第十一章「賢者」39


「んんっ! ッ……んッ、んんんゥ〜……!!!」
 洞窟の硬い地面に押し倒されたあたしの下半身からはズボンと下着が剥ぎ取られ、岩のように硬くなった寺田の巨根を容赦なく突き入れられていた。
 負ければ死、もしくは勝者に命も身体も蹂躙される……それが戦いの掟だ。煙幕を抜け、組み伏せられたあたしを見下ろす若い村の男達の見つめる中で、懸命な抵抗もむなしく、寺田の肉棒は秘所を刺し貫き、まだ十分に濡らされてもいない膣壁を乱暴に掻き毟り始めた。
「んうゥゥゥ!!! んん、んグゥ! んんんんんゥ!!!」
「どうした、“女”にしてもらったチ○ポを入れられて、そんなに嬉しいのか? それともハメられてるところを見られて興奮してるのか? ずいぶんイヤらしい女になったじゃないか、ええッ!?」
「んむゥウウウウウウウッ!!!」
 口の中へ捻じ込まれたショーツが、舌をかむことも言葉を紡ぐことも許してはくれない……それを知りながら、肉棒と擦れるだけで引き裂けてしまいそうな痛みを感じてしまっている蜜壷へと寺田は容赦なくペ○スを突き立ててくる。
 ―――い、痛いィ……! こんなの…されてたら……あそこが壊れ……んグゥ!
 取り囲んでいた七〜八人の男達の輪から一人が歩みだし、寺田に代わってあたしの手を押さえつける。寺田は両手が自由になると、あたしの腰をしっかりと両手で掴み、さらに深く、さらに強く、体重と加速をのせた一撃をあたしの膣の奥へと叩きこんでくる。
「んんッ、んんッ、ムぐゥうううううッ……!」
「たまらんなァ……お前を女にしてやったときでさえ極上のおマ○コだったのに、今じゃ……クッ…気を抜くと、もって行かれそうだ。何人の男に抱かれてきたんだ? クククッ…!」
 ゴリラのような顔つきをイヤらしく歪め、寺田は涎を垂らしながらカリ首であたしの膣壁を絶え間なく擦り上げてくる。本当なら大切な場所を掻き毟られる痛みに泣き喚いていたのかもしれない……だけど、あたしの身体はあたしにとっては残酷だ。抽送を繰り返され、ヴァギナを擦りたてられ、肉ヒダを掻き毟られていると、潤んでいなかったはずの膣壁からクチュリ…と小さくも確かに愛液の鳴る音が響いてきてしまう。
 ―――う、ウソよ……あたしは…感じてなんか……!
 目をキツく閉じ、口の中の下着を噛み締めるけれど、肉棒が往復するほどにあたしの膣内の愛液はその量を増してしまっている。それが強烈な摩擦から粘膜を守るためのものであったとしても、拒絶する理性とは裏腹に、腫れ上がってしまった膣壁は痛みの刺激を快感に切り替えて受け取るようになってしまう。
 ましてや寺田の動きは単調だ。女性を喜ばせるためではなく、自分が快感を貪るためだけの激しい前後運動。まるで疲れを知らぬかのようにあたしの最奥を繰り返し突き上げ、膣内のものを全て掻き出すかのように大きく腰を引いて再び勢いをつけて叩きつけてくる。
「くッ…んウゥ……!」
 脳天まで揺さぶられるようなピストンの衝撃に子宮口は何度も晒され、そのたびに意識が軽く飛ぶ。シャツの下ではブラだけでは押さえきれない振動に乳房が弾み、心とは裏腹に女陰の奥からは恥蜜が突かれるほどに分泌してくると、寺田は唇を歪めながら肉棒を抽送する。
 ―――キ…ツいの……もうヤダ……抜いて…抜いてよォ……!
 口の中のショーツを噛み締めても、寺田が腰の動きを止めてくれるはずもなく、猛り狂った逸物であたしの子宮の入り口を押し上げてくる。興奮でもなんでもなく、生理現象として滲み出してくる愛液はさらに量を増してしまい、天井の低い洞窟にグチャグチャと蜜壷を攪拌される音が響き渡ると、あたしはさらに羞恥心を刺激され、否定するように頭を振る。
「い〜いおマ○コじゃないか。突けば突くほどオレのチ○ポに吸い付いてくる。強姦されてここまで濡らす女は、さすがにオレでも初めてだぞ」
「ゥ………!」
「ほう……まだ抵抗する気を失ってないのか。初めて抱いてやったときに比べて、ずいぶんと気丈になったじゃないか。そうでなければ面白くない」
 なにが「抱いてやった」だ……勝手な言い分に怒りが湧き上がっては来るものの、もし口の中にショーツを押し込まれていなければ、あたしは恥も外聞も忘れて大勢の男達に診られながら泣き喘いでしまっていただろう。
 事あるたびに弄ばれ、路銀を稼ぐために娼館ででも何十人ではすまない数の男性に捧げてきたあたしの身体は、性欲の前では何も抵抗できなくなるほどに女の悦びを味わい過ぎていた。どれほど歯を食いしばり、寺田の事を拒絶しようとしても、突きこまれる衝撃に腰骨の奥からは蕩けるほどの快感が湧き出し、ヴァギナの奥が疼き始めていることはどうしようもない事実だ。
 ―――だけど……イくのだけは……!
 性的な刺激を受けている最中にはモンスターを召喚できない。剣がなければ魔法剣を放つこともできない。今のあたしには嬲られるだけの今の状況を打開する手段は何一つとしてないけれど、せめてもの意地で寺田にイかされるのを拒もうと……そう思っていた矢先、いきなり寺田が腰の律動を止めてしまう。
「ん…んう…ぅ……?」
「その目は何だ? あれだけ犯されるのを嫌がっておきながら、腰を止めただけでもうおねだりするのか?」
 違う……と自分に言い聞かせようとしても、ピストンが止まったと同時に、あたしの膣の奥にはぽっかりと穴が開いたような空白間が広がってしまっていた。無意識に腰がもぞついてしまうけれど、大きな手でがっしり掴まれていては動きようもない。
 ―――こんな……ちょっと……ヤ、ヤダ…勝手に……アソコが………
 寺田の肉棒の先端がコツン…コツン…と蜜壷の奥に当たる。けれどそれは寺田が動いているからではなく、あたしが懸命に許すからだがほんの少しだけペ○スを深く咥え込み、また吐き出しているからだ。懸命に快感を否定しても、浅ましく快感を貪ろうとする自分自身の姿に寺田を睨みつける視線からも力をなくし、喘ぐように大きく息を吸うたびにキュッ…キュッ…と奥深くまで挿入された太い肉棒を締め上げてしまう。
「くウ……んゥゥゥ……!」
 動かれてもいないのに、身体の震えが収まらない。湿り気を帯びた肉壁は膣の中に食い込んだ生殖器をさらに引きずり込むかのように絡みつく。
 ―――う、動くなら動きなさいよ…犯すなら犯しなさいよ……こんなの…あ、あんまりよォ……!!!
 左右に開かれたまたの中心に肉棒を押し込まれたまま、鼻を何度も荒く鳴らす。焦れきってしまっているのは誰の目にも明らかで、薄暗い洞窟の中で順番が回ってくるのを待っている男達の間に暗い性欲に煽られた声がひそやかに交わされているのが聞こえてくる。
 ―――こんな…ことでェ……!
 肩を震わせ、射精口と子宮口の摩擦に頭を仰け反らせるたびに、シャツに包まれた乳房を天井に向けて突き出してしまう。
 逃れることもできない。喘ぐこともできない。官能に抗う気持ちと受け入れてしまいたい気持ちに心を掻き毟られながら喘いでいると、
「んうぅぅぅ……!!!」
 不意に、寺田の肉棒がズリュ…とあたしの膣内から引き抜かれていく。
「どうした。なにを物欲しげに見ている? 俺に抱かれていたくはないんだろう?」
「ん………」
 顔に不気味な笑みを張り付かせたまま、寺田は少しずつ腰を引く。大きくエラの張った亀頭が粘膜に引っかかるたびに腰を震わせてしまうけれど、それとは別に、あたしの頭の中にはある考えが思い浮かんでいた。
 ―――これは……助かるかもしれない………
 決して寺田に抱いて欲しいなんて……そんなこと思ってはいなかった。けれど焦らされたことで瞳を潤ませ、思わず物欲しげな表情をしていたのだろう。
 このままあたしが寺田を受け入れなければ……もしかすれば、ペ○スを引き抜いてもらえるかもしれない。あたしを焦らしに焦らして肉体関係を懇願させようとしているなら、本当に肉棒を膣内から引き抜いてしまう展開だって十分に考えられる。
 ―――チャンス…到来……!
 エッチな目にさえあっていなければ、例え屈強な戦士が相手でもモンスターたちを呼び出し、ゴリ押しで何とかできる。問題は呼び出せるようになるまで何秒かかるかだけれど、呼吸を落ち着かせて五秒か十秒で何とかなれば……いや、何とかする、してみせる。あたしが肉欲に堕ちたと思っている寺田の油断を何度もつけるとは考えられない。これが最初で最後のチャンスと考えるべきだ。
「クックック……ほうら、抜いてしまうぞ?」
「んッ………」
 愛液にまみれた剛直が抜け落ちていくほどに、あたしの腰はそれを追いかけようと思わず恥丘を突き出してしまう。
 左右に脚を開いた股間を小刻みに揺すり、書き出された濃厚な愛液をアナルへと滴らせるあたしの姿に、寺田の唇はますます釣りあがり、わざとクチャクチャと音を鳴らすようにあたしのおマ○コを軽くかき混ぜてから、膣の入り口に引っかかるカリ首のエラを引きずり出す。まるでぽっかりと穴でも空いているかのような空白感が膣内に広がっているけれど、後はほんの少し腰をくねらせれば、先っぽしか入っていないペ○スなんて簡単に払い落とせる。
 ―――これで……まだ勝負は……!
 戦いの決着は付いていない。塞がれている口の代わりに鼻から息を吸い、熱い空気のわだかまった胸を大きく膨らませると目蓋を伏せ、手の平に意識を集中し―――
「やっぱりヤメだ」
「!?」
 次の瞬間、寺田の巨根があたしの膣奥を深々と抉り、乳房を打ち震わせながらあたしは硬い地面の上で背中を反り返らせてしまう。
「んッ、んッ……んんんんんんんんんゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 寺田の渾身の一撃に完全に不意を突かれたあたしは、快感を堪えるタイミングを逸してしまい、ズンズンズンと子宮を突き上げてくる猛烈なスパートの前にいとも容易く屈してしまう。両手を押さえつけられたまま大きく身をよじりながら、寺田と結合している場所から間欠泉のように煮えたぎった愛液を噴き放つ。ネットリとした本気汁は卑猥な粘着音をよりいっそう周囲に響かせ、ただ自分が射精するためだけに快感を貪る身勝手で乱暴なピストンにさえ甘美なものを感じ始めてしまう。
「こいつァ見事なおマ○コだ。ここまでの名器、味わったこともないわ。ククク……よっぽど娼館で開発されたらしいなァ、オレ様のチ○ポがもう出したい出したいとさっきから叫んでるぞ!」
 ―――なんで……その事まで知ってるの……!?
 娼館では、認識阻害の魔法が建物全体にかけられている。そのおかげで娼館の外で出会っても普段の姿と娼婦の姿が別人と認識されるので、自ら喋りでもしない限りは正体がばれることはほとんどないはずがない。それなのに寺田はあたしが娼婦になっていた事を知っていた。それだけではなく、
「しかし残念だったな、思惑通りにいかなくて。おマ○コに誘惑されたモンスターでも、呼び出せればなんとなかったのかもしれないのになァ!」
 モンスターとの契約のことも……それに、あたしが先ほどモンスターの娼館を試みていたことまでばれている。
 ―――なんで知ってるのよ、寺田には召喚するところを見せたこと無いのに……!
 初めて会った時には、あたしはまだモンスターとは一体も契約していなかった。バルーンを呼び戻したところは見られたけれど、それだけでSEX中にはモンスターを呼び出せないという弱点までわかるわけがない。
 ―――そもそも、どうして寺田がここに……わかんない、わかんないよォ!!!
 膣口を太い肉棒が往復し、煮沸した頭では答えなど導き出せるはずもない。何度も根元までペ○スを突き入れられてしまうと次第に理性は麻痺してしまい、抵抗する力も何もかもが抜け落ち、子宮を抉りたてられる行為ですら無抵抗に受け入れるようになってしまっていた。
 ―――寺田なんかに……寺田なんかにィ……!
 どんなに口の中のショーツを噛み締めてみても、沸きあがる快感は否定しきれない。力強く脈打つ性器に膣奥から膣口まで大きなストロークで抉りぬかれ、その強烈な快感美に涙を流しながらヴァギナを強く喰い締めさせてしまう。
 ―――もう…もうダメェ〜〜〜! 我慢なんて、いやァ! 抜いて、動かないで、もうやめてェェェェ!!!
 ずっと堪え続けてきた初めて“男”に犯された夜の恐怖が、ついに限界を超えた。モンスターの娼館を阻まれたことが、あたしの忍耐を極限まで削り落としてしまったのだ。
 けれどモンスターなしでは、どうあがいたところで寺田と複数の男達から逃れられるはずがない。子宮の入り口と亀頭とが何度も密着し、精液を放たれる瞬間がもうすぐそこにまで迫っている事を察すれば察するほど、昂ぶる肉体とは真逆に、あたしの心は恐怖で引き攣っていく。
「おおおっ、締まる、締まるぞォ! あの夜のように、タップリおマ○コに注いでやるからな、クカ、クカカカカカカッ!!!」
「んッ、んん、んッ…んッ……んんんんんゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 寺田は獣のように咆哮しながら、肉棒でグリグリと入り口を擦りたてていた胎内へとザーメンを撒き散らした。ビクビクと震える肉棒の先端から迸った物凄い量白濁液は、瞬く間に子宮の内側を埋め尽くし、無理強いされた性交の官能に流されまいとしているあたしを否応なしに煽り立てる。
 けれどどれだけ髪を振りたくって泣きじゃくっても、寺田は決して腰の密着を緩めようとしない。力任せの荒々しいピストンで押し広げられた蜜壷の奥に、脈打つ肉塊から精液が吐き出されるたびに信じられないほどの快感が込み上げ、胎内を隙間なく埋め尽くすとブチュ…と粘ついた液体が肉棒との結合部から逆流までしてくる。
 ―――中に……熱いのが中に……寺田のがいっぱい…あたしの中にィ……!
 太い精液の弾丸があたしの中ではじけるたびに腰が震えてしまっていた。背筋を快感が這い上がるほどに膣内射精されたおぞましさに強姦で感じてしまった惨めさまで加わり、もうどんなに歯を食いしばっても涙をとどめる事だけはできない。それでも、
 ―――……イくの……だけは………
 精液でどれほど子宮の内側を犯されようとも、あたしは達してしまうことだけは堪えきっていた。寺田にだけはイかされたくない……ほとんど意地。身体をどれほど汚されようとも、心だけは屈したくないと言う気持ちが、意識を快感の火にどれだけあぶられても、寺田の自己中心的なSEXで昇りつめる事を拒み続けたのだ。
 だけど、
「イけずに不満か?」
 あたしの蜜壷に精液を搾り取られた寺田は、白く濁った粘液を纏わり付かせた肉棒を膣口から引き抜くと、剣や小野を振り続けてきてゴツゴツになった指をあたしの股間へと押し込んだ。
「んッ、んんんゥ〜……!」
「お前の始めてを引き裂いて犯った時ですら手放すのが惜しい良い女だったが、今はさらに格別だな。今日からオレ様専用のメス犬として扱ってやるから、ありがたく思うんだな」
 誰が……もし口の中に詰め物をされていなければ、悪態の一つもついて唾でも吐きかけてやるところだ。けれど皮膚が硬質化した指をあたしのヴァギナは食い締め、肉ヒダを擦り付けて快感を貪ってしまっている。
 このままだと、今度こそ本当にイかされてしまう……オルガズムへと昇りつめるのを堪えた代償に全身が熱く滾(たぎ)っていて、指を美味しそうにくわえ込んでいる秘唇もヒクつきが収まっていない。掻き回され、擦り立てられ、捏ね回され、寺田の指のほんのわずかな動きにすらもヤスリで触れられたみたいに過敏な反応を返してしまい、とてもではないけれど腰を揺すらずにはいられなかった。
 それなのに……ヒクつきの間隔が短くなり始めた矢先、寺田の指は引き抜かれてしまう。
「んッ、ん…んゥ…………!!!」
「クックック……イかせてなどやるものか。無理やりだったなどと言い訳させるつもりもないわ」
 指に纏わり付いた白濁を振り払うと、寺田は傍らに転がしていたあたしのショートソードを拾い上げる。そしてその切っ先をあたしのシャツの裾に引っ掛けると真っ直ぐ胸元に向けて切り裂いていく。
「オレの子供を孕むまで、決してイかせてはやらん。嬉しいだろ。好きでもない男に抱かれてイくのはイヤだろうからな」
 ―――そんなこと……されたら………
 絶対に気が狂う。自分の身体が人一倍どころではないほどに敏感なのは身をもって知っている。絶頂寸前で指を引き抜かれ、衣服を切り裂かれていることにも意識を向けられないほどに焦らされた秘所は、恥知らずなほどに緊縮を繰り返している。まるで練乳のようにネットリとした体液を膣口から掻き出されてドロドロにされた場所は、後ほんの少し刺激を加えられれば潮を噴いてもおかしくないぐらいに快感を溜め込んでいる。
 最初に犯された相手である寺田に再び抱かれることへの嫌悪感はいまだ拭いきれていない。「イかせてもらえない」ではなく「抱いてくれない」のなら喜んだかも知れないけれど、もしこのまま延々とオルガズムのない責め苦とSEXを繰り返されれば、あたしは一日が過ぎるのを待たずして寺田に心から屈服するか発狂するかのどちらかの運命をたどってしまうだろう。
 ―――だけど……寺田を受け入れることなんてできるはずがない……!
 唾液をタップリと吸ったショーツを噛み締めると、あたしは頭上で両手を押さえつけている村の男の顔を見上げる。
 他の男の人たちと違って、一番間近であたしと寺田の激しいSEXを見ていたその表情は、今にもあたしに襲い掛かってきてもおかしくないほどに切羽詰っている。それを押しとどめているのは、ひとえに寺田への恐怖からだろうけれど、あたしの潤んだ瞳と目が合った途端、刺激を途切れさせないようにとむき出しになったあたしの胸に手を這わせていた寺田へと懇願し始めた。
「せ、先生、あの、俺達の順番はないんですか?」
「あン?」
「い…いえね、この村じゃ娼婦なんて美人とは縁が全然ないじゃないですか。それにこいつにはひどい目に合わされてるし、そのお返しも―――」
 あたしとSEXしたい……その一心で喋り始めた男の頬に、寺田の拳が叩き込まれる。パキッと何かの割れる音がした次の瞬間、座った状態で突き出された拳は男をいとも容易く仲間達のほうへと吹き飛ばし、そして寺田は慌しくなった周囲に目を向けることはなく、あたしの鼻先に愛液と精液にまみれた肉棒を突き出してくる。
「ああなりたくなければ、おとなしく言う事を聞いたほうがいいぞ。傍にいる限りモンスターを呼ばせはせんし、チ○ポをしゃぶるのが上手ければイかせてやろうと言う気になるかもしれんしな」
「んッ………」
 寺田の手があたしの口の中に詰め込まれていたショーツを引き抜く。どうせあたしからしゃぶらなくても、無理やり頬張らせて腰を振っていたことだろう。
 ―――あたしは……綾乃ちゃんを助けに来たはずなのに……
 いっそ綾乃ちゃんが捕らえられているのかどうかを訊いてみるべきだろうか……けれど少しでも綾乃ちゃんの身の危険を減らすためには、安易に訊ねるわけにもいかない。
 結局、優柔不断なあたしには何も決められないのだ。ここまで来ておきながら、綾乃ちゃんの無事も確かめられず、寺田の為すがままにされて股間に舌を這わせようとしている。逆らえず、抗えず、その言葉の通りにするしか、あたしが無事でいられる手段は、もうないのだろう。
 ただ……そんなあたしの動きを止めさせたのもまた、あたしの意志ではなく寺田の何気ない一言が切っ掛けだった。
「あいつらも人の女に手を出すぐらいなら、買うなりさらうなりすればいいのによ。……もっとも、売られた側はたまったもんじゃないだろうがな」
「………それ、どういう意味?」
 もしかすると言葉の綾かもしれない。自分が無理やりあたしをモノにしようとしている事を自慢しただけで、ついでに付け足した言葉なのかもしれない。……だけど「売られた側」と言う言葉がやけに意識に引っかかり、それを問うたあたしを見て、寺田はこれまでにないほど唇を高く高く吊り上げる。
「そのまんまの意味だがな。まあ、お前は売られなくて、他の女は売られた……ただそれだけのことだ」
「だ、誰が売られたのよ!?」
 そんなことがあるはずがない。綾乃ちゃんがこの洞窟に入っていったのは、ほんの一時間か二時間前のはずだ。間違いだ、間違いに決まっている……そうやって胸の膨らみの内側に込み上げてきた不安を否定する材料を並べ立てるけれど、困惑の表情を浮かべるあたしを見下ろしながら寺田はますます笑みを濃くしていく。
「助けに来るのが一足遅かったな。今頃はもう一本の洞窟から連れ出されて、馬車に揺られているころだろうさ」
「馬車って……冗談でしょ? 冗談って言いなさいよ!?」
「冗談なんぞ、ここには一つもありはせん!」
 寺田があたしの肩を掴み、体重をかけて地面に押し付ける。腕力と体重、それに大きな肩鎧の重量まで加わっては、あたしがどれほど力を振り絞っても押しのけることなどできない。
 手の平に押されて肩の骨が軋み、ズボンも下着も剥ぎ取られた下腹部に、再び寺田の巨根を押し込まれようとされている……けれど、あたしは真上にある寺田の顔を真っ直ぐ見つめ、その胸の中心に自由になった左の手の平を押し付ける。
「もう一度だけ訊いたげる……冗談だって、言いなさい」
「カッ! SEXが終わればもうその態度か。だったら何度もでも言ってやる。冗談じゃない。何度でも犯してやる。泣いてイかせてくれと懇願するまでな!」
 その叫び声だけで、周囲の男達は一歩後退さり、あたしの肌にも震えが走る。そしてそのまま寺田は肉棒をあたしの膣内へと挿入し、荒々しく腰を叩きつけてくるけれど……そんなことはもう、どうでもいい。
「んっ………」
 犯されながら、ゆっくりと息を吸い左手に意識を集中させる。
 “あの時”は無我夢中だったけれど、考えてみれば、魔王とか関係なしにあたしにできることは、これ唯一つだけ。
 もう一度息を吸い、左手に、手の平の中心に、そこに針の穴が開いているかのように、そこから体内で荒れ狂う暴風を一気に噴き出させる様に、意識を、そして魔力を集中させていく。
「一言だけお礼を言ってあげる……嫌な思い出と一緒に、“こう言うこと”まで思い出させてくれたんだから!!!」
 剣はなくても、魔力を放出することはできる―――腕の毛細血管を次々と破裂させながら手の平から放たれた膨大な量の圧縮魔力は、“剣”とは異なりながらも寺田の巨体を吹き飛ばし、一つの形を作り出す。
 それは、


「魔力“壁”だァアアアアア!!!」


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