第六話「美貌のストリッパー」


 壇上の新しいヒロインは舞台前方に立ち、満員の観客の視線を全身に浴びています。舞台照明が 少女を美しく映えさせます。改めて見ると、かなりの美人ですね。荒々しかった前のヒロインとは うって変わった美貌の少女。その姿は、会場中の視線を釘付けにしています。ステージの上に立つ その姿は、まさに本当のモデルのようですね。時折投げかける淡い微笑みなどはプロそのものです。 しかし、彼女がこのステージで演じるのは煌びやかなファッションショーではなく、あの黒崎のマ ジックショーなのです。 「お嬢さんは鈴野さんのご友人のようですが、お二人でいらっしゃったのですか?」  静寂を破り、マジシャンが由利嬢に話し掛けました。 「そうよ。せっかくの繁華街なのに女だけの二人連れなんて不健康だとか思ってる?」  挑発するかのように、少女は魔術師に言葉を返します。 「いえいえ、そういうつもりではありませんよ」 「他にも女性の方だけで来られているお客様もいらっしゃるようですし」 「それよりも、名前を教えて頂けますか? いつまでも『お嬢さん』とお呼びするわけにもいかな いでしょう」  少女は微笑を浮かべながら、魔術師の質問に答えます。名前は白沢由利、彼女も先の愛嬢と同じ 19歳で、現在は美術系の大学に通っているとのこと。なるほど、先程の衣装が素晴らしいはずで すね。その身だしなみも、彼女のセンスの一端というわけですね。愛嬢とは、高校時代の同級生の ようです。 「で、なにをすればいいの?」  魔術師の言葉を待たず、少女の方から指示を仰ぎます。 「それでは、衣服を脱いでもらえませんか?」  マジシャンは事なげに言い放ちます。確かに前のヒロインが全裸だった訳ですから、まず彼女に もその格好になってもらわなければならないのでしょう。しかし、ずいぶんいきなりですね。また なんらかの脱衣マジックを見せるのかと思ったのですが、さすがに突然の出来事に用意もなかった という事でしょうか。ですが、若い少女自身に脱衣を強いるのは少々酷にも思えますね。 「いいわよ」  意外にも少女はあっさりと承認します。さすがにこの舞台に立った時にある程度の覚悟は出来て いたのでしょうか。それとも美大生にとってはヌードなど慣れたものなのでしょうか。ともかく、 少女は満員の観客が見つめる中でゆっくりと衣服を剥ぎ取っていきました。  壇上のヒロインは、スーツの上着を簡単に脱ぎ捨てます。中からは白いブラウスが姿を現します。 さらに、彼女はタイトスカートのファスナーに手を掛けました。彼女自身の手でそれが下ろされ、 下半身を覆う衣類が重力に引かれてステージへと落ちていきます。  少女のスカートの中の部分に視線が集まりますが、残念ながらブラウスの丈に隠されて、肝心な 部分ははっきりと見る事はできません。しかし、ちらりと覗くその下着はどうやら白のようです。 赤か黒の下着を身に着けているよう思えたのですが、少々意外ですね。  ステージ上でブラウス一枚の姿になった美少女に客席から指笛が飛びます。中には早く脱げとは やし立てる者もいます。こうなると、一体何のショーだかわからなくなりますね。 「静かにしてよね」  飛び交う野次を収めるように、少女が声を張り上げます。平静でいるように見えましたが、やは り心底穏やかではなかったということでしょうか。周囲が静まるのを待ってから、少女は次の行動 をとりました。  ついにそのブラウスも脱ぎ捨てるのかという期待が高まる中、彼女はなんとブーツに手を掛けま した。どうやら、先にそちらを脱ぐようです。さすがに、ブラウスを脱ぐのにはためらいがあるの でしょうか。しかし、美少女の下着姿を拝めると思っていた会場からはブーイングの嵐です。ここ まで来てお茶を濁されたのですから当然でしょう。もっとも、心の底からいらだっている訳ではな いようです。なぜなら、彼らが先程望んでいながら見られなかった物が、今度はしっかりと見られ たのですから。ブーツやソックスを脱ぐために足を上げるたび、ブラウスの裾が捲れ上がり、その 下に隠された少女の白い下着がはっきりと確認できました。少々ハイレグ気味な純白のショーツ。 レースや飾り毛で装飾されたなかなか豪華な物です。彼女自身は下着を見られている事に気付いて いないのか、特にあせる様子もなくブーツとソックスを脱いでいきました。  これで少女の体に残るのは一対の下着とその上に羽織られたブラウス、そしてネックレスやイヤ リングといった装飾品のみです。彼女は首にかけたネックレスをそのままに、ブラウスのボタンを 外していきます。そして、今度こそ下着の上に覆い被さっていた最後の衣類が肩から滑り落ちまし た。露わになった白い肌に客席の視線が集中します。  日焼けを極力抑えられた肌は、小麦色に焼けていた友人の物とは対照的です。その肌は念入りに 手入れをしているのか、淡い光沢を放ち、染みなども全くありません。白磁のような肌という言葉 がありますが、まさにそれがぴったりですね。そして、その肌を包む下着は純白の物です。少女の 豊かな胸を覆う下着はストラップレスのタイプで、カップの横の部分に天使の羽を思わせるような 飾りが付いています。  先程ちらりと見えたショーツもその全貌を確認する事ができました。正面はレース状になってい ますが、どうやらショーツ自体がレースで出来ているのではなく白い布地の上にレースが編まれて いるようです。中の陰毛が透けて見えるような、そんな卑猥なデザインではないようですね。両脇 の部分は先程も確認できました白い毛で飾られています。ふさふさとした毛は羽毛のようにも見え、 上のブラジャーと合わさって天使の下着というイメージを醸し出しています。これで背中に翼でも あったら、本当に天使と間違えてしまいそうですね。  この純白の下着は、確かに赤や黒の物よりも少女に似合っているようです。自分に一番合う物は、 やはり少女自身が一番理解しているみたいですね。服の下に隠れて決して人目に触れる事のないよ うな部分にまでこのような凝った物を身に着けているのは、少女のファッションに対する信念のよ うなものなのでしょうか。 「それでは、続きをお願いしますね」  雑誌のグラビアのような魅惑の下着姿に見惚れてしまっていましたが、確かに少女は下着姿になっ たまま動いてはいません。おかげで少女の下着姿をじっくりと堪能できましたが、全てを脱ぎ捨て るのが少女の目的なのですから当然続きがあるはずです。 「わかってるわよ」  下着姿になったまま固まっていたヒロインですが、魔術師に急かされてようやく動き始めました。 「じゃ、脱ぐわよ」  一度会場を見回した後、少女は自分に言い聞かせるかのように声を出します。手を背中の後ろに 回し、ブラジャーのホックを外しました。支えのなくなった布は重力に引かれて落ち、その下から 少女の生の胸が姿を現します。現れた胸の膨らみは下着の上から想像できたものとほぼ同じボリュ ームです。膨らみの大きさを下着でごまかしていたわけでもないようですね。ピンクの胸の先端は、 少女の気性を示すかのように上を向いていました。形の整ったその乳房は、おそらく多くの女性が うらやむものでしょう。少女の友人のような胸に恵まれない娘が、大きすぎる胸に悩む女性が、彼 女のような胸を得たいと考えるのではないでしょうか。その均整のとれた膨らみは、まるで芸術家 達が作り上げた彫像のようです。  そして、少女が最後の下着に手をかけます。先程のような野次も全く飛ばず、会場中が静まり返っ ていました。全ての観客が少女の動きを息を飲んで見つめています。満員の観客の見守る中で少女 は一番の秘密を守る衣類を自らの手で下げていきました。そのゆっくりとした動作は観客達の目に しっかりと焼き付いたことでしょう。脱衣マジックが見られなかったのは残念ですが、こういう脱 衣シーンもなかなかのものですね。そして、壇上のヒロインは足に絡みついた最後の下着をゆっく りと抜き取っていきました。 「さ、裸になったわよ」  体に付けた衣服を全て剥ぎ取った少女は、舞台の正面を向いて直立します。形の良い膨らみも、 股間を飾る黒い物も隠さずに少女は裸身の全てを客席に向けています。ヌードを描き続けている であろう少女は、隠すとかえっていやらしく見えるということを知っているのかもしれませんね。 ヌードのクロッキーモデルのように堂々と裸を見せつけていました。身に付けたままになっている ネックレスやイヤリングが、裸体を美しく飾っています。しかし、その裸を眺めている観客は芸術 を志している者ではなく夜の繁華街を遊んでいる者たちなのです。美しい裸身に芸術性を見出すよ りも下卑な欲望を抱く者がほとんどでしょう。  そして覆うものもなくさらけ出された少女の股間、その陰毛に目が行きます。薄毛気味な友人と 異なり、しっかりと大人の象徴が生え揃っています。黒い毛が綺麗な逆三角形を描いていました。 どうやら自然なままに生えているのではなく、意図的に整えられているようですね。ハイレグ気味 な下着を纏うためでしょうか。全く人目に触れない部分にまで手入れを行き届かせているのも、乙 女のたしなみの一つなのかもしれませんね。その下の秘裂は、黒い毛が重なりあっているため残念 ながら覗う事ができません。全裸になっても、少女は最後の秘密だけは守り通していました。 「これから何をすればいいのよ」  アンダーヘアまでも晒しながら、少女は強気な態度を崩しません。しかし、粘りつくような視線 を浴び続け、その頬はほのかに赤く染まっています。これほどの人数の前で素肌を晒し続けている のですから当然の反応でしょうか。 「それでは、ステージの前へ出て腰を下ろして頂けませんか?」  全裸になった少女を魔術師が先導します。その指示通りに少女は円形ステージの前端まで進み出 て腰を下ろします。その後もマジシャンは座る位置を調整させたりと色々注文をつけてました。彼 がここまで細かく指示するのも珍しいですね。場所自体に何か意味があるのかもしれません。魔術 師の指示した場所に座ると足がステージから飛び出してしまうため、少女はやむなく膝を曲げた姿 勢で腰を下ろします。そして、背もたれのない上半身を支えるために背中の後ろに両手をつきまし た。当然の如く両足はぴったりと揃えられ、秘密の部分を隠しています。 「その姿勢ですと一番敏感な部分が隠れてしまうので、敏感な場所が表に出るような姿勢にしても らえますか?」  マジシャンが少女に最後の注文をつけます。今の姿勢では見えない一番敏感な部分。これまでの マジックショーを見てきた観客達はすぐに察しがついたようです。そしてそれは壇上の少女達も同 様のようでした。 「ゆり、もう……」  黒崎の言葉を聞いて真っ先に声を出したのは、ステージの後方にいる少女でした。黒いマントで しっかりと身を守っている愛嬢が、心配そうに友人を見つめています。彼女にも魔術師の意図が理 解できたようです。自分の代わりに出てきた友人の事を案じているようでした。 「大丈夫だって、このくらい。私は平気だから」  美貌の少女が愛嬢に笑顔を返します。そして友人の不安を断ち切るかのように、魔術師の言葉を 実践していきました。


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