第十一章「賢者」19


「ぬぐおォォォ!?」
 あたしの身体を抱きしめる直前に海側から攻撃を受けた弘二は、事情を飲み込む暇すらなく、錐揉みしながら地面を転げ回り、岩壁にぶつかるとピクピク痙攣してから動かなくなってしまう。
「え…え〜っと……」
 事情が分かっていないのはあたしも同様だ。ジャケットから飛び出した大きな胸の膨らみを反射的に腕で押さえると、首を捻りつつ、視線を鉄砲水の飛んできたほうへと向けた。
「マーマン!? まさか戻って―――……」
 海面から再び三体のマーマンが姿を現していた。それを見て叫び……何も叫ぶほどのことではないんじゃないかと思い直し……そしてその直後に頭を振って自分の考えを否定する。
 ―――ど、どうなってんの!? マーマンが現れたんなら危険だって……じゃなくて……なにこれ、頭の中がグチャグチャに……!?
 今なら、弘二が記憶の一部を失ったのが、竪琴の音色のせいだとあたしにもハッキリ分かる。なぜなら現に、あたしの頭の中でうるさいぐらいに鳴り響いている危険への警鐘が、少しずつ、まるで小さな泡がプチプチと弾けていくように薄れ、消えていっているからだ。
「う……あ……」
 行動を起こそうとする意思が、危険を察する判断力が、竪琴の音と共に頭の中ではじけ、削れ、小さくなり、やがて消えていく。
 楽器の演奏で魔法を操る事は、理論上では不可能じゃない。ほとんどの魔法使いは呪文を声に出して詠唱し、そこに魔力を流すことで魔法を発動させるのだから、声を楽器の音色に置き換えるだけのこと。大雑把な理論だけなら簡単に説明できるけれど、音色に魔力を乗せるにはどうすればいいのか、どのような旋律でどのような魔法が発動するのかなど、一般的でないがゆえに分からない部分や技術的に難しい部分が多すぎる。
 伝説上では吹くだけで人を殺せる魔笛などが語られることもある。フジエーダの街で何百ものモンスターが操られていたのも、魔力で増幅した音波の力だと説明もされた。ならば怪しいと思った竪琴の音にもっと警戒を払うべきだったのかもしれない。
 ―――って、そう言う警戒心から奪われてるって感じよね……
 もしかしたら奪い去られた警戒心の後に生まれているのは、お世辞にも上手とはいえない、同じフレーズを繰り返すだけの拙い竪琴の音色への興味心なのかもしれない。
 ―――逃げなきゃ……早くこの場から離れないと、あたしは……!
 頭の奥底から沸きあがる記憶の泡が、次々と儚く消えていく。その消えた分だけ頭の中に空白が生まれ、脚をこの場に縫いとめようとする意思の強制力が働くと同時に、胸に弘二の剣で切られた傷を持つ物を含めた三対のマーマンを目の前にしているあたしの身体には、
「ひ……やあァ………!」
 弘二のペ○スに何度も膣の奥深くを抉り抜かれた快感が強く残っている身体は、今もなお激しい疼いてしまっていた。胸を隠す腕の下ではプリプリに張り詰めた乳房の先端がマーマンの突き出した唇に噛み締められるのを期待して硬く尖り、全身には振るえと共にネットリとした汗がにじんでくる。腕に力を込めれば込めるほど、熱く火照る二つの膨らみは締め付けから逃れようと狂ったように脈動し、密着させた脚の間では身体の震えに合わせてブチュリ…ブチュリ…と粘つく愛液の音が鳴り響いていた。
 ―――こ…こないで……それ以上こっちにこないでぇ!
「………きて……あたし…まだイき足りないの……」
 愕然とする。―――あたしが叫ぼうとした言葉は、頭から口に達するまでの間に間逆の言葉に変わってしまっていた。しかも愛液で濡れている左手の指先で乳房をこね回し、右手で弘二の精液がたっぷり染み込んだ水着を履いたままの股間を撫で回しながらだ。
「ふ…ゥうううん……! あ…んァ……♪」
 普段から男になんて抱かれたくないと思っているのに、今のあたしはとんでもない痴態を演じている。けれどマーマンたちの視線があたしの身体にからみつくのを感じながら指先を水着ごと秘所に埋め込むと、思わず頬をほころばせて甘酸っぱく鼻を鳴らしてしまう。
 ―――あああ……ほ、欲しい、熱くて逞しいおチ○チンが、ここに……あたしのここにィ……!
 自分の指先でクリトリスを円を描くように刺激して膣口を浅く穿つと、込み上げる喘ぎを抑えられなくなる。水着を掻き分け、白い粘液にまみれた花弁を左右に割り開くと、襲い掛かりもせずに異種族であるあたしの自慰に視線を釘付けにしているマーマンたちの前で、指先を膣の中へと押し込んでいく。
「んっ……くうゥ!」
 第二間接まで挿入し、締め付けてくる膣壁を押し広げながら膣の奥から零れ落ちてくる精液を音を鳴らして掻きだす。温かい液体の伝う太股を肩幅に開いて恥丘を突き出すと、マーマンの一体がその場にしゃがみこんで秘唇から覗き見える赤く腫れあがった粘膜に鋭い視線を注いできた。
 ―――やっ……そんな見られかたされたら……ゾ、ゾクゾクしちゃうゥ……!
 歯を食いしばって指の動きを止めようとしても、むしろ指ピストンは激しさを増していく。ネットリとした精液を絡みつかせながら抜き差しされるあたしの指にマーマンの目が向いていると、野外で秘所を抉る羞恥心とモンスターを相手に興奮を隠せない自分自身への嫌悪感に背筋が震えるのに、下から持ち上げた乳房を形が変わるほど揉みしだきながらクリトリスの裏側を挿入した悦びに、危険な快感がさらに募って恍惚に表情を蕩かせてしまう。
「さ、触ってもいいんだよ? 言葉…わかる? い、痛いのはイヤだけど……エッチがしたいなら……はっ、あっ、んんんゥ! 考えただけで、き…気持ちよすぎて、はァ、んあああああッ!!!」
 例えあたしが男でも弘二の子供を孕んだかも……そう思ってしまうほどたっぷりと膣内射精された子宮は、マーマンというモンスターとの性交を想像した途端、水鉄砲のように胎内の精液を噴き出していた。頭の中では身体を許す相手が弘二からマーマンに完全に切り替わり、モンスターを誘惑する狂気とも言える行為に恥丘から大量の淫汁を溢れさせると、戸惑っていたマーマンたちの身体にある変化が起こりだした。
「あ………♪」
 硬い鱗でビッシリと覆われて生殖器の影も形も見えなかったマーマンの股間だが、緩急をつけて乳房と膣内をこね回しているあたしの姿に興奮を隠し切れなくなったのか、鱗の一部が左右に開いて縦長の小さな穴を露出させ、そこから白い突起をズリュリと飛び出させてきた。
 ―――考えてみれば、お魚におチ○チンなんてついてないもんね。
 ヒクヒクと震える“それ”は肉棒と言うより肉筒と言う表現が適当と思われる形状をしていた。そもそも半魚人と人間とでは身体のつくりが違うのだから、形の違いは当然あるし、透明感のある白い肉質と言うのもあたしも指して気にはしない。
 ただ、飛び出してきた穴の形状と同様に縦に長いペ○スには、根元や先端でカリ首や亀頭のようなくびれなどが一切ない。大きさにして10センチほどの性器はマーマンが顔を見合わせるたびにプルンプルンと左右にしなり、まるで大き目の舌が股間から突き出しているような感じだ。
 ―――まあ、ドリルペ○スや三段括れみたいな凶悪な形されてたら、こっちも困っちゃったわけけど。
 全長が短いのは本数の多さでカバーしてもらうとしよう……弘二に抱かれて何度も昇りつめた身体は、失った記憶の隙間を埋めようと更なる快感を欲してしまっていた。どんなに逃げようとしても動かなかった足がようやく動いたかと思えば、あたしは自分の意志とは無関係にマーマンたちへと近づき、胸に傷跡のあるマーマンの手をとると、鉤爪に注意しながら豊満な美巨乳へと押し付けてしまう。
「んっ………♪」
 マーマンの手の平には鱗がない……けれど柔らかくゼリーのようにあたしの肌に吸い付くような触感が火照った肌には冷たくて気持ちよく感じられてしまう。
「ねえ……あたしとしてみたい? おチ○チンを大きくしてるんだから……興味はあるんでしょ?」
 あたしがマーマンの手で乳房をこね回していても、マーマンたちの動揺は強まるばかり。指の側面にある肌と鱗との境に乳首を引っ掛けてあたしが鼻を鳴らしても、本来は敵対しているはずのマーマンたちは襲い掛かることも逃げることも、ましてや傷つけることさえしてこない。
 ―――ふふふ、そう言うのってなんか可愛いかも。あたしが主導権握っちゃおっかな?
 そう思うと、あたしは自然とマーマンの顔に手を当て、唇を押し付けてしまっていた。さすがにお魚顔の硬い唇には舌は挿れれなかったけれど、人間であるあたしからの口付けに縦長の顔の側面で目がギョッと見開かれ、飛び退ろうとして……心の動揺が地面に踵を引っ掛けさせ、マーマンは岩場に尻餅をついてしまう。
『な、何をするキ!?』
 ―――人間と同じ言葉を喋れたんだ。それならそうと早く言ってくれればいいのに……
 今まで「イー!」とか「キー!」とかしかマーマンは口にしなかったので、普通の言葉を聞かされたのには少し驚かされた。けれどそれはあたしの動きを押しとどめるものではなく、立ち尽くしたままの他の二体の視線を感じながら倒れたマーマンの前に跪き、ジャケットからこぼれ出る乳房を強調するように前かがみになって地面に手を突いた。
「何をするかって言うと……SEXかな? 子作りって言ったほうが分かりやすい?」
『に、人間は、我々と子作りするのが大嫌いなはずだキ!』
「子供を作るのまでは少し抵抗があるけど……その練習だと思ってくれれば♪」
 子作りとSEXの違いを長々と説明する気はない。下向きに「ぷるん♪」と弾んでいるあたしの胸の膨らみから目を離さぬままお尻で後退さろうとするマーマンを、あたしはさながら雌豹のようにお尻を振って追い詰めて行く。
『こ、子作りだったら望むところだキ! 我々は人間の女をさらって犯して子孫繁栄をもたらすために戦っているキ!』
「ふ〜ん……ま、そんなことはどうだっていいけど」
『我らの崇高な目的をあっさり流すなキ!』
「だって、目の前にあたしがいるのに手が出せてないじゃない。本当は女の人とするのが怖いんでしょ。もしかして童貞?」
『バ………バカにするなキィィィ〜〜〜〜〜〜!!!』
「きゃん♪」
 明らかに誰かの言葉をそのまま口に出しているだけのマーマンは、難しい言葉を覚えたことで芽生えた自尊心を刺激されると、あたしを押しのけて勢いよく立ち上がる。
 それはもう、完全にあたしの目論見どおり……あたしが上になってマーマンの“童貞”をやさしく奪ってあげるのもアリだけど、三体がかりで輪姦され、むせ返るほどに精液まみれにして欲しい衝動のほうが遥かに強い。
『犯してやるキ! お前の卵子に鳴いてやめてと懇願するぐらいタップリと精子をぶちまけてやるから覚悟するんだキ―――ッ!!!』
 今度は逆に尻餅をつかされ、わざと膝を開いて湿ったビキニを晒したあたしを前にして、マーマンは水掻きの付いた手で尿管が透けて見えそうな白い肉棒を握り締める。
 ―――あ……♪ やられちゃう、モンスターに……ど、どうしよう、あたし………♪
 今まで何度かモンスター相手の快感を体験していることもあり、竪琴の音色で理性の箍(たが)が外れているあたしは小さいながらも痛々しいぐらいに性欲をたぎらせている勃起に、淫靡な光を灯した瞳を向けてしまう。
 ―――あの中に、どれだけ熱い精液が詰まってるんだろう……
 考えれば考えるほど、水着の中には愛液が溢れかえる。つるりとした外見のペ○スが果たしてどんな快感をもたらしてくれるのか……異種族との未知の性行為に期待で胸が膨らみ、顔にも蕩けた表情が出てしまうほど収まりがつかないところまできてしまっていた……のだが、


『さあ、ぶっ掛けてやるから早く卵を生むんだキ!』


 ………さすがに、これは予測してなかった。
 魚は哺乳類である人間と違って卵生だ。水中でメスが産んだ卵にオスが精子をかけて受精する。
 見た目的に四肢を備えてはいても、そう言うところまで変わっていないからこその半魚人……マーマンと言うわけだ。
 ―――ううう、期待していた分、なんか物凄く悲しくなってきちゃった……
『なに泣いてるんだキ! わ、我らマーマン族の子種を授けてもらえる栄誉に、そ、それほど感激してるキか!?』
 あたしの気も知らずに、マーマンはペ○スを握り締めた手を前後に動かし、あたしが産む――と思っている――卵を今か今かと待ち受けている。………それを見て、ふとあたしの頭に思い浮かぶことがある。
 ―――オナニーの仕方は人間と同じなんだ……
 弾力のあるペ○スをグニュグニュと暴れさせているマーマンの自慰が、人間やゴブリンなどの他のモンスターと同じようにペ○スに刺激を与えて射精するためのものかどうかは学者や賢者ではないあたしに分かるはずもない。けれど一度輪姦されることを期待して裏切られてしまった欲望は悶々と胎内で渦を巻いていて、
「人間の卵はね……この穴の奥にあるのよ」
 と、そんなウソを口にし、扱きたてられているペ○スを前にして水着の股布を横にずらし、秘所を覗かせてみせる。
『ち、違うキ! その穴からポコポコ卵を産まれてくるんだキ!』
「人間の身体は造りが違うの。卵なんて産めないわよ」
 そう前置きして、
「あなたのそのおチ○チンをこの穴の中に押し込んで、一番奥にある卵に精液をぶっ掛けるのが人間のSEXなのよ。……あれ? もしかしてそんなことも知らずに人間の女性と子作りしようとしてたの?」
『な……と、当然知ってたキ! 今のはお前を試したんだキ!』
 強がっちゃって……けどそう言うところに男の子っぽい可愛らしさを感じて微笑んでいると、突然膝の裏に手を回され、まるで子供におしっこさせるような体勢で身体を抱えあげられてしまう。
『だまして逃げようとしたって無駄だキ。人間は嘘つきで物凄い悪人だから、押さえつけてやるキ!』
『卵が産めないなら、お望みどおり人間のやり方でやってやるキ!』
 あたしを抱えたのは残る二体のマーマンたちだ。こっちも喋れたんだ……と思いながらも、力強い腕でしっかりと抱え込まれて閉じることが出来なくなった脚の間に胸に傷のあるマーマンが身体を押し込んでくると、武者震いしながら背筋に熱い感覚が駆け上り、半魚人のペ○スを待ち望む膣の奥からもネットリとした愛液が滲み出してくる。
『さあ……泣いて慄(おのの)き、絶望しながら我らの子を孕むがよいキ!』
「あ……あぁ………♪」
 水着からあふれ出している恥丘に凹凸のないマーマンのペ○スの先端があてがわれると、弱々しい声をノドから絞り出しながら、あたしの膣は怪しく蠢き、自ら入り口に飲み込んでしまう。
 ――ああんッ、もう、もう焦らさないでェ! おチ○チンが、このおチ○チンが今すぐ欲しいのォォォ!!!
 身体と脚を抱えられていても、下腹部を突き出すことぐらいなら出来る。弘二に膣内射精されてから時間もたち、ペ○スに触れるだけで甘く痺れてしまうほど待ちきれなくなっていた下腹部をマーマンの腰に向けてパシンと叩きつける。
『ふゥオオオッ!?』
 ノドを逸らせて困惑の喘ぎを迸らせたマーマンに対し、あたしはヴァギナの中でのた打ち回るペ○スに膣壁をネットリと絡みつかせ、精液を搾り取ろうと蠕動させてしまう。そしてマーマンが全身を硬直させているのをいいことに、宙吊りの腰を前後に揺らし、結合部からブチュブチュと音を響かせてペ○スを抜き差しすると―――


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