第一話その3


「おっねえぇちゃ〜〜〜〜ん♪」  この声が誰のものか、あたしの頭にその姿が思い浮かぶ。が、その名前を口にするよりも早く、松永先生に前 から抱き締められているあたしの腰に、背後から物凄い衝撃が叩きこまれる。 「ぐっ…ぐふっ……」 「あら? 物凄くいい音がしたわね。大丈夫?」  まるで砂袋でも叩きつけられたかのような(実際にそんな経験は無いんだけど…)重い衝撃と骨の軋む音…上半 身と下半身のつなぎ目あたりにちょうど叩きこまれた突進力にあたしの体は苦悶しながら軽く弓反るけれど、正 面で密着していてその威力を多少は受けているはずの松永先生はけろっとして、あたしに心配そうな顔を見せて いる。 「おあ…ほ…骨にきてる……ぐふっ……」  お腹にまで突き抜けた力が喉から酸っぱい物と一緒にこみ上げてしまいそうだけれど、半分泣きながら必死に 飲み下し、後ろへと体を向ける。 「へへへ、やっと見つけたぁ♪ 僕、ずっと探してたんだよぉ♪」 「は…遙君…も、もうちょっと手加減してよ……」  振り向いた先…あたしはそれほど身長が高い方じゃないんだけど、それでも視線の高さにはタックルしてきた 人の姿はない。  別に不思議な事じゃない。そのまま視線を下に降ろすと、体の向きが変わったせいであたしの左腰に抱きつい ている黒髪の美少年、遙君の姿があった。 「ごめんなさい。だけど僕、お姉ちゃんに会えて、すっごく嬉しいんだぁ♪」  喜色満面、本当にあたしと会えた事を喜んでいる遙君はあっさりと不意打ちタックルの事を謝ると、ブラウス の上からくびれを強調するためにコルセットで締めつけられているウエストに、そのぷにぷにのほっぺたをスリ スリ擦りつけてきた。  うっ…なんだか変な感じ……コルセットは硬めなんだけど…くすぐったい……もう…そんなに頬擦りしたら… … 「んっ…もう…ちょっと止めなさいって。で、何であたしを探してたの? やっ、だからやめてってばぁ!」  大きく上下に動く頭に胸をしたから押し上げられてプルンと振るわせられたり、パンティーの腰紐を捻られた りと、遙君の行動は無邪気ながらもかなりエッチ。松永先生の痴態を見、あられもない妄想を聞かされてかなり 興奮していたあたしには、女になってから散々揉みしだかれてすっかり開発されてしまった張りのあるバストが 弾むたびに軽い痛みにも似た疼きを感じてしまう。  キュッと引き結んだ唇から熱気を帯び始めた呼気が漏れそうになる。それを眉根を寄せて必死に飲みこむと、 自分の胸に込み上げる恥ずかしさを誤魔化すようにちょっと乱暴に、遙君の肩を持って体を引き離した。 「ねぇねぇ、お姉ちゃん、お姉ちゃん♪ 早く行こ♪」  ところがその行動にイヤな顔一つ見せず、逆にあたしの右手をとって自分が今来た方、言いかえればあたしや 松永先生もそっちから来たから客室の並ぶ旅館本館の方に戻ろうとしている。 「ちょ…ちょっと待って、待ってってば。いきなりやって来てどこに行こうって言うのよ!? あたしはこれか ら――」  グイッ  はえっ? な、何で左手も引っ張られてるんだろう……しかも後ろに……  背の低い遙君に引っ張られて前屈みになったあたしの体。そのまま廊下を進もうとしていたけれど、一歩踏み 出したところでぴたりと止まってしまう。 「――そこの僕? 相原君は今から私とお風呂に入るの。だから邪魔しないでくれる?」  その声を聞いたあたしは、まるで全身の毛穴が一斉に開くような感覚に襲われた。 「……………ま、松永せんせ……」  振り向くと、松永先生がニコニコと微笑みながらあたしの左手を掴んでいた。あたしが遙君と話している間に 浴衣も着直したようで、殺気まで隠語を連発しながら立ったままオナニーしていた気配はどこにも感じ取れない。 どこからどう見てもいつもの松永先生だ。  けれど何故だろう……先生の笑みは今まで何度も見ているはずなのに、今に限ってその微笑みがとてつもなく 恐ろしい物に思えるのは…… 「悪いんだけど、子供は寝る時間よ。私たちはこれからたっぷりと大人の時間を過ごすんだから、その手を離し てくれないかしら?」  大人の時間ですか!? あたしはどっちかって言うと、もう少し学生気分でいたいような……でも、働いてま すけどね、ははは…… 「ぶぅぅ! だめっ!!」  松永先生に対する遙君の反論は短く、そして明確な拒否だった。 「お姉ちゃんは僕とこれからエッチするの! だからダメ、お姉ちゃんは僕とSEXするのぉ!!」 「ぶっ!?」  な…なんて事(SEX)をこんなところ(廊下)で大声(それが一番の問題)でぇ!? 真一さん、栄子さん、二人 ともエッチな事は教えるのに、何でこう言う社会道徳的な事を自分の子供に教えてないんですかぁぁぁ!? 「ふぅん……相原君、この子とSEXしたの……ふふふ、ひょっとして母性愛を刺激されるタイプには弱いのか しら?」  ギュウウウウウ………  痛っ! 先生、手に力が入りすぎぃ!! 「そうだよ。僕のおチ○チン、お姉ちゃんのおマ○コの中に入ってザーメンいっぱい出したもん。だから、今度 は僕がお姉ちゃんを気持ちよくしてあげるの!」  ギュウウウウウ………  あたたたたっ!? 遙君も指を立てちゃ駄目だってばぁ!! 皮膚に食い込んでるぅ!! 「気持ちよく? それは私がしてあげるわ。相原君の感じるところ、全てをたっぷり弄りまわしてね。その前に 二人で体を洗いあって、綺麗にしてから一晩中愛し合うの。だから坊やはおかえりなさい」 「やだ。お姉ちゃんだって僕のおチ○チンおっきくて気持ちいいって言いながらアンアン喜んでくれるもん。そ れに中で精液を出したら物凄く気持ち良いってお母さん言ってたもん」 「入れれば気持ちよくなるって思いこんでるのがまだ子供なのよ。確かにペ○スをヴァギナに挿入されれば女性 は生理現象として愛液を分泌し、無意識にも感じてしまうわ。でもそれだけじゃダメよ」 「そんな事あるもん! お姉ちゃん、何度も言っちゃう言っちゃうって言ってたもん!!」 「じゃあ相原君に聞いてみましょうか? 私と君、どっちに抱かれた方が気持ちよかったのかを」 「お姉ちゃんは絶対に僕の方だって言ってくれるもん! ぼくだって言ったら僕がお姉ちゃんとエッチするから ね!」 「いいわ、望むところよ。相原君、どっち!」 「お姉ちゃん!」  どっちがあたしを感じさせる事ができるのかと言う事で議論していた二人が同時にあたしの方を向く……けど、 夢中になるあまりにあたしの腕を離していた二人の側からあたしはとっくに逃げ出していて、今は…… 「あ、あっちにいたぁ!!」  うわ、もう見つかっちゃった。もうちょっと話し込んでてくれればいいのにぃ!!  戒めから抜け出せたのはいいけれど、本館に行っても温泉の方に行っても道なりに逃げたらすぐに見つかりそ うだったので、とりあえず少し進んだところの渡り廊下を超えて外に逃げようとしていたところで遙君に見つか ってしまう。 「相原君、待ちなさい!」  待ちませんよ! もし捕まったらあの二人同時に……ブルブルブル、それだけは絶対にごめんよぉ!!  二人とのエッチは確かに気持ちよかった……でも、それとあたしの体が耐えられるかどうかは別問題!  あたしの現在位置と先生たちの立っている場所とは十歩ほどの距離がある。いくら二人の足が速くてあたしが 運動音痴でもこの距離なら―― 「松永先生、遙君、ごめんなさい!!」  何に対して謝っているのか自分でも分からない詫びの言葉を振り向かずに二人に放つ。  そして忍び足から全力疾走へと動きを変えたあたしは、すっかり夜になった山野旅館裏手の林へと飛びこむよ うに入りこんだのである――


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