肉欲の罠(修正版) 最終回

沼 隆

おことわり この作品は、フィクションです。
      登場する人名、地名、団体名は、
      実在するものと一切関係がありません。

登場人物  瀬口美恵子 ビューティサロン〈グランス〉の女主人
      瀬口 梨奈 美恵子の長女〈二子玉学園女子短大〉生
      瀬口 美奈 美恵子の次女〈東横女学館〉生
      *   *   *
      二階堂千佳子 梨奈のバレエの師匠
      ディック和田 千佳子のバレエの師匠
      *   *   *
      残間 章吾 〈残間金融〉社長
      鰍沢  亮 元、〈犀星学園〉生
      和久井優香 元、〈犀星学園〉教諭
      *   *   *
      牟田 沙織 看護師
      牟田 淳史 信金職員 沙織の夫
      権藤 軍治 〈残間金融〉社員
      鮫島 雪絵 ランジェリーショップ〈わぎな〉の女主人

(1) 芸術祭

二階堂千佳子は、渋谷の雑踏の中を、急いでいる。
モジョ・スクエアビルの中にある、ディック和田の
バレエスタジオに呼び出されたのだ。
「大事な話がある、すぐに来い」
と、有無を言わせない命令口調だった。
千佳子がスタジオに着くと、
ピアノと、生徒の足音が聞こえて、
張り詰めたレッスン場の熱気が、千佳子を包み込んだ。
指示されて、オフィスで待っていると、
和田が入ってきた。
鍛え上げた筋肉が、体に密着したレオタードを通して
浮き上がっている。

「そこに、座れ」
「はい」
壁には、秋に国立劇場で開催される、
〈日本舞踏芸術協会公演〉
のポスターが貼ってある。
芸術祭参加の、一大イベントだ。
「元気そうだな」
「ええ」
「この間の、おまえのスタジオの発表会、見たよ」
「はい、先生がお見えなのは、すぐにわかりました」
「そうか」
「ご挨拶が出来なくて、申し訳ありません」
「なあに、おれは、忙しいからね、ちょっとのぞいただけだ」
「ありがとうございます」
「で、千佳子、おまえ、これに出ないか?」
和田が、壁のポスターを、あごで示した。
「協会公演ですか?」
「そうだ」
「出してもらえるんですか?」
「出たいだろ?」
「え、ええ」
「出してやるよ」
(突然、どういうこと?)
千佳子は、いぶかしく思った。
「この間の発表会でおまえが踊った・・・・・・」
「セクサス、ですか?」
「ああ、そうそう、セクサス、あれ、評判、いいよ」
「ありがとうございます」
千佳子が振り付けをした〈セクサス〉は、
バレエ専門誌で、批評家が、ほめてくれた。
新聞ンの学芸欄でも、取り上げられた。
「あれ、やらせてやる」
「そうですか・・・・・・ありがとうございます」
「もっと練り上げるんだ」
「はい」
「おれに恥をかかせるんじゃないぞ」
「はい」
〈協会公演〉は、千佳子の夢だった。
バレエダンサーとして、最高の晴れ舞台だ。
がんばってきた甲斐があった。
うれしくて、涙が浮かんだ。
「そんなに、うれしいか・・・・・・ふふ」
「はい」
千佳子は、素直にうなずいた。
「だがな、千佳子、おまえの相手役の子、あれは、だめだ」
「は?」
「あんなもの、協会公演に、出せるはずが、ないだろう」
「お言葉ですが・・・・・・」
和田は、千佳子の言葉を遮った。
「ああ、だめなものは、だめだ」
「あの子は、私が一生懸命育てて・・・・・・」
「おまえの一番弟子、というワケか・・・・・・なるほどな」
「瀬口梨奈の、どこが、いけませんか?」
「ああ、梨奈・・・・・・そんな名前だったな」
「あの子のどこが?」
和田は、千佳子の問いには答えなかった。
「おれのところの、松宮アンナを使え」
「ええっ」
「そんな、素っ頓狂な声を出すんじゃない」
「アンナさんは・・・・・・」
「なんだ、おまえ、アンナじゃ、不満なのか」
「梨奈では、いけませんか?」
「ふん」
和田は、ため息をついた。
しばらく、考えている様子だった。
「じゃあ、こうしよう、その梨奈を、おれに預けろ」
「え・・・・・・」
「おれが、なんとか見られるようにしてやる」
(そういうことか・・・・・・)
「どうする、千佳子、おまえ、協会公演に、出たいんだろ?」
千佳子は、はい、とうなずいた。

(2) 罠

瀬口梨奈は、千佳子先生から教えられなくても、
ディック和田のスタジオの場所は知っていた。
渋谷、モジョ・スクエアの13階。
早朝のスタジオは、静まりかえっていた。
レオタードに着替え、トーシューズを履いて、レッスン場に出た。
千佳子先生のレッスン場より、ずっと立派だ。
大きな壁一面の鏡。
上半身、裸の和田が、素足にタイツ姿で、待っていた。
筋肉の動きが、くっきり浮き上がる、純白のタイツ。
鏡に映った自分を見ながら、ポーズをとっている。
自分の姿に、見ほれている様子だ、
ナルシシズムの局地か。
「すみません、お待たせしました」
「余計な挨拶は、いい」
和田の股間が目に入り、梨奈はあわてて目を背ける。
バレエ界で知らない人がいない巨根。
醜いほどのふくらみ。
「さあ、やって見せろ」

「なってない!」
和田の罵声が飛ぶ。
「千佳子のやつ、何を教えているんだ、あのバカが!」
「す、すみません」
和田は、梨奈の背後に回り、
梨奈の両手首をにぎると、大きく振った。
「こうするんだ!」
「はい」
「しっかり、イメージしろ!」
「はい」
「だめだ、だめだ、おまえ、やる気があるのか!」
背後に回った和田が、梨奈の背中にぴったりからだを寄せてきた。
梨奈の腰に、むっくり盛り上がったものが触れる。
梨奈の体が、こわばった。
「こうするんだ」
和田は、そう言うと、
腰をゆっくりグラインドさせ、
ふくらみを梨奈の腰にこすりつける。
「あっ」
「どうした?」
「いえ」
「腰を、こう、動かすんだ」
硬い肉のかたまりが、ぐいぐい押しつけられる。
「おまえも、やってみろ」
「は・・・・・・はい」

梨奈は、以前千佳子が言った言葉を思い出した。

   ディック和田は、
   女の弟子と片っ端寝てる。
   あいつ、ブスでもなんでもいいの。
   おマンコがついていればいいの。
   ひどい男よ。

「なんだ、なんだ、なんだ、おまえ、おれが教えてること、聞いてるのか!」
「は、はい、でも」
「なんだ!」
「先生の・・・・・・」
「ん?」
和田の肉棒が、ぐりぐり押しつけられる。
「これか、こいつのことか」
「は・・・・・・はい」
「しょうがないだろ、男には、みんなついてるモンだ」
和田は、梨奈の腰に両手を添えると、
梨奈をくるりと回転させて、向き合った。
それから、そのまま梨奈を軽々と持ち上げて、
股間のイチモツを、梨奈の股間から下腹部へ、
こすりつけながら、ゆっくりと着地させた。
その感触が、あまりにもキモチ悪くて、梨奈は身震いした。

「ああっ」
和田は、梨奈のレオタードをはぎ取った。
一瞬の出来事だった。
乳房がこぼれ出す。
「あっ、いやっ」
薄皮を剥ぐように、レオタードが剥かれ、
尻がむき出しになった。
梨奈は、からだを丸めて、逃げようとする。
引き下ろされて、太ももに団子のようになったレオタードが、じゃまをした。
「おい、けがをするぞ」
梨奈は、フロアに倒れ込んでしまった。
「言わんこっちゃない」
「いやぁ」
かがみ込んできた和田の指が、梨奈の乳房をつかみ、
もう片方の手が、股間にもぐり込む。
「やめて、やめてぇ」
「ふん」
和田は、タイツを引き下ろし、肉棒を梨奈の顔に突きつけた。
「お願いです、やめてください」
「ふん、そうか、そんなに、いやか・・・・・・」
和田は、肉棒をしごきながら立ち上がった。
携帯を取り上げて、電話をかけ始める。
「おお、千佳子か」
足もとに横たわった梨奈を、意地悪そうに見下ろしながら、続けた。
「千佳子、おまえの、協会公演なぁ、あれ、なし。なしにするから」
それだけ言うと、和田は電話を切った。
その間中、肉棒をしごいている。
ずいっ、ずいっ
梨奈に、誇示するように。

「いい子だ」
梨奈は、レオタードをすっかり脱がされて
トーシューズをはいた姿で、フロアに寝かされた。
「最初から、おとなしくさせていればいいものを・・・・・・」
ふふ、と和田はほくそ笑んだ。
「ああっ」
肉棒は、黒々とふくれあがり、
先端の鈴口には、しずくがにじんでいる。
「入れてやるからな」
「いやぁ」
「ふふ、すぐに、イイッ、て言いだすんだよ」
亀頭が、梨奈の肉穴を広げながらもぐり込んでいく。
ずじゅ
「いたいっ」
「ん? おまえ、処女か? え? 処女なのかよ!」
和田は、うれしそうにニヤニヤして、
肉棒を抜くと、梨奈の股間をのぞき込みながら、
指で淫裂を広げた。
「なんだ、膜、ねぇじゃねぇか」
しらけた顔をして、梨奈に覆い被さっていきながら、
肉棒を埋め込んでいった。
「あはあっ」
梨奈は、苦痛のうめき声を上げる。
「ぶっといチンポ、初めてなんだな」
「いやぁっ」

苦痛に悲鳴を上げながら、梨奈は千佳子先生の言葉を思い出していた。

   わたし、男が嫌いなの。大嫌いなの。
   男ってとっても不潔。
   男がセックスしたがるのは、愛しているからじゃないの。
   ただ、出したいだけなのよ。
   溜まってるものを女の中に出したがってるだけ。
   汚い精液を。
   女のからだを、便器みたいに思ってるのよ。

(はやく、出してよっ!)
梨奈は、心の中で叫んでいた。

タイツの中に肉棒をしまい込みながら、
和田は千佳子に電話をかける。
「おお、千佳子か、この子、教え甲斐があるよ、いい子だ
 しばらく、おれが指導してやる」

(3) 待ち合わせ

日曜日の、午前10時。
町田のインターチェンジに近いファミリーレストランである。
「あの人たち、来たよ」
「そうか」
権藤軍治は、アイスコーヒーのグラスをテーブルに置きながら、
駐車場を見た。
自分たちより10歳ほど若いカップルが、
車から出てこちらに向かってくる。
夏の強い陽射しが、照りつける。

女は、サオリ。
ダンナの名前は、ははは、聞いてなかったな、
名前なんか、どうでもいい、
おれたちだって、下の名前しか教えてない。
グンジさんと、ユキエのカップル。
あのふたりには、それで十分だ。
そうそう、ムタとか、いう名前だったな。
「ムーちゃん」とでも、呼ぶか……
ユキエは、スケベ下着の専門店、〈わぎな〉を、
相模栗原の商店街に開いているのだが、
今日は、店員に任せて、ここにいる。
ムーちゃん夫婦と、スワッピングをするのだ。
あいつら、おれとユキエを、夫婦だと思ってる。
まあ、どうでもいいことだ。
サオリ、たっぷり楽しませてくれよな。

軍治は、ユキエの横顔をちらっと見た。
こいつ、AVに出るようになって、
ますます色気づきやがった……
スケベな体が、ドスケベになりやがって……
「ムーちゃん」の野郎、
ユキエとやらせてくれって、
向こうから言ってきやがった……
ははは
こっちから、サオリを誘い出す口実、考えなくてすんだってワケで……
おれも、サオリとオメコしたくて、たまらなかったからな……
サオリのやつ、ナースだってことだが、
休みの日には、ずいぶんと変身なさることで……
ナースには、見えないって……
どうみても、ふーギャルだぜ……
まあ、仕事のストレス、発散したいってことか……
ん? ダンナの趣味?
はは、まさかなあ
ん? そうかもな……?
ダンナ、むっつりスケベ風だからな……

牟田淳史は、妻の沙織と店に入った。
ファミレスの店内は、冷房が効いていて、
外のすさまじい暑さとは大違いだった。
「こっち、こっち」
男が、立ち上がって、大声で呼んだ。
「こっち、こっち」
もう一度、大声で呼んだ。
相手は、先に来ていた。
強面の顔に笑みを浮かべながら、
淳史をしっかり見つめ、
ゆっくりと立ち上がって、
握手をしようと手を差し出してきた。
淳史は、こんにちは、と小声で言いながら、
グンジさんの手を握る。
グンジさんが、しっかり握り替えしてきて、
淳史は、慌てて手に力を込めた。
「お待たせして、済みません」
「私らも、今来たところです」
グンジさんの連れの女、ユキエさんも、
「こんにちは」
と挨拶してきた。
「奥さん、きれいだ」
グンジさんが、沙織をじっと見つめながら言った。
鋭い視線が、沙織の体を這いまわる。
「はぁ」
淳史は、間抜けな受け答えをして、それから
慌てて、「ユキエさんも、すてきです」
と言い添えた。
確かに、ユキエにはそそられる。
真っ赤なルージュを引いた半開きの唇の奥に、
きれいな歯が並んでいる。
ユキエは、舌先をわずかに出して、唇を舐めた。
唇が濡れて、なまめかしい。
「行きますか、それとも、何か、飲む?」
とグンジさんが言う。
淳史が、迷っていると、
「こんなところで、時間を無駄にするのも、なんだからね」
とグンジさんにうながされて、ファミレスを出た。
「私の車で、行きましょう」
淳史の車は、ファミレスの駐車場に残し、
グンジさんの車で、近くのラブホテルに入った。
〈ほっと・プッシー〉
ここには、スワッピング用の部屋がある。
赤を基調にした部屋。
ダブルベッドが2つ、並んでいる。

(4) スワッピング

小さなテーブルをはさんで、
2組のカップルが向き合って座った。
「だんなさん」
グンジが淳史に言った。
「こうやって、会えることになって、うれしいよ」
「ええ」
淳史はうなずく。
グンジは、ユキエを見ながら、
「こいつも、喜んでるんだ」
と言いながら、ユキエの太ももをつかんだ。
「な、そうだろ?」
ユキエさんは、
「そうよ」
と、答えた。
「わたしも、です」
淳史が言う。
「はは、私ら、気が合うね、
 相性が、いいっちゅうことか、ははは」
することは決まっているのに、
始めるきっかけがなくて、
淳史が、昨夜の巨人戦は……とでも言おうかと、
グンジさんと目があった。

「始めようか」
軍治にうながされて、
「はい」
と淳史は答えた。
「ははは、リラックス、リラックス、
 だんなさん、リラックスして、いきましょうよ」

軍治は、立ち上がると、手早く脱いでいき、
全裸になった。
ペニスが、だらりと垂れ下がって、いる。
そこも、持ち主同様、ふてぶてしい。
淳史も、後れを取らないように、裸になった。

「ユキエ、おまえも、裸になれ」
ユキエが立ち上がり、沙織が立ち上がり、
ふたりの女が、脱いでいく。
沙織が裸になっていく様子を、軍治の目がじっと見つめている。
口もとに、薄い笑みを浮かべて。
淳史は、そんな軍治の視線に気圧される自分にいらだちながら、
その気分を吹っ切ろうとでもするように、ユキエの体を見るのだった。
軍治が淳史と入れ替わり、
ユキエのとなりに淳史が、沙織のとなりに軍治が、座る。
裸の尻に、ソファのビニールシートが、ぺったりと張り付く。
軍治は、沙織を抱き寄せながら、唇を重ねていき、
乳房を揉み出した。
淳史は、沙織が抱き寄せられるのを横目で見ながら、
ユキエを抱き寄せ、唇を重ねた。
肉棒が、たちまち硬くなっていく。
ユキエのしっとりと汗ばんだ肌のひんやりとした感触。
乳房を吸った。
吸いながら、横目で向かいのふたりを見た。
軍治の肉棒も、ふてぶてしく膨れあがり、
ビクンビクンと脈打っている。
軍治の指が、沙織の尻を撫でさすり、
それから、両股のあいだに分け入って、
淫裂をまさぐり始めたのか、
沙織の体がびくんと震えた。
目の前で、すぐそこで、
沙織の肉が、グンジの手で開かれていく。
グンジの野郎……!
淳史は、かっとなった。
グンジが、手で沙織の両足を開かせて、
沙織のメス穴をこちらに広げて見せたのだ。
ピンク色の濡れた粘膜を、指先で撫でさすり、
膨れあがったクリトリスを爪弾く。
淳史と目があって、グンジはにやりとした。
「奥さん、気持ち、いいかい?」
「ん」
淳史は、ユキエを強く抱きしめて、
乳房にすわぶりついていき、
ユキエの股間に指を這わせる。
ぬちゅ
ずちゅ
濡れていた。
「うっ」
小さくうめいたユキエの吐息が、淳史の首筋にかかる。
人さし指の先を、肉壺に差し入れる。
きゅっ、と締め付けてくる。
沙織より、10歳は年上の、この女の、
そこは、イソギンチャクのように蠢いて、
淳史の指を締め付け、放し、放しては締め付けてくるのだった。
きゅっ
きゅっ
きゅっ
きゅっ
イソギンチャクの奥から、液体があふれ出してきて、
淳史の手をぐっしょり濡らす。
しゅぶ
この、締め付け具合が、淳史を引き寄せたのだ。
肉穴の少し入ったところにある場所を、
淳史は指でさする。
ざらざらとした、猫の舌のような場所。

  数日前、ユキエとやりたくなって、グンジに誘いの電話をした。
  「だんなさん、ユキエのあそこ、気に入ったってことだね」
  淳史の欲望を、グンジはお見通しだった。
  「ユキエのオメコは、数の子天井というやつだから」
  「か、数の子……」
  「だろ?」
  「な、なるほど……」
  「それに、俵締め、ってやつで」
  「……」
  「ユキエのオメコはねぇ、極上品なんだよ、ダンナさん」
  「……」
  「やらせてやるよ、おれも、あんたの奥さんとやれるんだろうね」
  「え、ええ」

軍治が、沙織を抱き上げて、ベッドに移った。
「あたしたちも、ベットに行こう?」
「ああ」
ユキエが先に立って、空いているベッドに上がった。
ベッドで絡み合う沙織と軍治を横目で見ながら、
淳史はユキエが待つベッドに上がった。

淳史は、気持ちが高ぶっていた。
サオは、ぎんぎんに立ち上がっている。
ユキエの穴も、びしょびしょだ。
この穴の奥のざらざらと締め付けを、
サオで感じたかった。
「入れる?」
ユキエが小声で言った。
「え?」
「入れる?」
「あ、ああ」
淳史の声には、もう少し後がいいよ、
という響きがあって、ユキエは敏感に察していた。
「フェラ、してあげようか?」
「あ、ああ」
淳史が仰向けになり、
上体を起こしたユキエが淳史の腰のほうに下りていって、
それから、淳史が見ていることを確かめると、
「ふふ」
と微笑んで、淳史のサオを指先でつかみ、
ゆっくりとしごいた。
「おおっ」
「ふふ」
絶妙の握り具合、
力を入れているわけでもないのに、しっかりとつかみ、
親指と、そろえた4本の指でしごきあげる。
「おおっ、奥さん、ダンナさんたち、あんなこと、始めたよ」
淳史がとなりのベッドを見ると、
沙織が、とろんとした目でこちらを見ていて、
その股間から、埋め込まれていたグンジの手が抜き出されて、
濡れた指先を淳史に見せつけるのだった。
「奥さんのここ、ぐしょぐしょだよ、ダンナさん」
「ああ」
と、淳史は返事をしていた。
「ユキエのオメコも、びしょびしょかな?」
「ああ」
「奥さん、おれにも、フェラチオ、してくれるかな?」
沙織が、ゆっくり上体を起こしていくと、
軍治は仰向けに寝る。
肉棒がそそり立っている。
沙織がくわえ込んでいくのを、
淳史は、見つめているのだった。
ユキエの髪が、下腹部に触れて、
それから、ユキエの頭が淳史の股間に沈んでいく。
「くうっ」
唇と、舌が、軟体動物のようにサオを這いまわる。
ねちょ
ぬちょ
ずちゅ
じゅぽ
「おごっ」
淳史はうめいていた。
このままでは、イカされてしまう……
ずちょ
ずちゅ
じゅぶ
ユキエのだ液で、べとべとに濡れたサオが、
極限に膨れあがっていた。
ユキエが、口から抜いたサオを手でしごきたてながら、
「だす?」
と言った。
「いや」
「ふふ」
「おくちに、出して、いいのよ」
「ああ、でも」
「でも?」
ユキエの手でイカされそうになって、
淳史は、ユキエの手を払いのけた。
ユキエは、素早く握り替えしてきて、
いっそう速くしごきたててくる。
「イキそう?」
「ああ」
「おくちに、出す?」
「い、いや」
「じゃあ、ここが、いい?」
そういうと、ユキエは淳史の股間にまたがってきて、
握り込んだサオの先端を、濡れそぼつ淫裂にこすりつけた。
「くうっ」
淳史は、必死でガマンする。
「ここに、出す?」
「ああ」
ユキエは、枕元にあったコンドームの袋を手早く裂いて、
淳史のサオに装着した。
見事な手さばきだった。
体を起こそうとする淳史を押し戻しながら、
ユキエは淳史の股間に尻を落としていって、
サオの先を肉穴にあてがうと、ゆっくりと腰を沈めていった。
サオが、子宮を突き上げた。
「あん」
ぎゅっ
肉穴が、サオを激しく締め上げた。
「うぐ」
淳史は、息を詰まらせた。
ぎゅぅぅぅっ
ぎゅぅぅぅっ
「ぐぐぐぅ」
痛いほどだ。
サオは、そうやって、何度も締め上げられた。
ユキエは、淳史のサオの長さを、太さを、硬さを味わっていのか。
それから、ユキエが腰を使い始めた。
両手を淳史の胸について、腰を蠢かせる。
淳史も、腰を動かした。
サオでユキエを突き上げる。
「あうううつ」
ユキエのあえぎ声は、獣のようだった。
のどの奥から、絞り出すように、
あえぎ、うめく。
淳史は、ユキエとつながっている場所を見た。
自分のサオが、ユキエの股間にもぐり込み、吐きだされ、
もぐり込み、吐きだされる。
ユキエの股間から垂れ下がった陰毛は、
淫裂からあふれ出した液体でぐっしょり濡れて、
しずくがしたたり落ちてくる。
ユキエが、淳史の両手をつかみ、上体を起こした。
その瞬間、サオが子宮を激しく突き上げて、
ユキエは、ぎゃっ、と悲鳴を上げて、上体をのけぞらせた。
「いいっ!」
大きな声が、ホテルの狭い部屋に響いた。
「いいっ!」
もう一度、叫んだ。
淳史は、極限に近づいていた。
ユキエの悲鳴が、淳史を踏みとどまらせていた。
そんなに、いいのか……
沙織のやつ、こんな風になったことが、ない……
その沙織が、となりのベッドにいるのに気づいて、
横目で見ると、ティッシュで口もとを押さえながら、こちらを見ているのだった。
沙織が、ドロリとした白い液体を、ティッシュに吐きだすところだった。
グンジのやつ、沙織の口に……
グンジは、ベッドから起き上がるところだった。
ユキエの様子を見つめながら、ベッドから下りて、
テーブルにのせたセカンドバックから何かチューブ状のものを取り出した。
ユキエが覆い被さってきて、
「ねえ、すごく、キモチ、いいよ」
とささやいた。
「強いんだね」
「ん?」
「いってない」
「あ、ああ」
「こんどは、あんたが好きなように、して」
「ああ」
そのときだった。
ふたりの上に、グンジが重なってきた。
「な、なにを」
「まかせなよ」
グンジの低い声。
すごみがあった。
「な、なにを」
「まかせなって」
グンジの肉棒は、回復していた。
たった今、沙織の口に射精したというのに。
グンジは、右手にチューブを握っていた。
左手の中に、何かを絞り出した。
グンジが、チューブを放りだした。
それは、淳史の顔のすぐそばに落ちた。
中部の先端から、透明な、ねっとりした液体が垂れている。
グンジは、絞り出した液体を、自分の肉棒に塗りつけた。
くちゅ、くちゅ、くちゅ
「お、おい、あんた」
「まかせなって」
「ああっ」
ユキエが、小さな悲鳴を上げ、
淳史にしがみついてきた。
淳史は、グンジの重さを腰に感じ、
それから、淳史がユキエとつながっている場所に、
薄い粘膜を隔てたもう一つの穴に、
グンジの肉棒がゆっくりと埋め込まれてきた。
「どうね」
淳史は、言葉が出なかった。
「どうね」
グンジが、もう一度聞いてきた。
粘膜を隔てて、淳史はグンジの肉棒を感じていた。
「女の穴は、オメコだけやないよ」
グンジは、ゆっくりと動き始める。
「こっちの穴も、ちゃんと、スケベができるんやぜ」
淳史は、グンジの肉棒の動きに、感じ始めていた。
「キモチ、良かろうが」
どう答えたらいいのか。
「あんたも、動きなよ」
「……」
淳史は、ユキエとグンジの重さを感じながら、ぎこちなく動き出す。
「そう、そう、そうだよ」
グンジの肉棒が、激しさを増していった。
「おら、おら、おら、おら」
グンジは、奇妙なかけ声をかけながら、ユキエの直腸を突き上げる。
「うっ、うっ、うっ、うっ」
「おらあ」
グンジは、怒声を発しながら、ユキエを背後から抱き上げ、
乳房を鷲掴みにすると、力いっぱい絞り上げた。
「うぎゃああああああ」

「どうね」
シャワーを浴びて戻ってきた軍治は、ソファに座ってうつむいた淳史に、声をかけた。
淳史と沙織は、ホテルに備え付けのバスローブ姿で、並んで座っている。
「よかったろうが」
ユキエが、バスルームから戻ってきた。
軍治は、ユキエを抱き寄せた。
「こいつも、良かった、言っとるよ」
そう言うと、グンジは、ユキエのバスローブをはぎ取った。
乳房に、青あざが広がっている。
軍治が、揉むと、ユキエは痛そうに顔をゆがめた。
「痛いか?」
「うん」
「こいつねぇ」
と、軍治は、淳史と沙織を見ながら言った。
「痛めつけてやると、喜ぶんだよ」
「あんた」
ユキエが、そんなこと、言わないでよ、という表情で遮る。
「はは、秘密にしても、しょうがねぇよ」
それから、
「ふたりに、見てもらいなよ」
と言って、抱き寄せたユキエの背中を、ふたりに見せた。
「もう、気がついていたかもしれないけどな」
ユキエの腰に、幾筋もみみず腫れがあった。
「こいつ、Mなんだよ」
「M?」
「そう、M。おれが痛めつけると、
 ヒイヒイ、泣いて、喜ぶんだよ」
淳史も、沙織も、納得がいった。
さっき、ベッドで乳房を絞り上げられて、
激しい悲鳴を上げたのに、
逃げ出そうともしないで、
軍治と淳史に前後からはさまれて、
2本の肉棒をくわえ込んだまま、
やがて激しくイッたのだ。
「こいつねぇ、この歳になって、Mだって気がついたんだよ」
「やめてよぉ」
「へへ、いいじゃねぇか」

「ユキエ、ムーさんのサオ、しゃぶってあげな」
軍治が、「ムーさん」と呼ぶのが自分のことだとわかって、
淳史は、いい気分がしなかったが、
軍治には押されっぱなしであった。
裸のユキエが淳史の前に跪いて、
淳史のバスローブを開き、
あらわになったサオにしゃぶりついてきた。
サオは、みるみる硬くなった。
「奥さん、おれたち、ベットに行こうか」
立ち上がる沙織のバスローブを、軍治ははぎ取って、自分も裸になった。

「奥さん、あんたひとり、ほっぽらかして、すまんかったねえ」
そういいながら、軍治は沙織を抱き寄せた。
さっき、沙織の口の中に射精したあと、
ユキエのアナルに挿入したのだから、
沙織は置いてきぼり状態だったのだ。
「今度は、奥さんがイクばんだよ」

ユキエの指と、唇と、舌が、淳史の欲望をかき立てていた。
ユキエの頭を抱え込むようにして、
自分の腰に引き寄せ、押し返し、引き寄せ、押し返す。
のどの奥を突かれて、ユキエは、うごっ、とむせる。
淳史は、容赦しなかった。
苦しそうに涙を浮かべているユキエに、
遠慮しなかった。
ベッドでは、軍治が沙織とつながっていた。
ベッドが、きゅぅきゅぅ軋み、
沙織があえぎ、軍治が、ハッハッ、と息をしている。
「あぅぅ」
沙織があえぐ。
軍治の背中が、しっとりと濡れて光っている。
軍治の尻が、リズミカルに突きだされ、
尻の筋肉がプリプリ蠢く。

淳史は、ユキエを抱き起こすと、
ベッドに移った。
仰向けになって、ユキエのフェラチオを受けながら、
シックスナインのポーズで、ユキエの肉襞を舐めまわしていた。
目の前に、ユキエの肛門があった。
軍治の肉棒に掘られたせいか、少し口を広げているような気がした。
「来いよ」
軍治が、淳史を呼んだ。
「こっちに、来いよ」
淳史は、引き留めようとするユキエの手をふりほどいて、
言われるままに、軍治が沙織と交わり続けているベッドに上がった。
「奥さん、ダンナのサオ、しゃぶってあげなよ」

なんてことだ、沙織のフェラチオときたら……
ユキエとは、比べものにならなかった。
へたくそがっ……!
軍治は、淳史の体をわきにどけながら、沙織との体位を入れ替えて、
仰向けになった。
「奥さん、今度は、自分で動いてみな」
沙織は、ぼんやりとしたまなざしで夫の淳史を見ながら、
軍治の肉棒をくわえ込んだ尻を、前後に動かす。
「いいねぇ、奥さん、いいよぉ」
軍治が、ぐっ、ぐっ、と突き上げ、
沙織の体がひくつく。
「奥さん、キモチ、いいかい?」
「ん」
沙織が、うなずいた。
「もっと、キモチよく、してやるからね」
そういいながら、軍治は沙織を抱きしめた。
そして、淳史を見つめて言った。
「来いよ」
「……?」
「あんたも、するんだよ」
「……?」
「ここに、入れなって」
そういって、軍治は両手で沙織の尻を広げた。
「あっ、そこ、いやっ」
沙織が、小さく悲鳴を上げた。
「ぼやぼや、すんなよ」
淳史の腕に、冷たいものが触れて、
振り向くと、ユキエがローションのチューブを差し出している。
淳史が戸惑っていると、
ユキエは自分の手にローションを絞り出し、
淳史のサオに塗りつけた。
「さあ、来い」
「いやぁ」
軍治は、沙織の尻を鷲掴みにして、しっかりと引き寄せた。
「いやぁ、いやぁ」
「怖がることはないよ、奥さん」
「お願い、やめてっ」
サオが沙織の穴から抜け落ちないように、腰をぐいっと突きだしながら、
軍治は沙織の尻をしっかりと押さえ込む。
「来いっ!」
淳史は、軍治の凄みのある声に引き寄せられるようにして、
軍治と沙織の足もとに回っていった。
沙織の肉壺には、軍治の肉棒がはさまって、
ぶりぶりと蠢いている。
その穴のすぐわきに、もう一つの穴がある。
「来い」
淳史は、沙織に背後からのしかかっていく。
「いやあ、やめてえ!」

「ムーちゃん、良くやった」
「……」
「どうだ、いいだろ、3P」
「ああ」
「そうか、そうか、よかった、よかった」
汚れた肛門の始末をして、沙織がバスルームから戻ってきた。
疲れ果てた顔をして、うつむき加減でいるのを、
ユキエがなぐさめるように、抱いている。
「腹が空いたな、なんか、注文するか」
腹ごしらえをして、午後、軍治は沙織のアナルを味わうつもりだ。
外は、すさまじい暑さだろう。
ここは、エアコンが効いて、快適。
そうそう、ユキエとSMプレイをして見せてやるか。
サオリのやつ、怖がるか、それとも……

(5) たびだち

成田空港の第2ターミナルの出国ゲートである。
セキュリティチェックが、厳重になって、混雑が激しい。
出国者の列から、少し離れたところに、
残間章吾、瀬口美恵子、美恵子のふたりの娘、梨奈と美奈がいる。
鰍沢亮を見送りに、残間が運転する車で、来ている。
亮は、犀星学園を退学したあと、
マサチューセッツ州の、コックス高校に入れることになった。

残間の話では、亮は、
家庭教師をしてもらっていた先生の車で、来ることになっている。
その〈家庭教師〉の正体を知っている梨奈は、
美恵子に教えなかった。
今日、亮を見送ることで、
何もかも、解決する。
亮が、自分にしたこと、美奈にしたことを母に話して、
苦しめることはない。

「亮ちゃん、おそいわね」
美恵子が言う。
亮は、出発時刻になっても現れなかった。
「行き違いになったかなあ」
「そんなことは、ないと思うけど」
残間は、航空会社のカウンターに問い合わせた。
亮は、チェックインをしていなかった。

残間は、瀬口親子をアパートに送り届けると、
〈スカイメゾン〉に向かった。
亮、どうしたんだろうか、
今朝は、出発の準備が終わって、
亮は珍しく、うれしそうだった。
803号室には、明かりがついていた。
章吾は、怪訝に思いながら、ドアを開けた。
亮のスニーカーと、優香のサンダルが並んでいる。
どういうことだ?
まさか、今日になって……
優香に、未練がわいたとでも言うのか……
それとも、別れ話が、こじれて……
おれが、きちんと片付けてやると言ったのに……
いやな匂いがする。
「亮さん」
章吾は、靴を脱ぎながら、大声で呼んだ。
「亮さん」
ベッドルームに入った章吾は、異様な光景にぎょっとして、
胃の中のものをぶちまけそうになった。
ベッドの上に、真っ赤に染まった肉のかたまりが横たわっていた。
血まみれでどす黒く汚れた顔面。
鼻がつぶれ、頬骨が、陥没している。
亮だ。

すぐそばに、血まみれの大理石の置き時計が転がっている。
こいつで殴ったのか……
亮は、全裸だった。
全身にいくつも刺し傷があった。
切り裂かれた箇所から、
内臓が流れ出している。
床の上には、凶器となった包丁が転がっていた。

優香は……
優香は、どこだ?
赤い足跡が、浴室に続いている。
浴室のドアは開いていた。
残間の頭から血の気が退いていく。
ドアノブに捕まって、からだを支えた。
バスタブは、血の海。
女が、沈んでいた。
優香は、浴槽の中で手首を切っていた。
黒いフェイクレザーのブラジャーとパンティを着けて。
手首、足首には、拘束具。
腰から尻にかけて、無数のみみずばれが刻まれており、
皮膚が裂け、肉が裂けている箇所もあった。
胸の谷間に見つかった小さな肉塊は、
亮から切り落としたペニスだった。

(6) 葬儀

鰍沢亮の葬儀は、亮の家族だけで行われた。
警察で事情説明を受けた両親は、
瀬口美恵子が、亮をきちんと世話しなかったことに、
激しく怒った。
父親は、亮のパソコンの中に、おびただしい数の
緊縛写真を見つけて、凍りついた。
女は、亮と心中した、あの高校教師、
和久井優香。
父親にしてみれば、いくら憎んでも憎みきれない女。
息子を、あんなむごたらしい目に遭わせた女。
だが、この女を、縛り上げ、むち打ち、
ロウソクで汚し、
踏みつけているのは、我が子なのだ。
ふたりの性交写真も、たくさんあった。
優香は、妊娠4ヶ月目にはいっていた。
亮の両親は、マスコミから逃れるように、
勤務地のバンコクに帰っていった。

(7) 家族の温もり

〈日本舞踏芸術協会公演〉は、バレエダンサーの檜舞台。
NHKが、教育チャンネルで放送する。
プログラムに、二階堂千佳子の演目、《セクサス》は載っているが、
千佳子の相手役は、瀬口梨奈ではなく、松宮アンナである。

8月、猛暑の中、梨奈はディック和田のスタジオに通った。
性的奉仕をして、振り付けを盗まれて、
おまえには、才能がない、と、宣告されたのだった。
梨奈は、千佳子のマンションには戻らなかった。
母と、妹の美奈がすむ、あのおんぼろアパートに戻った。

11月の終わりに、瀬口美恵子は、小さな家を購入した。
相模栗原、常盤台の県営住宅のそばである。
頭金の800万円は、美容室の収入と、
娘たちには秘密の仕事で得た。
ザンマ企画制作のアダルトビデオ
《熟女 淫ら汁》
《熟女 ホンバン悶え狂い》
《女王 真珠 しばいてあげる》
〈真珠〉というのは、美恵子の芸名だ。
《淫ら汁》のとき、監督に叱られた。
演技を要求されても、美恵子は恥ずかしくて、
うまくいかなかったのだ。
残間に、「もう二度と出ないから」、と言った。
残間は、美恵子を使って、稼ぎたかった。
そのために、ザンマ企画を設立したのだ。
ドキュメンタリーなら、きっとうまくいく、と思った。
実績が、ある。
美恵子が、鮫島雪絵に激しく鞭を振るう復讐劇、
《ドキュメントSM 熟女ふたり責め地獄》は、
儲かっているのだ。
しかし、儲かっているのは〈カイカン企画〉で、
残間はそれが歯がゆくて、ザンマ企画を立ち上げた。
そうだ、台本なしなら、きっとうまくいく。
そして、《悶え狂い》は、残間と美恵子のセックスを撮ったものだ。
20代の男を加えた、3Pの作品。
《しばいてあげる》は、美恵子の本領を発揮した作品になった。
真性M男、M女を縛り上げ、むち打ち、
ろうそく責めにし、
つばを吐きかけ、
小便を浴びせかけた。
美恵子は、楽しそうに仕事をしたのだった。

新しい家に引っ越した夜、
残間を招待して、お祝いの会が開かれた。
女3人の華やいだ笑い声、残間は久しぶりに、楽しい気分になった。
残間は、ダイニングわきのソファに座って、缶ビールを飲んでいる。
美恵子が、ふたりの娘と楽しそうに洗い片付けをする姿を眺めているのだった。
姉娘のほうは、バレエをやめて、しばらく落ち込んでいたらしいが、
もうすっかり元気になったようだ。
なるほど、バレエにむいた体型だな、と章吾は思う。
手足が、すっと伸びて、それがしなやかな動きをする。
やせた若い女は、そこら中にいるが、
バレエをする女は、だいぶ違った体型だ。
それに、おれの視線を意識しているのだろうが、
あたしを見て、っていう感じが、ある。
確かに、見て欲しいのだろうな。
人前で踊るのが、大好きな子なのだから。
妹のほうは、普通のティーンの女の子だ。
母親に似ているが、胸のふくらみは、これからだろうか、
両足は、ちょっと太い感じがするが、
これも、年頃になったら、母親のようにすらりとしてくるのだろうか。
ミニスカート、短すぎだよ。
パンツが、見えてるよ。

「今夜は、泊まっていって」
「いいのか?」
「あの子たちのことなら、心配しないで」
「そうなのか?」
「章吾のこと、気に入ってるの」
大田黒又造を、あんなに嫌っていたふたりの娘が、
章吾については、いやな顔をしない。
「じゃあ、泊めてもらうよ」
「お風呂、入るでしょ?」
「ああ」そうするよ」
章吾が、風呂から出ると、
真新しいパジャマが用意してあった。

美恵子の部屋の、真新しいベッドの上で、
章吾は横になり、美恵子を待つ。
風呂から上がった美恵子が、
バスローブをまとい、
薄化粧をして、
ベッドに来る。
なまめかしい仕草でバスローブを脱ぐ。
美恵子の肌は、湯上がりでピンク色に染まっている。
ソープの芳香を漂わせながら、
美恵子は章吾の腕に抱かれる。
美恵子は、右手を章吾の胸にのせる。
胸毛をいとおしむように撫でさする。
それから、その手を下腹部にすべらせていって、
肉棒を探りあてる。
膨らみかけたそれを、手のひらに包み込み、
そっとしごく。
「章吾、好き、大好き」
美恵子は、そういいながら、章吾の乳首を吸った。
「おれのムスコも、好きなんだろ?」
「そうだよ、ふふ、大好き」
「そか」
「美恵子のムスメは、どう?」
「ん?」
「ここのことよ、あたしの、ムスメ」
そういいながら、美恵子は、章吾の指を、淫裂に導く。
「ああ、この、ヌルヌルしたムスメさんか」
「うん」
「大好きだよ」
「うれしい……して」
「ああ、うんとかわいがってあげるよ」
章吾は、美恵子の股間に顔を埋めると、
ヌルヌルしたムスメを、べろり、と舐めた。
「ああん」
美恵子が、気持ちよさそうに甘ったるい声を上げた。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 ヌマ・タカシ
                           2000.5.5
                           2008.7.31 三訂
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