「真夜中の図書室」作品

レッスン  第1回 (全3回)

沼 隆

第1章

麗奈は、フォアグラを添えたサラダ、《彼》はノルウェー産のスモークサーモンをオーダーした。
これから出かけるパーティでは、食事らしい食事は出ないので、軽く食べておこうというのである。
ワインを楽しむ集まりと聞かされている。
住宅街の中にある、小さなレストラン『カマルグ』。
シェフの桂木が妹の美由紀とやっている。
南フランスの料理を主体に出す。ブイヤベースが自慢だ。
5時では夕食には早すぎる。
客は、ほかにはいない。
少しだけおなかに入れておきたい、という《彼》の注文に、シェフが奨めた料理をオーダーしたのである。
かすかにクラシックのBGMが流れている。
上質の白ワインの栓が抜かれる。
麗奈は最初のグラスを空けたところでほんのり赤くなっている。
お酒は好きだが、強くない。
すぐに酔いがまわる。
きわどい服装をしているので、恥ずかしいのだが、酔いが、気分を落ち着かせる。
ドアを開けて二人を迎え入れるとき、美由紀は、「まあ、きれい!」といってくれたのだが、麗奈は、恥ずか
しかった。
淡い紫色で統一された服装なのだが、フレアのミニスカートは、少しかがんだだけでパンティが見えてしまう。
上半身には、蝉の羽のように薄い生地のキャミソールとペアのブラジャーを着けているだけなのだ。
乳房がはっきりと透けて見えるのである。
それに、うすい生地のブラジャーでは、乳房をしっかりと支える役目を果たしていない。
ふっくらとした乳房が、揺れるのである。
セクシーすぎる…

麗奈は、市内を見下ろす高台にあるイタリアンレストラン『ジャンノッティ』でウェイトレスをしている。
5年の経験をつんで、主任の地位にある。
仕事は充実しているが、オフも待ち遠しい。
《彼》と出会ったのは、そんなオフの日であった。
時々出かける書店の、美術書のコーナーであった。
大好きなフランス映画を見た後、ふと立ち寄ったのだ。
何気なく手にした本を眺めているとき、隣にいた男が声をかけてきた。
「フェルメールがお好きですか?」

男は、行きつけの小さな珈琲店に麗奈を誘った。
小ぢんまりとして落ち着いた雰囲気のカフェ『ドゥ・マゴ』。
不思議な表情をした、支那人を思わせるエキゾチックな人形が2体飾ってある。
パリのサンジェルマン・デプレ教会の向かいにあるカフェを模したのだという。
上等な器に上質のコーヒー。
高そうだ。
かすかに聞こえるBGMと、静かに語り合う客たち。
パイプをくゆらしている客もいる。
タバコとコーヒーの香りが交じり合って、心地よい。
常連だけが通う店であった。
男は、市内にある大学で、社会学を教えている、と自己紹介をした。
物静かな語り口に麗奈は魅せられた。
男は聞き上手で、くつろいだ麗奈は、いつの間にか自分のことを話していた。
仕事のこと、趣味のこと…
ふたりはすっかり打ち解けた。
その夜、麗奈は《彼》のマンションに泊まった。
リビングも寝室も掃除が行き届いていて、《彼》の几帳面さがわかった。
リビングで脱がされ、ベッドに運ばれて、からだの隅々にまで愛撫が施され、性器が十分に潤ったところで挿入
された。
華奢なからだのどこに秘められているのだろうと不思議なほど、《彼》は精力があって、麗奈の中に3度射精
した。
恥じらいから、麗奈のからだは、控えめに反応した。

4度目、繊細な指先が、麗奈の胸のふくらみを撫で、乳首を摘み、股の間の窪みをいじると、麗奈は何度も達
し、淫水を溢れさせた。
何度か達しているうちに、羞恥心を失い、麗奈は大きな喘ぎ声を上げて、絶頂を味わった。
初めての体験だった。
夜が白み始める頃、もう一度交わった。
大学に出かける《彼》の車で送ってもらい、麗奈はベッドに倒れこむと、出勤時刻まで、ぐっすり眠り込んだ。

週に一度、《彼》のマンションで性交した。
これまでに出会ったどの男よりも、タフで、そして、繊細だった。
夜遅く仕事が終わって訪ねると、それから明け方近くまで何度も交わった。
麗奈はセックスに没頭した。
仕事の疲れを癒してくれた。
二人の休みが重なると、麗奈は、午後を《彼》のベッドですごし、それから、今夜のように食事に出かけた。
一度、食事を作ってあげたいと思って、手作りの料理を持っていったことがある。
勤め先のメニューから、みようみまねで作った肉料理とパスタ。
《彼》は、不機嫌になった。少しも喜ばなかった。
麗奈は、《彼》の態度を訝り、悲しくなって、涙を浮かべた。
「私は、麗奈に、アマンでいてほしいんだ。世帯じみた女になってほしくないんだ」
「アマン…って?」
「…恋人、だ」
「セックス・フレンドってこと?」
《彼》は、困った顔をした。

午後、何度か交わった後、ベッドからでようとする麗奈に、夕食に出かけるから、これを着てくれ、と《彼》
が紙包みを差し出した。
開けると、黒いミニのワンピースが入っていた。ノースリーブの、背中が大胆に開いたセクシーなものであっ
た。
その下に、黒い小さな下着が…
「恥ずかしいよ…それに、似合うかなあ…」
「似合うさ…着てくれるね」
着るんだ! と強いるような響きだった。
ヘアが、やっと隠れるほどの、小さなビキニパンティ…
「ブラは?」
「いらない」
「え? でも…」
「そのワンピース、ブラを着けるわけに、いかないよ」
麗奈は、大きな乳房が揺れるのが気になった。
でも、こんなに背中があいていたら、普通のブラは着けられない…
《彼》の贈り物は、大胆で気恥ずかしいものであったが、似合っていると自分でも思った。
そのときから、外出する日には、《彼》が衣服を一そろい用意してあるのだった。
セクシーな、きわどいものが。

食事のとき、《彼》は翻訳中の小説の話をして聞かせるのだった。
仕事の傍ら、フランスの小説を翻訳している、ということだった。
フランス料理や中華料理を楽しみながら、聞かせてくれる物語は、きわどいものが多かった。
森の中の古い城館に閉じ込められて、城主の手で被虐に濡れる女に調教されていくシモーヌの物語。
パリの街角でかどわかされて、ホーチミンの町でベトナム人相手の売春婦をさせられるモニクの物語。
オアシスの隊商宿で、卑猥な喚声を上げて群がる男たちの前でセックスショーをやらされるセシルの物語。
パリの秘密倶楽部で、会員たちの目の前で、犬との性交を見せるクロエの物語。
手足を切り落とされて頭と胴体だけになったアガタが支那の娼館で男に奉仕する物語…
《彼》の抑制のきいた、しかしよく通る声で語られるエロチックな物語に、麗奈はうっとりとして耳を傾ける。
午後をベッドで過ごしたあとの下半身のけだるさが心地よかった。
食事が進むに連れて、ワインの酔いも進む。
麗奈は、からだの芯がうつうつとしてきて、性器がじっとりと濡れてくるのを感じるのだった。
食事が終わって立ち上がると、いすの布地に染みができていた。
食事の後、《彼》のマンションに戻って、再び裸になり、ベッドに横たわる。
さすがに満腹では、からだを重ねる気にはなれず、背後からだきしめた《彼》の指先が、麗奈のからだのふく
らみを這いまわり、窪みに沈み込む、いつ果てるとも知れに快楽のときをすごすのであった。

「愛しているよ…麗奈…」
行為のあいだ、《彼》は何度も麗奈にささやいた。
生理のとき、フェラチオで我慢してもらったことがあった。
それ以来、《彼》は麗奈の唇と舌を使った技巧を求めるようになった。
そそり立つペニスが、ぴくりぴくりと脈打つのを唇や舌で感じるのが、麗奈は好きだった。
一度、《彼》が口中に射精したことがあった。
飲み込むときに顔をしかめてしまう。
「まずい?」
「…」
「ふふふ…いやな味なんだね…顔に書いてあるよ…で、どんな味?」
「腐った…グレープフルーツ…」
《彼》は、愉快そうに笑い、2度と口の中には出さないよ、と言った。

《彼》の部屋で食事をしたことはない。
性交の合間に、酒を楽しんだ。
シャンペンや、ワインのグラスを、《彼》は自分で片付けた。
朝食を彼の部屋で取ることもなかった。
《彼》の部屋に、麗奈専用のものがおいてあるのだが、それは、ピンク色の歯ブラシだけである。
麗奈は、ここでは、《彼》のアマンなのである。
もっと会いたい、と伝えると、《彼》は、そっけなく無理だ、とこたえた。
ほかに女がいるのだろうか、と疑ってもみたが、《彼》の部屋のどこにも、その形跡はない。
《彼》が愛しているのは、あたしだけ…麗奈は確信した。
書斎の作り付けの本棚にはおびただしい書物があった。
長いすがおいてあって、疲れたときに、仮眠するんだ、と説明を受けながら、その上で交わった。
シャワーを浴びながら交わった。
おしっこをしている麗奈に、フェラチオを求めてペニスが突き出された。麗奈は音を立ててすわぶった。
《彼》のマンションにいるあいだ、麗奈はずっと裸ですごした。《彼》も…

「コーヒー、さしあげましょうか?」
美由紀が声をかける。
「いや、そろそろ出かけないと」
それから、美由紀にタクシーの手配を頼んだ。
パーティは、ホテル・プエルト・アスールのコテージで開かれる。
10名ほどの気心が知れたものの集まりだ、と聞かされていた。
市外の海岸沿いに立つ瀟洒なホテルまで、30分ほどの道のりだろう。
地中海風のオレンジ色の瓦が葺いてある、白い漆喰壁の建物である。
一度泊まってみたいと思ったコテージだ。
麗奈の心は、弾んでいる。

運転手は、バックミラー越しにちらちらと麗奈を見た。
キャミソールの下に透けて見える乳房が気になる様子であった。
《彼》は、麗奈を抱き寄せた。
唇を重ねる。
キャミソールの上から、乳房を包み込むようにしてもむ。
ふっくらと盛り上がった麗奈の乳房は、《彼》の手に収まりきれない。
麗奈は、《彼》の大胆な行為に、運転手の目が気になり、恥ずかしくなったが、唇をふさがれ、抗うことがで
きない。
上体を抱き寄せられ、《彼》の膝の上に寝かされる。
《彼》の手がスカートの中に伸びる。
「だめよ…」
麗奈は小声で訴える。
《彼》は、無視して、指をパンティ越しに淫裂に這わせる。
くちゅ
キャミソールとそろいの、蝉の羽のように薄いパンティ…
クロッチがないので、性器がはっきり透けて見える猥褻なパンティ…
《彼》の指は、スカートを捲り上げ、下腹部を剥き出しにしてしまう。
「あ…いやぁ…だめぇ…やめてぇ…」
運転手に聞こえないように、小声で言う。
パンティが膝までおろされ、《彼》の指が、淫裂に滑り込む。
《彼》の左手は、麗奈の乳房を愛撫し、右手はクリトリスを擦りあげる。
「ん…ん…んっ…」
運転手に聞かれまいとするほど官能が高まり、あえぎ声を抑えようとすればするほど、《彼》の指がクリトリ
スから快感を引き出して、とうとう麗奈のくちから「ああ…!」という喘ぎ声が上がる。
《彼》は、麗奈がイク姿を見てはいなかった。
ぼんやりと夕暮れの景色を眺めている様子だった。
「いじわる…」
麗奈はつぶやく。
空は茜色に染まっている。
湾の反対側に伸びている岬の向こうに太陽が沈もうとしていた。
海は葡萄酒の色…
車は、国道からそれて、湾の東側、外海に向かって細く突き出している岬をホテルに向かってスピードを上げ
た。
対向車が姿を消して、ホテルまでは、もうすぐだ。
《彼》の指が、ビラビラとした肉襞でできた入り口から麗奈の内部に侵入する。
狭い通路で、2本の指を開いてVの字を作る。
「ああ…」
《彼》は、乳首をつまむ指先に力を入れた。
性器と乳首と2箇所に強い刺激を受けて、麗奈は快感のあまり、腰を小刻みに震わせていた。
ホテルの入り口にあるゲートをくぐったとき、《彼》は、麗奈のからだから指を抜き、身づくろいをさせた。
バックミラーの中に、好奇心を剥き出しにした運転手の目があった。


第2章

「おう、いらしゃい!」
幹事役の近澤医師に迎えられて、コテージに足を踏み入れる。
「こちらが、麗奈さんね…お噂は、かねがね…」
「かわいいひとだ…」
「麗奈さん、大歓迎よ。今夜は、うんと楽しんでね」
定刻に8名がそろった。
「江頭さんは、欠席だ」
「ああ、ニュースで見たよ。何でも、弟さんが酷い亡くなり方をされたそうだね」
今朝発見された、レストラン支配人とその愛人の凄惨な殺人事件に、みな大して関心を示さなかった。
4組のカップルは、自己紹介をし、麗奈に歓迎の挨拶を送った。
ブティックを経営する鳥越は夫婦で参加していた。
美容室を経営する高宮は、10代にも見える若い娘を連れていて、カノジョだ、といった。
彩、と名乗った。
近澤は、大学病院の勤務医で、麗奈よりも少し年上の「恋人」美佳をつれていた。
「今夜は、どんなゲームなの、幹事さん」
「ソムリエの北川君に用意してもらったワインの銘柄を当てるんです」
「わあ、面白そうね」
「ううん…参ったなあ…オレ、そういうの、苦手だからなあ」
「高宮さんは、たくさん召し上がるけど、アルコールなら何でもいいって方ですからね」
鳥越の妻の妙子が冷やかすと、笑い声が上がった。
「罰ゲームは、この封筒に入っています」
「うふふ・・そちらも、楽しみね」
「麗奈さん、初めてだから…皆さん、どうします?」
「そうだよね…でも、せっかくこうして皆さん集まったんだし…」
《彼》が、麗奈をじっと見つめる。
「麗奈さん、私たちのルールなんだけど…」
妙子が説明をしてくれた。
勝負をするのは男たちで、負けた場合には、連れの女性が代わって罰ゲームをする、というのだった。
「男性たちは、みんな真剣勝負をすることになるのよ」
「おもしろいでしょ?」
「麗奈さん、楽しもお!」
「は、はい…」
女性たちに促されて、麗奈は同意してしまった。
これからどんなことが行われるのか、麗奈だけが知らない。

「なあんだ、全員はずれちゃったよ」
「カヴェルネ・ソーヴィニヨン、っていうのは、わかったけどね…」
「あはは…それは、全員、正解しました」
開けたボトルから全員にワインが注がれる。
同じ銘柄のボトルが開けられて、みんなに十分行き渡る。
お代わりをするものもいる。
「幹事さん、罰ゲーム、何なの?」
近澤が封筒をひとつ開く。
「着ているものを一枚脱ぐ…です」
「ええっ! いきなりぃ…?」
彩が、嬌声を上げたが、うれしそうな様子が見え見えだった。
(彩さん、脱ぎたがってる…)
麗奈は、《彼》を見た。
かすかに笑みを浮かべて、麗奈が決断するのを待っている。
彩がスカートを脱ぎ、妙子がワンピースを脱いで、下着姿になった。
麗奈も、恥ずかしさに赤くなりながら、スカートを脱いだ。
「きれいね…あなたが選んだんでしょ?」
妙子に問われて、《彼》がうなずく。
「下着フェチだものね…あなたって…」
《彼》がかすかに苦笑する。
美佳も下着姿になった。
真紅の下着を身に着けていた。
美佳は、顔つきもそうだが、下着にも大胆で積極的な性格が現れている。
「みなさん、お綺麗ですね」
「久しぶりのパーティだもん…勝負下着、着てきちゃった…」
「彩ちゃんのピンクのビキニ、かわいらしいよ」
「うんうん、かわいい」
「妙子さんの黒い下着、セクシーだな…色気がむんむんしてるよ」
「中年のお色気っていいたいんでしょ!」
「まさか…」
「でも、今夜の4人の中では、あたしが最年長…」
「おいくつでしたっけ…?」
「いやあねえ…・32ですぅ」

「また、全員間違えたよ…難しいなあ」
2本目が空けられる。少し酔いが回り始める。
「今度は…パンティ以外は脱ぎなさい」
「ええっ! ひどおい! 私たちだけ、裸になるのお?」
「そうだよ、不公平だよ」
「ねっ、麗奈さん! あなたも、そう思うよね!」
「じゃ、おれたちも脱ぎますか…」
「女性陣を怒らせたら、怖いですからね…」
「ふふふ…」
「こうしましょ…男性も、パンツだけになる…ね?」
こうして、8人全員が、性器を隠す下着だけの姿になった。

3度目の銘柄あてにも全員がはずれ、結局、8人の男女は、全裸になったのである。
《彼》に手を取られて、麗奈は、ジャグジーに入った。
「おれたちも入れてくれよ」
近澤が美香と一緒に浴槽に入る。
「ワインを当てるのって、なかなか難しいな」
《彼》が、そうだというようにうなずいて、近澤に同意する。
「酔っ払ってお風呂に入るのって、最高よね…」
美佳が、目に妖しい光をたたえながら言う。それから近澤の唇を吸った。
「うふっ…」
勢いよく噴出す気泡の下で、美佳の指先が近澤の肉棒をしごいている。
「ううっ…」
近澤がうめく。
「きもち、いい…?」
「あ、ああ…いい…」
美佳の問いかけに、近澤はかすかに上半身をのけぞらせながら答えた。
《彼》の顔が麗奈に覆い被さる。
最初は、優しく、それから濃密に唇が重ねられ、舌が進入してきて、麗奈の口を充たす。
すぐそばで、絡まりあう近澤と美佳の痴態に恥ずかしさを覚えながら、麗奈も《彼》の舌を吸っていた。
《彼》の手が、麗奈の指を屹立した勃起に導いた。
湯の中でそれは猛々しくそそり立って、麗奈の愛撫を待ち受けていた。
(美香さんたちのいるところで…恥ずかしいよ…)
「ああん…いやあっ…」
美佳が、甘えた声を出す。
視界の隅で、近澤に抱かれて上半身を水面から出した美佳がのけぞる。
小ぶりだけど、形のいい乳房…
近澤の指が、美佳の性器をいじっているのだろうか…
「ん…んっ…ああ…」
美佳が喘ぎ声をあげてからだを弓なりにそらせたとき、伸びてきた脚が、麗奈の足をけった。
それは、ヒクヒクと震えている。
恥ずかしくて、正視できない美佳と近澤の行為が、麗奈を刺激し、興奮させていた。
《彼》の指先が麗奈の肉襞に進入し、クリトリスを探り当て、爪弾いた。
羞恥心からこらえようとしたにもかかわらず、麗奈の喉からは、クッ、という嗚咽がもれる。
麗奈の上半身は《彼》に抱きかかえられるようにして浴槽のふちに抱えあげられた。
《彼》は湯に浸っている麗奈の性器をいじりながら、乳房を音を立てて吸った。
ちゅぱっ…
湯で湿った乳房はことさら大きな音を立てた。
「ああ…いい…」
麗奈は、《彼》の耳元でささやく。
気持ちがいいことを、《彼》に伝えたいと思った。
麗奈の心の奥底には、美佳と近澤にも聞かせたい、という気持ちがあったのだが、気づいていない。
2本の指が、肉の壺に挿し込まれ、ゆっくりと引き出される。
《彼》の指の関節が、コリコリと壺の入り口のあたりを刺激して、麗奈のからだがのけぞる。
ジュブジュブと音を立てて噴出すジャグジーの気泡が腰のあたりで沸き立つ。
その音も、麗奈には官能的に聞こえた。
まるで、麗奈の肉の内側をかき回されて奏でられる音のように響いた。
《彼》の指がゆっくりと出て行った。
麗奈の肉壷は、引きとめようとするかのように、《彼》の指にまとわりつき、締め付けた。
そのことが、麗奈の肉に快感を与える。
(ほしい…)
口に出して言えなかった。
しかし、麗奈が言えないことを、からだが言ってくれていた。
乳首が飛び出し、クリトリスが膨れ上がっている。
目はうつろになり、鼻腔が膨らんでいる。
わずかに開いた唇は、はぁ、はぁ…と、甘い吐息を漏らしている。
溢れ出した淫水は、すぐに湯に解けてしまうのだが、《彼》の指先にはぬめりとして感じられていた。
麗奈は、情欲に駆られていた。
浴槽のふちに腰をおろした《彼》に背後から抱きかかえられるようにして、麗奈は挿入される。
座った姿勢で、ふたりはつながる。
美佳と目が合った。
近澤に組み敷かれるようにして結合し、腰を激しく使っている。
美佳の目は淫蕩に輝いている。
麗奈は、全身を美香の目にさらしていることに一瞬恥ずかしくなり、体に力が入って、《彼》のペニスを締め
付けた。
それは同時に、麗奈の全身に快感が走ることになるのであった。
ペニスを締め付けた膣口から流れ出た官能のシグナルが、子宮を駆け抜け、下腹部から乳房に、そして脳髄へ
と伝わって、麗奈を痙攣させた。
美佳の視線を、《彼》との結合部に感じる。
《彼》の指が、背後から乳房をつかみ、キュッ、キュッ、とリズミカルに揉むと、今度はそこから結合部に喜
悦の嵐が駆け抜けるのである。
目と鼻の先で、美佳が近澤と交接している。
互いに、互いの行為を見ながら性交することがもたらす興奮が、麗奈を未知の愉悦に導いた。
(見て…美佳さん…見てっ…)
「うぐぐっ…」
近澤はうめくと一瞬激しく腰を痙攣させ、美佳の体内に射精した。
こちらは、始まったばかりだ。
近澤は、ハア、ハア、と荒い意気をしながら、美佳から離れた。
陰茎が、大きさをまだ残したまま、だらりと垂れ下がっている。

美佳の性器から、白濁した塊が流れ出してきて、ジャグジーの泡でかき消されていく。
麗奈は、うつろなまなざしでその様子を見ている。
《彼》が、下から激しく突き上げてくるのにあわせるように、腰を沈め、膣をペニスに擦りつける。
麗奈の肉壷は、《彼》の肉棒を味わい尽くすかのように根元から先端へ、先端から根元へと、往復を繰り返す。
ちゅぷちゅぷという肉と肉の擦れる音が、気泡の噴射音に混じって聞こえる。
その場所に、美佳の手が伸びてきて、《彼》の袋をそっと撫でた。
(あ、いやっ…美佳さん…やめてっ…)
「すごいっ…」
近澤が美佳の背後に回り、抱きしめる。
「ああん…ねっ…すごい…すごいよっ…」
「ああ、ふたりとも、気持ちよさそうだ」
「こんな、近くで見るの…・はじめて…」
「ああ、おれもだよ」
「ああん…すごいっ…すごいよっ…」
美佳の指先は、触れているのかいないのか、微妙な感触で、《彼》の袋を摩りつづけている。
手のひらでそっと包むようにして握ったとき、《彼》の全身がぴくりとした。
「気持ち、いいんだ…」
「ああ、そうみたいだね…」
「麗奈さん、おつゆがどんどん出てくる…ほら」
「ほんとだ…ぶちゅぶちゅいってるよ」
(ああ…いやあ…・言わないで…)
《彼》の肉棒は、麗奈の体内から溢れ出す淫水でぐっしょりと濡れて、てらてらと光っている。
美佳は中腰になると、麗奈の乳首を吸い始めた。
「ああ…いやあ…美佳さん…いやあっ…」
美佳は、麗奈の声に耳を貸そうともしないで、乳首を吸いつづけた。
麗奈のからだは言葉とは裏腹に美佳の刺激を悦んでいる。
「ねえ、浩介、麗奈さんのおっぱい、吸ってあげて…」
「ああ…」
「いや…いやあ…」
美佳の背後から、麗奈と《彼》をはさんで反対側に回った近澤も、麗奈の乳房を吸い始める。
「ああ…おいしい…」
美佳が絶妙な力加減で麗奈の乳首をかんだ。
麗奈の口から、ああ…とも、うう…とも、聞こえる喜悦のうめき声がもれる。
近澤の指が、美佳の股間にもぐりこみ、淫裂を撫でまわす。
麗奈の乳首を噛む美佳の口から、くくぅという、鳩の鳴き声に似た音が漏れる。
「あ…すごい…」
「おう、これは…」
ベッドルームで行為を終えた高宮と彩が、ジャグジーに入ってくる。
「美佳さん、代わって…」
美佳は、近澤の指によって、麗奈にかまっていられないところまできていた。
うつろなまなざしで彩にうなずき、場所を譲り、自分は、近澤に裸体を摺り寄せていった。

彩は巧みな舌使いで、麗奈の乳首をいっそう膨らませた。
「ああ…彩さん…やめて…」
「ふふ…麗奈さん、イキそう…」
「ああ…いやあ…いやあ…」
麗奈の乳首を攻めつづける彩の性器を、高宮は背後からいじっている。
「俺も、また、彩がほしくなったよ…・」
「うふふ…もっと、いじって…」
「ああ、もっと、もっと、きもちよくしてあげるよ…」
「麗奈さん、イキそう…ほら…」
「んっ…んっ…んっ…」
麗奈は上体を激しくゆすりながら、のぼりつめるところだった。
彩は、麗奈の両方の乳首をぎゅっ、とつまんだ。
麗奈の全身に快感の波が押し寄せた。
「ああ…いい…いいっ…」
そのとき、《彼》は、麗奈の中に精液を放った。

《彼》の胸に抱かれている。
《彼》の鼓動が聞こえる。
規則的に脈打つ音を聞きながら、麗奈も熱い血潮が次第に落ち着いてくるのを感じている。
悦楽の余韻が次第に退いていく。
目の前で、2組の男女が交わっていた。
思いがけない性の狂宴に巻き込まれたことに、麗奈は気づく。
破廉恥な行為をしてしまった恥ずかしさと、《彼》のたくらみに対する怒りが込み上げてきて、引きとめよう
とする《彼》の腕を振り切って、麗奈はコテージに駆け込んだ。

都心に向かうタクシーが、脇道から国道に入った。
麗奈は、涙が溢れつづける。
前方を走る車のテールライトと、反対車線を走る車のヘッドライトの光が、潤んで光の輪に見える。
猥褻な衣服を身にまとって泣きそぼつ娘に、運転手は好奇心をあらわにした卑猥な視線を何度もよこす。
麗奈は、いつもの気丈さを取り戻すことができないまま、顔をくしゃくしゃにして泣き続けた。
「高速、使いますか?」
「…あんたの好きにしてっ!」
「けっ! そんな言い方、ないじゃないの…お客さん」
進む

戻る