「真夜中の図書室」作品

パラダイス・ハネムーン  第1回

パラダイス・ハネムーン

* 本作品はフィクションであり、登場人物、組織、地名など実在のものと一切かかわりはありません。
* この地域へ旅行される際の、筆者の実体験に基づくアドバイスがいれてあります。
* 本作品を参考にこの地域に旅行をされて万一不幸な事態に遭遇されても、筆者はいかなる責めにも応じま
せん。責められるのは嫌いです。

(1)

7月20日!
夏休み、初日!
エアマラネシア301便、グアム経由、コメオラ行きボーイング737型機が成田を離陸した。
春日部壮太と、新妻 紗里奈が乗っている。
およそ10時間後には、地上最後の楽園、ニューマラネシアに到着する。

壮太と紗里奈の新婚旅行。
ふたりには、はじめての海外旅行である。
壮太は去年の春、水道橋体育大学を卒業して、郷里の**県立於満湖高校の教諭になった。
於満高は山間部の過疎の町にある小さな高校だ。
着任するとすぐ、女子生徒の人気者になった。
夏になると、壮太の得意な水泳の授業がある。
女生徒たちは大騒ぎだ。
紗里奈も、その一人だった。
25歳の若さで贅肉ぶよぶよ、視界に入ってきただけでむさくるしい数学の高野秀麻呂とは正反対。
均整が取れたからだが、男らしい。
笑顔が素直で愛らしい。白い歯がきれい。
水着に隠された一物が、ひと一倍もっこりとしている。
紗里奈は、そこにも惹かれていると、筆者は思うのだが…
紗里奈にきいてみないとわからない。
でも、もし訊ねたら、やらしいっ! と軽蔑のまなざしでにらみつけられそう…
いやいや、顔を真っ赤にして、走って逃げていくかもしれない。
春日部先生、授業だって、熱心だ。
山猿みたいな生徒たちのことだから、泳げなくってもいいもんね、状態なのだが、壮太はそんなサルどもにむ
きになって教えるのである。
ともかく、紗里奈は、クソまじめで、一本気の壮太に胸がキュンとなってしまったのである。
ただ、恥ずかしがり屋さんなので、先生好きです、なんてことは言えないのである。
恋心を抱きながら、壮太を眺めているだけである。
ああ、なんという純朴な…
田舎者というのは、こういうものである(らしい)。
てなわけで、紗里奈の在学中にふたりがラブラブ、なんてことはなくて、じつは、紗里奈は、まだ処女なのだ。
紗里奈が於満高をほどほどの成績で卒業したあと、交際が始まった。
じつは壮太も学校中で1番かわいいという評判の紗里奈がひと目で好きになり、紗里奈が卒業する日を待ち焦
がれていたのであった。
ちなみに壮太の父親は、県の教育長をしている。
教師と生徒の恋愛、なんてことは、立場上まずいのである。
結婚話はとんとん拍子に進んだ。
式はどうするか、という話し合いの席で、壮太の一族は、キリスト教、紗里奈の一族は**教(差障りがある
といけないので、秘す)ということがわかり、酒が入っていたこともあって、双方の両親がいがみ合う状況に
なり、業を煮やした壮太が、式はしないからね! と大声を出して、この件は片付いた。
そういうわけで、夏休みに入ってすぐ、ふたりは新婚旅行に出発したのである。
帰ってきて、披露宴をやる計画である。
何で、紗里奈が処女か、というと、壮太が、初夜は、ニューマラネシアで! とこだわったからである。
相当にたまっているのではないか、筆者などは、結婚が決まった段階で、いやもっと早い段階で、やってしま
うのだろうが、壮太はマスでも掻きながら、初夜を待ち望んでいるほうを選んだ。
ヘンなやつだ。
紗里奈は、というと、田舎町に置いておくのは惜しいほどの美少女なのだが、何せ田舎町のことなので、そう
いうことに気づく人がほとんどいないのである。
実際、父親は、農協か信用組合に入れるつもりで、けっきょく於満湖町信用組合(通称 於満信)に就職が決
まったのだ。
於満信は、「現ナマは、於満信に預けて、ご安心を!」なんていうポスターで預金を集めているのであるが、
組合長は、新しいポスターには紗里奈を使おう、なんて考えているのである。
窓口に、紗里奈のような子がいたら、筆者などは、毎日入れたり出したりしに行くだろう。
絶対、行く!
毎日、行く!
あどけない顔をしているのに色気があって、そのことに紗里奈自身はちっとも気がついていない、なんていう
子なのである。
筆者が父親なら、東京の美少女専門プロダクションかなんかに売り飛ばして、左うちわ、なんてことを考える
のだが、なんせ、ド田舎である。
父親は、娘が高校教師を愛している、なんて事を知ると、そりゃあいい、なんてことを考えるのである。
生徒たちにはモックンなどと呼ばれて、人気があるというではないか。
紗里奈は、身長は155センチ、B86,W59,H83.ブラがDカップであることもここに記しておこう。
なんで田舎者の両親からこんなかわいい子が生まれたのか不思議である。
神様の手違い、と筆者などは考えるのである。
もしかしたら、母親が都会からやってきた男と裏の山で…などというはしたないことは筆者は考えてもいない。
紗里奈、なんて名前も、このド田舎には不釣合いなのだが、父親の妹がつけたのだ。
美恵子という名のこの女が、少女コミックを片時も離さないという娘だったので、どれかのヒロインの名前を
いただいたものであろう。

新婚旅行の行き先にニューマラネシアを選んだのには、わけがある。
中学生用の地図帳どころか高校生用の地図帳にも載っていない場所なんだから。
@ 水道橋体育大学時代のガールフレンド、松田性子が、壮太をふって、歯医者と付き合い始め、先ごろ結婚
し、新婚旅行に南極に行ったこと (思ったとおり、離婚した)
A 同僚の理科教師、網谷陰太にインターネットを利用するどころか、パソコンも覚束ないことを笑われたこ
と
そういうわけで、壮太は、インターネットであまり日本人がいっていなさそうな所を見つけ出して、そこに行
くことに決めたのである。
壮太は意地っ張りなのである。

ニューマラネシアのリゾート地、地上最後の楽園、イレマラを選んだのは、単なる偶然である。
検索エンジンの使い方もよくわからないまま、あれこれキーワードを入れて【検索】をクリックしたら、ディ
スプレーにこの世のものとも思えない美しい珊瑚礁に囲まれたイレマラの画像が現れたのだ。
ここだ! ここしかない!
画像に魅了されてしまったのだ。
説明は英語なので、壮太はお手上げだ。
辞書を片手に、何とか解読しようとするが、ほぼ絶望的である。
そもそも英和辞典など学生時代に一度も開いたことがなかった。
壮太の部屋に英和辞典があったことが不思議なくらいである。
同僚の英語教師はドイツもこいつも陰険なやつばかりなので、相談する気にならない。
実際、須山久美子にプリントアウトしたものを見せて、相談したのだが、鼻先でせせら笑って、春日部先生の
訳でいいんじゃないですかあ?と言った。
「かあ?」の部分がしり上がり調子だったのだが、そこに、須山久美子が自分を見下している臭いを嗅ぎ取っ
て、壮太は30秒ほど落ち込んだのである。
東京の旅行代理店に手配を依頼した。インターネットを使って…
壮太は、パソコンも使えるし、インターネットもつかえるのがうれしくてたまらない。

ニューマラネシアには週1便エアマラネシアの便がある。
首都(といっても人口6千人)コメオラには、コメオラ・リゾートホテルがある。
これはアメリカ式の、世界中いたるところにある、何の変哲もない、ありふれた鉄筋コンクリート作りのホテ
ル。
壮太の目を奪ったイレマラには、コテージ風のホテル、サウスパシフィック・イレマラ・リゾートがあって、
これはいかにも南太平洋のリゾートを満喫させるつくり。
もちろんこちらを選ぶ。
真っ青な海、白い珊瑚礁、緑のジャングル
水泳しか能のない壮太には、イレマラこそ、おれの生まれ故郷、という気さえしているのである。

JRを乗り継いで成田空港につき、チェックイン、今、機中の人である。
飛行機にはじめてのった人の常として、コーヒーにミルクと間違えてサラダドレッシングを入れるといった、
いろいろアホなことをしでかしながら、グアムに到着。
日本からの乗客は大方が降りてしまって、給油の後、再び離陸。
機内には、日本人らしい姿はほとんどない。
グアムから乗ってきた、アメリカ人やら、わけのわからん人やらで、機内はがらがらである。
数えたわけではないが、2,30人といったところか。
壮太は、あまり人が行かないところに出かけるのだ、しかも初めての海外旅行、しかも新婚旅行!
とヘンに興奮している。
夜間飛行なのだが、あまり眠れない。
帰ったら自慢するぞお!

早朝、機はコメオラ国際空港に到着した。
滑走路が1本だけの、空港ビルすらない、管制塔があったかなあ、という程度の飛行場である。
ジャングルを切り開いて作った飛行場である。
滑走路以外は、赤土が剥き出し状態である。
ついにやってきたぞ!
南海の楽園、ニューマラネシア!
空が真っ青に澄み切っていて、空気が美味しい!
於満湖町に比べても、ここのほうがずっとずっと澄みきっているのである。
飛行機からターミナルらしき掘っ立て小屋まで、自分のスーツケースをガラガラとひいていく。
こんなところでも、入国審査と税関検査はあるのである。
入国審査は、旅行英会話のお手本どおりに進む。
審査官の英語も、壮太とどっこいどっこいなのだ。
税関検査。
スーツケースを開けさせられる。
南太平洋の島にやってきたのだ。荷物なんかほとんどない。
下着と、ジョギングシューズとスニーカーと…
「タンキュウ」
あっというまもなく、検査終了。
紗里奈のスーツケースを開ける。
「やだあ」
肌の浅黒い目つきの鋭い検査官が、ギロリとにらむ。
紗里奈は、身をすくめる。
衣服の下に、コンドームが2ダース。
生理用ナプキン1パック。
おばの美恵子が買ってくれた、ワコールの真っ白なブラとパンティが数組。
同じくワコールの真っ白いネグリジェ2枚。
筆者が大好きな黒のビキニパンティなどはないのである。
検査官が、ブラジャーとパンティを1枚1枚広げてみる。
気色が悪いが、文句を言ったら、どんなことになるかわからない。
公務執行妨害で逮捕、なんてことにもなりかねない。
検査が終わるのをじっと待つしかないのであった。
検査官は、紗里奈を見て、歯茎を剥き出しにして、にたりとする。
「タンキュウ」
紗里奈は、検査官が素早い手つきでパンティを1枚失敬したことに気が付かない。

なんでコンドームがあるのか、というと、筆者は説明しないではおれないたちなので、余計なことかもしれな
いが、記しておくと、壮太は、まだ子供がほしくないのである。
新婚生活を楽しみたいのである。
子供を作るのは、やって、やって、やりまくって、やりつかれてからでいい、と思っているのである。
壮太が紗里奈にそんな言い方をしたわけではない。
そんな下品なやつではない。
子供は、しばらくたってからつくろうよ、とそんな言い方をした。
叔母の美恵子は、ピルを飲むように勧めたが、紗里奈は婦人科に行くのを恥ずかしがった。
コンドームは、町でただ1軒の春日井薬局で母が買ってきたものだ。
壮太のあだ名が、モックン(←もっこりくん)というのは、子供を於満高に通わせている父兄のあいだでは知
られている。
母親は、ちゃんとLサイズのものを買ってきた。
気の利く母親ではある。
母親と薬局のおばさんとのあいだでどんなやり取りがあったかというと…面倒なのでやめとく。
「ああ、モックンには、Lサイズよ。Mなんか使ったら、すぐ破れちゃうよ」
くらいにとどめておく。
モックン、いや壮太も、ちゃんと自分でコンドームを用意してある。
2ダースばかり。
自分のことは自分でする男なのだ。責任感が強いのだ。
というわけで、全部で48個のコンドームを携えているわけだ。
イレマラには4泊するだけなので、壮太には、せいぜいがんばってほしいと、筆者は思っているのである。
筆者には、8個もあれば十分なのだが、体育会系の人間には、きっとこれくらい必要なのだろう。
うらやましい。

空港には、出迎えが待っていた。
現地の旅行代理店コメオラ・トラベルのガイド、ヤリマクリ氏だ。
壮太と紗里奈は、古びてがたがたになったバンに乗せられて、コメオラの中心部につれていかれた。
1時間ほどかかったが、それは道路が舗装されていないでこぼこ道なのと、車がおんぼろだからで、空港から
中心部まで、8キロしか離れていないのである。
コメオラ・リゾートホテルのロビーに連れて行かれたので、壮太は、てっきり日本の旅行代理店が手配を間違
えたのか、と思って、ヤリマクリ氏に文句を言った。
ひどい英語で説明するのを、何とか理解したところによると、イレマラに行く人たちはほかにも2組いて、午
後1時にこのホテルに集合することになっている、それまでここで過ごしてくれ、ショッピングモールもある
し、プールも利用できる、というのだった。
壮太は、ほっとする。ついでに腹もすいてくる。
荷物をフロントに預けて、午後1時まで、このホテルで時間をつぶすことにする。
アメリカ式の朝食を済ませて、ショッピングモールに行く。
水着を買う必要がある。
せっかくのリゾートだ。
アシックスの競泳用パンツや、スクール水着というわけにはいかんではないか。
日ごろ使ってきたものは持ってこなかったのだ。
東京で買おう、成田で買おう、と思っていたのだが、電車の乗り換えや、搭乗手続きの緊張やらで、すっかり
忘れてしまったのである。
このホテルで自由時間があってよかったなあ、と、壮太は喜んでいる。
エルメスや、ビトンや、グッチや、フェラ鴨のお店、なんていうのは、1軒もない。
マラネシアのお土産を売る店、インドネシアや、マレーシア製のTシャツを売る店、それに、水着を売る店が
それぞれひとつあるだけだ。
ここは、ハワイではないのである。
あんな、ショッピングモールが軒を連ねた、日本語の看板がいっぱい並んでいる、日本なのかアメリカなのか
わからんような、くだらん場所ではないのである。
日本語なんか通じない、日本人観光客なんかたぶんほかにはひとりもいない、場所なのだ。

「まいったなあ」
「うん…」
南海に残された地上最後の楽園の水着ショップで売っていたのは、まあ、たぶん日本のリゾートでは着られな
いたぐいの水着である。
男物といえば、超ビキニかTバック、女物は、ビキニばかりである。
ビキニくらい着られますよ、と言う読者もいるかもしれないけれど、この店で売っているのは、マイクロビキ
ニとでもいうものだ。
フロントの三角形の部分が一辺5センチくらいだし、うしろは、紐状態というか、ほとんどTバックである。
あなた、着られますか?
「こんなの、着られないよォ」
「しかたがないよ」
「やだァ、紗里奈、はずかしい」
「まあ、知ってる人はいないわけだし、外人もきっとこんなの着てるわけだし」
「でも…」
「それに、おれたち水着持って来てないわけだし」
実際そうなのである。
必需品の水着を1枚も持ってきていないのである。
ワコールのブラとパンティで泳ぐわけにはいかない。
ここで買うしかない。
南太平洋のリゾートで、太陽に肌をさらさないですごす馬鹿はいない。
フランス人なんて、こういう場所に来たら、みんなトップレスになるっていうじゃないか。
お尻ぐらい出したってどうってことないじゃないか。
壮太は、ビキニを2枚選んで、試着して、デカチンが何とか収まるサイズのを買った。
店の女主人が、紗里奈と一緒に試着室をのぞいて、
「オウ、ビューチフル!」
といった。
「壮ちゃん、かっこいい!」
紗里奈も言う。
女主人は紗里奈に壮太のビキニとペアのトロピカル柄のビキニを勧める。
試着すると、サイズもぴったりだ。
Dカップのおっぱいがはみだしぎみだが、しかたがない。
全体をすっぽりマスクするようなダサい形のものは置いてないのだ。
それから白のビキニも勧められる。完璧、Tバック。
「いやあ! これ、すごい…」
「ユー ヤングレジイ、ビューチフル」
壮太は、もっこり君がむっくりする。
「おい、買えよ。記念にもなるよ」
「タンキュウ ベリマッチ」

水着の入った袋を手に、プールサイドに行く。
確かに、泳いでいる人も、プールサイドで日光浴をしている人も、ビキニや、超ビキニを着ているのである。
ワンピなんぞを着ていたら、浮いてしまうか、沈んでしまうのである。
さんさんと降り注ぐ太陽を浴びながら解放感を味わわないとすればよほどの馬鹿ということなのである。
はるばる海の上を飛んできた甲斐がないというものだ。
更衣室で、買ったばかりのペアの水着に着替える。
プールサイドの木陰の下でデッキチェアに横になって眺めていると、ノーブラの女性が何人かいて、惜しげも
なく、人目を気にすることなく、ポロリンと乳房を出している。
中には形のよくないものもあるが、生まれ持ったものだ、仕方がないではないか。
マイクロビキニの女性もかなり多くて、ヘアがはみださないか、ひとごとながら気になるというか、期待をす
るのだが、どうも、きちんと手入れが施してあるようで、そんなことは起こらないのである。

プールサイドで軽い昼食を済ませ、1時前にロビーに行くと、同行者とおぼしきカップルが集まっている。
女性はふたりとも、ビキニの上に半そでシャツを引っ掛けただけ、男もTシャツにショートパンツといかにも
遊び気分いっぱいの服装だ。
きちんと着替えをしてきた壮太と紗里奈は、場違いな感じがして恥ずかしい。
更衣室に戻って着替えてきたい気がする。
午後1時13分。
3組6人が乗り込んで、イレマラ行きのミニバスがホテル前を出発した。
外国人のカップルは、どちらも40歳代以上に見える。
英語を話している組はアメリカ人、
ナニ語かわからない言葉を話す組は、ブラジル人とわかった。
壮太と紗里奈は緊張気味である。
通路の反対側に座ったアメリカ人夫婦が話し掛けてきた。
「ワタシタチ、ニホン、イタコト、アリマス。トキオ、キオト、タイペイ…」
しだいにバスの中が打ち解けた雰囲気になる。
これから同じ場所でいっしょに休暇を過ごすのだ。仲良くなっておこう。

空港からコメオラの町までの道路よりもっとひどい道を揺られていって、さすがに1時間もすると皆くたびれ
て口をきかなくなった。
だいいち、いつ舌を噛み切るかわからないのである。
それくらいがたがたの道である。
岬の付け根を横断する形で、反対側の海辺に出る。
そこで小型のボートに乗り換える。
ここからはジャングルに行く手を遮られているので、ボートに乗り換えるのだという。
コメオラから直接ボートで行けばよかったんじゃないか、と、ブラジル人のジョアンが苦情を言うと、サンゴ
礁が広がっているので、コメオラには港がない、という。
環境保護に徹しているのかもしれない。
ボートでさらに1時間、ようやくイレマラに到着した。

船着場には、ホテルの従業員が大勢で迎えにきていた。
大歓迎である。
紗里奈はすっかり感激している。
ロビーでチェックイン。
壮太は、片言の英語で何とかこなす。
買い物をしたり、食事をしたり、バスの中でほかの客たちと話しをするうちに、妙に自信がついてきているの
である。

コテージは、1戸ずつ海の上に組んだ足場のうえに立っていて、潮風が吹き抜ける。
窓を開けておけば、自然のエアコンの役目を果たす。
大きなダブルベッドが部屋の中央にでんと据えてあって、やりまくってね、と呼びかけている。
バスルームには、バスタブはなくて、シャワーがついている。
開け放った窓からは紺碧の南太平洋が広がって、2人をうっとりさせた。
案内してくれたボーイの説明があった。
夕食は7時から9時の間にメインダイニングで、その後は、バーでお楽しみください、11時からは、今日チ
ェックインした人たちの歓迎会がある、ディナーのときも正装する必要はない、水着のままでよい、というこ
とだった。
ここでは、1日、水着で過ごしてください。
ふたりは、感激して高揚した気分でディープキスをした。
壮太のペニスが勃起する。
したくてたまらない。
しかし…
長旅の疲れから睡魔が襲い、ベッドに横になるとふたりとも眠り込んでしまった。
波の音で目覚めると、夕闇が迫ろうとしており、時計を見ると6時をさしている。
真っ赤に染まった空に見とれながらDキスをする。
「ふふ、いやだあ…」
シャワーを浴びると、ふたりとも疲れなんか吹っ飛んで、壮太のペニスは勢いよく屹立している。
もっこり状態で紗里奈を抱きしめると、臍のあたりにそれがあたる。
「……」
今夜、これが、わたしの中に…
なんて、処女が考えるかどうか筆者にはわからない。
これまで我慢してきたのだ、あと数時間の辛抱だ…待ちきれないなあ…いましたいなあ…ああ、やりてえ!
という壮太の気持ちは容易に想像できる。
「水着でいい、って言ってたけど、着がえなくていいのかなあ。ワンピース持ってきてるけど…」
「でもなあ…昼間みたいにきちんとしたら恥ずかしい、なんて、いやだなあ」
そうなのだ。あんな場違いな間抜けなことは2度とごめんだ。
日が沈むと気温が下がってくるだろうから何か羽織ることにして、結局コメオラで買った水着を着ることにし
た。
昼間、ホテルのプールで使った水着はスーツケースの底で湿ったままである。
早く乾かさないと、カビが生えるぞ。
紗里奈は白のマイクロビキニを着る。
もちろんヘアがはみ出すのである。
白いビキニからはみ出した黒い縮れ毛は、目立つのである。
「どうしよう…」
泣き出しそうである。
「大丈夫、ぼくの髭剃りで、剃ってあげるから」
洗面台備え付けの石鹸を泡立てて、壮太は髭剃りを使う。
壮太は、電動髭剃り機が嫌いなのである。
あごの骨経由で振動音が脳みそに伝わって、あたまが悪くなりそうな気がするのである。
そういうわけで、愛用のシックの髭剃りで、紗里奈のあそこの毛を剃るのだ。
「きれいにやってね」
恥ずかしいより何より、今は剃るしかないという切羽詰った状況なのである。
5分ほどかけて、壮太は丁寧な仕事をした。
小さな三角形に剃りあげ、紗里奈は白いマイクロビキニを無事に着ることができた。
ナカジマ先生がほめてくれそうなできばえだ。
紗里奈は白いビキニの上に、白い半そでのシャツブラウスを羽織った。
Tバックのお尻が剥き出しなのだが、シャツのすそに隠れている。
壮太は、またもむらむらしているのであるが、腹もすいているのだ。
メインダイニングにはいっていく。
すでに食事をはじめているカップルもあって、会釈を交わす。
みんな水着で来ているようだ。
しかも相当おしゃれな水着のようだ。
そういえば、このホテルにもブティックがあるのだった。
早い時間にのぞいておけばよかったのである。
いまごろ気が付いても遅い。
こういうことは到着したらすぐにやっておかないとね。
明日にでものぞいてみることにする。
ディナーの後、壮太や紗里奈と一緒に今日到着した人々を歓迎するパーティがあるのだ。
初夜は、まだ数時間先のことだ。
筆者も壮太と同じように、少しいらいらしているのでる。
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