第十章「水賊」09


「あ…あ………先輩…あッ……入っ…たぁぁぁ………!」
 魔法の擬似男根が綾乃の膣を押し広げ、ゆっくりと膣を貫いていくと、一見苦しそうに見えながら、声のお国喜びを噛み締める綾乃の声が、これまた美里の神経を逆なでした。あまり使い慣れていない膣壁を圧迫される苦しさに呼吸が不規則になっている綾乃へ、乱暴に、そして強引に、魔力の塊を捻じ込んでは広げた脚を押さえつけ、子宮の入り口をグリグリ擦りあげながら乳房の先端へかぶりつく。
「―――――――――ッ! ……あ…あぁ……そんな二億は…私……はぁ! あッ、ダ…メェ……!」
 綾乃の頬に、苦しみに耐え切れずに涙が伝う。まっすぐ下へは流れ落ちなかった涙の後にわずかながら自尊心を取り戻した美里は、けれど何も言わぬまま腰を動かし、魔力製のディルドーの先端で締め付けてくる肉壁をかき混ぜる。
「イッ、ひん、あ…お…おっきくて……壊れちゃ…壊れちゃう…セン…センパ……ア、いい、こんなの…はぁ、ぁ…くぁぁぁ………!
 焦点の合わない瞳をさまよわせ、大きく開いた唇から涎を垂らして綾乃がよがる。まさに夢うつつの表情で感覚のない魔力の塊を体全部の筋肉を引き絞って締め上げる。
「本当のおチ○チンがあったら妊娠させてあげたいわ……ふふっ、おイきなさい。そして私たちの虜になってしまいなさい!」
 何度綾乃の膣内を往復しても快感を感じることのない美里は、一方的に綾乃を犯し続ける。身体を起こして開脚した綾乃の両脚の間に身体を収めると、体重を掛けて股間に貼り付けた魔力の塊を震える子宮へと叩きつけ、蜜壷から大量の愛蜜を押し流す。相手がたくやだと思っている綾乃は体の冷却と疲労直後の体力の低下でまともな思考力など無くなってしまい、掴まれた腰に美里が下腹部を叩きつけるたびに脳裏で真っ赤な火花を撒き散らす。
「だめえ、だめえっ! ゆ、許して、先輩、許して、こんなに、太いの、ダメ、やァ、あぁアアアアアアアアアアッ!!!」
 お互いに快感を貪るのではなく、一方的に犯され凌辱を受ける綾乃と射精を気にせず腰を振りたくる美里とでは立場が全然異なってくる。綾乃の乳房を吸いながら空いた手を魔力の塊が抽送を繰り返している秘所へと滑らせ、恵子との貝あわせで包皮をめくり上げられたクリトリスを根元から摘みあげる。もし男性であれば、綾乃のただでさえ狭いヴァギナの強烈な締め付けに苦悶しただろうけれど、美里にはそれがない。むしろ、締め付けを増すことが綾乃だけに仇をなし、あれだけ冷え切っていた体を内側から溶かしそうなほど煮えたぎった蜜壷を震わせ、より強くなる摩擦に頭を振って悶え泣く。
 ―――んあ、あっ、あ…ああぁ……先輩ぃ…もう…わたし…た…耐えられないぃ………!
 細い腰に腕を回され、美里の股間から伸びる魔力の塊を子宮の入り口へ叩きつけられる。幾重にも折り重なる肉ヒダが波打つように痙攣し、煮詰められたように濃厚な愛液が魔力の塊を引き抜かれるたびに膣からあふれ出る。そして、股間が蜜まみれになるほどの快感の中で、綾乃は口元に喜びの笑みを浮かべ、射精しない魔力で生み出された擬似男根をむしろ喜んで奥へ奥へと迎え入れる。
 ―――先輩が……先輩が望むなら、私はどうなったっていい……このまま気持ちよすぎて頭がおかしくなっても……先輩にそうされるなら……!
 密かに胸に秘めていた願望を夢の中で満たされた綾乃は、脚を閉じようとするどころか自分の手で押さえつけ、開脚した両脚の中央へもぐりこんでくるモノのもたらす快感に酔いしれる。白く濁った愛液を溢れさせ、奥にコツンコツンと当たる魔力の塊に軽い絶頂を連続して迎え、その波が引かないうちに、夢の中のたくやと秘所を押し広げる美里の股間の擬似ペ○スとに新たな快感の波を送り込まれてしまう。
 翻弄され、滅茶苦茶にされ、ヴァギナの脈動が収まらなくなってしまっても抽送は終わらない。緊縮しようとする膣肉を透明な塊がかき回すほどに、小振りな乳房がフルフルと震え、羞恥と恍惚の中で蜜にまみれた魔力塊を膣口で扱きあげてしまう。すべてはたくやの為に、ハズかしさに胸を締め付けられ、ヒクつくヴァギナの奥からドプドプと大量の愛液をとめどなく放ちながら、息を弾ませ、秘めた願望を満たされてなお「もっと…」とねだり腰をよじる。
「センパイ…センパイだけ……だから…こんなの…私じゃ……センパイセンパイだけに……は、恥ずかしいの…わたし…あ、ああ、イきます、先輩、ああ、あ―――――――――ッ!!!」
 綾乃の全身に、今までよりもひときわ大きな震えが走る。……それを待っていた美里は先端までパンパンに張り詰めた乳房に細い指先を食い込ませながら、綾乃のまだ幼い秘所へ魔力の塊を深々と突きたてた。
「あ……あ……セン…パイ……ああっ、あぁあああぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!!」
 叫び声が広い船室に木霊した瞬間、綾乃の股間からビュルッと濃厚な液体が噴き出した。美里は魔力の塊の先端を綾乃の膣奥へグリグリと押し付けたまま動きを止め、腕の中に感じる少女のオルガズムの震えに下腹部を疼かせ、異様な興奮に金色の髪を震わせる。
「もう逃がさないわよ……あなたは私と恵子のもの」
 魔法で回復した体力も既に限界を迎えているはずだ。自分が楽しむのはまた後にしようと決めると、股間から伸びていた魔力の固まりもゆっくりと消えていった。
「私たちが与える快感の中で溺れてしまいなさい……ず〜っと可愛がってあげるから……」
 熱く蕩けきった呼吸を繰り返す綾乃の唇へ美里が自分の唇を重ね合わせると、それに割り込むようにメガネをはずした恵子が割り込み、舌を伸ばす。
「ハァ………アァ……んッ………」
 三人はお互いに舌を絡めあわせ、溢れる唾液をすすり上げる。恵子の手が美里の腰へと伸び、美里の手がだらしなく蜜を滴らせる綾乃の秘所を弄ぶ。綾乃だけがただ、激しい興奮の余韻に小振りな胸を上下させて喘ぐ事を繰り返し、満ち足りた表情で二人の口付けを受け入れていた。………のだが、
「………え?」
 体を重ねていた間はおぼろげだった意識が覚醒すると、たくやとのキスのはずが、見知らぬ美女と舌を絡め合わせている現実との変化についていけず、軽いパニックに陥ってしまう。
 これは夢なのかと……ならたくやはどこに行ったのだと……考える事はいくつかあるのだけれど、頭が思考を放棄し、錯乱した綾乃がすることはただ一つだけ―――叫ぶことだ。
「イヤァ――――――――――――――――――――――――――――――――ッッッ!!!」
 肺を絞り上げて懇親の悲鳴を上げると、美里達が怯んだ隙に後退さり、ベッドの端に引っかかっていた自分の服を抱えて体を隠す。
「そ…どこですか? 誰ですか? なんですか? なぜですか? どうしてなんですか!?」
「ああもう……目を覚ましたならそう言ってよ。耳元でいきなり叫ばないでよね」
「そう言う事を私は厳密に言っていません。何でどうして誰がいつどこでなんでですかって訊いてるんです!」
 綾乃自身ですら何を言ってるのかわかってない。そんな言葉を、耳の穴を右から左に鋭い悲鳴に貫かれた美里と恵子に理解できるはずも無い
「おちつきなさい。私たちは水に落ちたあなたを温めていただけよ。凍え死に仕掛けてたから」
「う、嘘です! わ、私、先輩のモノなのにィ〜〜〜!!!」
 錯乱したまま本音が出てくるけど、当然意味はいまいち分からない。ただ、離しても無駄だと悟った美里はやれやれと肩をすくめると、一瞬の早業で綾乃から体を隠す衣服を奪い取り、再びベッドの上へと押さえつける。
「あなたがなんと言おうと、もうあなたは私のものなの……無駄に抵抗する慣らしてもいいわよ。ただし、あなたが痛いエッチがすきなのならね……」
「お姉様お姉様、脅かしちゃかわいそうですよ。ちゃんと勧誘したいだけだって説明してあげないと」
 請求に体を求めてくる美里と違って、メガネを掛けなおした恵子は綾乃を安心させるようにニッコリ微笑みベッドへ横たわり、顔を近づけて……見えない位置で綾乃のヘソへ指を滑らせくすぐり始める。
「んゥ……!」
「恐がらなくてもいいんですよ。私たちはただ、あなたをパーティーに入れたいだけなんですから」
 意識を失っている間とは言え、何度もアクメを迎えた綾乃の肌は、円を描くようにおへそを撫で回されるだけで敏感に反応してしまう。それでも綾乃の耳は、
「事後承諾になるんですけど、女だけのパーティーだからこういうことも知っておいて欲しかっただけなんですよ、“たくや”さん」
 ―――と、間違えて名前を呼ばれた部分をしっかり聞き取ってしまう。
「あの……私、違います。人違いです! 先輩じゃありません!」
「今更そんないい訳が通じると思って? あなたがモンスター使いである事はわかっているのよ。そのあなたを捕まえるために、こんな嵐の中を追いかけてきたんだから、素直に諦めて私のものになるとお言いなさい!」
「大きな亀と黒い格好をしたモンスターがあなたを護っていた事を知ってるんですよ、私たち」
 美里と恵子に次第に快感を与えられながら、綾乃は必死に歯を食いしばる。
「本当に…本当に違うんです! あの子達は、先輩が水賊さんたちから私を助ける為につけてくれただけで、先輩は水の中に……お願いします、こんな事してる場合じゃないんです、助けにいかせてください!」
 言葉を発している間に、霞がかかったように曖昧だった記憶が明確に蘇ってくる。
 ―――自分の目の前で水面に落下したたくや。
  ―――嵐が吹き荒れる中、力尽きるまで捜しても発見できなかった事。
   ―――そして……
 綾乃の言葉に、美里と恵子が顔を見合わせる。どうにも真偽が着きかねているようで、困った顔をした美里は一旦ベッドから降りると床に落ちている自分の衣服を拾い上げた。
「……あなた、名前は?」
「あ…綾乃といいます」
「そう……じゃあ、もうあなたでいいわ」
 綾乃が「は?」と首をひねる目の前で、自分の服を手近な机の上に放り投げた美里は、もう一度身を屈め、一度は放り捨てたディルドーを手に立ち上がる。
「あなたが先輩と慕う女性を失った悲しみは、冒険者を続けていれば誰でも味わうものよ。……だから私が可愛がって、綺麗さっぱり忘れさせてあげる」
「な、何でそう言うことになるんですか!? 先輩は生きてます、絶対に、ただちょっと溺れたり沈んだりしてるだけなんです!」
「………沈んでたら助かってないと思うけどな」
 横で恵子が冷静に突っ込みを入れる中、その恵子の愛液をまとわせたディルドーをチロチロと舐めながら美里がベッドへ上がり、綾乃へにじり寄ってくる。
「や……何をするつもりなんですか……?」
 美里のただならぬ気配に逃げ出そうとする綾乃だが、背後に回った恵子ががっちりと羽交い絞めにしてしまう。
「離して、離してください! 私…わたし………!」
「安心していいわよ。……明日には、その人の事を忘れさせてあげるから」
 直感的に、美里の言葉が真実であると綾乃は理解してしまう。たくやと一緒に娼館で寝泊りする事が多かったせいか、それともギルドマスターにあれこれ弄ばれたせいか、“そういう人”がわかる様になってしまった自分に泣きたいやら落ち込みたいやら、いくつかの感情が込み上げては次に込みあがってくる感情と混ざり合って膨れ上がっていく。
 だから「あー」とか「あうー」とか「あわわわわ」とか口に出しても意味ある言葉は喋れず、首筋へ伸びて来る美里の指が触れる寸前で感極まって放った一言は結局、先ほども放ったもっともシンプル且つ短くてとても長い拒否と拒絶の言葉だった。
「イヤァ――――――――――――――――――――――ッッッ!!!」
 涙がこぼれ、短く縛ったお下げが揺れる。
 体に力がこもり、それでも美里の手から逃れる事が出来ずに首筋を触れられ、胸に溜まっていた空気全てを悲鳴に費やしていた綾乃は「ヒッ」と短くも怯えた声を上げて背筋を震わせる。
 ―――そして直後。船室は一瞬で壁と天井を失った。
「――――――――――――!!?」
 眩い輝きが室内を満たす。反射的に目を瞑り、手をかざしてもなお眼球に痛みが走るような閃光に、綾乃も、美里も、恵子も、わけもわからぬままにベッドの上から爆風で吹き飛ばされてしまう。
「いッ…たたた……何が起こったのよ、一体……」
 最初に身を起こしたのは美里だった。そして目の前の光景にしばし唖然としてしまう。
 他の船室と比べて比較的広い船長室の半分の壁と天井が根こそぎ吹き飛ばされていた。壁の向こうには本当に何もなく、焼け焦げた船内へ嵐の風が吹き込んでいた。天井は表面を剥ぎ取られた程度だけれど、部屋の真上は甲板だ。そこから叩きつけるような雨が降り注ぎ、すでに部屋としての役割を果たさなくなってしまっていた。
 恵子と綾乃もお互いを支えあいながら体を起こしてみるけれど、ベッドを挟んだ向こう側の惨状に何か言おうとして、この状況を表す的確な表現を何も思いつけず、目をしばたたかせて廃墟同然と貸した室内を呆然と見つめていた。
 ただ、綾乃だけはこれとよく似た光景をたくやが襲われたときに目撃している。あの時、佐野が放ったのは振動の魔法だったけれど、強烈な選考と焼け焦げた木材、この二つから考えられる部屋を破壊したものの正体は、強力な電光の魔法だ。
 ―――もしかして……
 “電撃”と言うキーワードに、綾乃の脳裏に嫌な予感がよぎる。―――そして、その推論が正しい事を証明するモノが、通路側に面した壁の大穴から姿を現した。
「や…やっぱり……」
 まるで針山のような姿の巨躯……プラズマタートルだ。しかもご丁寧なことに、蝦蟇に跨るジライヤよろしく、いくつもの錘状の突起を持つ甲羅には腕組みしたゴブアサシンまで乗っかっている。
「二人ともどうしたんですか? あの、悪い人でもいらっしゃったんですか?」
 自分を守ってくれる優しいモンスターたちが、何の理由も無く強烈な電撃を放つとは思えない。ちょっと腰が抜けて立ち上がれないけれど、ベッドから身を乗り出して言葉を投げかける。……すると何故か、綾乃の方へ首を向けたゴブアサシンとプラズマタートルの目は、一度抜けた綾乃の腰がさらに抜け落ちそうなほどに強烈な殺気が込められていた。
「お、おおお落ち着いてください! ははは早まっちゃいけません! ななな何でそんなに恐い目をしてるんですかぁ!?」
 今にも零れ落ちそうなほど涙を目に浮かべて怯えながら、綾乃が声を振り絞る。するとゴブアサシンは方向転換してこちらへ向き直るプラズマタートルの背の上から、美里と恵子を順番に指差した。
「それはつまり……このお二人が、私にひどい事をしたからですか?」
 思い当たる理由を言ってみると、ゴブアサシンはコクッと小さく頷き、腰の後ろから短剣を二本引き抜いた。
「面白いわね。この小さいのは私に楯突こうというの?」
 対して美里もまた、せっかくの時間を邪魔された怒りもあって、壁に立てかけておいた自分の細剣と小型の盾を手にする
「お姉様、無茶ですよぉ……殺気の電撃レーザーを撃たれたら、障壁張っててもこっちがいちころですよぉ……」
「黙りなさい。ここまで私をコケにしてくれたんだもの。あの小さいのは私の手で切り刻まないと気が済みませんわ」
 ―――それは困る。
 あの二体のモンスターは、たくやと契約している大切な“仲間”だ。それがもし、たくやのいないところで人を傷つけたりしたらどうなるか……間違いなく、通常のモンスター同様に倒されてしまい、その上でたくやにも迷惑が掛かるだろう。
 止めなければいけない……そう決意して立ち上がろうとすると、ふと、綾乃はある事に気付く。
 ―――さっき、ゴブアサシンさんは私の質問に答えてくれましたよね…?
 つまりそれは、「綾乃を護る」と言うたくやからの命令が未だ健在である事を意味する。極太の電撃レーザーを叩き込んできたのも、恵子が室内に張り巡らせた侵入者防止の結界を打ち砕くためだろう。
「待ってください!」
 結論に辿り着き、ここで争わせてはいけないと慌てた綾乃は剣を抜こうとしている美里の右手にぶら下がり、首だけゴブアサシンたちに向けて無我夢中で叫んだ。
「先輩はまだ生きてるんですね!?」
 モンスターが命令を聞く……それはとりもなおさず、契約者であるたくやが健在である事を意味している。そして戦うことよりも綾乃の質問に答える事を優先したゴブアサシンは首肯し、その考えが正しい事を示した。
「じゃ、じゃあ、先輩が今どこにいるか分かりますか!?」
 嵐の中では見つけられなかったたくやの行方を尋ねたのは特に考えは無く、勢いから口をついて出た言葉なのだが、意外なことにゴブアサシンはこれにも首肯し、指を横に、水底ではなく川の上流の方向を指差した。
「あ………」
 言葉がノドに詰まる。……だが、もう訊かなくても十分だ。たくやが無事で、どこにいるのか分かるのなら、後は何も考えずに追いつくだけだ。
 胸が震え、心のどこかで拓也の無事を信じきれずにいた綾乃の目から涙が溢れ落ちる。顔は笑顔のままの嬉し涙だ。
 ―――そうだ。今は泣いている場合じゃない。
 そう思っても歓喜の感情から込み上げる涙は止まらない。そしてそれと同じぐらい、はやる綾乃の心も止まらなかった。
「あの、わたし、わたし!」
 頭の中で言うべき言葉が整理しきれていないまま、綾乃は美里と恵子に振り返る。………が、何故か二人は床にしゃがみこみ、ベッドのシーツを引っぺがして二人一緒に体に巻きつけていた。
「あのね……嬉しいのはわかるけど、隠した方がいいよ」
 そう言って恵子が指差した方向へ目を向けると、そこには男の人の顔があった。
「………え?」
 当然の事だが、突然一部屋をぶち抜く電撃が放たれれば、その衝撃はすさまじいし、音だってすさまじい。しかもこの船に現在乗り込んでいるのは訓練の行き届いた騎士たちであり、突発的な事態に対処する判断力も備えている。
 そんな騎士たちは、美里と恵子と綾乃、三人の女性が船長室に入っていったのを既に知っている。すぐさま駆けつけ救助に当たろうとしたのだが……壁や天井に空いた大穴からは何人もの男性騎士たちが頭を突き出し、全裸で喜ぶ綾乃に熱いまなざしを送っていた。
「―――――――――」
 言葉もなく、綾乃は両手で胸と股間を隠して床にしゃがみこむ。例えベッドの影に隠れても、上から覗き込んでいる騎士たちは雨に濡れながらも綾乃の裸身が丸見えであり、壁に出来た新たな入り口から覗き込んでいる騎士たちも隠れられたことで思わず首を伸ばして覗き込んでくる。
 そんな大勢の男性に裸を見られることは、綾乃にとっては初めての経験だった。
 完全に頭の中は真っ白になり、何も考えられなくなって、何かしようと思うけれど、何をしていいか分からない。ただただ、低いベッドの影にもぐりこむように小さな体をさらに縮こまらせて、何もわからないからこそ恥ずかしさに刺激された本能が命じるままに「き」で始まる言葉を口にした。
「キャアァァァァ――――――――――――――――――――――――――――――――――ッッッ!!!」
 先ほど美里を拒んだときとは一文字違いの恥じらいの悲鳴がベッドの影から大穴を通って船内に響き渡る。


 直後、今度は全周囲に向けて電撃が放たれた。


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