第十一章-番外・娼館設立編 2-1


 アーマキヤと海龍王の旧姓を名前として得た漁村は、娼館の建設が一月を過ぎる頃にはずいぶんと賑わいを見せ始めていた。
 魔力の源を奪われた見目麗しきマーメイドたち……その噂は留美先生の策略も合って瞬く間に近隣に広がったものの、村とは崖と結界によって隔離された場所に隠れ住んで普段は姿を一切見せない。そうする事で訪問者の飢餓感を煽り、たまに遠く沖を泳ぐ姿をチラ見させることでさらに期待感まで煽ることで、富裕層をターゲットにした別荘予定地はほぼ完売。アーマキヤの村にもお城からの使者が来たり、街からギルドの出張所や商店が出店したりと、それまで地図にも載らないような小さな漁村だったとは思えないほどに急速にインフラが整いつつあった。

 マーメイドたちの新しい住居となる娼館も急ピッチで建設されている。その一方で、あたしは「娼婦としての実習」と言う名目の元に毎日のように男の人とエッチなことを繰り返していた。
「ふあァ! くうゥん、だ、ダメ、イっちゃう、あ…あたし、ああァ〜〜〜!!!」
「ルーミットさん、し、締め付けが…ああっ! スゴすぎる、ルーミットさんのおマ○コが、絡み付いて…おお、おおおおおっ!!!」
「はうぅぅぅん!!! くああ、も…八回目なのにィ! 早く、早くあたしの膣内(なか)に、あたしも、一緒に、イくから、だからもう、ゆ…許し……んァああああああああッ!!!」
 腰の上へまたがったあたしのおマ○コに、ずんずんずんずん、と太くて逞しいおチ○チンが乱暴なまでの勢いで突き上げられる。
 ―――娼婦とエッチするのに慣れてない人たちばかりだから……そ、そんなに、滅茶苦茶にかき回されたら、あひぃ! あっ、んん、ラめぇぇぇ!!!
 留美先生が怪しげに光る目で催眠術をかけてつれてくる相手は、奥さんしか女性を知らなかったり、エッチするのさえ初めてのような人ばかり。もちろん女遊びの経験なんてあるはずもない。ドレスに身を包んで娼婦ルーミットモードでそんな人の前へ姿を現すと、たいていの相手は緊張して動けなくなってしまうので、そういった人たちをリラックスさせ、楽しんでもらうためのテクニックをマーメイドのみんなに見てもらうのが、今回の実習の目的なのだった。
 ―――それなのに、どうしてエッチな展開にばっかり……はあァん! は、激しいのは、ダメ、イっちゃうから、またすぐイっちゃうからァァァ!!!
 女性経験は少なく、娼婦と接するのも初めての相手……だけど、みんな体力がものすごい。漁師仕事で鍛えられた筋肉に浅黒く焼けた肌。SEXでは自分のことしか考えられず、乱暴にピストンして射精する流れはみんな一緒なのに、誰も彼もが何回でも連続でエッチできる無尽蔵の体力を持っており、熱い肉棒でヴァギナの壁を掻き毟られたあたしは、胸元のペンダントを跳ね上げるほどの勢いで全身を弾ませ、髪を振り乱して泣きじゃくりながら悶え狂っていた。
 ―――もう…二十時間以上しっぱなしなのにィ! んふうぁぁぁぁぁ!!! おなかの中、こね回されて、んんんんんん〜〜〜〜〜〜ッ!!!
 今回の実習は二十四時間……いつもの倍の時間。しかも相手は四人もいて、あたしは頭の先からヴァギナの中までどこもかしこもザーメンまみれにされてしまっている。
 ―――最初はいい雰囲気なのに……どうして、どうしてあたしが相手するというもこう……!
 眠ることも休むことも許されないままに犯され続けた膣内は、もう触れられるだけで腰の奥に痙攣が走るほどに腫れ上がり、過敏になってしまっている。そんなおマ○コを突き上げられ、子宮口を抉られるたびに悲鳴のような嬌声をノドの奥からほとばしらせてしまうと、自然と口元に笑みを浮かべながら腰をイヤラシくくねらせ、ザーメンまみれにされた乳房を両腕で抱えてあげて、
 ―――も……アクメがぜんぜん収まんな…いィ……!!!
 これは見せるためのSEXなのだと……そう自分に言い聞かせ、より淫靡な女を演じようとする。特に誘惑したわけじゃない。四人の相手全員があたしに好意を持ち……だけどあたしは本当は女じゃない。だからこれは演技なんだって、男と女の営みを見せるためのSEXなんだと頭の中で割り切って、男だって言う理性も捨て去って、当初の目的だって何もかも忘れ去って、ただひたすらにSEXの肉欲にはまり込んでいく。
 ―――でも、見られてる、あたしのエッチしてるとこ、全部全部みんなにぃぃぃ……!!!
 この部屋にはいくつも覗き穴があり、その先では娼館の開館の日まで人前に出ることを禁じられたマーメイドたちがあたしと村の男の人たちとの行為を食い入るように“見学”していることだろう。留美先生の張った時間圧縮の結界によって10倍の時間が流れる部屋の中に、ただ一つ置いてある大きなベッドの上で、数え切れないほどに男性の精液を受け止めた乳房とお尻をバウンドさせて濡れそぼったおマ○コにペ○スを咥え込む姿を、床が軋むほどに男の人の腰を上でよがり狂って、ザーメンでヌチョヌチョにされた全身に何十もの視線が絡みつくハズかしさに身悶えしながら恍惚に酔いしれるあたしの姿を、
 ―――見て……あたしのイく姿を、お願いだからみんな見てぇぇぇ!!! ほら、おマ○コにおチ○チン突き立てられて、ビクビク震えてるのを、もうすぐ射精されるのわかってるのに腰を振るのをやめられないあたしの姿を、おねが…いだからぁ……あ、あたし一人じゃ、もう、受け止めきれないのにぃぃぃ!!!
「そんなにエロく腰くねらせて膣出しして欲しいって、そんなに俺の子供を孕みたいのかよ。しょ…商売で、お、男に抱かれる、スケベ女のくせによぉ! 可愛い顔して、他の男にも腰振って……!!!」
「だって……す…好きなんだもん……ベッドの上じゃ…お客様のこと、大好きになっちゃうんだもん! 愛して、愛してるのぉ! だから、ああっ、イく、イっちゃう、あなたに、イかされちゃう、あなたに抱かれて、気持ちよくなるのぉ!!!」
 ベッドの上じゃ、あたしは自分の身体のことも忘れて淫乱なメスになる……まるで魔法をかけられたみたいに、肌を重ねるのも一時のことでしかない相手の人を心の底から愛しながら、何人もの人に精液をそそがれて生クリームにまみれたみたいになっているヴァギナを絞り上げる。
「ちくしょう! どうせ他の男にも、同じこと言ってるんだろうがァ!!!」
「あっ、あっだめ、ダメぇ、あたし、あたし、あたしぃぃぃ!!! しょうが、ないんだもん、あたし、こんなことしか、こんな形でしかぁ!!!」
 解ってる……SEXしている時だけは何人もの男の人を愛してしまう自分の残酷さも。そしてあたしの言葉を一夜限りのものと割り切れない相手の心の葛藤も。
 脈動を繰り返し、今にも精液を吹き上げそうな巨根が、何度も膣壁とこすれ合って赤く腫れ上がったカリ首で肉ヒダを抉り、膣奥にたまった愛液をグチャグチャと音を鳴らして掻き混ぜる。やがてスパートをかけた腰の突き上げは男の人の身体を起こす動きになり、ベッドへ仰向けに倒されたあたしに覆いかぶさってくると痙攣しっぱなしのおマ○コに荒々しく肉棒を突き入れてきた。
「ちちっくしょう、おら、おらおらおら、大好きな膣出し射精をたっぷりしてやるからな! 孕ませてやる、孕ませてやる、孕ませて、孕ませて、絶対に俺だけの女にしてやるんだからなァ!!!」
「う…うん、孕むの。孕んだら、あたし、ずっとこの村でぇぇぇ♪」
 頭の中がピンク一色になってるから、自分でなに言ってるかなんて解らない。
 でも……このまま女として、男に戻ることも忘れ、愛する人と幸せに過ごす日々を……そう想像した瞬間、あたしの身体にこれまでにない絶頂の痙攣が駆け巡り、同時にあたしの子宮口に亀頭をめり込ませたペ○スから、長時間かけて煮詰められた濃縮ザーメンが子宮の中へと直接注ぎ込まれてきた。
「お、おおッ、そんなに締め付け…!」
 ―――んあああああァ……孕んじゃう…こ、こんなに濃いのをこんなにたっぷり出されたら、誰かの子供、ホントにあたし妊娠しちゃうぅぅぅ!!!
「あ……ル、ルーミットォ………♪」
 瞬く間に胎内を満たした熱い粘液の感触に、あたしの身震いは収まらない。相手の背中と腰に両腕と両足を絡みつかせ、母乳を噴いたみたいに白く穢された乳房を相手の胸板に押し付けて押しつぶしながら、下腹部からこみ上げるオルガズムの……女の幸せを運んでくる大波に、声も出せずに震える唇から蕩けるような吐息をこぼしていると……白濁にまみれた肉棒がチュポンと音を響かせてあたしの膣口から抜け落ちた。
「ん…ぅ………」
 さっきまで熱い肉棒に埋め尽くされていたおマ○コが、途端に寂しさからわなわなと痙攣し始める。
 相手の人は汗にまみれた身体でベッドに大の字になり、精根尽きて気を失っていた。そんなになるほどあたしの中に注いでくれるなんて……いささか変質した愛情ではあると思っても喜びが胸にこみ上げ、だけどその胸にもたれ掛かって、一緒に眠りに落ちることはできない。
 十人が一度に乗れそうなキングサイズのベッドの上には、他に三人の男性が眠りに落ちている。その誰もが、あたしのおマ○コに精液を注ぎ込んでくれた人たちばかりだ。―――だから、あたしを愛してくれた人みんなを平等に扱わないと不公平になる。
 ―――相手はお客様で、あたしは……あたしは……
 あたしは、男で、娼婦で、いずれはアーマキヤを立ち去らなきゃいけない流れ者の冒険者だ。―――その事実を噛み締めると、口の中に苦いものが広がる。ああ、きっとこれは精液の残滓だよねと自分を納得させると、力の入らない足腰で苦労してベッドを降りる。
 そして身体の表面を流れ落ちる汗と精液の感触に眉をしかめ、床に落ちていたシーツを巻きつけてから部屋の扉を開けて外に出ると、
「「「お疲れ様でした、ルーミットお姉さま♪」」」
 ………ああ、そういえばすっかり忘れてた。
 この後は、マーメイドたちの方の実習……と言うか、さっきまでの実習の相手は男の人たちで、今度はあたしが実習の相手になる。
「あの……さすがに今日はもう、いろいろと限界だから、このまま休ませてくれたらうれしいな〜と思うんだけど……」
「そんなのいけません! まずはお風呂で珠のお肌をきれいに綺麗に洗わせてください!」
「タオルなんて使いませんわ。私たちの舌と胸とで丹精こめて磨かせていただきますぅ♪」
「風呂上りは……わかってるやろ? うちらもう……指なんかじゃ満足でけへんようにされてしもうたんやもん……♪」
「ああぁん……お、お姉さま、お姉さまが私たちの処女を奪って、こんなにしたんだから…責任取ってくださらないとぉ……♪」
「は…ははは……」
 こりゃ腹上死も近いかな〜……そんな考えが顔に出ないように引きつった笑みを浮かべるあたしの手をマーメイドたちはみんなで引いて、先に完成した娼館住居部分の大浴場へとなすがままに連れて行かれてしまうのだった―――


 −*−


「―――で、やっと解放されたあたしはなんでこんな森の中にいるのかな……」
 最後にシャワーでお互いに――と言ってレズ乱交のその真ん中で幾度も気をやった上で、身体中にこびりついた汗や精液などSEXの残滓を拭い取り、まだ元気が残っていた人に後始末されてしまったのだけれど、気がつけば森にいた。
「いやいやいや、思い出そう。たしか、部屋に戻る途中で留美先生に呼び止められて……」
 身体にまだ残る浮遊感は転移魔法独自のもの。と言う事晴海先生の魔法でこの場所に運ばれた事になる。
 うんうん、いい調子で思い出してる。さて、呼び止められて何を話したのか、その内容を真っ白い記憶から呼び戻そうとして頭を捻っていると、ふと手の中に何枚かの羊皮紙が握り締められていることに気付く。
 それは、なぜか冒険者ギルドからの依頼書だった。
 ………あー、そう言えば、村に冒険者ギルドの出張所ができたんだっけ。それで―――
『このあたりの森にイタズラものの妖精が出るらしい。たくや、今日中に行って追い払ってこい』
 疲労や眠気は、出発前に回復魔法で無理やり取り除かれた。それでもはっきりしない頭は話を半分どころか八割も聞いていなかった。そしてそのまま身体の重たさを感じながら準備を整えたら、こめかみに青筋立てた留美先生がいきなり転移魔法。―――で、森の中で気持ちのいい木漏れ日を受けて徐々に意識が目覚めてきて今に至るというわけか。
 ―――ううう、これって完全に超過労働じゃない。娼館ギルドの基準違反だよぉ……
 はっきり言ってアーマキヤでの生活は地獄そのものだ。既に体感時間は一ヶ月どころか三ヶ月ぐらい。なにしろ睡眠時間は削られる、時間圧縮した部屋へ放り込まれる、そんなことをしていれば一日が実際に二倍三倍と長くなる。けど一日の食事回数が増えるわけでもなく、過度の運動のせいでウエストがまたくびれてきてしまいそうだ。
 だからもっと休ませて欲しい……と、そんな反論しても留美先生に通じるわけがないのは解っている。そもそも自由気ままな冒険者に労働時間云々の概念が通用するのかさえ不明だ。
 ―――なんにしろ、一休みいれなきゃやってられないし。あ〜も〜、ここで昼寝しちゃおっかな。
 装備一式は身に着けていても、背負い袋は持ってきていない。だからテントや毛布はないけれど、寝るだけだったらそこらの草むらで十分だ。あたしは手ごろな場所に身を横たえ、大きく口を開けて大欠伸をすると、ムニャムニャしながら手に持つ依頼書を眼前にかざしてないようにざっと目を通す。
 なにせ、休憩をいれるのとこれは別の話だし。その妖精とやらを退治しないと帰れず、お金もなく、森の中で路頭の迷う羽目になる。
 ―――この周辺の地図もちゃんとついてる。これなら帰り道で迷うことはなさそうだけど……妖精か。面倒くさい相手よね。
 眠たい目を擦りながらも、頭の中は留美先生への批難から依頼の妖精退治へと切り替える。
 妖精―――そう聞いて普通の人が想像するのは、フェアリーのような小さな身体に透明の羽の生えた可愛らしい姿だろう。事実、亜人認定されている妖精種のフェアリー族はそのような姿をしており、肩に乗れるような小柄で愛らしい姿からファンも多い。先日のマーメイドの拉致事件と同様に、フェアリーを拉致して密売すると言う事件も起こったほどだ。
 しかし、妖精とはそんな見栄えがいいものだけではない。なにせ「妖精」という種族には、ゴブリンやコボルトなど、後に“妖魔”としてカテゴライズされるモンスターも多く含まれていた。つまり「モンスター」と同じ意味で以前は使われていたのだ。それがフェアリーのような知性を持つものを亜人の中でも“妖精”とグループ分けしたので、そこから外れた凶悪なものを“妖魔”としたわけだ。
 さらに説明を追加すると、妖精にはイタズラ好きなのが多い。だからこそ当初は妖魔と同一の分類だったのだけれど、妖精がたくさん暮らす地域では結構な被害が出ているとも聞く。それに一部には“精霊”の力を濃く受け継いでいる種族もいて、身体が小さくてもそれを補って余りある魔力を有しているケースも多い。
 ―――だから見掛けは小さくても油断はできないのよね。魔法とか使われると厄介極まりないし。
 凶悪な攻撃魔法を使ってくると言う訳ではないのがせめてもの救いか。故郷のアイハラン村も魔力の満ちた土地柄ゆえに妖精も多く、そのイタズラから店の商品を守るためにあれこれがんばったのも、記憶にはっきり残っている。
「面倒な相手なのよねぇ……ん〜……眠い……おなか空いた……」
 エッチの実習が終わってから休む間もなくきたものだから、疲労はともかく空腹がキツい。左腰のポーチに携帯食を入れてあるので、それでともかく空腹を紛らわせよう……そう思い、依頼書を右手で畳みながら左手を腰に伸ばす。
「………あれ?」
 ポーチの蓋が開いている。宿屋で装備するときに誤って開いたのかな?―――と適当な理由を思いつくけど、それでなぜか納得できない。
 ―――いや〜〜〜な予感がするんですが……
 ともあれ、非常食はその中だ。何かに噛み付かれたりしないかとポーチの中へおずおず手を入れ、中をまさぐってみると、
「………まさか、こんな形でご対面とは思わなかった」
 食べやすいように棒状に固めたスティックサイズの固形の携帯食。干し肉よりもドライフルーツを入れてあるそちらの方がお気に召したのか、抱きかかえるようにしてかぶりついている“男の子”をポーチの中から引っ張り出す。
 大きさは10センチ強。背中には空気に溶け込んでしまいそうなほどに透明な四枚の羽根。真っ白い肌に、股間には小さいけれど立派なおチ○チンがついている姿。―――ここまで間近で見たことはないけれど、その姿かたちには多少見覚えがある。―――シルフ。妖精の代名詞とも言われている、風の精霊の力を色濃く受け継いだ妖精種族だ。
「出没する妖精ってシルフだったんだ……けど、なんで髪の毛が黒いんだろ」
 まあ……相手は妖精だし、散っちゃいの丸出しにしてるからって、過剰に反応したりしない。元々男なんだし、見慣れてるし、こんな爪楊枝みたいのよりもっと大きいのを何度も見せ付けられてきたのだ。でも小さいのに皮をちゃんとかむってて……と思わず確認して視線をそらしたのは、何もドキッとしちゃったからでは決してない。断じて違う。そうなのだ。
 でも髪の毛の色の違和感は、目も意識もそらせないものだ。シルフは風の妖精らしく、羽根も髪も透き通るような色をしているはず。それなのに他の部分はともかく髪の色だけは黒。新種か突然変異か知らないけれど、
『……………むきゅ?』
「あ、あはは、えっと……こ、こんにちは? 言葉、ワッカリマスカー?」
 ―――て、あたしはバカか。なに動揺してカタコトになってるのよ。
 妖精――特にフェアリーや目の前にいるシルフは人間や他の亜人と比べると、はるかに小柄だ。だからあたしたちとは何が一番違うのかと言うと飛べること、そして二番目に違うのが発声なのだ。
 ―――だから妖精とのコミュニケーションには言語の壁があって、なかなか上手くいかないのよね。
 声が違うから言葉が通じにくい。人と接する機会の多いフェアリーならともかく、自由気ままなシルフだと人の言葉に馴染んでいなくて、こちらの言葉を聞き取れない、言葉のそもそもの意味を理解できないというケースが多いらしい。
『……………アハ♪』
 そしてやや失敗気味のファーストコンタクトもあってか、それでも自分に向けられた声に気づいて顔を上げた黒髪のシルフは小首をかしげて「なに言ってるの?」って顔をして、それでも盗み食いを見つかった気まずさから無理に笑顔を浮かべて誤魔化そうとして……ううう、な、なんかさっきから仕草が可愛らしくてキュンってきちゃってるんですけど……でもこれは、たとえば犬猫の赤ちゃんを可愛いって思うようなもので、別に男の子をかわいいと思ってるわけじゃない。そのはずだ。そうじゃないと困る、いろいろ。
「まったくもう……でもま、これで依頼は完了ってことでいいのかな。イタズラものの妖精ってキミの事でしょ?」
『……………?』
「か、可愛いなんて思ってないんだからね。それにいくらなんでも、シルフのキミとあたしとじゃ身体の大きさがぜんぜん違うもん。だから襲われる心配なんて全然してないし。うんうん、そういう意味じゃ今回のお仕事って”安全”だったわけよね」
『……………ぽ〜……』
「うっ……か…かわいそうだとは思うけど、この森で悪戯してたのってキミの事でしょ? 人の食料、勝手に食べちゃったし。だからあたしはキミを捕まえにきたの。わかる?」
『……………♪』
 あたしの話を完全に聞いてない……と言うか、なんか反応がおかしい。
 首根っこをつままれて宙吊りにされているのに、背中の羽根を動かして飛んで逃げるでもなく、ジッとあたしの顔を見つめている。その頬はうっすらと赤くなり、食べかすをつけた口元をぼんやりと開くと、半分ほど残っている携帯食を胸に抱きしめて腰を引いて……するとなぜか、指に感じるシルフの重さが急に大きくなっていく。それを不振に感じて目を凝らすと。
「っ………!」
 食事をしたせいだろうか、麺棒の先よりもっと小さい股間のモノが頭をもたげ、ピクピクと小さく震えながら勃起し始めていた。
 ―――食欲の次は性欲ってこと…でいいのかな? そう言えば妖精に妊娠させられた子供が英雄になったとか言う御伽噺があったようななかったような……
 と言うことは、人間と妖精とでもエッチが可能なのだろう。この子がどう思ってるかは解らないけれど、抱えた携帯食で口元を隠しながら上目遣いで熱っぽい視線を向けてくる仕草は、どう見てもつい数時間前まで相手をしていた村の男性たちがあたしを見る目に酷似していた。
 ―――エッチができないわけじゃないけれど、だ、だからってするわけないし……とにかく依頼は妖精捕まえて果たしたんだし、さっさと村に帰って、あたしは一眠りするんだから!
 と、強引に割り切ろうとしても、穢れをまるで知らないようなシルフの無垢な瞳は、まるで魔眼のようにあたしの心を捉えて離さない。小さいと言っても、相手は男の子。男性からも女性からも散々弄ばれ、たわわに成長してしまったあたしの胸が、奥のほうからジィン…と重く、そして熱く疼きだしてくる。
 あたしはSEXしたがる淫乱な女なんかじゃない……と思ってはいるんだけれど、相手が可愛い男の子の時は、なんていうか、別の思考のスイッチが入ってしまうっぽい。
 甘えさせてあげたい。慰めてあげたい。それから、いろいろと教えてあげたい……服の下でブラに締め付けられ、みっちりと中央に寄せられている谷間に汗が流れ落ちていくほどに身体は熱を帯びていく。収まりかけていた肉欲という名の興奮は、いくらなんでも肌を重ねるには小さすぎる妖精の少年に反応して昂ぶり、胸の先端がムズムズと下着の内側を押し上げだしてしまっていた。
『……………せっくちゅ』
「あっ……言葉、喋れるの?」
 てっきり話せないと思っていた相手の口からはじめて出てきた言葉と、その意味に、驚きを隠しきれない……けれど、シルフの子が腕を解き、抱きしめていた携帯食料を手放すと、あたしは更なる驚きに息を呑んでしまう。
「や…スゴく大きい……な、なんで……」
 勃起し始めたからといって、全裸の妖精の股間がズボンの中で突っ張ってしまうはずがない。あたしに摘み上げられたまま男の子が腰を引いていたのは、単にバランスが悪いから……10センチほどしかない身体なのに、その身体の大きさを超えるほどの肉棒が股間からぶら下がっていた。
 ―――信じられない。妖精のおチ○チンが、こんなに大きくなるなんて……
 長さだけじゃない。バランスをとるためにシルフが携帯食の代わりに両手で抱えたペ○スは太さだって人間のものに遜色はない。上を向いて頭の高さを越えた亀頭部分は包皮からずる剥け、けれど一度も使ったことがないようなきれいなピンク色と、舐めて欲しいといわんばかりの裏筋部分をあたしの眼前にさらしている。
 ―――本当にこれ……本物なのかな……
 まるで柱の影から覗くように、おチ○チンの向こう側からおずおずと視線を向けてくるシルフの可愛らしさに……カチッと、スイッチが入った。完全に。
「そんなに……SEXしたいの?」
『せっくちゅ? せっくちゅ、せっくちゅ、せっくちゅせっくちゅせっくちゅう!!!』
「ふふふ、しょうがないなぁ……他の人に悪戯されたら困っちゃうもんね。だから…だからあたしが、キミの初めてを奪ってあげる……♪」
 シルフが童貞かどうかなんてわからないけど、仕草からなんとなくそう判断する。それに、そう思うほうがあたしが興奮する。だからこの子は童貞なんだって決め付けると、あたしは両手で彼の身体を下から支えるように持ち替えると、お人形にキスするような気分で小さな唇に優しく口づけをする。
『……………んっ♪』
「お気に召した? 女の人とエッチなことをしたいなら、ちゃんとこういう手順は守らなきゃダメよ?」
『……………ふあぁい♪』
「もう。ちゃんとわかってるんだかわかってないんだか……♪」
 でもそういうところは今はもう全部愛らしく、愛おしい。
「今日はあたしが全部してあげる……こういうところで服を脱ぐのはハズかしいんだけど……」
 軽く手で押し上げると、あたしの意を悟ったシルフが、羽根から青白い魔力光を撒き散らして宙に浮かび上がる。綺麗だなぁ……妖精の飛ぶ姿に心を奪われかけたあたしは、今度は彼の心を奪うために、肩鎧のついたジャケットを地面に脱ぎ落として、シャツをたくし上げる。
『……………わあぁ♪』
 戦闘行動ができるよう、ボリュームのあるバストを下からしっかり支えるブラの結び目を、背中に手を回して解く。すると小さな布地は内側から押しのけられ、肌から離れてハラリと舞い落ち、メロンのように丸々としていて水蜜桃のようにみずみずしい膨らみがあらわになった。
「吸ってみたい? いいわよ、口をつけてみても……」
『……………?』
「ええ、本当よ。右でも左でも、キミの好きなほうから……ね♪」
 再びシルフを手のひらに乗せると、あたしは彼を自分の胸の前に位置どらせる。そこからならどちらの乳首にも手を伸ばせば届く位置。今もにも達しそうなほどに赤い顔で切羽詰っている彼に思う存分しゃぶりついて欲しくて……いや、しゃぶりついて欲しかったんだけど、
「んあっ!!!」
 男の子が選んだのは、両手を広げて乳首両方を小さな手で握り締め……あまつさえ、手を離して自由になったおチ○チンを汗でムレムレになっているあたしの乳房の間へ突き立てることだった。
『んぁぁぁぁぁ……………!!!』
「もう……そんなにオッパイ大好きだったんだ。いいわよ、あたしのオッパイならいくらでも犯して……♪」
 だけど話はそう甘く行かなくて……口元からよだれをたらして『いいの?』って小首をかしげるシルフと視線を絡ませ、あたしは赤らめた顔を頷かせた直後、近くの茂みがガサガサと音を立て、
「そこに誰かいるのか!?」
 あたしはすかさずシャツを下ろし、シルフごと胸を隠さざるを得なくなってしまった―――