第十章「水賊」13


「……まさかこんなところで顔をあわせるなんてね。二人とも、お久しぶり」
 そうこの方済みから見つけた蝋燭に通路の松明から火を灯し、帆の明るい温もりのある灯かりを手に入れた倉庫の中で、あたしは手足を縛って壁際に座らせた二人の男を見下ろしていた。
 体格のいい二人の男は、あたしが船の中で協力を申し込んだ相手だ。一人に1000ゴールドでこちらに色々と融通してくれるように頼んでおいたのに裏切られる形となり、結果として綾乃ちゃんとははぐれ、舞子ちゃんは捕まってしまう。あたし自身もマーメイドの力が発動していなければ、荒れ狂う河の中で溺れ死んでいたかもしれない……そう考えれば恨み言の一つも言いたくなるところだ。
「どしたの? 顔を逸らさずにあたしの方を見てみたら?」
「いや……あ、あんたには悪いことしたと思ってるんだ。けどまさかボスが全員でかかれなんていうもんだから……」
「だから約束を破ったの? なんか格好いいこと言ってなかった? 女の子には優しくするとか、舎弟と呼んで下さいとか。あ〜あ、あの言葉、全部嘘だったんだ? サイテ〜、口からでまかせしか言わない男って、他の何が良くても最悪よね、うんうん」
「ぐぅ……いじめないでくださいよ、姐さん。俺らも仕方が無かったんですから……」
「仕方ないで殺されかけた方が、それで納得すると思う?」
「それは……」
 にこやかに笑みを崩さぬまま言い負かされ、男たちが大きな体を小さくして口をつぐむ。悪い事をしたという意識はあるのだろう、後悔もあるのだろう、声も部屋が静かでなければ聞き取れないほどに小さくなり、決して睨み付けまいとしているあたしをほとんど水に床ばかりを見つめている。
 ―――でも、この二人ならあたしの協力してくれそうね。罪悪感を感じてくれてるのもポイントは高いし……説得してみようかな。
 すぐに行動する為に、できればゴブリンゴーストたちが帰ってくる前に話をつけておきたい。近くにあった小箱を引き寄せて二人の正面に腰をかけて陣取ると、右だけ裸足の足を見せ付けるように左足の上に乗せて絡め、その上に肘をついてアゴを乗せる。
 ―――あ、なんかこういう雰囲気、ジャスミンさんやギルドマスターを思い出しちゃうかも。
 最近であった中でも特に美人で、しかも余裕たっぷりの大人の女性だったからだろうか、それとも相手より上の視線で見下ろす挑発的な態度が記憶の中の二人に影響を受けているのか……どちらにしろ、こちらが優位にいる状況で男を見下ろすなんて経験は生まれて初めてすぎて、つい、ジャスミンさんやギルドマスターにされた事をなぞるような行動思考が頭の中に浮かんでしまう。
 ―――普通にお願いするよりはいいかも……ふふふ、ちょっと楽しくなってきたかも……♪
「まあいいわ。船でのことは水に流してあげる。その代わり約束してた報酬はなしだからね」
「へい……仕方ありませんし……」
「それともう一つ……二人に手伝ってもらいたい事があるの」
「俺らに……な、何するんですか!?」
 今の言葉は「何をすればいいんですか?」と言う意味ではなく、「なんて事をするんですか?」の意味だ。
 お尻を前へとずらし、手を伸ばせば二人の顔に触れられる距離にまで身を寄せたあたしは、右足を二人の目の前を通るように動かし、向かって右側にいるほうの男の股間へと爪先を乗せた。いきなりこんな事をするなんて想像していなかったのだろう、声を上げて困惑した男は反射的にあたしの顔を見上げ、それと息を合わせ、心地よい弾力で圧力を押し返してくる股間をグッと踏み込んだ。
「オウッ……!」
「話してるのはあたしよ。最後まで聞きなさい。……わかった?」
「へ…へい……すみませんでした……」
 よろしい―――素直に頭を下げる男の様子にゾクッと身体が震えるほど恍惚とする満足を得たあたしは爪先の力を緩めると、胡坐を掻いた男の太ももの間へ足の指先を滑り込ませる。そして親指でズボン越しにもわかるほど熱を帯びた男の股間を下から上へ、ツツッ…となぞり上げる。
「ウ…ゥ……」
 大きく膨らんだ袋の中心を通りながら左右の玉を揉むように軽く刺激を加える。爪を通過させ、相手の左側だけを五本の指で軽く包み込み、外側を通って再び下へともぐりこみ、身を乗り出して顔を寄せながら布地を押し上げんばかりに膨らみ出したペ○スを中指を中心とした爪先でなぞり……亀頭の辺りでグッと握りこむ。
「アオッ!」
「気持ちいいの? おチ○チンを踏まれて気持ちよくなってるの? ふふっ……あたしの言う事を聞けば、もっといじめてあげてもいいのよ?」
「聞きます、姐さんの言うことならいくらでも聞きます! だから、もう……!」
「いいお返事ね。じゃあ―――」
 爪先が股間へめり込むほどに、屈強な水賊の男はアゴを突き出し、苦痛に顔を歪ませる。けれど足から伝わってくる肉棒の硬さは圧力に屈する事無く衣服の下で張り詰めていき、体格に恥じない膨張を持ってあたしの爪先を押し返そうとする。
「ぐゥ………!」
「ふふふ……気持ちよさそうね。股間を踏みにじられてるのに勃起するなんて、どんなに変態さんなのかしらね。どう? このまま踏み潰してあげようか? 潰れたおチ○チンから精液をビュルビュル噴き出してみる?」
「やめ……うあァ!」
 目じりに涙を浮かべ、男は抵抗もできぬままに開いた唇から短く悲鳴を上げる。……それを聞いても罪悪感は感じない。ありに女性の涙であったなら、あたしも心を痛めて我に帰っていたのかもしれないけれど、今はむしろ心地よい冷たさを伴った歓喜の震えが全身を駆け巡り、たまらず両腕で自分の体を抱きしめてしまいそうになる。
「あ、姐さん、やめてください! これ以上はあんまりです!」
 ―――と、今にも射精しそうな脈動をつま先の下から感じていたあたしを押しとどめたのは、隣りで事態をジッと見つめていたもう一人の男だった。
「今さっき、水に流すっておっしゃったじゃないですか。詫びろと言うのなら何度でも頭を下げますし、逃がす手伝いをしろって言うなら、それも構いません。だからそいつの玉を踏み潰すなんて、そんなこと、お願いですからやめてやってください!」
「………そうね。あたしも男の股間を踏みつけても面白くないしね」
 そう言って含みのある笑みを浮かべながらつま先を股間から離すと、踏まれていた当人の口から名残惜しそうにため息が漏れる。
 傍から見ていれば、男性の急所を踏みにじられるかわいそうな行為なのだろうけれど、両手両足を縛られて年下のあたしの足で大切な股間を弄ばれる快感に身を震わせている方からすれば、余計な心配でしかないのだろう。……もっとも、「ペ○スを踏まれて気持ちよかった」などと言えるはずもなく、相棒からもあたしからも顔を背けて収まりのつかなくなった股間を押さえ込もうと唇を噛み締める事しか出来ないでいた。
「あ〜あ、かわいそうに」
「姐さんがしたんでしょうが。ほら、大丈夫か?」
 相棒がそう言って慰めようとするけれど、今の股間の状態でやさしくされる方が酷と言うものだ。その事を本人にも自覚させる為につま先を伸ばして男の視界へ差し出してみる。
「ッ………!」
 視線が一瞬であたしの右の裸足へ釘付けになる。よほど興奮して気にいったのか、熱を帯びた視線であたしの足を凝視し、あたしが一声命じれば喜んで指先にしゃぶりつきそうな表情で突き出した脚線美を目で追いかけ、あたしの顔を見上げてくる。
「言う事を聞けば、望むままにしてあげる。どう? あたしのする事に協力する? 協力するなら―――」
「さっきから何度も言ってるじゃないですか。俺たちは協力するって……な、なにやってるんだよ!?」
 困惑の声……それも当然だろう。自分の相棒が涎を垂らしてあたしの指先へ舌を伸ばそうとしているのだ。理性と尊厳、男としてのプライド、それらをすぐ隣にいる自分の目の前で捨て去って、他人の足先に興奮しきった吐息を吹きかけまがら口づけしようとしている姿など、見たことないはずなのだから。
「やめろって! お前、何しようとしてんのか分かってるのか!?」
「………うるさい。お、俺は姐さんに……いや、このお方に忠誠を誓うんだ。お前こそ邪魔しないで黙ってろ!」
「なんだよ、その言い草は! 俺はお前を心配して言ってるんだぞ!」
「それが余計なお世話だって言ってるんだ!―――お、お願いします、お慈悲でもお情けでも何でもいいですから、ま、また……!」
 自分の相方を型で突き飛ばすと、男はだらしなく開いた口へあたしの足の親指を甘い飴玉のように含み、嘗め回しだす。元々マゾの素質があったのか、それとも射精直前で中断されているのがよほど苦しいのか鼻息荒くあたしの足へむしゃぶりつくと、舌を指と指の間にまで這わせて吸い付くように舐め回し、隣にいる仲間のことも忘れて足の指を小指に至るまで順番に嘗め尽くしてゆく。
「あたしの足を舐めるのがそんなに美味しいの? 鼻息、スゴくいやらしいよ?」
「ハァ、ハァ、お…美味しゅうございます。何度舐めても…オレ…オレ………!」
 五本の指を全て唾液まみれにすると、男は足の甲の内側を横咥えにし、土踏まずにまで舌を伸ばしてくる。あまりに丹念過ぎる舌奉仕のくすぐったさに木箱の端に指を立て、腰をばれないように蠢かせて快感を逃していると、目を瞑って顔を背けている隣りの男の様子が視界に移る。
「どうしたの? あなたもこうして欲しいのなら、同じようにさせてあげてもいいんだけど」
「お、俺は……!」
「我慢……しなくてもいいのよ?」
 あたしの呼びかけに答えはない。必死になって聞くまいとしている姿に少し好感を覚えて胸を震わせると、止めなければ足首にまで舌を這い上げてきそうな堕ちた男へと視線を戻し、
「そろそろ……お望みの事、して上げよっか」
 言って、靴を履いたままの左足の爪先を男の下腹部へと押し当てた。
「右足はベトベトだもんね。ちょっと痛いかも知れないけど……今、楽にしてあげるからね」
 足首をひねり、ブーツの先端を男のズボンの内側へ滑り込ませると、勃起したペイ巣の引っ掛かりを避けるように一度上へ引っ張り、胡坐を掻いた股間へとズリ降ろす。脚が開いているので十分に降ろせたとは言えないけれど、窮屈なズボンの中から荒くれ者らしい雄々しいペ○スがブルンと震えて逞しい姿をさらけ出した。
「クスッ……こ〜んなに大きなおチ○チンしてるのに、踏まれて悦ぶなんて……」
「お、オレ、変態でもいいですから……もう一度、姐さんの足で思いっきり踏みつけてください!」
 その言葉を聞いて、あたしの頭の奥のジィンと痺れるような感情が広がっていく。
 望むままに踏み潰してあげようか……そんな衝動に駆られながら、あたしは木箱に腰掛けたまま唾液まみれにされた右足をむき出しになったペ○スへ押し当てると、特に念入りに舐めしゃぶられた親指を透明な汁をにじませている射精口へ滑らせる。
「オ…クゥ……!」
 ビクンと跳ね上がったペ○スを足で抑えながら先端から裏筋を爪先で丹念に擦りたてる。十分に唾液を塗り広げると、土踏まずのへこみで踏み潰すように亀頭を責め立てる。
「いやらしいおチ○チン……あたしみたいな小娘に踏みつけられてこんなに勃起させて。わかる? あたしの足の裏、先走りでベトベトになっちゃったわよ?」
「す…すみません……」
「本当に悪いと思ってる?」
 そんなの嘘に決まってる……叱られた子供のように肩をすくめて身体を小さくした男へ小さく笑みをこぼすと、左足を木箱の淵に乗せて膝を立て、男に見えるように股間を開いてみせる。
「全然悪いことじゃないのよ? ごめんね、いじめるようなこと言っちゃって……だから、お詫びにいいものを見せてあげるね……」
 あたしは足の親指と人差し指の間を大きく開くと、ペ○スのカリ首をそこへ挟み入れる。そして甘い声を幾度となくこぼしながらペ○スを締め付けるように扱き始めると、右手の指でショートパンツの股間部分をグイッと下着ごと横へずらしてみせる。
「んっ………!」
 恥丘を突き出すような格好で秘所を空気へ晒すと、冷たい感触に触れられながら煮えたぎったのかと錯覚するほど熱い体液がキュッと窄まった膣口からあふれ出してくる。男の人の股間を踏みつけると言う、今までありえなかったシチュエーションに異常な昂ぶりを見せたあたしの中のイヤらしい女の部分が、迎え入れるためではなく、ただこうして見せるためだけに震える膣道からネットリとした淫液を搾り出してみせていた。
「ハァ……見るだけ…見るだけよ……どうしても触ったり、吸ったり、入れたりかき回したりしたかったら、ここから―――」
 言い、ペ○スを扱く指をギュッと締め付け、
「ここから噴き出る精液を……あたしのここにまで届かせてみせなさい。そしたら好きにさせてあげるから……」
 水に濡れたシャツをべっとりと貼り付けた乳房を無意識に左腕で下から持ち上げながら、男を絶頂へと導く為に足の動きを加速させる。バランスを取れなくなって左手を後ろへ突くけれど、興奮しきって衣服を突き破らんばかりに硬く尖った乳首を乳房ごとプルプルと震わせながら、脈打つ肉棒のカリ首から根元までの往復を乱暴に感じるほどの動きで繰り返す。
「あ、アァ、姐さん、姐さん、オレ、もう、そんなに扱かれたら!」
「イきたいの? イっちゃうの? あたしの足だけでイっちゃうの? ほら、ちゃんと答えなさいよ!」
 足の指がカリ首まで締め上げるたびに透明な液体が先端から噴き出して放物線を描く。虚ろな瞳であたしの濡れてるおマ○コを見つめながら腰を震わせる男へ最後のスパートを掛けると、この異常な行為の中でギンギンに勃起していたペ○スが突然大きく跳ね上がり、男の叫び声とともに真っ白い液体を勢いよく打ち上げた。
「うぉおおおおおおおおおッ!!!」
 ―――んゥ………!
 噴水のように噴き上げられた精液は、絶頂を迎えた男を見下ろすあたしの視線の高さを越えてほぼ真上へと迸った。まっすぐあたしの方へと飛ばしていれば、股間はおろか水に濡れた胸の膨らみにまで届きそうな勢いではあったけれど、角度が高すぎたせいで結局は床や木箱の側面に撒き散らされて終わってしまう。けれどあたしの足で煮詰められた精液は信じられないほど濃厚そうで、まるで固体のゼリーのように床や木箱の表面に絡みつき、盛り上がって射精の勢いのままに小さく震えているように見えた。
「ほ…ほえ………はゥゥ………」
「スゴい……こんなに出せちゃうんなら、男の娼夫になってもやっていけるんじゃない?」
 床に撒き散らされた精液量を見つめながら唇を嘗め回したあたしは、全てを吐き出して柔らかくなっていくペ○スから足を離す。スネには男の放った精液がべっとりと飛び散っているけれど、それを拭うでもなく、ジッと見下ろしながら萎えていくペ○スを軽く踏みつけ、尿道に残った精液の残滓に至る最後の一滴まで丹念に搾り出してしまう。
「ふふふ……お疲れ様。―――じゃあ次ね」
 と、あたしは放ったらかしにされていたもう一人の男のほうへ顔を向ける。
「い、いい、俺は遠慮します!」
「ダ〜メ。それじゃ不公平でしょ? あたしに協力してくれるんだから、“このぐらい”はしてあげないと」
 あたしが指差したほうは、立った一回だけ足でされただけでふにゃふにゃのへにゃへにゃになってる男の相棒の姿だ。
 それを見て恐怖が増したのか、左足のブーツとニーガードをハズし、ニーソックスを丸めるように抜いていくあたしの前から芋虫のように床を這って逃げ出そうとする。―――けど、ここで逃げられてあたしの居場所が他の水賊に知られると話がややこしくなる。素足にした左足を早速伸ばして男のズボンをお尻側から引っ掛け、そのままズリ降ろす。
「や、やめ……俺にその趣味はない!」
「安心していいわよ……なんか目覚めちゃったから、絶対気持ちよくして上げられるもん♪」
 しかも今度は両足だ。
 当社比でさっきの二倍の快感だ。
 今のあたしなら、誰でも足でイかせられそうな気分だ。根拠はないけど。
 あたしの左足がむき出しになったお尻から股間へと滑ると、「イヤー!」とか「助けてー!」とか「お母さーん!」とか涙声で叫ぶけれど、それも今だけ……自分でもよくわからない衝動に突き動かされたあたしは、よくわからない自信と興奮に身を震わせながら、二人目の獲物を足先でゆっくりと絡め取り始めた―――


第十章「水賊」14へ