stage1「フジエーダ攻防戦」50


『なんじゃおんどりゃなんじゃおんどりゃ! ええこらワレ、ヤローのくせに気安くワシに触れんじゃねぇ、コナクソコナクソ! いっぺんヤキ入れたろか、おおこらぁ!!!』
「な、なんなんだお前は!? 本が喋ってグホォオオオッ!!」
『本を見た目で判断すんない! 本は中身で勝負なんじゃい!』
 ………なんだろう……なんかものすっごく懐かしい気分になっちゃうのは……
 光の壁が全て消え、あとは地面に描かれた巨大な魔法陣だけとなった広場の中央付近で、佐野は地面にうずくまっていた。
「ヒィィイイイッ! な、なんなんだこれは!? こんなもの、僕は召喚した覚えは無いぞ!」
『こんなものぉぉぉ!? 貴様なんぞにワシの何が分かるんジャい! 口の利き方も知らん糞ヤローなんざ、こうしてくれるわぁぁぁ! 必殺、Wキンカンチョー魔王様スペシャルドッリル〜!!!』
「ひッハァああァアアアアッ!!?」
 ちょっと遠くて何が起こってるのかわからないけれど、突然佐野がお尻を押さえて飛び上がる。―――いや、何が起こってるのかって言うのは、ものすごく容易に想像できちゃうんですけども……ついでにこめかみの辺りもズキズキ痛くなっちゃうし……
 ちょっと考えれば分かる事だった。度重なるトラブルでこんな事も思いつかなかったのかと思うぐらいに、佐野の召喚した「魔王」の正体に気づいて、何と言うか……悲しくなってきた。
 この世に魔王が何人いるか知らないけれど、単純に一番近い「魔王」と言えば、アイツになるわけで……
『―――む?』
 あ、あっちもあたしの気付いたっぽい。………あああああ、来ないで来ないで、お願いだからもう一生あたしの前に現れないでぇぇぇ!!!
 今更じたばたしても遅すぎた。黒くて四角い「アイツ」はあたしに気づくと勢いをつけて近づいてきた。
『お―――! たくやじゃないか。どこにいっとたんじゃ。ワシ、お主の胸のぽよぽよぱにょ〜んな感触が忘れられずにどんだけムラムラ興奮しまくっとったか……ムムムムムゥ!!?』
 ひえ〜〜! く、くる、あいつがくるよぉ! ああ、デーモンさん、お願いだからこの手を離して。早くしないと、この世で最も恐ろしいものが、ヤツが、ヤツがやってくるぅぅぅ!!
 足をばたつかせても筋肉にしっかりと覆われたデーモンの腕から逃げられるわけが無い。そうこうしている間に、佐野が召喚した「もの」はピョンピョン「飛びはね」、一直線にあたしの方へとやってくる。
『お……むぉおおおぉぉオオオオオオオッ!? フホッ、フホッ、フホオオオッ! メイドさんじゃ、メイド姿のたくやちゃんじゃあああああっ!!!』
 それは久しぶりの再会だった。………メイド姿に興奮して思いっきりジャンプして飛び込んで苦量名本と、もう二度と再開なんてしたくなかったんだけど。
 自称魔王の喋るエロ本、パンデモグラタン……もとい、パンデモニウム。
 とりあえず魔王らしくて、アイハラン村に封印されていたのが何故かあたしに取り憑き、しかもあたしを女に変えてくれた張本人。それからは切りたくても切れない関係が続き、あたしはあの性格エロ本のせいで散々不運な目に会い続けてきた。
 フジエーダについてからは幾重にも厳重に封印が施されて飛び跳ね動き回る事も出来なくなり、ともあれ精子心的に平穏な日々が続いていたと思ったのに……思ったのに……
『わ〜い、久しぶりのおっぱいだ〜♪ おっぱいぱふぱふ〜♪』
「いやぁ〜〜〜! こっち来んなぁぁぁ!!」
は、異様にメイド服姿に興奮しながら、
『フギャ!!』
 なんか一年ぐらいあたしに会ってなくて衝動が抑えきれずにハイジャンプして高々と舞い上がり、露出したまんまのあたしの胸元めがけて飛び込んでくるエロ魔王……あたしはそれを蹴り落とした。
 ―――いや、たまたま振り回した足が首とか腕を視点にして高々と上がっちゃって、偶然つま先が黒い革表紙にめり込んで、そのまま石畳にベチャッと叩き付けちゃっただけなんだけど……あ、そこってさっき、あたしが胃液を吐き戻したところ……
『………ンギャアアアアアアッ!! なんじゃこれ、酸じゃないか、表紙が、表紙がなんかピリピリするうぅぅ!!』
 跳ね起きたエロ本はあたしとデーモンの周りをピョンピョン飛び跳ねる。
『水、み水ぅぅぅ!』
 とりあえず無関係を保って起きたかったんだけど……見かねて頭上のジェルに合図を送ると、バケツ一杯分の水が上からエロ本めがけてバシャッと降り注いできた。
『………ンノォオオオオオオッ!! 水が、水がワシの体の染み込んでくるぅぅぅ!! ページがシワシワ、文字がにじむ、ど、どうしてくれるんじゃあああっ!?』
 ―――うっとおしいぃ……だからこいつには会いたくなかったのにぃ…とほほぉ……
 佐野が魔王魔王と言っても思い出せないぐらいにこいつの事を忘却できていたのに、その佐野が呼び出したのがエロ本だったのは……まあ、世界が一大事と言うのに比べたらマシだろうけど、あたしにしたら普通に大魔王でも何でも召喚してくれた方が良かった。こんなのと再会するなら五回か六回世界を救えと言われた方が気分は楽だと思う、心の底から。
『ゼェ、ハァ、ゼェ、ハァ、ゼェ、ハァ……クッソ〜、なんか変な力に抗えずに呼び出されてみたら、いきなり酷い目に会ったわい。―――お? あの忌まわしい封印帯がはずれておるわい。ラッキー♪ これでワシは自由じゃ、ジーユーウーーー!!!』
 自由になったんなら早くどっかに行って欲しいけど、言ったら言ったでまた絡んできそうだし、デーモンに捕まったままじゃ逃げる事も出来ないから……
『邪魔じゃ、のけ』
 突然、エロ本が地面から飛び跳ねたエロ本がデーモンの側頭部に直撃する。
 さしてたいした攻撃にも思えないけれど、よろめいたデーモンはあたしの首と手首を離し、頭を抑えてうずくまってしまう。
『ケ〜ケッケェ! デーモンの弱点は角と決まっとるんじゃ。しかもお主、角も魔眼も口もふさがれておるな? そんなヤツがワシの所有物に手をだそなんじゃ百億万年早いんじゃ。そんな誰ぞに封印されるような軟弱者はママのおっぱいしゃぶってズリセンこいて枕を涙で濡らしてやがれ、ヘッヘ〜ンだ!』
 倒れたデーモンに魔王のエロ本が容赦なく攻撃を加える。それを見かねて、
「かわいそうな事すんじゃないわよ!」
 あたしは全力でエロ本を蹴り飛ばしていた。
『あ〜れ〜〜〜! 酷い目に合わされてるのにこの痛みは久しぶりでちょっと新鮮アンド濡れパンツ見ちゃった〜〜〜♪』
「なっ!?」
『しかも股間には明らかに水とは違う艶かましい輝きが! これはワシの青春のメモリーにしかと焼き付けておかねばならぬぅ!』
「忘れてしまえぇ!!!」
 手近な石を拾いあげると、高々と舞い上がったエロ本へ投げつけ、見事に撃墜する。
『ふ……さすがにやりおるではないか。それでこそワシの認めたマイライバル兼マイ肉奴隷……ワシの心のチ○チン、さっきのパンツでもうビンビンですたい』
 誰が肉奴隷だ……って、反論しようとしただけで頭が痛くなる。
『ほれほれほれ〜。フェラフィレフォラならいつでも大歓迎じゃぞい♪ その舌先でチロチロとワシの黒くて固い革表紙を……クゥ〜、たまらん! ワシ、舐めてくれるまでここで待ってて絶対動かんもんね〜だ』
 うっ……色々疲れ果てているときに、エロ親父同然の魔王の書の駄々はかなり応える。一度は怒りや拒否する気持ちで沸きあがった体力もすぐに力尽きてしまい、地面に手をついてガックリとうなだれてしまう。
「あ…あんたはこんなときにまで……」
『弱っている獲物を徹底的にいたぶり嬲って屈服させるのはまっこと楽しいのう♪ ほ〜れほ〜れ、ワシの肉穴奴隷になると誓えば楽しいことが待っておるぞ〜?』
 ―――ダメだ。こいつとはあれこれ折り合いをつけてみようとしたけれど、あたしたちの間には絶対に和解がありえない。ホントの本気で、火にくべて燃やしたくなってきた……ヤバい、疲れが限界を越えてる。考え方が非常に直接的排除の方向に向かってる……
 頭を下に向けているとそのまま倒れこんでしまいそうで、あたしは歯を食いしばって顔を上げる。まだ魔王の書の罵詈雑言と言うかお誘いの言葉と言うか訳のわかんない言葉は延々と続いているけれど、不意に、その声に嫌悪の感情が含まれる。
『あ、こら、貴様ぁ! 男のくせにワシの体に勝手に触れるんじゃない!』
 ぼやけ霞む瞳に力を込めてエロ本のいる辺りの焦点をあわせる。すると黒いローブを身に的他佐野が、来るはずの無いあたしを待って寝そべっていた(?)魔王の書を拾い上げた。
「貴様……貴様はなんだ? 魔王なのか? それとも魔王に関係するアイテムなのか? どうなんだ!?」
『はぁ〜ん?……ケッ! 誰がテメーみたいなロンゲ眼鏡の見た目ホモヅラヤローに教えるかってンダダダダダダッ!!』
 口答えする魔王の書に、佐野は容赦しなかった。冷徹に魔王の所を地面に叩きつけると革表紙を靴の踵でグリグリ踏みつけ、さらに手にした杖の先端まで向ける。
『ン〜〜〜ダダダダダダダダダダアアアッ!! なんじゃ、なんでワシ攻撃されとるんですかぁ!!?』
 あたしが止める間もなく、無数の衝撃弾が魔王の書へ叩き込まれる。―――いちおう、攻撃されてるのは自業自得でしょ。
 細かい破裂音が連続して響き、タップリ一分以上、見ているあたしが寒気を覚えるぐらい無表情に攻撃魔法を叩き込んだ佐野は、さすがにズタボロになった魔王の書を汚物を摘むように指先だけで持ち上げる。
「お前はボクに質問された事だけを答えればいい。応えろ。お前と魔王に何の関わりがある!」
『………はっ。魔王はワシじゃ。汚い手で触んな、ロンゲメガネのホモ野郎』
 ダメージを受けても口の減らない魔王の書。それでも間違った事は何一つ言っていないのに佐野は魔王の書を軽く放り上げる。
「エロ本!」
「うるさい、黙らせておけ!!」
 地面へ落ちる魔王の書が少しかわいそうだと思った途端、あたしは立ち上がろうとしていた。そんな体を、後ろからデーモンに押さえつけられてしまう。
「このっ…あんたもいい加減にしなさいよね! これだけ人に迷惑掛け捲っていて召喚したものを、そんなにぞんざいに扱う事無いじゃない!」
「………黙れ」
 佐野の感情を感じさせない言葉があたしに向けられる。目が前髪に隠れ、表情をうかがえない事が先ほどまで感じられなかった不気味な迫力をかもし出しており、あたしも一瞬怯んでしまう。―――けど、それも一瞬だけだ。
「黙るもんですか!」
 気力も魔力も体力もなにもない。それでも佐野の態度が頭に来ているあたしはそのまま口を開き続けた。
「そいつの言ってるのは全部ウソじゃないわよ。そのどうしようもなくスケベで自分勝手なエロ本が魔王―――えっと、なんだっけ?」
『パ…パンデモニウムぅ……』
「そうそう、魔王パンダモニゲルなんだから」
『チッガ〜う! パンデモニウムだ、パ・ン・デ・モ・ニ・ウ・ム〜〜! 万魔伝の名を関した史上最高の意思を持つ魔道書なり! 恐れ入ったかハハッハ〜のハ〜♪』
 エロ本、もう復活してる……で、あたしは何を間違えてた? それはともかく――あたしは佐野を地面と代わらない高さから睨みつける。
「そのパパんがパンが魔王だって言っても信じられないんでしょ? そうよね、アイツはあんたの想像してたのと全然違うもんね」
「…………………」
「あいつが魔王だって言っても信じない。あたしが魔王で元々男だって言っても信じない。そりゃそうよね。あんたは小さい子供と一緒で、自分の思い通りにならなきゃ気がすまないのよ」
「………………れ」
「想像してた魔王はもっと格好よかったんでしょ? あんな本を持って魔王になるのがイヤだったんでしょ? どうせなれっこ無いわよ。あんたが想像してる格好いい魔王になんて、誰一人としてね!」
「だ………黙れぇええええええええっ!!!」
 突然、前髪を跳ね上げて荒々しく怒声を上げた佐野が、今度はあたしへ衝撃弾を生む魔法の杖を向ける。
 ヤバい……一発二発ならまだしも、何百発と受けたら……!
 しかも佐野へまっすぐ向いているのは顔だけで、他の部分は全てその後ろ。一分後には顔をグシャグシャに潰されたあたしの死体が……
 ―――そんなのヤダッ!!
 いい過ぎたと後悔した時には、死ぬ運命がすぐそこまで迫っている。どうせ死ぬなら……やるだけやってみる!
「今すぐ口を塞いでやる。お前だ、お前さえいなければ僕は、ボクはぁぁぁ!!!」
 絶叫と共に衝撃弾が発射される。けれどそれを何もせずに喰らってやるつもりは無い。
 あたしを押さえつけているデーモンは動きが鈍い。自分で事態の判断をしておらず、佐野の命令にただ従っているだけだ。―――そして今、デーモンに「あたしを殺せ」と言う命令がどれだけ覚えられているかがポイントになる。
「ジェル、出番よ!」
 声に出すまでも無く、ジェルはあたしの頭上で準備を始めていた。衝撃弾があたしへ届く前に、その軌道へ前へ倒したジェルスパイダーの壁を割り込ませる。
 いくら衝撃弾が無数に飛ぼうとも、高質量高圧縮のスライムの壁までは破れない。そして同時に、あたしの方へ向けられたジェルスパイダーの腹から、一斉に無数の糸が吐き出される。―――ジェルの中にいた蜜蜘蛛の捕縛糸だ。
 オーガでさえ捕らえる捕縛糸はあたしごとデーモンに覆いかぶさる。狙いは翼。あたしの体よりも幅のあるツバサに上から網をかければ、あたしの体の糸は引っかからない。デーモンが逃げればあたしは自由になる。どう転んでもあたしは戒めから逃げ出せるはずだ。
 そして同時に、身軽な黒装束のリビングメイルがデーモンの背後から突っ込んでくる。武器は落ちていた石。それでも十分武器になるのはあたしが証明済みだ。
 頭上からジェルがどいたけれど、とっさに二段構えの作戦でデーモンを攻撃できたのは幸いだ。少しでも動きを鈍らせれば、すぐにジェルが飲み込んでくれる。それでデーモンを倒して佐野へ……と、瞬間的に考えたあたしの作戦をあざ笑うかのように佐野の声が響いてくる。
「右腕の封印を五秒間開放する。さあ……役に立ってみせろ!」
 衝撃弾が空を切り裂く音に混じって、やけにはっきり聞こえてきた佐野の声。
 そして、その声を聞いてすぐに、待ちわびたと言わんばかりにデーモンが右腕を横へ上げた。
「ガアアアアアアアアアアアアッ!」
 咆哮。そして……横薙ぎの腕の一振り。
 その動きで生まれたのは強烈な風だった。あたしを中心に吹き荒れた轟風と言えるほどの風は蜜蜘蛛の糸と背後から迫るリビングメイルまで軽々と吹き飛ばす。それどころか、風は刃となり、デーモンの五本の指が引き裂いた空気の軌道そのままにジェルの腹部に五本の巨大な傷が刻まれた。
「そ…そんな……」
 断ち切られるほどではないけれど、俺までどんな攻撃も寄せ付けなかったジェルスパイダーが苦しそうにうずくまる。リビングメイルもかなり遠くまで飛ばされたらしく、戻ってきたとしてもデーモンとの差にかなりの力の差を埋めることは、今のままでは不可能だ。例え気を失っているオークが一緒でも結果は変わらないだろう。
 ―――打つ手…なし……!
 ジェルスパイダーと言う強大なモンスターに頼っていた心があった。それを差し引いても、デーモンの強さには完敗と言うしかない。
 残された手段は、まだ出していないオーガだけ……けれど魔力が尽きたあたしにはオーガの魔封玉を呼び出すことも出来ず、まして深い眠りに入っているオーガは魔力の鼓動も未だ感じさせない。この戦闘の間にはどうあっても呼び出すことが出来ないのだ。
「さすが剛拳戦爵と名乗るだけの事はある。クッ……実に見事…ククク…クヒャヒャヒャヒャ!!」
『たくや〜! そんなところで寝とらんとスタンダップトゥーザびくとり〜ゲフッ!』
 自分の勝手で所管した魔王の書を踏みにじりながら哄笑する佐野。ジェルが敗れ、視界に映るその姿を睨みつけていると、冷たくて、鋭いものが、あたしの首筋に触れた。
「ひっ……!?」
 触れたのはデーモンの爪だ。鋭利な刃物と変わらない爪を一直線に引き下ろしたデーモンはあたしのブラウスの背中側を引き裂いた。
「グ…ゥ……ガウゥ………」
 幾重にも頭部に巻かれた封印帯の間から大量の涎が滴る。―――もしかして、食べられようとしてますか、あたし?
 あたしに背後から多いかぶさっているデーモンからは極度の飢えを感じる。けど、魔族の食事は……草食でしょうか。肉食でしょうか。それとも何か別のもの……?
「そうか……その女が欲しいのか、ん?」
 勝ち誇る事でプライドを保っている佐野は、負けたあたしには容赦しないだろう。徹底的に辱めてあたしの心をズタボロにし、それでようやく元の幼稚なプライドを取り戻せるのだろう。
「………言わなくてもいいわよ、その先は」
 ―――だからこそ、これがあたしに与えられた最後のチャンスだ。
「抱かせたいんでしょう、このデーモンにあたしを。だったら受けて立ってあげる」
 ―――デーモンに抱かれる恐怖は拭いきれない……けれどここでデーモンと契約を結ぶ事が出来れば、部下もモンスターも全て失った佐野を倒す可能性も見えてくる。
「最後の勝負をしてあげる。……今だけは、女でいる事を感謝してるわ」
 男のままなら、きっと決められなかった決意だ。
 わずかの間……佐野が魔王になる可能性が消えた今、このデーモンを服従させる事が全てを決する鍵になる。そのためなら一時間や二時間、抱かれ続ける事を、あたしはあえて受け入れた。
「あんたの思い通りにだけは絶対になってやらない。絶対に…絶対にあたしは負けないから!」
 それが佐野にどう受け止められたかは分からない。ただ、佐野はゆっくりと手を振り上げ、
「その女、死ぬまで犯し続けろ」
 あたしが望み、あたしが恐れる命令を、満面に笑みを浮かべながらデーモンに下した―――


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