、人さし指と、中指で、つまむようにして、
ペニスをしごいた。
「や、やめてっ」
「キモチ、いい?」
「ぐっ」
「キモチ、いいんだ」
「んくっ」
そのときだった。
一瞬の出来事だった。
美利の指が素早く動いて、
ペニスの皮をむいたのである。
「ぎゃあっ」
悠斗は、悲鳴を上げた。
「い、いてぇ、いてぇよ」
むき出しになった亀頭に、熱い湯が沁みる。
目には、涙がにじんでいる。
悠斗は、美利の手を払いのける。
勢いよく湯船の中で立ち上がった。
包皮がむかれてむき出しになった亀頭が、
熱い湯で、ひりひり痛い。
「あははは」
美利が、笑った。
「痛いんだぞ!」
「ごめん、ごめん、そんなに痛がるなんて」
美利の目の高さに、真っ赤になった亀頭があった。
指を伸ばす。
「さ、さわらないでっ!」
「なによぉ」
「ひ、ひりひり、いたいんだよぉ」
「血、出てないよ」
「そ、そんな……」
「だいじょうぶだって、ユウくん」
ペニスは、たちっぱなしだった。
「ユウくん、これで一人前だね」
「なんだよ、それって」
「大人のヒトって、みんな、むけてるでしょ?」
「そ、そうなんだ」
「ふふ」
亀頭は、痛々しいほど赤かった。
「あっ」
美利が、驚いた。
「どうしたの?」
「い、いや、何でも……」
ペニスの皮は、普通の色なのに、
さっきまで亀頭とくっついていたところは、赤かった。
美利は、好奇心をむき出しにして、観察している。
「そんなに、見ないでよ」
「だって……」
おもしろいんだもん、という言葉を、美利は飲み込んだ。
「もっと、良く見せてよ」
「やだよ、おれ、出る」
悠斗が風呂から出ようとするのを、引き留めようとして、
美利はペニスを握ってしまった。
「ぎゃぁぁ」
「なによぉ、おおげさねぇ」
びくん
ペニスがはじけるように震えて、
先端から、白い液体が噴き出した。
「うううっ」
びゅっ
びゅっ
びゅっ
噴き出した液体が、ポチョン、ポチョン、
湯の中に落ちて、トロンとした固まりになって浮いている。
「出しちゃった……」
「あ、ああ」
「キモチ、良かった?」
「あ、ああ」
悠斗は、うめくように返事をした。
美利が、両手で精液をすくって、顔を近づけて、
匂いをかいだ。
「クサイ」
「なんだよっ!」

精液をほとばしらせたあとも、ペニスはしぼまない。
真っ赤な亀頭は、相変わらず痛い。
悠斗は、指先で皮をもどして、亀頭を包もうとした。
「せっかくむいたのに」
「いてぇよ、ガマン、できねぇよ」
「そうなんだ……でも」
「なんだよぉ」
「大人のチンチン、痛そうじゃないけど」
亀頭が包皮におさまると、悠斗はほっとした様子で、
風呂から出て行った。
美利も、風呂を出た。

(2) 悠斗と美利 思い出(続き)

悠斗は、居間で寝転がっていた。
頭に枕を敷いて、ぼんやりしている。
開け放った窓から、風が吹き込んで、涼しい。
風鈴が、なっている。
蝉の声が、やかましい。
天井を見つめながら、股間に手を伸ばした。
昨夜、美利がむいたあと、
ペニスが、とても気になるのだ。
ファスナーをおろして、パンツの中から、ペニスを引き出す。
湿った場所から、風通しがいい場所に引き出されて、
ペニスが気持ちよさそうに、揺れている。
皮を被ったペニス。
右手の指先で、そっと皮を引いてみる。
昨夜の痛みは、なかった。
先端が、ちょっぴり顔を出す。
高志おじさんのペニスを、思い出していた。

物心ついたときから、高志おじさんは、悠斗と美利を風呂に入れてくれたのだ。
おじさんのチ●ポは、悠斗のと違って、
毛むくじゃらだし、日に焼けたように黒ずんで、
先っぽが紫色で、なまっ白い悠斗のチ●ポと、大違いだった。
「高志おじさんのチンチン、ユウくんのとちがうね」
「大人のチンチンだよ」
「ユウくんの、子供のチンチン?」
「そうだよ、ユウくんは、幼稚園生なんだからね」
「ユウくんのおチンチン、高志おじさんみたいに、なるの?」
「そうだよ」
悠斗は、湯船に浸かりながら、美利と高志の話を聞いていた。

大人のチンチン。
悠斗は、ゆっくりと包皮を引いた。
ぴりっ
かすかな痛みがあった。
けれど、そこが空気に触れて、心地よくもあった。
勃起する。
おそるおそる、むいていく。
これ以上むけないところまで、むいた。
ピンク色をした亀頭が、指の先に突きだしていた。
さっきまで亀頭を包んでいた皮の部分も、赤い。
みしっ
床がきしむ音。
居間の入り口に、美利が立っていた。
美利は、一言も口をきかないで、すっと悠斗のそばに来て、
畳にしゃがみ込んだ。
「いたくないの?」
「あんまり」
「そうなんだ」
「うん」
「さわるよ」
美利の指が、亀頭をつまんだ。
「つっ」
「いたい?」
「ちょっとだけ」
昨夜は、傷口が裂けて、粘膜がむき出しになったみたいに赤かったのだが、
今日は、それほど赤くなかった。
亀頭の付け根に、黄色っぽいクリーム状のものが固まっていて、
美利は指でそれをこすり取った。
「いてっ!」
美利は、指先を鼻に近づけて、クリーム状のものを嗅いだ。
「これ、なんなの?」
美利が、聞いた。
「しらねぇよ」
美利は、指先を悠斗のシャツでぬぐうと、
それから、残ったクリームを、ていねいにぬぐい去った。
美利の指でこすられて、悠斗は痛くもあったけれど、
キモチよくもあったのだ。
ペニスが、ぎんぎんに膨れあがっていた。
美利が、ペニスを手に握り込んだときだった。
悠斗は、とうとうガマンできなくなって、
びゅっ
びゅびゅっ
精液を飛ばしてしまった。
「すごい」
ふうっ、と悠斗が大きく息をつく。
「キモチ、いい?」
「ああ」
美利の手が、ペニスを握り、そおっとさする。
「うぐっ」
「もう一回、出してみて」
「そんなこと、言われても」
「もう、出ないの?」
「どうかな」
「ね、出して見せてよ」
悠斗は、ペニスを握った。
ぎんぎんに膨れあがったままだ。
オナニーは、小6の時に覚えた。
でも、これまでは、皮かぶりのペニスでオナニーをしてきたのだ。
むいたまま、オナニーができるのだろうか。
亀頭は、指でじかに触ると、過敏に反応した。
皮を戻そうとしたら、
「だめ!」
と美利に止められた。
悠斗は、指をゆっくり動かした。
すぐに、やってきた。
再び、勢いよく射精した。

萎えたペニスが、自然に包皮にもぐり込んで、
子供のチンチン
に戻ってしまったのを、パンツにしまいこんだ。
飛び散った精液を、ティッシュで拭き取る。
美利が、オレンジジュースを持って戻ってきた。

(3) 《寺前電器商会》とヘアサロン《コックス》

夏の陽射しが、ぎらぎらと照りつけている。
県道521号線沿いに、黒井町の小さな商店街がある。
《寺前電器商会》の薄暗い店の奥。
悠斗(ゆうと)が、店番をしている。
父と祖父は、エアコンの取り付けやら修理やらで、
軽トラに乗って、朝から出かけたままである。
《コズマ電器》の下請けとして、なんとかやっている。
田舎町の小さな電気屋なのだ。

《寺前電器商会》の向かいは、ヘアサロン《コックス》。
悠斗の叔母、由紀江の店である。
由紀江は、未婚の母で、美利(みり)という娘がいる。
美利は、悠斗のいとこ、というわけだ。
悠斗と美利は、姉弟同然に育ってきた。
そして、美利は、まもなく丸岡稔(みのる)と結婚する。

「おぅ、電器屋、店番か、感心だな」
悠斗は、読みふけっていた雑誌から顔を上げた。
入ってきたのは、稔だった。
この男は、町の自動車修理工場で働いているのだが、
美利と結婚することになって、
ちょくちょく《寺前電器商会》に顔を出すようになった。

「電器屋、エロ本読んでるんか?」
稔は、悠斗のことを「電器屋」と呼ぶ。
「電器屋」という言葉は、「くそガキ」という意味だ。
「オヤジ、いないのか?」
「エアコンの取り付け」
「そっか、銭、稼いでるんだ」
稔は、にやっとした。
それから、持っていた冊子を、悠斗に投げてよこした。
《スギシタ》の家電製品のカタログ。
「新婚用に、新品、買ってやっからよ」
横柄な言い方だった。
「しるし付けてあるからよ、
 オヤジに、まけろ、って、伝えるんだぞ、いいな」
悠斗は、むかついて、それでも、ウン、とうなずいた。
「電器屋、店番なんだろうが。
 ありがとうございます、くらい、言えよ」
「ありがとう、ございます」
「なんだよ、聞こえねぇよ」
ちっ、と舌打ちしながら、稔は出て行き、
店の出口で、振り返って、言った。
「おれたち、《コックス》の2階に住むことにしたからよ」
稔と美利の新婚生活が、
美利の実家ヘアサロン《コックス》の2階で始まる、ということだ。
美利の母、由紀江と3人で暮らす、ということか。

丸岡稔の実家は農家だが、
稔は、農業を継ぐのがいやで、修理工になった。
弟が、農家を継ぐらしい。
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