「真夜中の図書室」作品

祭りの夜  第3回

(3)

工場の隅にある、便所。
暑さもあって、臭気が立ち込めている。
小便器の前に立って、窓の外を見ると、緒実川に続く草原が見える。
窓が開け放ってあるので、風が吹き込むこともあるが、臭気を吹き消してはくれない。
3つある個室のひとつに、鉄夫がこもっている。
目を閉じ、壁にもたれかかって。
右手で握りしめたものが、さっきから膨れ上がり、青筋を立てている。
亀頭が、ギンギンに膨れ上がって、ツヤ光りしている。
テツは、右手を前後に激しく動かす。
先走りのヌメリが指につく。
そいつを亀頭に延ばしてやる。
クライマックスに向かってしごきたてる。
ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ......
ついいましがた見たばかりの赤座映美の姿を思い浮かべながら。
虚構の映美は、テツに押さえつけられて、激しく抵抗する。
衣服がびりびりに引き裂かれ、テツのチンポを避けようと尻を震わせる映美。
《映美、犯してやるからな...》
《ぶち込んでやる...》
ゆうべ、夢の中で2度犯した映美を、真昼間、額に脂汗をにじませ、息を荒くしながら、犯す。

小便をしたくなって持ち場を離れた。
赤座映美が、工場の2階にある事務所への階段を上っていくところだった。
ポリエステルの真っ赤なミニスカートが、ぴったり尻に張り付いている。
むちむちした太ももの動きにあわせて、尻が揺れる。
そして、股のあいだに、鮮やかなピンク色のパンティが見えた。
どぎついピンク色をしていた。
それが、尻に張り付いていた。
パンティの股ゴムのすぐ下で、白い映美の肉がむにゅむにゅと蠢く。
じっと見上げる。
映美が振り返る。
はっと息を呑む。
しかし、テツを見下ろす映美の視線に、表情はない。
ほんのわずかな時間、数秒もない。
テツは、映美の視線にたじろいで、目をそらす。
無表情の視線だった。
それが、テツを不安にさせる。
映美は、階段を上っていく。
テツの視線に気がつく前と、まったく変らぬ様子で。
テツは、見上げる。
映美が、柱の陰に隠れるまで、見送った。
それから、便所の個室にこもって、チンポをしごいているのだ。
目を閉じて、映美を階段から引き摺り下ろして押し倒し、犯し続ける妄想に自分をかきたてながら。
精液が、便所のドアに飛び散った。

「主任さん、その顔...」
まる花ストアのレジ係、谷口さをりは、一時間遅れで出勤してきた小出辰美主任の顔を見て、驚いた。
左目の下に、大きな青あざがあり、唇も腫れ上がっている。
「転んじゃってさ...」
ゆうべ、帰宅途中の路上で、待ち伏せしていた男に暴行を受けたのだった。
男の背後に、昨日コンドームを万引きした女が立っていた。
警察に突き出す代わりに、やらせてもらったことへの、お返しだった。

昼の休憩時間、さをりは事務所で弁当を食べている。
藤武信用金庫の営業、長岡安雄が、小出主任に見舞いの言葉をかける。目は、嘲笑している。
殴られたわけは知るよしもないが、妙なことをやっているらしいから、こんな目にもあうさ...
「主任、飲みすぎには、気をつけなくちゃ。もうすぐおサネさまの祭りでしょうが」
「ああ、やっさん、気をつけるよ」
弁当を食べ終わったさをりが、事務所を出て行くのを追いかけるように、長岡も事務所を出る。
安雄は、さをりを背後から抱きしめると、スカート越しに、さをりの恥丘を掴む。
ぷりぷりした乳房も。
「やめてよ!」
「さをり、ゆうべは、どうしたんだよ」
「呼び捨てにしないでよ! みんなになんて思われるか...」
「すまんすまん...なんで、電話に出ないんだよ」
「都合悪い日だってあるよ」
「なんだい、それ!」
アパートの隣の部屋のオジさんとやっていたなんて、言えない。
オジさんのちんちん、パールが埋め込んであるなんて、言えない。
ゴリゴリしてて、気持ちよかったなんて、言えない。
あんたよりよかったなんて、言えない。
......思い出しちゃった...えへっ
「今夜、いいだろ?」
「だめだよぉ」
「なんで!」
「帰ってくるもん」
「けっ!」
さをりのダンナは、長距離トラックの運転手。
3日ぶりだ。
......早く帰ってあげたいよ
......ご飯食べて、お風呂に入って、エッチするんだもん...
......やっさん、お呼びじゃないの...
「ゴメン、やっさん...ゴメンね」
さをりは、もうやっさんとすることはないような気がしている。

あゆは、輪島金属加工の工場に入っていく。
......お昼過ぎに来るように、絶対遅れちゃだめだからな...
今朝、新治から出掛けにきつく言われたのだった。
「おサネさまのお祭りに、ウチの工場も参加するんだからな。
 家族ぐるみなんだから。
 あゆ、お前も出るんだ」
「出るって...? 何に出るの?」
「知らねえよ。来ればわかるって」
新治が、神輿を担ぐのは、例年通りだ。
「女は、あたしだけ?」
「いや、経理の女の子が出る」
「だれ?」
「映美って子だ。あゆと同い年らしい」
「あとは?」
「おばさん連中が、何人か...」
「やだよぉ」
「おい、オレの顔つぶさないでくれよな!」
「だって、シンちゃん、勝手に決めてきたんでしょ!」
「なんだ、おまえ! オレの祭りの楽しみ、つぶす気かよぉ!」
「そんなつもり、ないよ...」
「遅れるんじゃねえぞ!」
......シンちゃん、怒ってる
......まる花ストアの、オジンにやらせたこと、怒ってる
......警察、行きたくなかったんだもん...
......シンちゃん、機嫌悪い...
......仕方ないなあ...
あゆは、しぶしぶやって来た。
新治がいるか確かめようと、工場の中を見回す。
工場長の茶谷紘志と目が合った。
......やらしい!
......コージのヤツ!
......エロおやじ!
社長室には、おばさんが数人と、同じ歳くらいの女の子がいた。映美って子だ。
......めちゃ、エッチぃ格好してる。趣味、ワルぅ〜い!
あゆのファッションもけばいのだが...
映美がコンビニのおにぎりと、ウーロン茶を出してくれた。
コージが仕切った。
コージと、シンと、テツは神輿を担ぐ。
社長もだ。
テツは、ふてくされた表情で、じっと下を向いている。
あゆと映美は、商店街の女みこしに参加する。
衣装は、商店街が用意する。
「やだよぉ」
あゆは、隣に突っ立っているシンにささやく。
「オレの顔、つぶすなって」
「みこしなんか、担いだことないよぉ」
「みんなとワイワイやってりゃいいんだ」
緒実川の花火大会を見物しながら、工場の空き地で打ち上げをやる。
結構、楽しみにしている従業員も多いのだ。
あゆは、出てあげる代わりに、何かシンに買ってもらう約束をした。

ふたりの汗を吸って、布団が湿っている。
男は、寝そべったまま、たばこをくゆらしている。
「まんチャン、そろそろ起きてよ」
「ああ...」
男は、昼過ぎにやってきた。
志麻子のバー《りんりん》の常連だ。
権藤満。
ミツルというのだが、子供の頃からまんチャンで通っている。
商店街で洋品店をやっているのだが、景気はよくないらしい。
自営業なので、日銭がはいる。
店の売り上げを持ち出しては遊びまわる。
パチンコで稼いだので、志麻子に電話をしてきた。
寿司折りを持って、昼過ぎにやってきたのだ。
店は女房がやっている。
昼間は、ぐうたら亭主がいない方がよっぽどいいのだ。
それをいいことに、遊びほうけている。
こまめな男で、あっちのほうは、隅々まで行き届く。
志麻子が、肉の快楽が欲しいころを見計らってやってくる。
ミツルの舌と指とちんぽで何度もイッて、裸のまま一眠りして起きあがる。
まんチャンの精液がたまったコンドームが2個、くてっとなって、枕元の畳にへばりついている。
ティッシュに包んで、屑カゴに捨てる。
起き抜けの、ほてった体にシャワーを浴びて、下着を着ける。
「ねえ、起きてよ、まんチャン」
「もう、出勤かよ」
「美容院に行くんだよ」
「もういっぱつ、やりてえよ」
ブラジャーを留めようと後ろ手になっている志麻子を抱き寄せる。
「だめだって...まんチャン」
ミツルは、ブラジャーを跳ね除けると、乳房に吸い付いた。
「あふん...」
「へへ...」
ミツルは、十分承知している。
志麻子のどこを攻めればいいかを。
乳首をしっかり吸ってやるだけで、蜜をあふれさせるのだ。
ミツルの指がパンティにかかると、脱がせやすいように志麻子は腰を浮かせる。
つややかな茂みの奥の肉つぼは、たっぷり潤っている。
女ざかりの志麻子の肉も、疼いている。
......美容院、明日にしよう
ミツルがつむぎだしてくれる快楽に、志麻子は身をまかせる。
頭の中が、真っ白になるあの瞬間にもう一度浸るために。
ミツルの唇が、舌が、指が、志麻子の肉のひだを掻き分け、這い回る。
「ああ...いい...」
ミツルは、志麻子の両膝を立てさせ、M字に広げた股間に顔を埋めて、蜜があふれる淫裂をすすり続け
る。
仰向けになった志麻子の顔に、ミツルの男根がだらりと垂れ下がっている。
黒々とした亀頭を、志麻子は咥えた。
ミツルの尻を抱きかかえるようにして、しゃぶりつく。
猫がミルクを舐めるような、ぴちゃぴちゃという音だけが聞こえる。
ミツルの指が、志麻子の急所に触れる。
クッ、と志麻子のからだがのけぞる。
志麻子にチンポをきつく握られて、ミツルはうめく。
びゅっ、びゅっ、と、志麻子の肉つぼから噴出してきた液体で、ミツルの顔がずぶ濡れになる。
久々の潮吹きに、ミツルは嬉しくなる。
かすかに塩味のする志麻子の分泌液をミツルは美味そうに舐める。
3度目の挿入が楽しみだ。
「ね、入れて」
「ああ...」
志麻子は、獣の声を上げながら、イキまくるだろう。
コンドームが破れるほど激しく腰を使うだろう。
......志麻子、たっぷり、いきな
ミツルは、コンドームを手早く装着する。

玄関を開けると、男の靴があった。
赤座映美の家は、母親の志麻子と二人暮し。
路地といってもいいほどの狭い道路に面した、小さな二階家だ。
玄関を上がって直ぐ、ふすまを開けると、志麻子の部屋がある。
そこを通り抜けた先に、台所と、二階の映美の部屋に上がる階段がある。
映美は、男が帰るのを外で待ってやる気にならなかった。
ふすまを開けると、湿った空気に包まれた。
部屋の中のふたりは、たった今まで絡み合っていたのだろう。
あわてて起き上がったようすだった。
映美は、じっと見詰める。
男は、ばつが悪そうに股間を下着で隠しながら、向こうを向いた。
志麻子は、座ったまま尻を浮かせてパンティを引き上げた。
映美の視線から逃れるように、顔を背けてブラジャーを着ける。
火照ったからだら立ち上るメスの匂いが映美の鼻に届く。
男は、見覚えがある。商店街のゴンドー洋品店の主人だ。
上手くパンツに足を通せずに、もがいている。
......みっともない!
「おかえり」
スリップを着終えた志麻子が、映美を見上げて言う。
映美は、返事をしないでそのまま部屋を通り抜け、階段を上がっていく。
窓を開け放って、昼間に溜まった部屋の熱気を追い出す。
夕方の無風状態で、鬱陶しさが増す。
玄関の引き戸を開け閉めする音。
バス通りの方に歩いていく男の後姿をぼんやりと眺める。

上着を脱いで、ショッキングピンクの下着姿になると、浴室に下りていく。
「仕事、いいの?」
「あのひと、なかなか帰ってくれなくて」
たずねたことには答えずに、言い訳のような返事。
いい思いをしたのだろう。
布団を片付ける母の頬がまだ火照って桜色だ。
「シャワー、使うから」
母の返事を待たずに、浴室に入る。
蒸し暑い工場で一日過ごした汗を流す。
左の乳房に、さっき輪島修斗が強く噛んだときにできた青あざがある。
触ると痛む。
今夜、修斗は抱いてくれない。
組合の寄り合いがあるからだ。
脱衣場でからだを拭いている映美と入れ替わりに、志麻子が浴室に入る。
40近い母親のからだ。
男を引き寄せる匂いを全身から出している。
女ざかり。
さかりのついた女。
このひとの血をしっかり受け継いでいることを、映美は自覚している。
パジャマに着替えて、台所に行く。
夕食を食べ終えたところに、ワンピースを着ながら、志麻子が入ってくる。
化粧の匂い。
「今夜は、あのひと、迎えに来ないの?」
......いやな女!
「さっきは、ゴメン、気をつけるから」
「いいよ、なんとも思ってないから」
背中のファスナーを引き上げてやる。
「じゃあ、行ってくる」
「うん」

脱衣カゴに積み重なったものを洗濯機に入れる。
さっき脱いだパンティ、股の部分が黄色く汚れている。
映美のからだの奥に残っていた修斗の精液。
映美の分泌液と混じりあって、シミを作っている。
洗濯ネットに押し込む。
志麻子の下着と一緒に。
《生ハメ》そろそろやばいな。
ゴム、使ってもらわなくちゃ。

2階に上がると、月明かりで部屋の中が青白かった。
引き出しから、バイブレーターを取り出し、コンドームをかぶせると、
穴に挿しこんだ。
進む

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