第十章「水賊」26


「ふみゅぅ〜……もう食べられませぇ〜ん……」
「綾乃ちゃん、目を覚まして! 今ここで寝たら本気で放っていくからね!」
 太陽が山の向こうからほんの少しだけ顔を覗かせた頃、あたしは寝ぼけた綾乃ちゃんと荷物全部を抱え、たくさん馬車を停めてある街の入り口へと向かっていた。
 山賊も水賊もいなくなって陸路と水路の両方の安全か確保された以上、足止めされている理由は何もない。朝もまだ明けきっていないというのに、入り口そばの駐機場では何台もの馬車が商品を積み込み、コーヤの街へ向けての出発の準備をし始めていた。
「あの、だれかコーヤの街まで乗っけて行ってもらえませんか!? 逃げた水賊もいるって言うし、今なら依頼料無しで護衛引き受けますからぁ!!!」
 と、慌しい空気の中ででもそんな事を叫べば、馬車に乗せてくれる商隊は一つや二つあるモノだ。
 足止めされた時間を少しでも取り戻すと言う朝一出発の快速便の馬車に運良く乗せてもらえる事になり、まだ寝ぼけて夢の中にいる綾乃ちゃんを借りた毛布に包んで助手席に乗せる。それでやっと一息つけるかと思えば、もう出発すると言われてけだるい身体を馬車へ飛び乗らせる。
「それじゃあお姉ちゃん、コーヤの街までの短い付き合いだけど護衛よろしくな。ハイヨ―――ッ!」
「ちょ、待っ、出発が急すぎるぅ〜〜〜!!!」
「あっはっは、俺たちは風だ、風になるんだよ、風は誰にも止められねェ、ヒャッハ――――――ァ!!!」
 ―――ううう、今さらながら乗る馬車間違えたかなあ!?
 飛び乗った荷台の中に所狭しと積み上げられた荷物の中で、あたしは逆さまにひっくり返って急発進した馬車の揺れに身を任せる。散々ひどい目に会ったけれど、舞子ちゃんに出会えたアマノの街とこれでお別れだと言うのに、情緒もへったくれもない出発である。
 ………あれ? そういえばもう一人、なんか見知った人間と顔をあわせたような気がするんだけど、誰だったっけ?
 硬い木製の荷台の床にガンガンガンと頭をぶつけているせいか、記憶がいまいちはっきりと思い出せない。考えてみれば一睡もせずに舞子ちゃんが気を失うまで頑張ってたのに朝食まで食べてないのだ。そんな状態で考え事をしたって、結局無駄になるだけだ。それより身体を起こす方が先決だ。
 ―――ガンッ!
「ほえ? なんですか、今の振動?」
「なんか知らねェが、メガネかけた馬鹿が一匹ばかし馬車の前に飛び出してきやがった。本当に馬鹿な野郎だ。俺様の馬車が人はねたぐらいで壊れると思ってんのかよヒャッホォ――――――!!!」
 ………いや、人を撥ねたんなら、心配するとこは別でしょうが。
 そう思いつつも、あたしもそれ以上は気にしない。何度も荷台に叩き付けられてコブのできた頭をさすりながら、幌から首を出して通り過ぎてきた後方に視線を向けると、確かに真っ黒いローブを着た優男が道の真ん中で倒れているのが見えた。
 ―――あれ? どこかで見たような気が……
 弘二だったか、大介だったか……それとも他の誰かかもしれないけれど、思い出せないのならきっと他人の空似だろう。
 ―――ま、これだけ凶悪な馬車なら護衛だからって気を張る必要もないか……
 固い床と山道を突っ走る激しい振動は眠るのに最適とは言わないけれど、ここよりマシな助手席は舞子ちゃんの寝床だ。それに自分の寝床を選んでいられるほどあたしの眠気に余裕はない。はっきり言って体力ゼロだ。
 運転席に休む事を伝えると、あたしは肩鎧の付いたジャケットを脱いで、背負い袋を枕にして横たわる。そして数回呼吸するだけで意識は眠りの底へとあっという間に落ちていく。
 ただ、これから見る夢はなんとなく想像がついた。
 ―――舞子ちゃん……あたしが置いていった事を知ったら、きっと怒るんだろうな……






「あぁ〜〜〜〜〜ん、お姉様のバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 舞子が目を覚ましたのは、昼を過ぎてからだった。
 シーツやベッドや身体がとんでもない惨状ではあったけれど、逃げるように宿を後にしたたくやと舞子の寝顔から判断した宿の女将が気を利かせて起こさなかったのだけれど、起きて、シャワーを浴びて、服を着替えて、ご飯を食べて、自分の部屋に戻って、今に至るまで、ず〜っとこんな調子であった。
「お姉様の鈍感、女心が分かってない、舞子が自分の使命を捨ててでも付いて行くって言った気持ちを全然考えてくれてないんだからぁ〜〜〜!!!」
 両手で振り回されてベッドにバシバシ叩きつけられる枕に罪はないのだが、ものすごい剣幕に誰も注意する事が出来ずにいた。
 食事時に一人、若い騎士が傷心の女の子をナンパするつもりで声を掛けてきたが、全然相手にされなかった挙句に舞子がたくやを罵りながら振り回したナイフやフォークで軽傷を負うと言った事件があったため、近づくものも誰一人おらず、枕は結局、日が暮れて夕食時になるまで無実の罪で百叩きにあい続けていた。
「も〜、こ〜なったら舞子、お姉さまを追いかけてやるもん! そして追いついたらお姉様の胸に飛び込んで、今度はお姉さまを舞子がお口とおっぱいとおマ○コとでいっぱいいっぱいい〜っぱい気持ちよくしてあげちゃうんだからぁ〜!!!」
 そんな舞子の決意を聞くとはなしに聞いてしまっていた騎士が二人、妄想を膨らませて鼻血を噴いた。
「そ〜と決まったらお腹すいちゃったぁ〜。ご飯食〜べよっと♪………あ、でも……」
 宿の中には今、ここを拠点に活動している男性騎士が大勢いる。見知った女性が傍にいなければ恐くて食事どころではないかもしれないけれど、たくやを追いかけるために一秒でも早く元気になりたい舞子は覚悟を決めて、恐る恐る部屋を後にした。
「………あれぇ〜?」
 階下の食堂へと下りる階段をソロリソロリと下りていると、その途中に栗色の髪をした女性が一人、うな垂れて座り込んでいた。
「はぁ〜……せっかく第二の人生をハッピーに楽しんじゃおうって思ってたのに……なんであの人に捕まっちゃうかなぁ……あたしの人生設計、何処で道を踏み外したんだろうなぁ……」
「?」
 横を通り抜けながら舞子が覗き込むと、立てた膝に肘を乗せて、組んだ両手に額を乗せている女性はメイド服で、ほんのちょっぴりたくやの事を忘れてしまいそうなぐらいに美人だった。胸も意外に豊かで、膨らみの左右に垂らした二本の三つ編みが可愛らしい。
 ―――う〜ん……舞子が三つ編みにしたら、お姉様も可愛いって思ってくれるかなぁ〜?
 首の後ろで長い髪の毛を手で束ね、たくやを振り向かせる髪型をあれこれ思案しながら一階の食堂に降り立つ。そこでハッと顔を上げて男性が周囲にいないかと視界をめぐらせて、舞子は食堂の雰囲気がいつもと違う事に気がついた。
「彼女……たくやさんが今回の騒動に関わったと言う記述を削除していただくだけです。もちろん、彼女を取り調べた際の調書など、全ての記録に渡って破棄していただきますけれど」
「………それはギルドからの正式な申し出と受け取ればよろしいのかな? さもなければ事実を意図的に歪めて報告する事に―――」
「ああ、小難しい話は結構。報告書には私が一筆添えさせていただきます。それを大臣なり王なりに見せていただければ、何も問題は生じないはずです―――それとも、先にそちらへ根回しした方がよろしいかしら。あなたも上からの命令とあらば良心は痛みませんでしょう?」
 ―――何をやってるんだろぉ〜?
 階段を下りた舞子の位置からは壁のように一列になって整列した騎士たちの背中しか見えない。その向こうからあまり恐さを感じなかった優しい騎士団長と、初めて耳にする女性の声が聞こえてくると、舞子の胸に好奇心がムクムクと芽生えてきた。
 かと言って、屈強な若い騎士たちを押しのけるのも、触れるのさえもイヤだった。思案した舞子は階段を少し登り、落ち込んでいるメイド服の女性のすぐ横から手すり越しに食堂の様子を一望する。
 ―――うわぁ…スゴく綺麗な人ぉ〜………
 食堂の中央のテーブルに、騎士団長と向かい合って一人の女性が座っていた。
 緩やかに波を打つ髪と、うらやむばかりの豊かさを誇る胸。それほど華美とは言えないけれど一介の宿屋には不釣合いなドレスをまとった全身からは、異性はおろか同性の舞子ですら一目で魅了されそうな色気が漂っている。
 その背後には、舞子のすぐ後ろにいる女性と同じくメイド服に身を包んだ女性が三人いた。彼女たちも美人には違いないけれど、今は霞んで見える。舞子ならきっと怯えてすくんでしまいそうな整列した騎士たちの威圧を前にしても臆する事無く悠然と脚を組んでいる女性の放つ輝きは、それほどに周囲を圧倒していた。
 一体あれは誰なのだろうか……興味がますます高まり、手すりから身を乗り出すようにして観察していると、その女性の視線が一瞬だけ舞子の方へと向けられた。
「………?」
「あ〜あ……見初められちゃったね、あんた」
 いつの間にか、舞子の横にあの落ち込んでいたメイド服の女性が並んで立っていた。面白くなさそうな顔で手すりに頬杖を突き、なにやら難しそうな話が行われているテーブルを見つめながら八重歯を覗かせ口を開く。
「女同士は初めて? だったら世界観が変わっちゃうかもね〜……恋人がいるなら今すぐ別れ話を振っといた方がいいわよ。後でこじれるから」
「プゥ! 舞子、好きな人なんていないもんッ、お姉様なんか知らないもん、プンッだ!」
「あらら、ご愁傷様で……ま、初めてじゃないなら傷も浅いか、ははは……おや、話もやっと終わったようだね」
 言葉に促されて舞子も食堂へと目を向ける。すると謎の女性と騎士団長が席から立ち上がり、互いに握手をしているところだった。女性が笑みを浮かべているところを見れば要求が呑まれたようだけれど、話の内容を聞いていなかった舞子には何が話し合われていたのかすら分かっていない。
 何はともあれ、話し合いは終わった……状況と雰囲気を見れば、“会談”と言う言葉を使うのが適切だろうか。用件が済んだ以上、ドレス姿の女性はその場を退席する流れのはずなのだが、なぜか後ろではなく前へ、自然と左右に分かれて道を開ける騎士たちの間を通り、階段を登り、舞子のすぐ目の前にまでやってくる。
「ぁ………」
 今まで話していた三つ編みのメイドが主の正面から横へと移動し、恭しく頭を下げて礼の姿勢を取る。
 舞子も数段階段の上にいるせいで女性を見下ろす位置にいる事にうろたえてしまい、オロオロと首をめぐらせていると、ドレス姿の女性は唇に右手を当て上品な笑みをこぼす。
「ふふふ……そんなに怯えなくても構いませんよ。“里の長老”とは懇意にしていただいていますしね」
「え………?」
「聞いた話では、もう少し先に進んでいるものとばかり思っていたけれど、“ヒトの世界”では勝手が違いましたかしら?」
「あ、あの……なんの…話ですかぁ……? 舞子…知らない…分からない……」
 女性の言葉に、急に舞子は怯えたように身をすくませ、後退さる――が、下がった踵が階段の段へぶつかり、身体が硬くなっていたことも災いしてバランスを崩し、そのまま後ろへよろめいてしまう。
「っと、危ない危ない」
 倒れそうになる舞子の肩を後ろから支える手がある……その手が、今まで視界にいたはずの髪を三つ編みにしたメイドのものだと分かると、何度も前と後ろへ視線の往復させながら舞子の困惑はさらに大きくなっていった。
「ごめんなさい。驚かせるつもりは無かったのだけれど、あなたの“目的の人”に会えた感想を聞いてみたくて」
「し、知らない……舞子、何も知らないし、そんな人に会ったことない……!」
「いいえ、あなたは出会っているわ。あなたの運命の人に、この地で、この場所で。―――このカードが何よりの証だもの」
 そう言うと、眼下の食堂から若い騎士たちが大勢見つめているのも気にせずにドレスの胸元に手を差し入れ、舞子など一生かかっても及びもつかないだろう巨乳の谷間から一枚のカードを引き抜いた。
 何が描かれているのだろうと目を向けるけれど、そのカードには何も描かれてはいなかった。真っ白い四角いカードの意味を考えようともするけれど、その前に、カードを使って未来を予言する“人間”の存在が舞子の脳裏に思い出される。
「あのぉ〜……あなたはもしかしてぇ〜……」
「ギルドマスター」
 舞子より先に女性の名を呼んだのは、階下より騎士を従えた騎士団長の声だった。
「失礼ながら、それ以上彼女へ危害を加えるようでしたら、我等も黙って見過ごすわけには参りませんぞ」
 先ほど要求を呑まされて自尊心を傷つけられたのか、騎士団長の声には普段にはない迫力があった。
「あら恐い。では舞子さん、ここで立ち話で済ませるのもなんですし、よろしければ私の馬車で夕食などいかがですか? この地での“彼女”の活躍、きっとあなたが一番目にされているでしょうから」
「え……まさか……舞子が会わなきゃいけなかった人って………」
「さあ? でもその人も、ずいぶんと寄り道ばかりしている人のようですから」
「じゃあ………」
 まるで風が吹いて濃い霧が晴れるかのように、舞子の表情が困惑から驚きへ、そして抑えきれないほど沸きあがる喜びの笑みへと移り変わっていく。
 その舞子の表情を慈愛の顔で見つめていた女性――ギルドマスターは「そう言うことですので」と騎士団長たちに会釈をし、手にしていたカードで口元を隠す。するとギルドマスターの吐息を受けたカードにゆっくりと意味を持つ絵柄が浮かび上がってくる。
 ―――『人を抱く白竜』
「では参りましょうか。かの人へ捧げられし半竜の巫女、舞子=ナーガ=ミリヤーノ。私でしたら、きっとあなたの進む道を示して差し上げられると思いますよ?」
 背後で「どんな宗教の勧誘ですか?」とため息混じりに囁く小声は舞子の耳には届いていない。
 “里”から与えられた“使命”と、アマノの街で出会った“運命”。どちらを選ぶか苦悩していた舞子の前で二つが重なり合ったその衝撃に、怒る事で紛らわせていた置いていかれた寂しさをいとも容易く吹き飛ばされ、涙をポロポロと溢れ出させる。
「舞子の進む道は……もう…もう……」
 ―――迷う事無く追いかけていける。今度出会ったその時は、もう一人の見知らぬ影に怯える事無く、「お姉様」と呼ぶことが出来る。
 溢れる涙を拭うハンカチを差し出してくれた三つ編みの髪のメイドが「やっぱり係わり合いになっちゃうのか…」とどこか嬉しそうな声を漏らしたのは舞子にも聞こえた。
 だから舞子はハンカチを受け取りながら、
「はい♪ 舞子、今度もお口もおっぱいもおマ○コもいっぱいいっぱいい〜っぱい、お姉さまに満足してもらえるまで愛してもらいますぅ〜♪」
 それを聞いて騎士数人が鼻血を噴き、数人が股間を抑えてうずくまってしまった。















「何を言ってるのかしら、この子は……」
「ほえ?」
 舞子が思わず口にした言葉に、ギルドマスターは頬に手を当てて溜息を突く。
「いいこと? 殿方でもお姉様でも、相手を満足させるためには愛されるのではなく愛することから始まるのよ。具体的に言うと○○○を○○○ぐらい出来なくては話にならないわ。それも序の口で○○○や○○○を○○○してから―――」
「そ、そんな事まで……? ま…舞子の知らない遠い世界ですぅ……」
「甘いわ。上級になると○○○をたっぷりと×××した挙句に△△△して□□□するのも当然よ。さらには○×△から○○○を○○○を○○○して○○○して、その上で○○○×××△△△□□□―――!!!」
「えええええっ!? 舞子にそんなこと……お、お父様お母様、舞子は大人の階段を現在進行形の全力疾走で駆け上がっていますぅ〜〜〜!!!」
「舞子さん、大丈夫よ。頑張ればあなたなら出来る、私は信じているわ。○○○はおろか×××や△△△に□□□だって。なぜならそれは“愛”だから!」
「は…はい! 舞子、頑張って頑張って、お姉さまを満足させて上げられるぐらいの立派なレディーになってみせますですぅ〜! ですからよろしくご指導お願いします、先生ェ〜!」
「いいわ。あなたには私の技の数々を直伝してあげる。たくや君ならきっとそんなあなたを喜んで抱きしめてくれるわ。だって彼女、胸が大好きですもの!」
「胸……で、でも舞子の胸はちょっぴり控えめサイズでリーズナブルと言うほど安売りはしていませんけど形にはそれなりに自信が……ああでもお姉様は何度もこねくり回してくれました!」
「こねくり回してくれたのね?」
「はい! 舞子のネグリジェを乱暴に引き裂いてむき出しにしてから、赤くはれ上がっちゃうほどに乱暴で、荒々しく、情熱的に!」
「ええ、ええ、そうでしょうとも。だけど大きさに不安を感じているのね? でも大丈夫、たくや君は大きくても大好きだし、小さくても大好きなの。だってそれはおっぱいだから!」
「し…信じていいんですかぁ〜…? 舞子、自分のおっぱいでお姉さまを満足させて上げられるって!」
「もちろんよ。磨きをかけたあなたの胸になら、たくや君はかぶりついてねぶりついてたっぷり揉みしだいた挙句に熱い○○○を×××してくれるから!」
「先生ぇ〜! 舞子、こんなに嬉しい事はありませぇ〜ん!」
「舞子さん!」
 階段上でヒシッと抱き合うのは、新たに確固たる絆で結ばれた師弟の二人。その姿を三つ編みのメイドが呆れ顔で間近に見、離れた場所にいる三人が顔を赤らめながらもパチパチと小さく拍手を送っていた。
 ―――そして食堂の床は若さゆえに噴き上がった鮮血で真っ赤に染まり、男ゆえに抑えきれない昂ぶり膨らむ股間を無理やり抑えて血の海に沈んでいた。
 そんな時、恵子を伴って上の階から降りてきた美里が食堂内を見回して一言。
「なに夕食時に馬鹿やってんのよ、あんたらは」


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