その13「欲望の淫魔ハンター」


 「はぁ……何とか助かった……今度スフィア取られたら、リーチかかっちゃうからね……って! いいかげんに  離してよぉ! このエッチロボット!」   いまだに拘束されたままの格好で羞姫は叫ぶ。  さっきまで彼女の身体を嬲っていた責め具の数々は今は停止していた。  羞姫の存在など完全に忘れ去ったかのように、二人の仮面ファイター……麗裸と菊刺はにらみ合っている。お互い  の隙を見つけて一気に攻め込むつもりのようだった。 「ねえ? 取引しない?」  菊刺が言葉を発する。 「取引? どんな?」  警戒を解かぬままに麗裸が訊ねた。 「私が羞姫のスフィアを取り出すのを邪魔しなければ、この前羞姫が操妃から奪ったこのスフィアをあなたにあげるわ。  そうすればお互いスフィア一個ずつ獲得。どう?」 「ちょっとぉ! 当事者の意見も聞かずにそんな勝手なことしないでよぉ! 全くドクターってのはこんな奴ばっかりか!!」  話が勝手に危ない方向に進みそうになったので、あわてて横から口を出す羞姫。 「はぁ? あなたさっきからドクターっていうのにこだわってるけど、そういう知り合いのドクターがいるの?」  菊刺の問いに。 「いや……なんていうか、別の作品世界の話だからその話題はこっちにおいといて、とりあえず離してよぉ!」  拘束されたまま、精一杯じたばたしてみせる羞姫である。 「操妃のエクスタシースフィアか……魅力的な申し出だけど、残念ながら返事はNOよ。エクスタシースフィアは自分  が倒したファイターからしか奪えない……」  麗裸は冷たい声で言いながら、右手の中に愛用の鞭を召還していた。 「あら……あなた知ってたの? じゃあ、仕方ないわね。交渉決裂! あなたの分と、羞姫の分、スフィアは私が独り  占めってことで……」  菊刺もそう言いながら注射器型の薬液ピストルを構える。  麗裸が一気に間合いを詰め、戦いが始まろうとしたその瞬間、横合いから黒い影が猛スピードで突進してきた。 「むっ!」 「おっ!」  麗裸と菊刺は身軽に飛び退いて回避する。 「牛だぁ!」  羞姫が叫んだとおり、そこには牛型の淫魔がいた。股間からとてつもなく巨大なイチモツをそそり立たせて口からは  よだれを垂らし、荒い鼻息を漏らしながら再び突進してくる。 その頭部にある角の先端は人の手のような形になって  いて、いやらしい揉み揉みの動きを繰り返している。 「ふん! 馬の次は牛? 芸がないわね。こいつもジャイアントエネマーの餌食にしてやるわっ! 鋼鉄院長解除!   召還! ジャイアントエネマー!」  菊刺の掛け声と同時に羞姫を開放した鋼鉄院長が巨大な浣腸器に変形していた。 「うわ……なんて無茶な変型…まあ、とりあえず助かったから良しとするか……」  失禁に濡れた股間の縄の感触にちょっと不快感を覚えつつ、羞姫は素早く間合いを取って二人の仮面ファイターと  牛型淫魔との戦いを見守っている。 「ぶもおおおおおおっ!」  牛型淫魔が再び突進していた。麗裸は回避しつつ鞭で引っぱたいたが、全くダメージを与えられなかったようである。  一方、菊刺は。 「うわっと! このっ! ジャイアントエネマー構えてたらよけきれないっ!」  叫びながら間一髪で回避していた。確かに巨大な浣腸器を抱えた状態では身軽には動けない。 「こうなったら鋼鉄院長を召還して一気に勝負をつけてやるわっ! ジャイアントエネマー解除! 召還! 鋼鉄院長!」  放り上げられたジャイアントエネマーは空高く舞い上がりながら変形し、再びロボット型の鋼鉄院長になって地響きを  立てて着地してきた。 「うーむ、何度見ても無茶な変型だなぁ・・・」  などとただ一人安全な場所で観戦しながらつぶやく羞姫である。 「いけっ! 鋼鉄院長、エネマロケット乱れ撃ちっ!」  菊刺の命令と同時に、鋼鉄院長の指先から小型のロケット弾が連射される。  発射されたロケットの群れは大きくカーブしながら牛型淫魔の尻を狙って突進したが、牛型淫魔は尻尾を激しく  振ってそのことごとくを打ち払う。 「さすがは牛! 防御が硬いなぁ」 「こらっ! 羞姫! ボケっと見てないであなたも手伝いなさいよ!」  彼女の姿を目ざとく見つけた麗裸がちょっとヒステリックに叫ぶ。 「ええーっ! アタシもやるのぉ?」 「当たり前でしょっ! 私が来なかったらあなたはあのガラクタロボットに嬲りまくられてたのよ!」 「鋼鉄院長をガラクタ呼ばわりするのはこのわたしが許しませんっ!」 「だからそんなこと言い争ってる場合じゃ…どわぁぁ! 来たああああっ!」 「ぶもおおおおおおおおっ!」  物凄い勢いで突進してきた牛型淫魔は、ボケっと突っ立っていた鋼鉄院長にぶち当たり、思いっきり押し倒していた。  そして、何を思ったのかそのボディにのしかかって腰をカクカクと振り始める。 「いやああああああっ! わたしの鋼鉄院長が汚されるうううううっ!」  泣きそうな声で菊刺が叫ぶ。 「けっ! ただのメカフェチじゃないの……」  ボソッと言う羞姫に、菊刺の鋭い視線が突き刺さる。 「あなたなにやってるの? あのメカ、やられっ放しじゃないの!」  麗裸の叱咤に。 「はっ! いけない! 鋼鉄院長! アクメタイフーンでそいつを昇天させちゃいなさいっ!」 「……ウシノオスハコウゲキタイショウニハインプットサレテマセン…」  牛型淫魔のよだれでドロドロに汚されながら思いっきりロボット的な口調で回答する鋼鉄院長。 「…ダメダメじゃん…」 「そうね。見掛け倒しね…」  二人並んで冷たい声を出す羞姫と麗裸に。 「そんな冷たいこと言わないで! 協力しましょ、ね?」  すがりつくようにしながら頼み込む菊刺。 「あらあら、さっきまでの強気な態度はどこいったのかしらねぇ」 「アタシにしたことへの精神的、及び肉体的苦痛に対する誠意も見せて欲しいなぁ」 「うう…意地悪…わかったわよっ! 今度一席設けるから、それでチャラにして!」 「それと、もうあたしをターゲットにしないと約束すること! OK?」 「わかったわかった! もうあなたのスフィアは狙わないから! 早くしないとわたしの鋼鉄院長が牛に犯され  ちゃうううっ!」 「一席設けるのも忘れずにね♪」  しっかり一言確認してから、羞姫と麗裸は夢中になって鋼鉄院長を貪っている牛型淫魔の背後に回り込んだ。 「で? どうするの?」 「あなたが操妃を倒したときの技、凄かったじゃないの。あれを使ってみたら?」 「いや…あれは使おうと思って使えるものじゃなくって…」  その技、アルティメットエクスタシーは、羞姫の仮面の能力を最大限に発揮させ、赤い縄状の触手で相手を徹底的  に嬲りぬくというすさまじいものなのだが、実質的には仮面の暴走ということになる。全く制御できないので、  麗裸や菊刺にまで被害が及ぶ危険があった。 「あなた、操妃のスフィアを挿入したんでしょ? 何か新しい技とか使えないの?」 「うーん、試したことないからなぁ…」 「まったく、相変わらず仮面ファイターとしての自覚がないのね」 「あなたたち! 真面目にやってよぉ!」  菊刺の絶叫で、ようやく二人は戦闘ポーズを取った。  続く


その14へ