head> 回り道編・第2話-2

回り道編・第2話「綾乃の悩み事-野宿編」-2


「やっ、あ…んッ、き、気持ちいいの……おチ○チンが…どうしようもなく気持ちいいのォ………」
 顎を突き出すように唇を突き出すと、上下の隙間から溢れ出た唾液が糸を引いて地面に垂れる。
 それは今まで見たことのない綾乃ちゃんの“メス”の顔だった。快感に酔いしれて淫靡に歪む表情には、何も知らなかった少女ではない事を思い知らされるのに十分な色艶があり、先端からコンコンと溢れ出る先走り駅をクチュクチュと音を鳴らして肉棒に擦り付ける十本の指の動きに、あたしも息を飲んでしまう。
 ―――あんなエッチな顔でおチ○チンを扱くんだ……あたしがしていた時は、さすがにあんな感じじゃなかったと思うけど……
 娼館で男性客を自分の肉体で満たしてあげる娼婦の経験もそれなりに積んでしまったあたしだけれど、男性の自慰を目にした経験は数えるほどしかない。―――まあ言い換えれば、「見られてする方が興奮するから」と言う理由で、あたしの目の前で全裸になってオナニーした人もいるにはいたわけだ。
 なので、自分が男だったときの自慰と比較するのは恥ずかしいので、そっちの人と比べてみるけれど、綾乃ちゃんのように生唾を飲んでしまうような妖しい色気を感じることはなかった。それは男性と女性、両方の快感を同時に味わえる綾乃ちゃんだからこそかもし出せる色っぽさなのだろう。
 ―――にしても……なんか見るたびに、綾乃ちゃんの股間のモノって大きくなっているような……
 綾乃ちゃんは世にも珍しい二重属性保有者、通称「ダブル」と呼ばれる特異体質で、炎属性と、これまた人間には珍しい闇属性の二種類の魔力を秘めている。一ヶ月周期で綾乃ちゃんの股間に生えるおチ○チンは、このうち闇属性の魔力が肉体に強い影響を与えているせいらしく、何度も射精させて闇属性の魔力を絞り出す事でおチ○チンを早めに引っ込めさせる事も出来る。
 ところが、あたしが綾乃ちゃんの童貞を奪った初エッチの時には完全に皮をかぶっていたはずのおチ○チンは、握り締めれば手の中に隠れてしまいそうなほどの大きさでしかなかった。そしてその一ヶ月後、とある温泉でとある美女に弄ばれた時には、まだまだ小ぶりではあったおチ○チンを散々弄ばれたりして……そのせいだろうか、この数ヶ月の間に“射精”の味を覚えてしまったペ○スは今、未成熟な感じを残しつつも立派な大きさにまで急成長してしまっていた。
「ッ……ううぅ…はぁ…ぁあああぁぁぁ………!」
 全身を小さく、それでも悩ましく悶えさせながら、綾乃ちゃんの可憐な唇から喘ぎ声が溢れ、森の中に木霊する。
 包皮がカリ首にまで下がり落ちた先端は真っ赤な亀頭を露出してしまっている。普段はれっきとした女の子である綾乃ちゃんにとって、その場所を刺激すれば恍惚と苦悶が混在しているかのような快感に身悶えてしまう。カウパー液を潤滑剤にして男性の急所を十本の指で磨くように先端を集中して擦り上げているのを見ていると、そのあまりの拙さと必死さに共感してしまい、今は失われているあたしのおチ○チンがあった場所から幻痛に似た疼きがジィン…と沸き起こり、引き気味の腰をたまらず震わせてしまう。
 右手で股間にそそり立つ肉の棒を握り締め、手の平からはみ出るほどに大きくなった男性器を前後に擦り始める……そんなところをあたしが覗き見ているとも露知らず、瞳を涙で潤ませながら太股を擦り合わせて何度も息を弾ませ、もうすぐそこにまで迫っている快感の頂点に向け、旅の間に溜め込んだ性欲を根元から先端へ向けて絞り上げていく。
「イっ…く……う、ああッ、んあああああっ! 出ちゃう、そんなに激しくゥ……! 先輩の、先輩のバカァ…ッは、おチ○チンが、も…もぉおおおおおおっ!!!」
 おいおい……綾乃ちゃんの想像の中であたしは非難されるぐらいにスゴい事をしちゃってるんですか?
 想像内のあたしはどんなことを犯ってしまったのか気になってしまうけれど、森の中で足を踏ん張って屹立し切った肉棒を握る綾乃ちゃんから今は目が離せない………が、その綾乃ちゃん当人はと言うと、傍目にももうすぐ射精しそうになっているおチ○チンから不意に手を離すと、上体を起こして背後の大樹に背中を貼り付け、後ろへと伸ばした手の平で樹皮にキツく指を立てる。
「ッ………! ィ…ン……あッ…はひ…んゥ………!」
 目蓋をキツく閉じた綾乃ちゃんの瞳から涙が溢れ、紅潮した頬を伝う……その頬には興奮、噛み締めた唇には我慢、そして浅く突き出して震えている細い顎に戸惑いを感じさせる。とても一人焦らしプレイで射精を堪えて悦んでいる様には見えなかった。
 ―――ここらが引き際かな?
 隠れて目撃してしまったからと言って、ここで姿を現すわけにもいかない。わざわざ森の中に足を踏み入れてまでこっそりオナニーしていたのだし……と言うか、例え親兄弟であろうが、オナニーしているところを見られたら切腹物だ。羞恥心は人一倍の綾乃ちゃんなら恥ずかしさでどんな暴走をするかわかったものじゃない。
 ―――妥当なとこで逃げ出して二度と帰ってこないとか、延々と泣きじゃくるとか。“男の子”のほうでのオナニーを見られたんだから最悪、思い余って……なんてことも考えられちゃうな……
 幸い、途中で中断したオナニーの興奮の余韻で荒い呼吸を繰り返している綾乃ちゃんにはこちらの存在は気付かれていない。
 ………ジェル、あたしが見てたことは綾乃ちゃんには絶対ナイショだからね。
 人差し指を唇に当てて念を押すと、物言わぬスライムは肩の上で頷くように前後に転がる。それからあたしは静かにその場を離れ、テントへの帰路へとついた。



 あたしがテントに戻って少ししてから帰ってきた綾乃ちゃんには、森の中で人知れずオナニーしていた素振りなんて感じられなかった。
 それでも夕食の準備中、そして夕食中の間にばれないように観察すれば、時折太股を擦り合わせる仕草をしたり、表情を硬くして何かを堪えるようにため息を漏らしたりと、動きのところどころに辛そうな様子を感じ取ることが出来た。
 ―――結局、最後まではできなかったって事でいいのかな……?
 綾乃ちゃんが作った味付けの少し狂ったキノコと山菜のスープを口にしながら、綾乃ちゃんにとってあのおチ○チンがどういう物であるかに考えをめぐらせると……どう考えても邪魔物厄介物でしかないと言う結論に達してしまう。
 フジエーダに留学していた経緯は聞いている。建前は解呪の血として有名なフジエーダで神学の勉強のためだと言うけれど、特異すぎる体質の綾乃ちゃんを体よく追い出したと言うのが本音だろう。
 しかもそれを綾乃ちゃん自身も十分理解している。実家はそれなりの家柄らしいけれど、これまでの旅の間に出身地の名前を口にしたことは一度もない。信頼されてないわけではないんだろうけど、あたしに話し、そこからどこかに体の秘密が漏れて実家に迷惑が掛かるのを恐れているのだ。
 幼い頃はどうだったか……そちらも想像は容易だ。
 お金で買われたと言う言い訳を得て、あたしと言う頼れる存在に付き従うような主体性のない性格から考えても、あまり良い子供時代を過ごしたとは考え辛い。
 裕福な家庭に生まれながらも世間にあまり出せない子供。そして実家から遠く離れた地に留学に出された事実。―――月一で生える男性器がそんな人生をもたらしたのだ。どこをどう好意的に解釈しようとも、「邪魔物」の一言でしか言い表せない。
 けれど、綾乃ちゃん自身はそれでもひねくれたところはない。以前はどうだったか知らないけれど、あたしと出会ってからの綾乃ちゃんは人付き合いもよく、娼館のお姉様たちに可愛がられてしまうほどに気配りのきくとても良い子だ。あたし自身も綾乃ちゃんと一緒に旅を出来た事でどれだけ助けられているかわからない。
 「男に戻る」なんて言う目的はあっても、実際何をすればいいのかの当てもない旅だ。もしかすると綾乃ちゃんも自分の体を元に戻したいから付いて来てくれてるのかも知れないけれど、本人がそれを口にすることはない。いずれにしても、例えあたしの体が元に戻る前までに綾乃ちゃんが普通の体になれないのであれば、その次は綾乃ちゃんのために旅をするのもいいかもしれない……これはまだ何年も、もしかしたら何十年も先の話かもしれない。
 ………と、色々と考えるんだけど、未だに綾乃ちゃんがオナニーを途中でやめた理由が思いつかないのよね。
 食事を終え、新しいテントで就いた寝袋の中でも、隣りで眠っている綾乃ちゃんへの考えは尽きていなかった。
 本人は気付かれていると思ってないのだろうけれど、あんなにお尻をモゾモゾされたら、誰だって欲求不満なのだと気付いてしまう。特に綾乃ちゃんの場合、闇属性の魔力を精液として出してしまうのはいい事のはずなのだし、いっそ全部射精してすっきりしてしまえばよかったのだ。
 けれど、そうはしなかった。涙を流して唇を噛み締め、込み上げてくる精液を我慢して……何がそうまでして綾乃ちゃんに忍耐を要求するのかは、さっぱり分からなかった。
 ―――ま、そこまで個人の問題に首を突っ込んじゃいけないよね。あたしを頼ってきてくれれば話は別だけど……
 そう、綾乃ちゃんが頼ってきてくれれば、あたしはきっとなんでもしてしまう。例えそれが、男性としての劣情に駆られてあたしを“犯したい”と覆いかぶさってきたとしても、綾乃ちゃんになら、まあ………これは決してあたしが心まで完璧に女になってしまっているとか、おチ○チンの生えた綾乃ちゃんは中性的でドキドキしちゃうほどかわいいとかそう言う理由ではなく、ただ純粋に、「先輩」と慕ってくれる妹のような存在である綾乃ちゃんの力になってあげたいだけなのだ……多分。
「先輩……」
 ―――そうそう、こんな風に遠慮しがちに弱々しく……って、今の、綾乃ちゃん?
「先輩……起きてらっしゃいますか?」
 ―――いや……起きてはいるけど、な、なんて言うか、心の準備が出来てないところへいきなり声を掛けられて、うわ、どうしましょうあたし!?
 森の中での一件での気恥ずかしさもあって綾乃ちゃんに背中を向けていたので、暗いテントの中では目を見開いて驚いている事はばれなかったらしい。
 声は喉に引っかかり、結局沈黙を持って綾乃ちゃんに応えてしまう……するとあたしの反応がないのを確かめていたのか、数分してから綾乃ちゃんは寝袋から体を起こし、音を立てないようにそっとテントから出ていってしまった。
「………蜜蜘蛛」
 今度はあたしが数分待つ。綾乃ちゃんの気配がテントを離れ、慎重に気配を探っても近くにいないのを確かめると、外にこっそり忍ばせていたモンスターたちを小声で呼び寄せた。



 ―――今度は川でオナニーか……そんなにも体が火照ってたんだ。
 荷物の番にゴブアサシンを残し、あたしは蜜蜘蛛が綾乃ちゃんの背中に貼り付けた糸を手繰ってその後を追う。
 夕食の間の綾乃ちゃんの様子から、もしかしたら真夜中に行動を起こすかもしれないと予測は立てていた。その時の護衛にとジェルをテントの周囲に潜ませておいて外に出た綾乃ちゃんを尾行させ、同様に潜ませておいた蜜蜘蛛にはあたしが追跡しやすいように糸を吐いてもらっておいたのだ。
 けれど、夜の森の一人歩きは危険が多い。テントの周囲には結界杭でモンスター避けの結界を張っているけれど、その範囲は野営地に選んだ空き地のみ。少し離れた川の中にまでその効力は及んでない。
 ―――危険を案じるぐらいなら、あたしが呼びかけられた時に返事をしておけば良かったんだけどね。
 それはそれで色々気まずくて……そうこうしている内に追いついてみれば、綾乃ちゃんが向かっていたのは、そのテント近くの川。そして川原で衣服を全て脱ぎ捨てた綾乃ちゃんは生まれたままの姿で流れの緩やかな川にその身を沈め、パシャパシャ水面を叩きながら突き出した腰の上で右手を上下に動かしていた。
 動かしてはいるのだが……
「ひあっ、はあッ、ダメェ…あっ、やっ…やっぱり…これ以上は……んッ…ヒッ、あグゥ……!」
 跳ねる水が増え、間もなく達しようとする事、既に四回。
 いきなり跳ねる水が収まり、股間から手を離す事も、同じく四回。
 川に身を浸しているのは、火照りを冷ます為なのだろうけど、そんなものとは無関係に回数を重ねる音に射精衝動と言うのは収まる事無く確実に蓄積していく。それは一ヶ月に二〜三日だけ股間にペ○スが生えてしまう綾乃ちゃんと言えど、実際に射精できる以上変わりないはずだ。
 それなのに、射精したくて仕方がなくなっているペ○スを刺激するだけ刺激して、最後の一線だけは決して踏み越えられない綾乃ちゃんの自慰行為は、どれほどの苦痛を伴うか想像できない。あたしの故郷の村で、男友達が「オナニーを何日も我慢すれば我慢するほど射精したとき気持ちがいい」とかバカ話を聞かせてきた事があったけれど、月に一度しか射精の機会がない綾乃ちゃんは果たしてどうなのだろうか?
 ―――それは、あの苦しそうな顔を見れば分かる事よね……
 綾乃ちゃん本人は、射精してしまって苦しみから解放されたいと思っているから、夜中にテントを抜け出してまで何度も射精直前までオナニーをしているはずだ。それなのに「イくにイけず」ではなく「イくにイかず」を繰り返すのには、何か問題があるからなのだろう……と考えは煮詰まるけれど、結論にまでは達しない。
 ―――可能性としてはだけど、射精禁止の類の呪いをかけられたなんて理由もあるにはあるし……っと、綾乃ちゃんがこっちに来た。
 川の中で立ち上がった綾乃ちゃんは今にも消え去りそうなほどに弱々しく見えながらも、仇に纏わり尽く水がつきの輝きを受け止め、どこか背筋が冷たくなるような色艶をかもし出している。
 余計な脂肪はまったくついておらず、ただ女性としての美しさだけを削り出したかのような細身の裸体は芸術的なまでに悩ましく、美しい……もし蜜蜘蛛が手の甲を刺激してくれなければ、あたしはいつまでも水滴の滴る裸体を見つめ続けていたことだろう。
 ………考えるのは後回し。綾乃ちゃんが戻ってくる前にテントにもどって寝たふりしなきゃ。
 女の子と一緒の旅で、ただでさえ用を足す時や沐浴する時には普段から気を使っている。もし覗き見がばれたら、旅の道中が非常に気まずいものになってしまう。
 ―――三十六計逃げるにしかず。あとは……あたしが何とかした方がいいのかもしれないな………


回り道編・第2話03へ