第十一章「賢者」46


「スペリオン、ミノタウロス、スレイブニル! いつまで寝取るんじゃ、そいつらを蹴散らせェ!!!」
 マズい……金玉を粉々にされたことで、エロ本がついに忘れていたモンスターたちの事を思い出したらしい。
 あたしが“魔王”なら、あちらも“魔王”。魔封玉とは異なるようだけれど、モンスターを従えていることに違いはない。
 そのエロ本の一声で気絶していた半人半馬のスペリオン、半人半牛のミノタウロス、八本足の軍馬スレイプニルが次々に立ち上がり、あたしたちに向けて襲い掛かってくる。しかもスレイプニルの向かう先は―――
「綾乃ちゃん、今すぐ逃げて!!!」
「え、え、え?」
 あたしと魔王のやり取りに飲まれていた?―――なんにしろ、綾乃ちゃんは逃げるタイミングを失ってしまっている。スレイプニルの蹄がすぐそこまで迫っているのに、どうすればいいかの判断を恐怖のために迷い、困惑し、「魔法で撃退」「逃走」と言った有用な選択肢を奪い去られていた。
 そして選択肢を失ったのはあたしも同様だ。逃走を促す叫び声を上げた途端に左半身を中心に駆け巡る激痛に苛まれ、綾乃ちゃんの救出に向かうことはおろか、崩れ落ちて跪き、そのまま立ち上がることさえ出来なくなる。
 このままでは綾乃ちゃんに残されているのは「蹄による蹂躙」と言う最悪の結末だけだ。固い岩盤を踏み抜くような力強さで突進してくるスレイプニルの射程に完全に収まってしまった以上、逃げることは不可能……なのだが、
『グォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』
 そんな綾乃ちゃんを救うべく、お腹の傷が開いたはずのポチがスレイプニルに横から体当たりを仕掛けていた。
『ブヒヒヒヒィィィィィィィン!!!』
『ガルゥ! ガァアアアアアアアアアアアアアッ!!!』
 咆哮を上げ、黒い毛並みに先決の赤を撒き散らしながら、スレイプニルよりも一回り小柄な身体で、何度弾き飛ばされても繰り返し体当たりを行うポチ。その甲斐あって綾乃ちゃんへの突撃軌道からはスレイプニルは逸れたものの、今度は傷ついたポチが攻撃の対象となってしまう。
「くっ………!」
 先ほどは上手くモンスターを召喚して倒した三体の敵モンスターだが、正面からのぶつかり合いとなると、こちらの分が悪い。
 スペリオン、ミノタウロス、スレイプニルの三体ともが、こちらでは最大のシワンスクナよりも一回り以上は身体が大きい。体躯の差はそのまま力の差でもあり、小柄なモンスターが多いこちらの戦力ではどうしても押し負けてしまうのだ。加えて、融合モンスターのジェルスパイダー、ナインヘッドヒドラを呼び出すための鍵であるスライムのジェルも、先刻の寺田戦で蓄積していた魔力をほぼ使い果たしている。
 疲労しているのは他のモンスターたちも同じだ。プラズマタートルも電力不足で、援護程度にしかならない弱い電撃しか放てていない。シワンスクナは今度はスペリオンのスピードに翻弄され、オークでは純粋な力比べてミノタウロスに勝てるはずがない。ジェルも蜜蜘蛛も魔力は空っぽ、バルーンもあたしを乗せて飛んだことで体力を消耗しており、ある程度元気なのはゴブリンアーマーズだけれど、それが加わっても押されている事実に変化はない。綾乃ちゃんの魔法援護が加わっても同様だ。
 もしこの状況で、単体ででも左右へと飛ぶ敏捷性を駆使してスレイプニルを辛うじて押さえ込んでいるポチを呼び戻せば、戦局は一気に傾き、あたしたちは無残に蹂躙されるしかなくなるだろう。
 しかも、
「せ、せせせ先輩、足元からお骨さんがぁ〜〜〜!!!」
 一度あたしも足を止められたスケルトンたちが、またも地面から腕を突き出し、こちらの足を絡めとる。スクナやオークなら振り払うことも出来るけれど、小柄なゴブリンアーマーではそれも無理。どちらにしろ機動力は削がれ、スペリオンとスレイプニルと言う走り回ることにかけてはこちら以上の二体を相手にするには圧倒的不利を背負うことになる。
 また、このスケルトンは直接的な攻撃力はないものの、精神的なダメージは与えてくる……綾乃ちゃんが速攻で気を失った。
「お…おばけぇ〜……」
 人の白骨そのものの姿のスケルトンでは、同じ死霊のゴブリンアーマーとは見た目のインパクトが違う。スケルトン・トラップの発動で今まで持続していた緊張が悪い方に切れてしまい、綾乃ちゃんは目を回して気を失ってしまう。
 さらに不利な条件ならまだある……さっきから、エロ本を抱えた少年が魔力を高め、高威力魔法を放つ準備をしているのだ。
「くっくっく……潰してやる。ぺちゃんこにしてやる。押し花にしてやる。オッパイもんでやる……」
 そんな不気味な呟きを囁きながら、徐々に組み上げられていく高レベル魔法の魔導式。あと一分か二分か。時限爆弾の残り時間はそう多く残っていないはずだ。
 ―――もう、あたしと綾乃ちゃんじゃどうしようもない。残る手段はただ一つ……だけなんだけど……
 魔力と体力が尽き、精神力だけで意識を保ちながら、あたしは顔を留美先生へと向ける。
 そもそも、ここまで苦戦するのは留美先生にも原因がある。ポチの怪我もそうだし、あたしの体調不良も留美先生のせいだ。ならば何と言われようとも、その分の協力はしてもらうつもり……だったのだけれど、その当人は、
「くっ……くく…プッ……ッ―――!!!」
 あたしに背を向け、笑いをこらえるのに必死になっていた。
「留美センセェ、こんな時に笑ってないで助けてよォォォ!」
「すまん……だが…お、お前と魔道書の掛け合いが……い、いかん、思い出してツボに…くッ――……!!!」
 ―――終わった。最大戦力がこの有様じゃ、こちらの負けは揺るがなさそう……
 あたし的には、魔王のエロ本とのやり取りなんて頭痛の種でしかないのだけれど、留美先生はいっそ大爆笑すればいいのにと思ってしまうほど、苦しげにお腹を抱え込んでいる。あの様子では、とてもではないけれど援護など期待できそうもない……もはや、最後の頼みの綱が切れたも同然。
 残された選択肢は、どうやってこの場を逃げ出すかだ。辛うじて拮抗状態を保っているモンスター同士の戦いだけれど、こちらが下手を打てば、すぐに均衡は崩れてしまう。
 せめて寺田戦でそうしたように、あたしが全モンスターと意識をつなげて動きを統率すれば、より組織立った動きも出来るかもしれない。だけど複数にして複種類のモンスターの知覚を同時に感じ取るのは今の疲弊しきった精神状態ではキツすぎる。やろうとしても共有した知覚を処理しきれずに発動できないだろうし、発動できたとしても一瞬で気を失うことは目に見えている。
 ―――あの時は目も閉じて息もとめてたし……第一、あたしが今以上に動けなくなるのもマズい……!
 返す返すも、五体満足でないことが悔やまれる。貧血で意識が朦朧とした体調で繰り返した無茶が、最後の最後であたしの身体から自由を奪い、刺し違えることすら叶わない有様だ。
 ―――と言って、あのバカ本におめおめ負けるのもイヤだし……だったら最後まで足掻いてやろうじゃないの!
 どうせ体中の骨が折れていて身動き取れないんだから、何をしたって今より状況が悪くなることはないはずだ。
 エロ本をバカにして囮になる。エロ本にオッパイを見せて油断を誘う。エロ本にエッチなことさせて寺田の時のように一発逆転を狙う……覚悟を決めれば、まだこれだけの選択肢が残っていることに気がつけた。大丈夫、エロ本ならあたしをすぐに殺すようなことは―――
「ハーッハッハッハッハァ! ペチャンコになって我が世界征服の野望の礎になってしまえェ!!!」
 ―――うわ、作戦変更。もう一秒の余裕もありません〜〜〜!
 逆上して周りが見えなくなっているエロ本は重力魔法を構築し終える。後は手を振り下ろすだけで、この場にいる全員が言葉どおりに真っ平らにされてしまうだろう。
 もう一秒の猶予もない……ならばと、あたしが今度こそ本当に胸をさらけ出すべきジャケットの首元に手を伸ばすと、不意に肌がざわめき、傍らに転移してきた留美先生がその手を抑える。
「安心しろ。援軍が来たぞ」
「援軍って……」
 ―――笑い疲れて涙目になってる人にそんなこと言われたって、信じられるとお思いですか!?
 それにもう、重力魔法は放たれる寸前だ。指を鳴らすだけで魔法を発動で切る留美先生なら防げるかもしれないけれど、現在、そんなそぶりは一切見せていない。
 残り時間は十秒もない……そんな時に援軍が来たところで何もかもが手遅れだ。いまさら気休めを言われたところで、余裕などもてるはずもない。
 ―――とは言え、来てくれそうな人って言うと留美先生の従者のデュラハンさんか、引き連れていったマーマン三体ぐらいかな。村の人は敵の可能性が高いし……
 デュラハンさんとマーマンの両方が来たとしても、巨躯のモンスター三体と一応魔王で重力魔法を巧みに操るエロ本を相手にするには、戦力として心もとない。例え留美先生が戦列に加わってくれるにしても、今は放たれようとしているエロ本の魔法を防がなければならない……のだけれど、


『貴様らか、わが聖域を穢す不届き者どもは――――――!!!』


 突然聞こえた大きすぎる声に耳をふさいだ直後、あたしが魔力剣で切り裂いた岩壁が内側に向けて破砕し、飛び込んできた何かがエロ本を抱えた少年の身体を吹っ飛ばした。
「ケブホォ!!!」
 まるで馬三頭引きの軍用大型戦車にでも跳ね飛ばされたかのように、錐揉みしながら反対側の壁に叩きつけられるエロ本とその持ち主。
 ―――あと数秒で勝てたであろうに、なんと運の悪い……
 あたしだけでなく、戦闘中のミノタウロスやスペリオンまでもが、主人の末路を呆然と見上げたぐらいの吹き飛ばされっぷりだ。大の字で壁に張り付く姿は、とてもではないけれど魔王と呼べるような威厳も何もあったものではない。
「たくや、ぼ〜っとしていると死ぬぞ?」
「へ………?」
「上だ、上を見てみろ。面白いものが見えるから」
 何が起こったのかわからないまま呆然としていたあたしは、留美先生に言われるがままに頭上を見上げ、
「げっ……!?」
 エロ本をふっ飛ばした“何か”によって砕かれた岩壁の破片が、広範囲にわたって降り注いでいた。小さいものなら小石程度だけれど、人間の頭サイズのものも大量に混ざっており、最大のものでは人間を押し花に出来そうなものまで。そしてその最大の破片は、ちょうどあたしの真上から落ちてきていた。
 ―――こ、これなら色仕掛けの聞いたエロ本のほうがまだマシだ――――――!!!
 身を守ろうにも逃れようにも、手足もまともに動かせないのでは物言わぬ岩にはどうしようもない。
 終わった……地面を転がろうとも逃げ切れない。そんな確実な死が迫ってくるのを見つめていると、隣に立つ留美先生が右手を掲げ、パチンと指を打ち鳴らした。
 ―――破砕。
 それはもう木っ端微塵と言う言葉がピタリと当てはまるほどの崩壊振りだ。あたしが魔力ハンマーで吹き飛ばすのと同じぐらいの大規模破砕は、最大の破片を砕いただけでは収まらず、契約モンスターたちにも襲い掛かってきていた無数の破片まで、その余波だけで跳ね飛ばしてしまう。
「………こういう事ができるんなら、最初からやってくださいよ、本当にもう……」
 上を見上げて疲れた首をがっくりとうなだれながら、あたしは右手を真横に振る。
 危機を脱した今が、最大の反撃のチャンスだ……例え相手が三体でこちらの戦力を押し返せる強力な力と体躯を持っていても、あたしと言う統率者がいるといないのとでは、とっさの状況で次の行動に移る早さが断然違う。
 ―――相手はほとんど筋肉バカ。主人がやられて、破片からも逃げようとしていた今なら……!
 上を見上げていたミノタウロスはオークのポールアックスに足を引っ掛けられ、仰向けにひっくり返されたところをゴブリンアーマーたちも加わった袋叩きでトドメを刺された。
 破片から逃げようとしていたスペリオンは留美先生の魔法の余波で驚き硬直しており、その背中にシワンスクナの拳と蹴りと金棒が容赦なく叩き込まれる。
 そしてポチと競り合っていたスレイプニルは……
『ブヒイィィィィィィン!!!』
『グルァアアアアアアァ!!!』
 ―――マズい、ポチとあの馬だけが周りまったく見えてない!
 腹部から血を滴らせながらも死力を振り絞っているポチと、その熱気に当てられたスレイプニルだけは、壁が砕けようが岩が降り注ごうが戦うことをやめていなかった。
 スレイプニルの突進力の前では距離を置いて炎を吐くこともままならず、互いの身体をぶつけ合う肉弾戦しかない。けれどポチの出血量から見て、もう瀕死なのは間違いない。
「ポチッ!!!」
 こんなところで座り込んでなどいられない。
 スペリオンとミノタウロスを倒した他のモンスターたちも、助けに向かおうとするあたしの意思に反応して、炎獣と八脚戦馬の死闘へと目を向け、駆け出し始める。
 けれどその動きは……またも留美先生の手で制されてしまう。しかも、なぜか真上を指差しながら。
『そこの犬ッコロ。巻き込まれても知りませんからね!』
「ほにゃああああああああああああっ!!?」
 その“声”が聞こえてきたのは、確かに頭上からだった……けれど、これは本当に“声”なのだろうか? 大空洞をそれだけで粉砕してしまいそうな巨大な咆声に耳を塞ぎたくなるものの、左手が血まみれではそれも無理。溜まらずあたしは叫び声を上げ、地面の上をのた打ち回った。
 ―――いったいどんだけの大声上げてんのよ、どこぞバカは!?
 ただ一人平然としていた留美先生は、どうせ自分の周りにだけは大音量を遮断する障壁でも張っているのだろう。スケルトンを簡単に風系の魔法で払い飛ばし、綾乃ちゃんを助けてくれてるから文句は言えないけど……とりあえず一言文句を言ってやろうと頭上を振り仰ぎ、あたしはあんぐり口をあけて言葉を失ってしまう。
 ―――これって……
 そこにいたのは、蛇のものかとも思う長い首だった……けれど、スケールがまるで違う。篝火の光の届かない大空洞の天井、そこにわだかまる暗闇にその頭部は届いている。首の太さも、あたしが両手を伸ばして抱えても全然足らないだろう。
 その表面は魚のような鱗に覆われており、まるで磨き抜かれた刃のように壁の亀裂から差し込む光を跳ね返している。そして首の付け根を探して視線を亀裂の外に向ければ、さらに広がった岩壁の裂け目すら通ることの出来ない、まるで山のような巨体の一部だけを覗き見ることが出来た。
 ―――サーペント……どころじゃない。もしかして、まさか……!?
 否定する情報は何一つない。亀裂の向こうに見える巨体には翼の代わりに魚のような背びれが見えるけれど、海に住む種族もいると聞いたことがある以上、まず間違いないはずだ。
「ドラゴン……」
 この世界において最大最強の名を欲しいままにするモンスター……その強大な力に反比例して個体数は少なく、遭遇する確立など事故や天災に逢う確率より低いとされながらも、一夜にして国ひとつを滅ぼした伝説すらある、まさにモンスターの王者と言っても過言ではない存在だ。
「初めて……見た……」
 恐ろしくも身が震えるほどにその姿は魅惑的だ。存在自体が圧倒的過ぎるドラゴンの勇姿に目を奪われ、我知らずため息をついていると、傍らに戻ってきた留美先生が、
「早くモンスターたちを呼び戻さないと、全滅するぞ」
「ほえ……?」
「彼女はこの地の王……南海を統べる海龍王。かつて怒り狂った彼女は津波を呼び、雷雲を呼んだ最凶の暴虐龍だ」
 ―――てかこのドラゴン、メスなんですね……
 そう突っ込もうとしたけれど、背筋が凍りつきそうな悪寒に襲われ口を噤む。
 留美先生が“海龍王”と呼んだドラゴンは首をうねらせて頭を下に向けた。
 ―――目が……ない?
 身体をぶつけ合うポチとスレイプニルをまっすぐ見つめているようにも思えるけれど、その頭部には目に当たる場所に何もなかった。ただノコギリの様に並んだ鋭そうな歯が覗く口が浅く開いており、
「ドラゴンといえば……ぶ、ぶぶぶぶブレスですかァ!?」
 種族によっては火を吐き、雷を吐き、吹雪を吐き、毒まで吐くドラゴンのブレス。その一吹きで軍隊が壊滅したなんていう話は子供でも知っている話だ。―――まさか“それ”を実際に目の当たりにするとは思わなかったけれど、
「残念ながら、あいつのブレスはウォーターブレス……私との戦闘で、たくや、お前のモンスターがして見せたような水流のブレスだよ」
「じゃあ……」
 留美先生の説明を受けても、背筋の震えは収まらない。いや、ますます激しくなり、全身がガタガタと激しく増えだす始末だ。
「みんな、今すぐ戻って!!!」
 骨が軋むけれど、そうも言っていられない。海龍王が何をするのかと身構えていたモンスターたちは次々とあたしの手の中に戻って魔封玉に封じられていくけれど、ただ一体、スレイプニルと戦闘中のポチだけは戻ってこれないでいた。あたしの方へ顔を向けるとスレイプニルに体当たりをされて邪魔をされるのだ。
「ポチ、早くして!」
『グルゥウゥゥゥゥ………!!!』
 噛み締めた歯の間からこぼれる声からもポチの焦りが伝わってくるけれど、スレイプニルを引き連れたままでは駆けて戻ってこれない。
『我が“聖域”を獣臭いモンスターどもが穢しおって……身の程を知るが良いわ!!!』
 くる!………ポチが懸命に戦っている内に、海龍王の顔にある変化が起こり始める。
「目が―――開く!?」
 口以外は何もない顔の中心へ縦に筋が入る。その様子を見つめているあたしの視線の先で、縦筋は左右に開き、巨大な一つ目がギョロリとむき出しになる。
 ―――マズい。あれはもう、徹底的にマズすぎる!!!
 凶悪な光を湛えた一眼は、見ただけで金縛りにあうほどの“力”を有している。けれどポチはその視線の先にいながら、逃れることが出来ない。戻ることが出来ない。
「だったら!」
 辛うじてまともに動く右手でショートソードを引き抜くと、跪いたまま、身体に巻きつけるように左肩へと振り上げる。
 ―――出るかどうかはやってみなきゃ分かんないけど、やってみるしか助けられないんだから、だったら!


『―――雷眼!!!』
「―――魔力剣!」


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