「真夜中の図書室」作品

淫獣の森  第2回(完結)

第5章

朝のミーティングが始まる。
江頭支配人がサマーキャンペーンの企画を発表した。
社員たちから募集したプランの中から、最優秀のものを採用することになっていた。
エミは、おととい、支配人室で江頭に犯された不快な記憶がよみがえってきた。
だが、自分たちのグループの提案が採用されると確信していた。
自信があった。
毎日、昼の休憩時間や、就業後の時間まで使って、綾香やゆきたちと知恵を絞って作った企画だった。
「この夏は、たえこのチームのプランを採用する。内容は・・・」
エミは、耳を疑った。
たえこのチームのプラン・・・
続いて、江頭が、たえこの企画の内容を説明した。
「やられたね・・・」
綾香が、悔しそうにささやく。
それは、去年、エミのチームが提案して採用されたもの、そのままであった。
何一つ手を加えていないものが、たえこのプランとして提案され、採用されていた。
エミは、たえこのあつかましさ、江頭の恥知らずな決定に怒りが込み上げ、足が震えた。
たえこが冷ややかな笑みを浮かべていた。
江頭が、エミから視線をそらせた。
「支配人、たえこのプランって、去年エミが・・・」
「口出しするな、綾香! 今年の企画は、これだ。ことし、たえこが提案したものだ。ぐちゃぐちゃ言うんじゃ
ない!」
江頭は顔面を紅潮させて、おどすように大声で叫んだ。
「去年、このプランで成功した。それをたえこが今年提案したんだ。エミたちのプランは、全然別のものだ。文
句があるか!」
「綾香、もういいよ」
「だって、エミ・・・」
「いいんだよ、綾香・・・ありがと」

「ゆきちゃん、出勤してません。欠勤届けも無いんです」
「ふうん・・・きのう、何かあった?」
「いえ、べつに・・・閉店したあと、支配人が飲みに誘ってましたけど・・・」
「そう・・・ありがと」

仕事が終わると、エミは、ゆきのマンションに立ち寄った。
ドアが開くと、エミの胸にゆきが泣き崩れた。
大粒の涙をこぼしながら、激しく嗚咽した。
エミは、訝りながら、隣近所の人目を引かないうちに扉を閉めた。
ゆきは、上がり口に立ったまま、エミに抱かれて、泣きじゃくる。
エミは、ひとまず落ち着かせようと、ゆきをしっかり抱きしめた。
ゆきの涙が、ブラウスを通して染みてきて、エミの素肌に伝わった。
泣きじゃくるゆきが次第に落ち着いて、それまで隠すようにしていた顔をエミに見せた。
「・・・」
エミは、言葉が出なかった。
ゆきの顔面に大きな青あざができていた。
どうしたんだろう・・・なにがあったんだろう・・・
わっ、と泣き出すゆきを、エミはしっかりと抱きしめる。
ベッドに並んで腰をおろしたエミに、ゆきは重い口を開いた。
ゆきは、ゆうべ、この部屋で、江頭と、料理長の郷田に犯されたのだった。

仕事が退けた後、帰りしなに、いっぱいやりに行こうと、江頭が声をかけた。
郷田がそばに立っていた。
「支配人、おれもお供したいなあ」
「ああ、いいよ。たえこも誘ってるから、4人で行こう」
ゆきは、支配人の誘いを断りきれなかった。
たえこも一緒だ、と聞いて、安心もした。
すすめられるままに、飲みなれない酒を飲んだ。
たいした量でもないのに、ゆきは酔いが回った。
「ゆき、おまえ、エミと親しくしてるけどなあ、たえこの下についたほうがいいと思うよ」
ゆきは、江頭が飲みに誘ったわけが、ぼんやりとわかってきた。
「エミ、なまいきなんだよな」
「支配人、たえこさんが、お気に入りだしな・・・」
料理長の郷田が、けけけ、とわらいながら、媚びるような視線を江頭に向けた。
「今度の、サマーキャンペーン、たえこの案でいくからな・・・前回成功してるから、オーナーも安心するだろう
し・・・」
江頭は、たえこを見ながらつけたした。
「そうなったら、たえこ、おまえ主任に抜擢してやるよ」
「あんた、口が軽いんだから・・・」
たえこが、そういいながら、うれしそうに、にんまり笑った。
「あの、私たちの・・・エミさんの案じゃないんですか・・・?」
「だめだ! あんな冒険ができるか! ・・・ゆき、明日おれが発表するまで、誰にも言うんじゃないぞ・・・わか
ったな」
「ねえ、ゆき、あたしのチームに入んなさいよ。エミのことは、あたしがかたをつけてやるからさ」
ゆきは、いやな気分がした。
「いやです!」
「けっ! はっきり言うじゃねえか・・・ま、いい。好きにしろ!」
「バカね、あんた」

「おれたちが送るから」
「じゃあ、お願いします・・・そろそろ帰らないと、うちのだんな、うるさくて・・・」
「ああ、いいよ。まかしといてくれ・・・」
ゆきは、両脇を江頭と郷田に支えられて、自分のマンションに帰った。

「ゆきちゃん、着替えさせてあげるよ」
「へへ、そうだね、支配人・・・お手伝いしますよ」
(・・・あ・・・だめぇ・・・やめてぇ・・・)
意識がぼんやりしているせいで、ゆきは声が出なかった。
身をよじってふたりの手かな逃れようとして、大して動くこともできない。
「ふふ・・・かわいい子だろ・・・え? 料理長・・・」
抵抗しようにもからだが思うように動かない。
ブラウスが脱がされ、スカートが引きおろされて、ゆきは下着姿にされている。
「へへ・・・いいからだしてますね・・・へへ・・・」
「ああ・・・やめてぇ・・・」
「ああ、待ってな・・・じき、気持ちよくしてやるからな・・・」
「え・・・! 支配人・・・あんた・・」
「いやなら、見てるんだな」
「・・・」
江頭は、ブラジャーを剥ぎ取ると、ゆきの乳房を音を立てて吸い始めた。
郷田は、ごくりと生唾を飲む。
「ん・・・いやぁ・・・いやぁ・・・」
郷田が、パンティに手をかけるのを、江頭は止める。
「おい、そこは、おれが先だ・・・おまえがおっぱいもんでやれ」
「あ・・・すみません・・・」
江頭は、手早くパンティを剥ぎ取り、ゆきの股間に顔をうずめた。
ぴちゃぴちゃと音を立てて、淫裂を舐め始める。
その様子を恨めしそうに眺めながら、郷田はごくりと生唾を飲み込んだ。
「あとで、交代してやる」
「へ、へい・・・」
郷田は、ゆきの乳房を揉みつづけた。
陰茎が、鎌首をもたげていた。
江頭が立ち上がって、着ているものを脱ぎ捨て、全裸になった。
肉棒が、天井をつく勢いでいきり立っている。
ゆきの目に見せつけるようにしごいてみせた。
「す、すげえや・・・」
「ふふん・・・おまえも脱げや」
郷田は、慌てて立ち上がると、着ているものをかなぐり捨てて、裸になった。
郷田の陰茎も、もう待ちきれないという様子で、猛々しく突き出している。
「ゆき、いい思いをさせてやるからな・・・」
「ヒヒ、ヒヒヒ・・・」
緩慢な動作で起き上がろうとするゆきをベッドに押し倒す。
江頭は、ゆきの両足を大きく開くと淫裂にあてがった肉棒をぶっすり突き刺した。
「ああっ・・・! いやぁっ・・・!」
ゆきは、酔いのせいで、夢うつつの状態であった。
朦朧とした意識の隅で、自分がふたりの男に犯される、ということが、現実の出来事ではないように思われてい
た。
からだも、意識も、まるで自分のものではないような気がしていた。
やめて、やめて、と何度も口にしていたが、助けを求めて大きな声を出す力は無かった。
江頭の肉棒がズブズブと入ってきたときも、たいした抵抗もできなかったのである。
「おれ、ちんぽ、しゃぶらせて、いいですか・・・?」
「ああ、すきにしろ」
江頭は、腰を動かしながら、郷田にこたえた。
江頭の動きに合わせて揺れているゆきの口元に陰茎を持っていく。
「おい、舐めろ!」
ゆきは、次第に醒めてくる意識の中で、目の前に突き出された汚らしい陰茎から顔をそむけた。
「この、あまァ!」
郷田は、怒りの形相で、ゆきの顔面を殴打した。
ゆきは、激痛にぎゃっという悲鳴をあげる。
「ばか、よせ!」
「くっ・・・す、すいません・・・」
「泣き顔見たくねえからな・・・」
江頭は、ゆきを四つんばいにさせると、背後から挿入した。
ベッドに座り込んだ郷田は、ゆきの口に陰茎を押し込んだ。
郷田は、ゆきの頭をしっかり抱え込むようにして陰茎をしゃぶらせ、江頭は、背後から抱きかかえるようにして
乳房をもてあそびながら、肉棒を激しく抽送した。

「シャワー使わせてもらうよ」
射精した江頭は、からだを洗いにバスルームへ行く。
郷田は、江頭が残したものをティッシュで拭うと、陰茎をゆきに挿入した。


第6章

ゆきの話が終わった。
エミが江頭に犯されたのもほんの数日前のできごとだ。
ひどいやつ・・・
けだもの・・・
江頭の尻馬に乗るようにしてゆきを犯した郷田。
エミは、江頭と郷田に対する怒りにはらわたが煮え繰り返る思いをしていた。
痛がるエミに、江頭は、処女ではあるまいし・・・と侮蔑の言葉を浴びせた。
吐き捨てるように言った、「おまえ、感度、悪いんだな」、という言葉が、蘇る。
女を辱めることに喜びを覚える男・・・
目の前にいるゆきの顔面の大きな青あざが、怒りをさらに強めた。
エミは、しゃくりあげるゆきを抱きしめた。
ゆきの涙が、エミの衣服に染みて、肌まで伝わる。
ゆきを癒してあげたい、と思った。
心とからだについた傷は簡単には癒えないだろうが、痛みを分かち合えるかもしれない・・・
背中をそっと撫でているうちに、エミは自分のからだが火照ってくるのに気がついた。
それは、不思議な感覚だった。
今まで、一度も体験したことがない、からだの芯から湧き出してくる、熱い感覚・・・
寄り添ってくるゆきに、口づけをした。
ゆき、あたしは、あなたの味方・・・
目を閉じたまま、ゆきは口づけを返してきた。
エミがゆきに覆い被さるようにして、ベッドに横たわる。
エミは、ゆきのあざのある頬をそっと撫でる。
いたわるように、指先で、そっと、心をこめて・・・
《彼》が、森の中で、傷ついたエミにしてくれたように・・・
ゆきは、気持ちよさそうにじっと目を閉じて、エミに身を任せている。
ゆきの顔に、安堵の色が広がって、いつものあどけない表情がもどってくる。
ゆきは、エミに抱かれるて、恐怖心が薄れていった。
エミが舌をさしいれてきたとき、自分の舌を絡ませていた。
安らぎが、ゆきの全身に広がる。
自分から、エミの唇を求め、エミの唾液を吸った。
ふたりの心とからだに、甘美な喜びが溢れる。
とろけてしまいそうな口づけを交わしながら、互いの衣服を剥ぎ取っていった。
ブラジャーを脱がせると、乳房にも、あざがあった。
江頭か郷田が、それともふたりがやったのか、柔らかな乳房を力いっぱいつかんだ痕に違いなかった。
若さではちきれそうな乳房が、男たちの手で痛ましく傷つけられていた。
ふたりのけだものに対する怒りが、エミに蘇る。
エミは、乳房についた暴行の痕を、そっと撫でて、それから口づけをした。
手で包み込むようにして、乳房を撫でると、ゆきは、気持ちよさそうに、クッ、と甘い吐息を漏らした。
エミは、《彼》が自分を癒してくれたように、ゆきを癒してあげよう、と思った。
ゆっくりと、時間をかけて、乳房を撫でた。
ゆきが求めてくる口づけにこたえながら・・・
エミは、自分の手のぬくもりが、ゆきに伝わって、それがゆきの傷を治していく気がした。
はじめ、手を触れたときには、痛みが走るような反応を見せたゆきが、いかにも気持ちよさそうに横たわって、
エミのするに任せているのである。
乳首が隆起してきた。
ゆきが、感じているしるしであった。
エミは、乳首を吸った。
「んっ・・・」
ゆきのからだが、ぴくりとする。
乳首をつまみ、指の間で転がす。
「ああ・・・」
エミは、ゆきの乳房の青あざが、薄くなっているような気がした。
まさか・・・
頬のあざが薄くなっていることに気がついて、エミは、ゆきを癒すことができると確信した。
自分を慕っているゆきの傷を癒したいという気持ちが沸いてきて、エミの愛撫は、さらに心のこもったものに
なった。
「ここ、痛くない?」
エミが頬に触れると、ゆきはそうだというように、こくりとうなずいた。
「ここも・・?」
「うん・・・気持ち、いい・・・」
エミの唇が、胸から腹へ、そして・・・淫裂に下がっていった。
ゆきは、恥ずかしがりながらも、股を開いて見せた。
男たちが乱暴にあつかった痕跡があった。
エミは、ゆきの股間に顔をうずめると、ゆっくりと舐め始めた。
肉襞から、やがて舌は分け入って、男たちが進入した場所へ進んだ。
「ああんっ・・・」
ゆきが、腰をよじる。
蜜が溢れてきて、エミの口を濡らす。
粘膜についた細かな傷が癒えていく。
エミは、人差し指と中指をそろえると、蜜壺の中に挿し込んだ。
そして、粘膜の壁を、そっといたわるようにさする。
「あああっ・・・」
ゆきは、エミの指に性器を擦りつけるようにして腰を上下させた。
溢れ出した蜜が、エミの手のひらをぐっしょり濡らす。
肉襞がいきもののようにうごめいて、エミの指を締め付ける。
「ん・・・んっ・・・エミさんっ・・・」
ゆきは、上体を起こすとエミに抱きついてきて、エミの唇を吸った。
それから、エミの乳房にむしゃぶりつくと、音を立てて吸い始めた。
「ああっ・・・ゆきちゃん・・・」
エミの全身に快感が走る。

ゆきは、ぐっすりと眠っている。
どうやら少し眠ったようだ。
エミが目を覚ますと、気配でゆきも目がさめる。
「何時?」
「3時よ」
「うふ・・・気持ちよくて、眠っちゃった・・・」
「あたし、帰るよ」
「だめ、泊まっていって・・・」
「あした、仕事があるもん」
「ここから、いっしょに出社すればいいよ」
「着替えしたいし・・・」
「うん・・・じゃあ、朝早くでたら?」
「うん・・・」
「ねえ、そうして・・・」
「わかったよ・・・」
「うれしい・・・」
ゆきは、エミを潤んだ目で見つめながら、唇を重ねてきた。
「エミさん、ありがとう・・・私、がんばれる・・・」
「うん」
ゆきは、からだを摺り寄せてきた。
ふたりの乳房が押し合い擦れあって熱い血が流れる。
ふたりが眠りについたのは、夜が白み始めたころである。


第7章

「なにすんのっ! やめてよっ!」
店の中にエミの声が響いた。
恥ずかしい気持ちがしたが、怒りを抑えることができなかった。
江頭支配人がすれ違いざま、エミの乳房を鷲づかみにしたのである。
痛みが走ったが、何よりも江頭の恥知らずな振る舞いに、エミは心底憤っていた。
怒りのあまり、頬が紅潮していた。
ちっ、と舌打ちをして、江頭はエミをにらみつけた。
店の中が静まり返っているのに気がついて、江頭はそそくさと支配人室に消える。
「だいじょうぶ?」
「うん、ありがと、綾香」
エミの声は、屈辱に、震えていた。
午後の遅い時間帯だけに、客席に人影は少なかった。
しかし、数少ない客の中に、エミは《彼》を見つけていた。
エミをじっと見つめている。
静かなまなざしで。
一部始終を見られて、自分のせいでもないのに、恥ずかしくなった。

翌朝、支配人が定刻に出勤してこないのをいぶかしく思った副支配人の室井が江頭のマンションを訪れ、不審
に思って預かっている合鍵で中に入った。
リビングに人影は無かったが、ゆうべ脱ぎ捨てたと思われる衣服が、ソファに投げ出してあった。
女物の衣服も散らばっていて、室井は、またか、という気持ちで苦笑した。
経営者の一族から選ばれて支配人をやっている江頭に、多少のわがままは許されていた。
江頭の女癖の悪さは、迷惑なことではあったが、後始末をしてやることで、経営者一族に認められるという思惑
もあった。
室井は、忠実に江頭に従ってきた。
寝室に入って、室井は絶句し、それから激しく嘔吐した。トイレに駆け込み、胃の中のものをすべて吐き出して
も、まだ吐き気がおさまらなかった。
ベッドの上に、頭部があるので、かろうじて江頭だとわかる肉の塊が、血まみれになって横たわっていた。
ベッドの向こう側には、目を大きく見開き、口に何か肉の塊のようなものをくわえて、たえこがへたり込んでい
た。
たえこは、喉を詰まらせて窒息死していた。口の中の肉は、江頭の陰茎であることが、鑑識の調べで判明した。
それは、江頭のからだから引きちぎられていた。
刃物で切り取ったものではなさそうだった。
獣、かなり大きな獣が食いちぎったもののようだ、という鑑識結果が出た。
それが、たえこの口に押し込まれていたのである。

「ああん・・・いいよお・・・いいっ・・・ん・・・んっ・・・」
たえこは、江頭の腕の中で、悶え、喘ぎ声を上げていた。
たえこの股間に開いた唇が、いやらしくうごめきながら、しっかりとくわえこんだ江頭の肉棒を、すわぶってい
た。
江頭の肉棒の根元から先端までを味わい尽くすかのように、腰を動かしている。
額にうっすらと汗を滲ませながら、はあ、はあ、と息を弾ませて、江頭はたえこの子宮を突きまくる。
「ああ・・・いいよぉ・・・いいよぉ・・・」
レスリングで鍛えぬいた筋肉質の腰が、今でも鍛錬を怠らない男の筋肉が、淫乱な女の腰の上でぷりぷりと踊
っている。
「ああん・・・ついて・・・もっと、ついてぇ・・・」
マンションの狭い寝室に、たえこの嬌声が響く。
ふたりの性器の擦れる音が、ブチュブチュと卑猥な音を立てる。
「いい・・・いいっ! おく・・・おくっ!」
「こうかっ!」
「あああ・・・あああああああっ!」
たえこは、腰を激しく突き出しながら達し、江頭も、たえこの中に射精した。

トイレで始末をして戻ってきたたえこを、江頭は抱きしめた。
「よかったか?」
「ふふ・・・わかってるくせに・・・」
「言えよ」
「言わせたい?」
「ああ」
「あんたって、最高・・・」
「なにが?」
「うふふ・・・エッチがね、さ・い・こ・お・・・」
「おまえの、ここも、最高だよ・・・吸い付いてくる・・・吸盤みたいにね」
「いやあん・・・」
「根っからの、エッチ好きなんだ・・・おまえは・・・」
「うふふ・・・こんなからだにしたの、あんたよ・・・」
「ああ・・・おれたち、セックスの相性、ばつぐんだからね」
「そうだよ・・・あ! うふふ・・・もう、硬くなってる・・・」
「たえこの指が、おれのちんぽを、硬くする・・・うっ・・・」
「気持ち、いい・・・?」
「う・・・・ああ・・・いい・・」
「ごめんね・・・そろそろ帰んないと・・・だんなのやつ・・・」
「おい・・・もう、帰るのか?」
「だって、こんな時間だよ」
「もうちょっと、いいだろ?」
「だめぇ・・・後始末だけしてあげる・・・おくちでね・・・」
「・・・おっ・・・うっ・・・ううっ・・・」
「きもち、いい?」
「・・・あ・・・ああ・・・」
たえこは、天井に向かってそそり立つ江頭の肉棒に唇を這わせ、絡みついた精液を、それには、たえこの淫水も
交じり合っているのだが、舐め取っていく。
「じゃあ、またね」
「おいおい、途中で止めるのかよぉ」
「ごめんね・・・」
たえこは、腰をかがめて、パンティに足を通す。
パンティを引き上げながら顔を上げたとき、部屋の隅にたたずんでいる人影に気がついた。
「あ、あんた・・・」
たえこがつぶやいた。
驚愕のあまり大きく見開いたたえこの目は、江頭の背後を凝視していた。
たえこが下着をつける姿を見ていた江頭は、不審な面持ちで振り返る。
そこには、エミが全裸で立っていた。
「こりゃあ、驚いた・・・どうやって入ったんだあ? 泥棒みたいな真似しやがって」
江頭は、ベッドからゆっくりと立ち上がる。肉棒は、怒張したままだ。
エミに近づく。
「素っ裸とはね・・・抱かれたくて来たってわけだ・・・」
エミは、江頭の目をじっと見つめたまま黙って立っている。
胸の双丘がつんと突き出している。江頭は、腕をつかむと、エミを引き寄せる。
乳房が江頭の胸に触れる。
たたずむエミのうなじに口づけをしながら、指先を淫裂に進入させる。
「あんた・・・やめてよぉ・・・そんな女・・・」
「たえこ、おまえは黙ってろ! ・・・ほう・・・さっきから見てたのか・・・ここ、ずぶ濡れだ・・・ふふ・・・ふふふ」
「やめなさいよぉ・・」
「たえこ、帰れよ!」
江頭が、エミをベッドに押し倒そうとしたとき、ふたりの位置がすばやく入れ替わって、ベッドに倒されたのは、
江頭のほうであった。

江頭の股間に顔をうずめていくエミを、江頭は、にたにたと薄笑いを浮かべながら、見つめている。
「へえ・・・エミ、おまえ、やっぱり、こいつが好きなんだな・・・」
エミの口が、江頭の肉棒を根元までくわえ込む。
「たえこ、おまえが中途半端でやめてしまったからなあ・・・エミが、しまいまでやってくれるそうだ・・・」
うれしそうにたえこの方を見た江頭の顔が一瞬にして恐怖の表情に変わる。
ぎゃあっ!
すさまじい悲鳴をあげながら、江頭は、エミの頭を股間から引き剥がそうともがいた。
ばりっ!
何かが引き裂けるような音がした。
江頭の股間からゆっくりと持ち上げられたエミの口元から、肉の塊がだらりとぶら下がっていた。
たえこは、エミの真っ赤に染まった口元を見て、凍りついた。
つりあがったエミの目が、怪しく金色に輝いていた。
垂れ下がった肉の塊の間から、鋭い牙のようなものが見えた。
たえこは、叫び声をあげようにも声が出なかった。
江頭の股間が真っ赤に染まり、さっきまでそこにあって、たえこに肉の悦びをたっぷりと味わわせたものが、陰
も形もなくなっていた。
たえこは、恐怖に震えながら事態を理解しようとしていた。
エミが・・・彼の・・・アレ・・・食いちぎった・・・
らんらんと光る眼が自分を見据えているのにおののいて、たえこはへたへたと座り込んでしまう。
股間から、生暖かい液体が音を立てて噴出す。
つんと鼻を刺す臭気が立ち上る。
あは・・・あはは・・・あたし・・・おしっこ・・・もらしてる・・・
ベッドの上で、江頭が血まみれの股間をかばうようにしながら激痛にからだをよじってうめいていた。
エミは、食いちぎった江頭の肉棒を自分の口から引き出すと、たえこの口に押し込んだ。
吐き出そうとするたえこの口に、血まみれの肉棒が無理やり押し込まれた。
それから、ゆっくりとベッドに近づき、もがき苦しむ江頭を冷酷なまなざしで見下ろしていたが、両腕を揃えて
前に突き出すと、それを江頭の腹部に深深とつきさした。
江頭の悲鳴が寝室に響き渡り、すさまじい光景に大きく目を見開いたまま、肉を喉に詰まらせて、たえこが窒息
した。


第8章

「全員、支配人室に集まってくれ。それから、欠勤者のリストを作って」
副支配人の室井が、てきぱきと指示を出す。
事情聴取のために、刑事が数名、やってきたところだ。
江頭を殺害したものは、獰猛な肉食獣であることが鑑識によって確認されていた。
牙や鉤爪の痕跡が証明していた。
猛獣を飼っているものがこの会社の従業員にいるとは思えなかったが、殺害の動機などをつめるためにも捜査
上必要な尋問であった。
「副支配人・・・料理長と、エミさんに連絡がつきません」
「じゃあ、だれかをやってくれ」
「いや、いいよ、それは、警察でやるから。そのふたり以外は、みんないるんだね」
「休みのものも、こっちに向かわせていますので、まもなくそろうと思います」
「そうか。うん、ありがとう」

郷田料理長の凄惨な死体が発見されたのは、全従業員に対する事情聴取が終わろうとしているころであった。
郷田は、顔面が紫色にぶくぶくに膨れ上がるまで激しく殴りつけられていた。
全身が、するどい鉤爪でずたずたに引き裂かれていた。
腹の開口部から流れ出した消化管も、引きちぎられて、あたり一面に飛散しており、遺体が発見された郷田の部
屋に踏み込んだ警察関係者の誰もが、すさまじい光景と異様な腐臭に、激しく嘔吐した。
ベランダの扉をあけて空気を入れ替えようと気をきかせた警官は、そのまま手すり越しに下に向かって嘔吐し
て、報道陣の頭上に消化途中の昼食の残骸を浴びせ掛けた。
郷田の殺害も、猛獣の仕業と思われた。
「エミとかいうウェイトレス、まだ見つからんのか?」
警察は、第4の被害者を心配し始めていた。
犯行の動機が何であれ、所在のわからない従業員を探し出すことは急務に思われた。
エミの部屋からは、何も発見されなかった。
ごく普通の女の子らしい部屋であった。
ベランダに干してある下着が、風にひらひらと揺れていた。

全身に血糊のついたエミを見て、郷田は激しく抵抗した。
体格も、力も、郷田が勝った。
エミは、薄汚れた郷田の布団の上にねじ伏せられ、強い力で首を締め上げられた。
エミは、意識が薄れ、このまま殺されてしまう、と思った。
グルルル・・・
獣の唸り声が聞こえた。
エミは、それが自分の喉から出たものだとは気がつかなかった。
郷田が一瞬たじろいだ。
エミは、両手の指先をのしかかってくる郷田の背中につきたてた。
爪は、鋭くとがった猛獣の鉤爪に変わっていた。
それが、郷田の着ている寝間着を突き抜け、背中の筋肉にぐさぐさと突き刺さる。
郷田は、目を大きく見開いて、ギャッ、という悲鳴を上げる。
エミは、郷田の背中に突き立てた指先を、力任せに左右に引いた。
郷田の背中の筋肉がバリバリと音を立てて引き裂かれる。
肉が裂け、あばら骨が剥き出しになる。
ギエェェェ
エミが引き抜いた指先を新たな場所に突きたてたとき、エミの首を締め付けていた郷田の指先から力が抜けて、
郷田はエミから逃げようとしたが、そのとき、エミの指先は、郷田の背中にさらにすさまじい裂け目を刻んでい
た。
郷田は、ごうごうという叫びをあげながら崩れ落ち、エミの握りこぶしが次々に顔面に襲い掛かるのを、なすす
べもなく受け止めた。
まぶたが紫色に膨れ上がり、唇が裂け、鼻血が噴出す。
エミは容赦なくこぶしを振り下ろした。
唇がぶくぶくに膨れ上がり、郷田の許しを求める言葉は、言葉にならなかった。
「なんで・・・なんでや・・・」
「ゆきにしたこと、忘れたのか・・・」
「ああ・・・ああ・・・」
エミの腕が、郷田の腹部にズブズブと突き刺さった。
郷田の断末魔の叫びが、寝室に響く。

エミは、森の中にいる。
郷田の部屋から、まっすぐに来た。
何一つ身に着けていないが、真紅の衣服を着ているように見える。
両方の腕は、ひじのあたりまで江頭と郷田の血液で真っ赤に染まっていた。
飛び散った血の飛沫が、エミのからだのあちこちに赤い点となってこびりついている。
口の周りも、真っ赤だ。
「おいで・・・疲れただろ・・・・」
《彼》は、全裸でエミを待っていた。
いたわるような優しい視線でエミを見つめる。
疲労から、目の下に隈のできているエミを優しく抱きしめ、それから、音を立ててエミの唇を吸った。
頬に張り付いている肉の破片を舐め取った。
折り重なるようにして、草地の上に横たわり、エミのからだに張り付いている血しぶきのあとを、一つ一つてい
ねいに、まるで味わっているかのように、舐め取っていく。
《彼》の舌は、ざらついた感触がした。
真っ赤な両腕の、指を1本1本舐め、手のひら、手の甲、手首、そして、ひじまで、絶え間なく舐めつづけ、そして、
血の痕跡をまったくとどめないまでに、きれいに舐め取った。
エミのからだから激しい疲労が消え去っていき、いまはもう、《彼》の愛撫に悦楽の喘ぎ声をもらしている。
「して・・・」
《彼》のペニスの進入を、濡れそぼった性器を差し出すようにして受け入れ、《彼》の腰にあわせて腰を動かし、
そして、達した。
深い眠りからさめたとき、エミは《彼》の腕の中にいた。
柔らかく暖かな日差しが天空のこずえの間から地上に降ってくる。
まぶしくて、エミは目を閉じる。
「エミ、復讐が終わったね・・・これからは、私と暮らそう・・・」
エミは、こくりとうなずいた。
「愛している・・・エミ」
《彼》はエミを四つん這いにさせ、背後からゆっくりと挿入した。
《彼》の手が、エミの乳房を包み込み、ふっくらとした感触をしばらく味わっていたが、それから徐々にペニス
を出し入れしはじめた。
ズルリズルリと引き出され、ずぶずぶと分け入ってくる。
エミは、その肉の棒が次第に太さを増し、長さを増してくるように思えた。
じっと目を閉じて、《彼》の肉棒がエミに与える快楽に身をゆだねた。
肉棒がますます太くなり、エミの肉を押し広げる。
まるで、からだの中が、《彼》のペニスに占領されているように思えた。
大人の腕ほどもありそうなものが、自分のなかに出入りするのにエミは気づいて、目をあけた。
背後からエミにのしかかっているものが、《彼》ではなく、以前この場所でエミを犯した野獣であることに気
がついた。
エミは、しかし、驚かなかった。
すべてを理解していた。
エミと性交しているのは、ひとではなく、この森の住人であること。
そして、自分も、この森の住人になったことを・・・
雄豹の腰の動きが激しくなり、そしてやがて絶頂に達して射精するとき、エミも達して、深い深い森のおくまで
樹々の間を抜けて伝わっていく喜びの咆哮をあげていた。

完

2000/8/30
戻る