麻耶の黒い下着(修正版) 第17回

沼 隆

登場人物  坂下大樹 アマチュア写真家 浩平の父親
      坂下麻耶 大樹の妻
      坂下浩平 大樹の先妻の子
      浜部朱美 大樹の写真仲間
      九鬼杏奈 浩平の同級生


(1)

楽しい時間を過ごして、〈ココミル〉を出た。
浩平は、クラスメートの家に、招待されていた。
誕生日パーティだ。
ケーキを買っていくというので、
麻耶は、〈シャンティ〉まで車で送った。
あの、チョコレートケーキで有名な店だ。
それから、クラスメートの家まで送っていった。
表札に〈九鬼〉と書いてあった。
珍しい名字だ。
麻耶は、覚えていた。
浩平が引っ越してきた日、
手伝いに来たクラスメートの女の子。
「杏奈さんのうちなの?」
「そうだよ」
浩平は、麻耶をまっすぐ見つめたあと、
ケーキの箱を手に、玄関に向かっていった。
麻耶は、杏奈の表情を思い出している。
浩平と杏奈は、どんな関係なのだろうか。
ただのクラスメートなのか。
もしかしたら・・・・・・
杏奈は、引っ越しを、楽しそうに手伝っていた。
杏奈と、エッチしているのだろうか・・・・・・
浩平は、誕生パーティに招待されて、ケーキを買っていく。
麻耶は、嫉妬していた。
股間が、熱い。
肉穴が、浩平の肉棒の感触を思い出して、うずく。
パンティが濡れている。

(2)

麻耶は、桜木の家に戻った。
プールで濡らしたビキニを手洗いして、浴室に干す。
6時過ぎに、携帯が鳴った。
大樹だった。
どうして、こうも、予定通りなのだろう。
今夜も、焼き肉なのだろうか。

〈チャングム〉で、焼き肉を食べた。
この店の焼き肉、キムチは、男の精力を高め、
女の性欲を昂進させる。
美味しい肉料理とは、そういうもの。

大樹は、麻耶をラブホテルに連れ込んだ。
〈ココミル〉である。
麻耶は、大樹が車を〈ココミル〉のガレージに滑り込ませたとき、
心臓が激しく鼓動して、どきどきという拍動が、
大樹に聞こえてしまうのではないか、と震えた。
数時間前まで、浩平と過ごしたホテルなのだ。
偶然なのか、それとも……
「ここで、ふたりきりの時間を・・・いいだろ?」
麻耶は、身体を硬くしていた。
部屋に入るなり、大樹に抱きしめられる。
身体に染みついた焼き肉の匂い。
唇に、舌に残る焼き肉の、キムチの味。
濃密な匂いが、麻耶の鼻腔を、口腔をみたす。

「麻耶、ほったらかしにして、すまない」
と、大樹は言った。
なによ、いきなり……と、麻耶は思った。
「なんだか、浩平といっしょに暮らし始めたら・・・・・・な、わかるだろ?」
いつの間にか、ずっとほったらかしにされていた。
年頃の息子がいる家の中では、妻を抱けないというのか。
何で、今夜、ホテルに……
勝手なひと……と、麻耶は大樹を見ている。

  浩平は、大樹と、別れた妻、裕美とのあいだの子である。
  裕美が2月の終わりに突然なくなった。
  で、大樹は、浩平を引き取ったのだ。
  麻耶は、浩平が一緒に暮らすことは、いやだった。
  麻耶が大樹と結婚して、半年しかたっていない。
  つまり、新婚生活が始まったばかりなのだ。
  そこに、年頃の男の子が入り込んでくるのは、
  気が重いことだった。
  浩平が、嫌いなのではない。
  浩平とどう接したらいいか、麻耶は、とまどった。
  田舎の祖父母のところに行って欲しい、と思った。
  けれど、大樹が、「受験までの1年間だけだから。進学したら、
  ひとり暮らしをはじめるさ」と言った。
  そうして、3人の暮らしが始まったのだ。
  それから………いろいろなことが起こった。

「おおっ」
大樹が、歓声を上げる。
麻耶が、黒い下着を着けている。
シースルーの下着。
ブラジャーは、肌が透けて、なまめかしく、
乳首の部分には、蝶の刺繍がしてある。
パンティも、尻のワレメは、丸見えなのに、
ヘアを隠すように、羽を広げた蝶が刺繍してある。
それが、いっそうエロチックだ。
「どうしたんだよ、おい」
黙って、立っている麻耶。
「思いっきりセクシーな下着を買ったんだね」
大樹が、透けた乳房をじっと見つめている。
麻耶は、急に恥ずかしくなった。
おざなりなセックスが続いていた。
それなのに……
こんな目で見つめるなんて……
右腕で胸を、左手で股間を隠す。
「よく、見せてくれ」
「あっ、いやぁ」
「おお・・・・・・」
ブラジャーの上から、乳房を揉んだ。
「いいねぇ、いいねぇ、麻耶、いいねぇ」
大樹は、麻耶をベッドに寝かせる。
着ているものを手早く脱ぎ捨てると、
麻耶に覆い被さっていく。
サオは、すでにビンビン状態だ。
〈湯涌温泉〉で使った精力を、もう回復している。
〈チャングム〉の焼き肉とキムチのおかげなのだろうか。
大樹の指が、麻耶の背中に回り、ブラジャーのフックをはずす。
乳房がこぼれだす。
麻耶は、ブラジャーを脱いで、ベッドの端に置く。
乳房をすわぶる大樹の顔。
大樹の愛撫が、乳房から腹に下がっていき、
ヘソを舐めまわし、それから、パンティをじっと見ている。
「おしゃれな、パンティだ」
麻耶の目を見つめる。
「気に入ったよ、麻耶」
大樹の指が、パンティの腰にかかる。
尻から脱がせようとする大樹の指にあわせて、麻耶は腰を浮かせる。
「おおっ」
大樹の驚いた声。
「どうした、麻耶?」
「いや、そんなに、見ないでよ」
「どうしたんだよ?」
ヘアがすっかり刈り込まれたその場所を、
大樹は穴が空くほど見つめている。
ほとんどそり落とされて、
亀裂に沿ってわずかに残してある。
「新しい水着・・・・・・」
「どんな水着なんだ?」
「冴子の店で・・・欲しくなって・・・・・・」
大樹の肉竿は、湯涌温泉であれほどセックスをしたあとなのに、
すっかり回復して、麻耶の穴をこね回したのである。
そして、大樹は、射精した。

その夜、大樹は麻耶がどれほど魅力的な女であるか、
思い知ることになった。
つい、同居した息子のことが気になって、
セックスが遠ざかっていたのだ。
麻耶を、新鮮な気分で抱いた。
麻耶の身体が、大樹にぴったり吸い付いてきた。
性器が、いやらしく蠢いて、
肉棒にしゃぶり付いてくる湿った音が、
快感の高まりを示していた。
夫婦のセックスの回数が増えた。

(3)

大樹の浮気は、相変わらず続いている。
朱美とは、月に、1,2回のペース。
最近、新宮町の女とも寝ている。
写真サークルのメンバーの紹介で写真展の手伝いをしてもらったのがきっかけだ。
ダンナというのが、結婚したとたん、セックスの回数が激減して、
欲求不満の身体を、大樹が充たしたのだ。
新宮町のラブホテルで、真っ昼間のセックスを楽しむのだが、
経験不足の女が、自分の手でテクニックを上げていくのを見るのは、愉快である。
   *   *   *
「もしもし・・・もしもし・・・」
「坂下さんですか?」
「はい、そうです」
「センセイ、いらっしゃいますか」
「出かけています」
「息子さん?」
「そうですけど」
「あ、じゃあ、いいです」
朱美は受話器を置いた。
土曜日の朝、夫は息子を連れて、宮崎に出かけた。
きのうから生理が始まって、鬱陶しい。
大樹の携帯に電話しても、
「ただいま運転中のため、電話に出られません。のちほどお掛けなおしください」
というメッセージが流れるばかりである。
きっと、よその女と・・・・・・
いらいらが高じて、大樹の自宅に電話してしまった。
思い立って、麻妃の携帯にかける。
「麻妃?」
「朱美、どうしてる?」
「天神に行こうかなあって」
「そっかぁ」
「麻妃は?」
「子どもたちつれて、動物園よ」
「そうなんだ」
「どうしたの?」
「なんでもない、じゃあ、楽しんでね」
動物園、娘たちと、レッサーパンダを見に行くのか?
でも・・・子どもたちの声は、しなかった。
はしゃぎ声が聞こえても、いいはず。
大樹が、麻妃が、朱美を笑っている気がする。
大樹が、麻妃とセックスしている姿が、
大樹が、明菜とセックスしている姿が、
あたし、のけもの?
生理だから?
それって、ひどいよ!

「もしもし」
「さっき電話したものですけど」
「はい」
「センセイ、どちらにお出かけですか?」
「知りませんけど」
「いつ頃、お帰りですか?」
「きいていません」
「そう・・・・・・」
「アケミさん、ですか?」
「えっ?」
いきなり、名前を言われて、朱美はうろたえる。
「アケミさんですね」
「え、ええ」
「これから、会えますか?」
「えっ!」
「父のことで、アケミさんにききたいことが」
「あ、あの・・・・・・」
「薬院の駅で、待っています」

浩平は、コンドームをはぎ取った。
生理の血が、指を汚す。
生理中の女の性器は、ぐずぐずした感触で
締め付けてくる肉の感触が、なかった。
朱美は、ティッシュを股間にあてがう。
そして、トイレに行く。
その後ろ姿を、浩平は見つめる。
浩平は、この女の性交写真を何枚も何枚も見ている。
イクとき、ものすごくエロい表情をする。
今日は、いかなかった。
きっと、生理のせいだ。
この次は・・・・・・と思う。
もう一度、やりたい、と思う。
朱美も、そう思っていた。
この、大樹にそっくりな若者に、ラブホテルに誘われて、
ほとんどためらうことなく付いていき、
「生理だから、恥ずかしい」というと、
「気にしない」という言葉に、
下着を脱ぎ、股を開いたのだ。
けれど、腰が鬱陶しくて、経血が流れるのも気になって、
中途半端に終わったのだ。
浩平が、
「また、会える?」
と誘ってきた。
「またって・・・・・・」
「もう一度、アケミさんと、したいんだ」
「もう一度?」
「うん、もう一度。生理じゃないときに」
・・・・・・ああ、浩平クン、あたしも、したい・・・・・・
朱美は、本心を浩平に見抜かれないように、
ちょっと考えているふりをして見せた。
「だめかな?」
「だめって・・・・・・」
・・・・・・だめなはず、ないじゃない、あたしこそ、浩平クンとしたいのよ・・・・・・
浩平が、したがっていることに、朱美はうれしくなっていたのだ。
「だめ?」
「じゃあ・・・木曜日の、夜、出て来れる?」
木曜日には、生理は終わっている。
「木曜日?」
「ウン、木曜日」
「いいよ、じゃあ、木曜日」
薬院の駅で待ち合わせをする。
浩平は、九鬼杏奈の家に呼ばれているとでも、ウソをつくことにした。
「7時で、いい?」
「7時に、薬院の駅で」

朱美は、木曜日の夕方まで、年若い男とのセックスに期待しながら過ごすのであった。
・・・・・・今度は、ちゃんとさせてあげる
   あたし、ホントは、とっても大胆なんだから
   おねえさんの、テクニック、思いっきり見せてあげるから・・・・・・
自分のことを、〈おねえさん〉と思った自分に、おかしくなって、噴き出した。
新たな愉のしみが、朱美を生き生きとさせた。
ときおり、大樹の〈浮気〉を疑ってみたりもしたけれど、
〈浩平クン〉と会える日が待ち遠しくて、
少女のように胸を弾ませているのだった。
「おい、おまえ、なんだか、楽しそうだなあ」
夫が気づいた。
「なんか、いいことでも、あったのか?」
「ふふ」
ひとのよい夫が、朱美の浮気を疑うはずはない。
……間抜けな夫・・・・・・
  いいダンナさん・・・・・・
  あたしをほったらかしにして、釣りに行ったり・・・・・・
  勝手なひとなんだから・・・・・・
  自分だけ、楽しいことして・・・・・・
  釣りだけが、この人の楽しみ・・・・・・
  下着は、どれにしよう・・・・・・
黒い下着しか、考えられなかった。
……〈浩平クン〉とデーとするんだ、
  思いっきりセクシーな女になって……
夫と子どもに夕食をさせながら、化粧を直し、
黒い下着を着けて、鏡の前でポーズをとる。
夫には、「PTAのお母さんたちの集まり」と、ウソをついている。
「2次会、行くからね」
息子とテレビゲームに夢中になっている夫は、振り向きもしないで、
「ああ」
と、うなり声のような返事をしただけだった。

浩平クンは、朱美の予想以上だった。
攻め方を、知っていた。
朱美は、リードするつもりでいたのに、
教えてあげるつもりでいたのに、
教えることは、なかった。
浩平は、朱美の体の隅々を味わい、
朱美が強く感じる場所を探し出して、攻めてきた。
うなじを舐めまわし、
耳たぶを甘く噛んだ。
「す、すごい、浩平クン、すごいっ」
浩平の舌が、指が、朱美の体のくぼんだ場所にもぐり込み、
とがった場所を吸い上げる。
・・・・・・ああっ、どうして?
   どうして、こんなに、
   おんなを
   知ってるの?・・・・・・
若々しく、荒々しいだけだと思っていたのに、
だから、〈女〉を教えてあげるつもりできたのに、
この子、〈女〉を知っている、
「ああっ、そこ、そこ、そこっ!」
浩平が、体の向きを変えるたびに、いきり立った肉棒が朱美のからだを撫でていく。
・・・・・・ほ、欲しい・・・・・・
浩平の顔がかぶさってきて、朱美の唇を求めてきた。
舌をからませる。
さし込まれた浩平の舌が、朱美の舌を、舌の裏側を、舐めまわす。
歯の裏側を這いまわり、歯茎を舐めまわす。
浩平の指が、クリトリスをこすりあげた。
なんという指技。
指先に、ほとんど力を加えないで、
そっとさすりあげていく。
「んんぐぐぅ」
浩平の舌で塞がれた口から、朱美のうめき声がもれる。
「うううううぐぐぐぐぐっっっ」
浩平が、舌を抜き、朱美の表情を確かめるようにのぞき込んでいる。
「い、れて」
浩平は、朱美の両足を開き、下半身を割り込ませていき、
朱美の淫裂を確かめるように見つめながら、
いきり立った肉棒の先端をさし込んだ。
「あうっ」
朱美の腰が、びくんと蠢き、
亀頭をもっとくわえ込もうと、吸い付いてきた。
ずちゅ
「あうっ」
朱美が、浩平を招くように、両手を差し出してきて、
浩平は、それが、
もっと、入れて、
と言っているのだと、わかった。
ずじゅぅ
「はあっ」
朱美の上半身が、海老ぞりになって、
くわえ込んだ肉棒を締め上げた。
「んっ」
浩平は、息が詰まるほど締め上げられたが、
腰をずらして、痛みを和らげる。
結合部をのぞき込むと、
肉棒は、朱美の穴から流れ出す汁にぐっしょり濡れている。
朱美がしがみついてきた。
浩平は、朱美をしっかり抱きしめると、
ゆっくりと腰を動かし始めた。

朱美が、くたくたになって帰宅したのは、深夜近くだった。

(4)

「浩平」
「なんだよ」
「あたし、きれい?」
「ああ」
「麻耶さんと、どっちが、きれい?」
「なんだよ、それ」
「麻耶さん、好きなんでしょ」
「バカ言え」
「バカじゃないよ、あたし、本気で聞いてるんだから」
九鬼杏奈の部屋。
浩平は、杏奈のベッドにもたれかかって、床に座っている。
杏奈は、ベッドに腰を下ろしている。
「見たんだよ」
「見たって、何を?」
「浩平、麻耶さんと下着の店から出てきた」
「えっ」
・・・・・・こいつ、見たのかよ・・・・・・
「女の下着売ってる店だよ」
「〈ラオラ〉だろ?」
「そう」
「あそこ、麻耶のいとこの店なんだ」
「なによ、それ」
「それだけ」
「あんた、女の下着の店に入るんだ!」
「買い物に、つきあったんだよ」
「麻耶さんの下着買うの、つきあったってワケ?」
「そ」
「なによっ!」
「おっきな声、出すなよ」
「浩平が、ふざけたこと、言うんだろ!」
「なんだよ、それ!」
杏奈は、立ち上がって、浩平の脇腹を思い切り蹴った。
「何するんだ、馬鹿野郎!」
浩平は、怒鳴り声を上げながら立ち上がった。
「おまえが、悪いんだろっ!」
杏奈が、叫ぶ。
「ざけんじゃねぇよっ!」
浩平は、杏奈を払いのける。
「ふざけてるのは、おまえのほうだろ!」
杏奈は、大声で言いながら、浩平の顔を見つめた。
浩平の顔から、怒りがすっと消えて、
冷ややかに一瞥したあと、
足早に杏奈の部屋を出て行った。
「待てよっ!」
杏奈が引き留めようと叫んでも、浩平は振り返らなかった。

母親が、「どうしたの?」
と言いながら、リビングから出てきたとき、
浩平は玄関を出ていったあとで、
杏奈が、玄関で「バカヤロー!」と叫んだ。
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