麻耶の黒い下着(修正版) 第19回

沼 隆

登場人物  浜部朱美   
      浜部 淳   朱美の夫
      リョウ    淳の飲み友だち



(1)

朱美(あけみ)は、
薄明かりの中で、目を覚ました。
裸のままだった。
カラダが火照っている。
となりで、夫の淳(あつし)が寝息を立てている。
昨夜のことを思い出す。
淳がカラダを求めてきて、
あんなに激しい夫婦のイトナミは、久しぶりだった。
荒々しいセックスだった。
淳は、激しく突いてきた。
朱美も、腰を突き返していた。
へとへとになって、そのまま眠り込んだのだ。
淫裂は、びしょびしょに濡れている。
左手の指先で、陰唇を広げる。
指先を手前に引きながら、クリトリスをむきだしにする。
右の人さし指で、クリトリスを爪弾く。
「くぅ」
キモチよくて、うめき声がもれる。
クリトリスから、少し下がった場所に開いた穴から、
蜜が流れ出す。
その蜜で、指を湿し、クリトリスをこすり続ける。
快感が、全身に広がっていく。
しびれるような、快感。
クリトリスは、熱を帯びて、
指先は、すぐに乾く。
朱美は、蜜で指を濡らし、クリトリスをこすり続けた。
尻が、ヒクヒク、する。
両膝を少し立てて、足をM字の形に開く。
もう、イクところまで、行ってしまうしかない。
布団が、朱美の動きにあわせて、かさかさと音を立てる。
淳は、寝息を立てている。
朱美は、オナニーにのめり込んでいった。

朱美は、一気に上り詰めていった。
声を押し殺しながら、駆け上り、
浮かせた尻を、ひくつかせながら、イッた。
ふうっ……
大きなため息をつきながら、尻を落とす。
気配を感じて、そちらを見ると、
淳が、じっと見つめていた。
それから、淳が朱美の布団にもぐり込んでくる。
淳も全裸で、すっかり固くなった肉棒が、
朱美の太ももに触れた。
淳は、そのまま朱美に重なってくる。
ふたりのカラダに隙間に、冷気が入り込んでも、
熱くたぎっている朱美のカラダは、寒さを感じなかった。
淳の腰が、朱美の両足を割って入り込む。
肉棒の先端が、先走りで濡れていて、
それが、朱美の太ももを濡らす。
淳は、一言も口をきかない。
ぎらぎらとした欲望で、瞳が開き、
鼻腔がふくらみ、生臭い息が、朱美に吹きかかる。
肉棒が、淫裂をかき分ける。
朱美は、それを迎え入れようと、
腰を突きだした。
ずじゅぅ
「あはっ!」
肉棒は、朱美の肉穴を押し広げながら、もぐり込んでくる。
「ううっ、ううっ、ううっ」
朱美は両手で淳の腰をつかみ、
引き寄せる。
自分も腰を突きだしていき、
深く、深く、結合するのだった。

目覚ましが鳴る。
ティッシュを股間にあてがって、
朱美は、ふたりの余韻が熱く残る布団から起き出した。
淫裂から、淳が出した液体が流れ出す。
「まだ、いいだろ?」
と、淳が引き留めるのを
「朝ご飯、食べさせなくちゃ」
「そうだな」
淳は、あきらめるほかなかい。
子供には、学校がある。

肉棒の後始末をしている淳を残して、
朱美は寝室を出て行った。

(2)

子供が学校に行くのを見送って、
朝食の後片付けを始める。
淳(あつし)は、浴室に入っていった。
朱美(あけみ)は、下腹部がウツウツしている。
ゆうべ、浩平とラブホテルでセックスした。
帰宅すると、淳が待っていて、
深夜に性交した。
そして、明け方にも。
朱美の性欲が、体の芯でくすぶっている。
さっき、めらめらと燃え上がった炎は、
今は、種火ほどに小さくなっているけれど、
もう一度燃え上がるチャンスを待っている。
淳が浴室から戻ってきた。

「お風呂場で、何してたの?」
「掃除だよ」
「あんたが、お風呂掃除するなんて、珍しい」
淳は、今日は仕事が休みだ。
「ゆうべ、よかったよ……けさも、な」
「……ウン」
「あのな……」
淳は、言おうか、どうしようか、迷っているようだった。
「なに?」
「玄関、戸締まり、したか?」
「うん、したよ」
「今日は、なにか予定があるのか?」
「なにも……」
「そうか……」
「なに?」
淳の視線が、朱美のカラダを、舐めるように見ている。
朱美は、〈視姦〉されてる気分がした。
「どうしたの? 淳」
淳は、朱美の腕をつかんだ。
「なんなのよぉ」
「来いよ」
寝室にはいる。
淳の目に、欲望がはっきり出ていた。
「もう、淳ったらぁ」
朱美は、淳の誘いを待っていた。

寝床は、けさ起きたときのままで、
枕元には、丸めたティッシュが散らかっている。
淳は、カーテンを閉めた。
寝室は、薄暗くなった。
それから、エアコンのスイッチを入れた。
設定温度を上げる。
「脱げ」
「う、ウン」
朱美は、下着姿になる。
ベージュのブラとパンティ。
「それも、脱げ」
「ウン……淳も、脱いでよ」
「ああ」
朱美が、全裸になり、
淳も、裸になった。
肉棒は、だらりとしている。

「エッチな下着、付けろや」
エッチな下着、が何のことなのか、朱美はすぐにわかった。
タンスの引き出しから、下着を取り出した。
鮮やかな、ショッキングピンクのブラとTバック。
エロ度を盛り上げる、黒いレースの縁取り。
ブラジャーを着ける。
前屈みになりながら、Tバックをはく。
カラダを、淳にむける。
「娼婦みたいだな」
「なんでだよぉ」
「エロいんだよ!」
「今どきの、若い子、みんなこんなの、着けてるよ」
「わかってるさ……エロかわ、なんだろ?」
「わかってるじゃん」
「ふん」
朱美は、腰をくねらせながら、淳に見せびらかす。
「どお?」
「まあな」
「似合ってるでしょ?」
「……」
「こんなの、フツーなんだから」
天神地下街のランジェリーショップで買ったのだ。
「これで、いい?」
「ああ」
「娼婦みたいで、いやなんじゃないの?」
「今日いちにち、オレの娼婦になれや」
「……」
朱美は、淳の目をのぞき込む。
淳が、朱美を見返す目は、真剣だった。
「わかったか?」
「ウン」
「ウンじゃねえよ、はい、って、返事しろ」
「怖いよ、淳……」
「返事は?」
「……はい」
「それで、いい」
なんだか、いつもの淳とはちがっていた。
うちの中は、ふたりだけ。
静まりかえっている。

「化粧、しろや」
「ウン」
淳が、なんで自分を娼婦に仕立てたいのか、
わかる気がしていた。
ゆうべと、けさと、激しいエッチをした。
続きをしたがってる。
自分も、したい。
そのための、演出……
きっと、そうだ……
朱美は、〈娼婦〉を演じる気分になっている。

ドレッサーの前で、朱美は化粧を始める。
淳は、後ろに立って、鏡のなかの朱美を見ている。
肉棒は、だらりとしたままだ。
「もっと、濃くしろよ」
「えぇ?」
「もっと、エッチくしろって」
「う。うん」
「おまえ、結構、セクシーなんだな」
「今ごろ、気がついたの?」
「そうだな、忘れてた」
「ひっどぉい」
「ああ、そう、もっと、エロく、しろって」
「娼婦みたいに?」
「ああ」
娼婦みたいって、どうしたらいいんだろ?
朱美は、マスカラを付け、
まぶたに濃い色を重ねていった。
真っ赤なルージュを引く。
「もっとだ」
淳が、うながす。
どぎつい化粧の女が、鏡のなかにいる。
それから、朱美は髪をアップにした。
〈娼婦〉ができあがった。

エアコンから、暖かい風が流れ出す。
汗ばむほどだ。
唇を近づける。
朱美のコスメの香りが淳の鼻を刺激する。
唇を重ねると、
ルージュの匂いが、淳の口いっぱいに広がった。
化粧品には、エロスを高める匂いが使ってあるのだろうか。

エロ下着を着けた朱美は、淳が期待した通り、
淫らそのものだ。
エロい下着のせいじゃなく、
エロい化粧のせいじゃない。
エロいのは、朱美自身だ。
朱美の淫らな本性が、むきだしになっている。

朱美は、友だちと遊びに行くときに、
エロ下着を着ける。
淳は、それが気にくわなかった。
そのエロ下着姿の朱美が、
今日はちがって見える。
オレのために、着てるんだから。

淳は、朱美を抱きながら、布団に倒れ込む。
抱きかかえながら、背中から腰に、手を滑らせていく。
指先が、Tバックのひもに触れる。
見ると、名前通り、T字の横ひもが腰を横切り、
縦ひもは、尻の割れ目にもぐり込んでいる。
肉棒がふくらんできた。
朱美は、それに手を添えて、ゆっくりしごきだした。
淳は、期待どおりの光景に満足している。
朱美は、自然な流れのままに、フェラチオを始める。
肉棒の根もとを握り、しゃぶっている。
朱美の横顔は、スケベそのものだ。
淳は、朱美の尻に手を伸ばした。
Tバックの股布は、細い。
その、細い股ひもは、濡れていた。

淳の指が、肉穴にもぐり込む。
「あふっ!」
肉棒を加えたまま、朱美はうめいた。
肉穴が、淳の指を締め付ける。
淳は、朱美を抱き寄せて、カラダを入れ替えながら、口を吸う。
朱美は、トロンとした目つきで、淳を見ている。
「あっちに行こう」
「あっち?」
「ああ、風呂場に行こう」
「お風呂で、するの?」
「ああ」
固い肉棒を突きだしたまま、淳は立ち上がり、
下着姿の朱美を引き起こす。

(3)

「あっ!」
浴室の扉を開けて、中を見た朱美は、驚いた。
「なに、これ?」
洗い場には、奇妙な形のマットが敷いてあった。
筏のような形をしたマットは、銀色で、
エアでふくらませてあった。
バスタブには、お湯が張ってあった。
「ソープマット、だよ」
「ソープ? ソープって……」
寝室とはちがって、化粧ガラスを通して、朝の光があふれている。
「朱美、おまえは、今日は、ソープ嬢だ」
「なに? それ……」
「ソープ嬢の朱美さん。で、オレは、お客」
「もぉ」
足を踏み入れると、マットが、キューキュー音を立てる。
「もおお、しょうがないんだからぁ」
朱美は、ソープがどんなサービスをするのか知らない。
「なに、すれば、いいの?」

朱美は、全裸になった。
淳が、指図をした。
洗面器に湯をくむ。
ボトル詰めのローションを空ける。
朱美がゆっくりとかき混ぜていくと、
洗面器一杯の湯にとろみがついてくる。
トロトロになったローションを、朱美は両手ですくって、マットに広げた。
淳が、マットに横たわり、うつぶせになる。
朱美は、ボトルからローションを手に取って、
淳の背中一面に、塗っていく。
「キモチ、いい?」
「うん、キモチ、いいよ」
「で、どうするの?」
「おまえの、胸と、ハラにも、塗るんだ」
「ウン」
朱美は、ローションを両手ですくって、
胸、腹、に塗っていく。
「ふふ、なんか、キモチ、いい」
「そか」
「ウン」
「そこにも、塗れ」
淳の目が、どこに塗ればいいか、教えていた。
朱美は、両手を下腹部から股間に滑らせていった。
陰毛がローションで濡れる。
朱美は、淳の背中に重なっていく。
ローションでヌルヌルになったカラダが、
淳の背中を滑る。
ヌルヌル同士、微妙な感触でこすれ合う。
「なんか、キモチ、いい」
「ああ」
朱美は、淳の股間に手を差し込んで、タマブクロをもてあそぶ。
「キモチ、いい?」
「ああ」
淳は、仰向けになった。
仰向けになった淳に、朱美はローションを塗りつける。
「キモチ、いいね」
朱美は、気に入っていた。
ヌルヌルした手で、肉棒をしごく。
ローションまみれの肉棒を口に咥えた。
ずじゅぼっ
と、ぬめった音がした。
朱美は、淳を上目遣いに見つめる。
妖しく、いやらしい。
大胆に化粧したソープ嬢。
淳は、気分が乗ってくる。
「朱美」
「ん?」
「マンコ、見せろや」
「ウン」
朱美は、肉棒を咥えたまま、
ヌルヌルと滑りながら、器用に位置を変えて、
尻を淳の目の前に突きだした。
淳は、ローションまみれのワレメに吸い付いた。
ぶじゅばっ
音を立てて吸う。
肉穴の、数センチ後ろには、もう一つの穴がある。
キュッ、と口をすぼめている。
淳は、ローションでヌルヌルになった指を、
その穴に差し込んだ。
「いやっ!」
朱美は、悲鳴を上げたが、するりともぐり込んだ。
「もおぉ」
朱美は、まんざらでもない。
淳は、アナルセックス、試してみるか、と思いついた。
するっ、と入るんだからな……
ヌルヌルしたカラダをこすりつけ合ううちに、ふたりは高まっていった。
「だす?」
朱美は、仰向けに寝ている淳にまたがった姿勢で上体を起こした。
それから、腰を浮かし、肉棒の根もとをつまみ、
穴に導き入れるようにして腰を落としていった。
滑りやすいマットの上で、朱美は、激しく腰を動かす。
ずっじゅ、ずっじゅ、ずっじゅ、ずっじゅ……
「ううっ……ううっ……ううっ……ううっ……」
朱美のうめき声は、だんだん大きくなっていく。
「あうっ、あうっ、あうっ……」
上体を反らせて、腰を激しく振り立てる。
肉棒が、グニュリと折れそうなくらい、
朱美は、激しく動く。
「ああっ、ああっ、ああっ、ああああああっ!!!!!!!」
朱美は、大きな叫び声を上げて、カラダをひくつかせた。
朱美の肉穴に、ぐいぐい締め上げられて、
淳は、とうとう、朱美の中に、精液をほとばしらせた。
肉棒が、最後の一滴を噴き上げると、
朱美は、淳に覆い被さってきた。
ハァ、ハァ、ハァ
肩で、荒く呼吸している。
淳が、朱美を抱きしめると、
肉棒が、ヌルヌルした肉穴から抜けそうになり、
朱美が、肉穴を締めて、引き留めようと力をこめると、
ヌメリのせいで、肉棒は、抜け落ちた。
肉穴も、肉棒も、そして、どこもかしこも、ヌルヌルしていた。

(4)

朱美が、起き上がろうとする。
「おしっこ、したいよ」
「ここで、やれよ」
「えええっ!」
「ここで、したらいい」
「でも……」
「ここで、しろ」
朱美は、起き上がり、浴室の隅に行って、
しゃがみ込み、排水溝に向かって、放尿する。
尿の匂いが、浴室に立ちこめた。
浴室の窓を少しだけ開ける。
冷たい外気が、一気に吹き込んできた。
淳は、慌てて窓を閉めた。
庭の隅を、慌てて走り去る人影があった。
隣家の女だ。
オレたちの、ソーププレイ、立ち聞きしてたな……
と、淳は思った。
朱美が、あれだけ淫らな声を上げたのだ。
隣の女が、盗み聞きに来ても、可笑しくはない。
シャワーから、温水を噴き出させる。
朱美の尿を洗い流し、浴室を暖める。
シャワーで、ローションを洗い流し、
追い炊きした湯に浸る。
「のど、乾いたよ」
「ああ」
「何か、飲む?」
「ビールでも、取ってこいや」
朱美は、バスタオルをまいて、台所に行った。

朱美が、《淡麗生》のプルトップを開けて差し出す。
「おまえ、飲めよ」
「淳は?」
「オレは、こっち」
と言いながら、《即効ピンクル皇帝液》を一気に飲み干した。

(5)

「お昼だよ、おなかすいたね」
「出前、取るか?」
「なにが、いい?」
疲れた体を、布団に横たえて、
一休みしたところで、
腹が、鳴った。

《南蛮亭》の出前は、昼前に届いた。
餃子をつまみながら、ビールを空けた。
鶏ももニンニクスパイス焼。
ふたりは、ぺろりと平らげた。

「朱美……」
「なに?」
「スナックで、気心が知れてるヤツに、つい、愚痴ってしまった」
「なんて?」
「我が家の夫婦関係、冷めてるんです」
「……」
「近ごろ、エッチが、マンネリで、ってさ」
「もぉ」
「マンネリだから、回数も、減ってる、って、愚痴ったわけさ」
そうだよ、そのとおりだよ、と、朱美は思った。
「そしたら、『刺激がなくなってるんだよ』って、言われて」
「ウン」
「で、誘われたのさ」
「なんに、誘われたの?」
「夫婦で、エッチ、見せ合わないか、って」
「ええっ!」
「やってるところを、見せ合うのって、
 もの凄く新鮮なんだってさ」
「そんなぁ」
「見るだけじゃなくて、見られる」
「もう、そんなの、やだよぉ」
どんなに、刺激的か、
朱美は、知っている。
経験者なのだから。
「ソーププレイ、教えてくれたのも、その人なんだ」
「どんな人なんだよぉ」
「朱美と、こんなに楽しめたのは、そいつのおかげだよ」
「……」
「刺激があって、楽しかっただろ?」
「うん、そうだけど」
「なあ、いいだろ?」
「……」
「おまえの写真見せたら、『かわいいヨメさんだね』だってさ」
「写真、見せたの?」
「ああ、リョウちゃんも、ヨメさんの写真、見せてくれたよ」
「リョウちゃん、っていうんだ、その人」
「いいだろ?」
「変な人じゃないよね」
「ああ、心配する人たちじゃないよ」

(6)

子供が、学校から帰ってくる前に、
淳は浴室を片付けている。
朱美は、寝室を片付けていた。
窓を開けて、布団を押し入れにしまい込む。
よどんだ空気を入れ換えているとき、
携帯が鳴った。
沢渡良太(さわたり・りょうた)からだ。
「よっ、お久しぶり!」
「こんにちは」
「あっちゃんから、聞いたよ」
「あっちゃん?」
「あ、そかそか、ダンナさんのことだよ、
 淳だろ? だから、あっちゃん、
 オレ、リョウちゃん」
「あんた……」
「あっちゃん、喜んでるよ」
「……」
「今、ヨメが、OKしてくれたって、電話くれたんだよ」
「……」
「ソーププレイ、楽しかったって?」
「もう、あの人ったら……」
「いいじゃん、夫婦円満になれて」
「……」
「オレの、おかげだからね」
「なによっ」
「で、奥さんに、お礼の電話させてください、ってことで
 この番号、教えてもらった」
「……」
「話、あわせといてね」
良太は、独身。
じゃあ、ヨメって、誰よ!
「誰を、連れてくるつもりなの?」
「ああ、朱美が、知らない女だよ、
 サエコって言うんだけど、
 今、一緒に暮らしてるんだ」
朱美は、ことわりたかった。
「いやだ、なんて、言うなよな」
良太の声が、凄みを帯びた。
「ことわったら、写真、あっちゃんに見せるからな」
朱美は、息を呑んだ。
「オレたちが、乱交パーティやったときの写真にビデオ」
「やめてよっ!」
「来いよ」
「……」
「おまえたち、もっと夫婦円満になるんだぞ」
「……」
「オレに、手伝わせろって」
「わかったよ」
「いいね、いいね、いいね……楽しく、やろうね、朱美ちゃん」

淳が、マットがはいった段ボールをかかえて、寝室に入ってきた。
「リョウちゃん、喜んでたよ」
淳が、うれしそうに言った。
朱美は、うん、と小さくうなずいて、
「よかったね」
と、小声で言った。
進む

戻る