「玲奈ちゃん美咲ちゃん穂香ちゃん由香里ちゃん」


あたし玲奈-れいな-
今日は中学の修学旅行で民宿に泊まりに来ています。
あたしの学校は代々日光に遠足旅行に来ていんだそうで。
お昼には東照宮でお参りを済ませてきたよ。
ご飯を食べてお風呂も終わって。明日に備えて終身準備中。
就寝時間九時なんだって。早すぎ。

あたしの隣の布団にいるのが美咲-みさき-ちゃん。
美咲ちゃんは幼稚園に入る前からのお友達でいつもずっと一緒。
明るい性格で、いつも元気を分けてもらっているんだよ。
ちょっと変わった特技があるんだけど。まあそれは今はいいよね。
さっきからかばんの中ごそごそしてるみたい。
うわ、美咲ちゃんの鞄の中はおもちゃばっかり入ってるよ。

「れーなちゃん、ウノしよー」

携帯ゲームとか怪談の本とか入ってるけど、無難なものにしたね。
二つ返事でOKしたけど。二人でするの?

「穂香ちゃん、由香里ちゃんもどうー?一緒に」
「なーに?」「ウノねー?わたしも入るー」

美咲ちゃん、残りのルームメイトにも声を掛けた。
4人で雑魚寝の部屋なんだよ。
穂香-ほのか-ちゃんは少しおっとりした感じの子、本の虫というのかな、
自由時間はいつも文庫本を読んでるような。
由香里-ゆかり-ちゃんはしっかり者。たしかミニバスケット部に所属してた気がするよ。
この二人はいつも遊ぶグループと違う子たちだから、あまりお喋りしたことないんだけど。
美咲ちゃんは誰とでもすぐに仲良しになっちゃうんだから。

「げ、4ドロー?」

でも、ウノはうまくないみたい。
美咲ちゃんどんどんカードが溜まっていっちゃうよ。

「はーい、あがりですー」

穂香ちゃんもあがって美咲ちゃんの4位が決定。
あたし?あたしは2位だったよ。1位が由香里ちゃん。

「ううう。うがあ、もう一回だー」

あらら。美咲ちゃん枕に八つ当たりしちゃってるけど。
そこまで悔しがる必要ないんじゃないかな。ゲームなんだし。
さあ、次こそ勝とうね?美咲ちゃん。

「ウノ!」

美咲ちゃんがウノだよ。
でも、あたしも負けてない。同じターンでウノを宣言したよ。
穂香ちゃんが少し遅れてるけど、由香里ちゃんも次のターンでウノを宣言。
でも、みんななかなか上がれないみたい。カードが増えたり減ったり。
緊迫するよね。ドキドキ、あたし上がれるかな。
あ、その色のままならあがれるよ。美咲ちゃん、色を変えないで。
やった。あがり! つい大きな声を出しちゃったよ。
あがりました。えへへ、今回はあたしがとっぷだね。
あらあら、美咲ちゃんはまたドベになっちゃった。
最初はよかったのにね。

「あー、ウノの神様に見放されてしまった」

普段の行いのせいかなー って突っ込んであげたよ。
あたしじゃないと美咲ちゃんにうまく突っ込めないと思うんだ。感謝するように。
それから、次の試合をしていたら。

『みんな、消灯時間ですよー、寝なさいー』

せんせの声。もう九時だね。
まだ寝れないし、遊び足りないよ。せんせ、今夜くらいは大目に見て欲しいよ。

「ここでやめれない。わたしまだ一回も勝ってないし!」

なんて、美咲ちゃんわがまま。
あたしもまだ遊びたいとは言ったけど。勝つまでする気なの?

「普通にしてても飽きるね。負けたらシッペとかどう?富士山とか雑巾絞りでも」

さすがミニバスの由香里ちゃん。体育会系ならでは提案だね。

「痛いのはいやだ」

あたしも。それは美咲ちゃんに賛成だなあ。
多数決で負けても由香里ちゃんは何か賭けてやりたいらしいくって。

「それなら、こうしない?一番最後までカードを持っていた人は、着ている物を一枚脱いじゃう」

美咲ちゃん、それはいくらなんでも。
と思ったけど。その提案をしたのは美咲ちゃんじゃなくて穂香ちゃん。
穂香ちゃんってば、見かけによらずそういうノリ好きなの?!
当然あたしは猛反対をしたけど。

「それはいい考え」
「ふーん、やってやろうじゃない」

美咲ちゃんも、由香里ちゃんもノリノリ。
えええええ、信じられないよ。みんな修学旅行で浮かれ過ぎじゃない?
えーん。場の空気を読めちゃうあたしは1人でいつまでも
反対って言えない性質。
出来たことと言えば、次にせんせが見回りに来るまでなら。
そういう条件を何とか押し通すことだけ。
せんせ、せんせ。さっきは生意気思ってすみません。一刻も早く戻ってきて。

「やったー、初トップ!あがりー」

美咲ちゃんついに。おめでとう

「私もあがり」

由香里ちゃんもあがり。
よかった。あたしもこれで上がり。
危なかった。必死になっていたよ。

「あ、負けちゃった」

こういうのってさ、やっぱり言いだしっぺが負けちゃうんだよね。
うんうん。
美咲ちゃんも由香里ちゃんも穂香ちゃんを見てるね。
美咲ちゃんへらへらしちゃって。なんか締りがないよ。

「脱ぐね」

穂香ちゃんは眼鏡を掛けていて少し癖のかかった長い髪が印象的な子だよ。
みんな学校指定の赤いダサいジャージを着てるんだけど。
いま穂香ちゃんは上着の裾を掴んでる。
太陽なんて浴びたことないよっていうくらい白い肌。
ブラ?ブラは白色で黒い水玉模様。同性としても正直にかわいいと言える。
出るところ出て引っ込むところは引っ込む。なんと表現したらいいのか。
着やせするタイプ。たぶんこの言葉でいいのかな。

「わー、スーパー中学生!」

さすが美咲ちゃん。あたしよりうまい表現!
でもその後の「けしからん乳」ってとこは聞き流したからね。
もうちょっと言葉を選んで欲しかったよ。
穂香ちゃんはにかんだ表情をしてるけど。そんなに恥ずかしくないのかな。
まあ女の子同士だし、さっきもお風呂で一緒だったしね。
さー、つぎも負けないよ。

「やた!あーがり」

美咲ちゃん、何か賭けると強い。
そんなに女の子の裸が見たいの?

「わたしも、あがりー」

穂香ちゃんもあがり。
連敗しなくてよかったね。

「よっ、私もあがりっ」

あれ、
あたしはまだ5枚も残ってるのに、なんでーー。

「れーなちゃん♪ぬ・い・で」

美咲ちゃん、語尾にオンプついてるし、
なんかヤラシイ言い方。脱ぐよ?脱がないとは言ってないし。
ルールだもんね。
さっきの穂香ちゃんのようにぱぱっと脱いじゃったらいいよね。

「城崎さん肌綺麗」
「脱ぎ方がいけてる」

穂香ちゃん、由香里ちゃん。黙っててくれないと脱ぎにくい。
あ、城崎-きのさき-はあたしの苗字。
お気に入りの桃色のブラが3人に見られてる。まあいいけど。いいけど……でも。
しかも花柄。
こんなことならもっと質素なブラにしておいたら良かった。
こんなことするなんて思わないし。

「可愛いブラしてる、れーなちゃん愛してる」
「城崎さんも結構あるよね、いいなー」

美咲ちゃん、どさくさに紛れて告らない!
由香里ちゃんは、たぶんぺったんだよね。大きければいいというわけじゃないと思うけど。
みんな見すぎだよ。コメントもいらないし。変な汗が出てきた。
穂香ちゃんなんか、自分が脱ぐときより顔赤くない?気のせい?
早く次、次。
あまり注目されるのは好きじゃないから、急したよ。

「ほら、あがり」

一番は由香里ちゃん。安定した強さ。

「ごめん、わたしもあがっちゃうね」

ごめん、って。美咲ちゃん謝るくらいならあがらないで。
これは一枚脱いじゃってる人同士の勝負ね。
ウノの神様はなんて非情なの。

「ウノー」

穂香ちゃんウノ。
やばい。あたしはまだカード2枚残っているよ。
しかも色が違うから出せない。あ、山から色変えカード出たよ。
ここは華麗に赤にチェンジ。

「赤?それならあがれるー」

きゃーー、裏目。
そのままの色にしておいたらあがれなかったんだね。あたしの馬鹿。

「れーなちゃん脱衣2枚目?」

わかりきったことを聞く、美咲ちゃん。

「城崎さん惜しかったねー」

惜しかった、惜しかったけど。
違和感。ブービーの穂香ちゃんの言う言葉じゃない気がする。
脱がなきゃ駄目?なんて聞いてみたけど。
3人そろって即答。美咲ちゃんくらい助け舟を出して欲しかったのに。

三角座りのままずるずると脱いじゃう。
精一杯恥ずかしくないよ、アピールをしてるけど。
下着姿をじろじろ見られるのは正直気恥ずかしいものなんだよね。
顔赤くなっているのばれてないかなー。

「ぱんつ見えた」
「上下おそろいか」
「……」

玲奈ちゃん、ぱんつ見て嬉しいの?ねえ。聞くまでもなく嬉しそう。
由香里ちゃん、何それ突っ込みなの?あ、ちょっと気まずそうな表情になってる?そろそろ止めて欲しいな。一番常識人なの?
穂香ちゃんに至っては……、うあ。それはよだれなの?その目つきもやばいよ。
せんせ、せんせ。はやくはやく。来て。
ここに、同級生を脱がす不良がいるよ。

もう負けるわけには行かないから。
そろそろ本気出した。
最初に後一枚に!黄色になったらあがりだよ、黄色黄色。
あたしの念力が通じたのか直前で黄色になったよ。
美咲ちゃんナイスアシスト!

「あがりー」

堂々と宣言。
ほ。っと一息つけたよ。

「あれ、城崎さんー、ウノ言ったー?」

え、由香里ちゃん、あたしウノ言った、言ったような気が……

「ううん。言ってない。2枚追加してね」

ガーン。
美咲ちゃん、非情すぎる。

「城崎さんどんまいー」

穂香ちゃん、ドントマインドって気にするな的な?
するよー!こんなところで大切なウノを言い忘れるなんて。大失態!

「あがりー」

穂香ちゃんが一番。
あたしは枚数が減っては増え、増えては減って。
ウノ言い忘れることはしないけど、何故なのって位、あがれないよ。

「お先ー」

玲奈ちゃんが2番
どうでもいいけど、お先ってなんとなくさわやかな。

「ほい、ドロー4」

ぎゃーー
由香里ちゃんてばウノ非道。

「それでもってあがりね」

由香里ちゃんはあたしが増えたカードの並べ終える前に
さっさと上がってしまった。

ま、参りました。
もう脱げません、降参します。土下座。人生出初めての土下座をここでしたよ。

「うん、れーなちゃんは脱がなくていいよ。わたしが優しく脱がしてあげるから」

美咲ちゃん。やさしーって、違うから。
それは違う優しさだから!

「勝負は勝負だしねー、腕で隠してもいいから」

由香里ちゃんてば。
原理主義者!体育会系には言い訳通用しないんだね。

「同級生だし、意識するほうが変かなー」

うそだ。
穂香ちゃんが一番意識してるはわかってるんだもん!
なんてテクニシャンなの。
わかりました。わかりましたとも。
脱ぐからその間目を瞑っていてもらえますか。
思わず凄い台詞を口走っちゃったよ。
恥ずかしがっているのがばれちゃってまずいよ。
ぎゅっと目を瞑って。ってー!あたしが瞑っちゃ、
三人が目を瞑ってるかわからないじゃない!
でも恥ずかしくてみんなの表情見てられないし。目を開けられない。
やばい。指も震えてきてる。
あれ、ホック外すのってこんなに難しかったっけ。
今すごくパニック状態かも。
だれ、はぁはぁ…言ってるの。
あたしかっ。
みたいな。
突っ込みだけさえまくってるんだよね、不思議と。

『きゃー♪』

うまく隠しながら脱げたかわからないけど。
どうにかブラをはずせたよ。
ゆっくりと目を開けたけど。みんなあたしの胸のところを見てる。
たぶん、ずっと目を開けてたんだと思うんだ。
「ゃ……」両手でしっかりと隠したから、ほとんど胸が見えないと思うよ。
残念でした。

「れーなちゃん色っぽい」
「後一枚ねー」
「次で終わりかな」

美咲ちゃん、嬉しくない。
穂香ちゃん、すでに次にターゲットにを絞ってる。
由香里ちゃん、最後までするの?!
カード配られたし。もう脱げないよーって喚いてるのに。無視なんだねー?!
くすん。片手でカード操るの難しいよ。

「はい、あがり」
「あっがりーん」

由香里ちゃん、美咲ちゃんがあがり。
また、穂香ちゃんと一対一。
彼女はたくさんカード持ってるしから
今回はあたし勝てるかも!
そう、何回も連続で負けてたらたまったもんじゃないもんね。
あ、来た。あがりあがりー
はー。よかった。今回は穂香ちゃんに脱いでもら

「ウノゆったのー?」

負けたくないからって穂香ちゃんがクレームを付けてくるよ。
あれ、でもウノゆったっけ?ゆってない?あれあれ?
あたし、大量に冷や汗が湧き出てくるよ。

「うんにゃ、言ってないね」

美咲ちゃん……み
見逃してえええええええええ!

「城崎さん、ごめんなさいね」

穂香ちゃん!それは心から嬉しそうなときに使う言葉じゃないと思うよーー!
だ、駄目。これだけは何が何でも脱げません。
だって、これを脱いでるときはあれが隠せず見えちゃうわけだし。
そもそも隠したいところが3つあるのに。
腕が2本しかないわけでしょう?
無理!ごめん!あたしもう寝る。
勢い良く、布団の中に引きこもる。
おやすみなさい。
そんなあたしの布団を引っぺがしにかかる3人。
ひどくないかな?
布団の中で脱ぐから。って、引っぺがすのはやめてもらったよ。
裸になっちゃうとすごく不安だけど。
布団の中なら見られないし。
あたし頑張って裸になったんだよ。えらいよね。
恥ずかしすぎる!なにやってるのだろう、あたしは。

「れーなちゃん、証拠の品をみせてー」

美咲ちゃんが何か言ってる。証拠の品?

「ほら、脱ぎたての、ぱ・ん・つ」

こ、この子は変態じゃないのかなっ。
前から思っていたことだけどーー
知らない!もう寝るもん!
頭まで布団をかぶって知らん振りを決め込むことにしたよ。
ここまでしたんだから、もう許してくれるのが当然よね。
布団をかぶってるから、良く聞こえないけど。
しばらくブツブツ3人で相談してたみたいだけど。
その声もなくなって静かになったよ。
みんなもう諦めて寝るのかな。そりゃそうだよね。
…と思ってたら。
布団の中にもぞもぞ、何か入ってくるよ?
わああっ!、てあたしは悲鳴を上げたよ。驚いたし。
明るいし!懐中電灯の光だと思う!
その何かはすぐ出て行ったけど。
あたしは驚いて布団から頭を出したよ。

「うん、ちゃんと脱いでた。ライトでばっちり見えたよ……れーなちゃんの−−」

美咲ちゃんの、美咲ちゃんのばかあああああああああああ!
あたしの魂の叫びに、せんせが聞きつけてやってきました。

「こら、何時だと思ってるの。騒いだら迷惑でしょう、早く寝なさい!」

来るの遅すぎる!せんせも、ばかああああ
これは心の中で絶叫したんだけどもね。

あーーんもう、あんなところ見られちゃうなんて、お嫁にいけないよ!
責任、責任は取ってくれるんだよね、美咲ちゃーーーーん!
お布団の中で悶々と朝まで寝られずに過ごしちゃった。
次の日はにゃんまげを見に行かなくちゃいけない日なのに寝不足になってしまいました。


<完>