第四章「王女」05


「本当に…胸でしたら教えてくれるのね?」
「うんうん。俺、なんでも喋っちゃうからさ、だから早く、早くぅ♪」
 そんな事言われたって……あたしにも覚悟と言うものが………あ〜ん、どうしてこんな目にあっちゃうのよ、あたしってば不幸!!
 情報屋の大介を殴り倒して闇雲に静香さんを探してみたけれど結局見つけられず、元の場所に戻ったあたしは何事も無かったかのように目を覚ましていた大介の言葉を信じ、近くに会った誰もいない建物の中へと入っていた。
 目的は当然……エッチな事だ。昨晩、娼館で体験した様に、口に大介のおチ○チンを含んで満足させる、そうすれば静香さんの情報を教えてもらえて………
 どうしよう……考えれば考えるほど、ものすごくイヤになってきた……はやまった、かな? けど……
「この辺は誰も住んでないからどんなに喘いでも大丈夫だから。早速始めようか♪」
 床にうっすらと埃と砂が堆積した室内に踏みこんだ大介は、座るのに手ごろな木箱を前にして、ズルッとズボンとパンツを一緒に脱ぎ降ろした。
「きゃあっ! ちょ、なに考えてるのよ、変態!」
「なにって…やっぱりナニ? たくやちゃんみたいな可愛い子にしてもらえると思うと、ほら、チ○ポがこんなにビンビンに」
「―――!?!?!!?」
 木窓が壊れて室内に十分な光が差し込んでいるのが災いした。閉めた入り口の傍でまだ踏ん切りがつかずに躊躇っていたあたしの目に、大介の大きくなったペ○スが振りかえるのにあわせてブルンと振れる光景が飛びこんでくる。
「あっ……い、いや……」
 初めて男に抱かれた時は暗い森の中で。
 二度目に抱かれた時は目隠しをされて。
 あたしだって男だったんだし、自分に付いていた物と較べて大介のが驚くほど大きいというわけでもない。見慣れているはずだ、あんなモノ。―――だというのに、これからエッチをする、その前に「初めて」ペ○スを見せられたあたしの体には震えが込み上げ、無意識に後退さって立て付けの悪くなった入り口の戸に背中をぶつけてしまう。
「や…やっぱり……あたし……」
 せめて無理矢理犯されるのなら、あたしもまだ諦めが付いたかもしれない。けれどこうして、自分の意思で…だなんて……
 震える指先に扉の取っ手が触れる。古い建物にカギなど付いてはいない。逃げようと思えばすぐに路地裏に飛び出す事だって出来る。
 恐いなら、イヤなら逃げ出したって――
「ほらほら、早くしてくれよ。さもなきゃ、君にそっくりな女の子、手遅れになっちゃうかもな〜〜」
―――ビクン
「彼女、君の妹さん? お姉さん? いやいや、あそこまでそっくりだと双子だったりして。今ごろ、あの男に犯られちゃってるんだろうな〜〜、あ〜あ」
「待ってよ、そんな――」
「担いでた男、かなり体格良かったから絶対巨根だって。気を失ったまま床に放り投げられて、アソコべろべろに舐めまわしてから無理やり捻じ込むんだぜ。うわ〜、処女だったら最悪な初体験だね。男の仲間がいたりしたら、暗い室内で輪姦レイプ? 俺としちゃ興奮するけど――」
「やめて! そんな事言わないで!!………やるから…口ででも胸ででもなんでもしてあげるから、…それ以上言わないで」
「オッケーオッケー。俺の方は準備できてるから早くしてくれよ。時間かけたら、それだけあの子のピンチなんだぜ?」
 あたしが大声を出しても大介はまったくひるみを見せず、飄々としたまま木箱に腰掛けて脚を開き、ペ○スをあたしに見せつける。
「くぅ……」
 今は一分一秒だって時間が惜しい……迷う事さえ許されないあたしは、こぼれそうになる涙を必死に堪えながら、大介に誘われるように歩み寄って、左右に開いた脚の間にひざまずいた。
「たくやちゃん、もしかしてこれを見たことないなんて言わないよね?」
「うっ……」
 臭いがスゴい……こんな者を舐めなくちゃいけないなんて……
 あたしの顔と同じ高さにある大介のおチ○チンは、まるで何日もお風呂に入っていないような強烈な臭いを発していた。それを目の前で揺らされるたびに刺激臭が鼻の奥を突き、たまらず顔を背けたい気分になってくる。
「見たことは…あります……」
 ―――自分のだけど。ウソは…言ってないよね。
「ふ〜ん、初めてって訳でもなさそうだな。じゃあ早くしてくれよ。たくやちゃんに会った時からずっと勃ちっぱなしなんだから」
「分かってるわよ……」
 ………昨日だって…何回も口に入れられて舐めさせられたんだから……大丈夫、木の棒かなにかだと思って舐めてれば……
 まだ怯えて震えている指先を大介のペ○スに伸ばす。斜め上を向いてそそり立つ肉棒に優しく触れ、両手で支え持つと、思い出したくもない昨晩の記憶が脳裏によみがえってくる。
 まずは……先っぽから……
「あぁ……」
「ほら、ほら、早くしゃぶってよ。お…たくやちゃんの唇が……」
 やだ…恥ずかしいから…言わないでよ……あたし…男なのに…男なのにこんな事……
 女になってしまったとはいえ、同性の性器に口をつける事に激しい抵抗感がある。他人の物なんて汚らしくて……だけど、あたしは目を積むって大きく息を吸いこむと、ペ○スから放たれている悪臭に眉をひそめながら、小さく開いた唇を丸く膨れ上がった先端部分にかぶせる様に押しつけた。
「おおお〜〜〜〜!!」
 んっ……苦い…けど我慢しなくちゃ……早く満足させて……
 肉棒に密着した唇が、滑るように張り出した部分を越える。すると先端のおしっこが出る穴からにじみ出ていた透明な液体が舌に触れ、その余りの味に、あたしは涙をぽろぽろとこぼしながら顔をしかめてしまう。
 口の中を満たす独特の臭い……昨日は無我夢中で感じる事のできなかったペ○スの悪臭は口内だけにとどまらず、鼻の奥や喉にまで流れこんでいく。それでもあたしは舌を震わせ、唇をすぼませながらゆっくりと大介の物を喉の奥へと飲み込んでいく。
「あ…ああ……すげぇ気持ちいい……ああ、もうダメだ、ああ、出る、出るッ!」
 ―――えっ?
 あたしが大介の声を聞いて疑問符を思い浮かべるよりも早く、大介の脚があたしの体を抱える様に背中へと回され、さらに頭を抑えつけられて逃げる事さえ許されずにペ○スを喉の奥へ達するほど深くに押しこまれる。
「んんっ!? んん、んんん――――――ッ!!」
 喉の奥を塞いだペ○スがビクンッと跳ねあがる。それが達する直前の信号だと気付いたあたしは抵抗しようと口を動かし、舌を絡みつかせる……が、それは大介を喜ばす事にしかならなかった。
「う、うわわわわ、奥が震えて、うおっ、たくやちゃん、いいよ、いいよ…ううっ!」
「ん――――っ! ん――――ッ!! んんん〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
 あたしの口の中で男根が暴れまわる。腰の動きに合わせて上下左右に先端を擦りつけては小刻みに喉の奥を突き上げてくる。
「うあっ、うあっ、うああっ!!」
 ビクッビクッと大介のモノに痙攣が走る。
 射精する……量の増えた苦い液、それすらも嫌がり首を振って逃れ様としているのに、吐き出す事は許されず、舌の上でペ○スが震えるのを感じる事しか出来なかった。
「んん、んんんんんっ!!」
「たくやちゃん…イく。うあ、うあああああ――――――ッ!!」
 喉の奥に密着した状態のまま、大介のペ○スから勢いよく性液が迸る。それはあたしの記憶の中にある味や舌触りよりもさらに濃厚で、頬の粘膜や下の内側にまでネットリと絡みつきながら口の中に充満して行った。
「ああ……一週間も禁オナニーしてた甲斐があった…もう最高。……ほら、チャンと飲んでくれないと、あの子が何処行ったかって教えてあげないよ〜〜」
「………んっ……んクッ……ンン……」
 飲んでる……あたし…男のモノを…………うっ…いやぁ……こんなの、絶対におかしいのに…うっ…んぅ…んむっ……
 情報を盾に取られたあたしは大介の言葉のままに精液を飲み干して行く。――いっそ、気を失ってしまいたい。そう思うほどに絡みつきながら喉を流れていく精子の味と吐き気がするほどの臭いを、それでも喉と舌を動かし、ズズッと聞くだけで泣きたくなる音を立ててすすり飲んで行く。
「うわ〜、たくやちゃんってば、可愛い顔してエッチな子だったんだね。俺のをまぁ、あんなに美味しそうに飲んでるよ。これってば燃えるなぁ」
 愛いしくなんか……くっ…こんなの…んっ…もう…やあぁ……
「んっ…んんっ………んクッ……の、飲んだわよ……これで…静香さんの居場所を……」
 溜めていたと言うだけあって量も射精時間もスゴかった。……けれど、多少溢しながらもなんとか飲み干したあたしは、足と手による拘束から解放された事もあって、ペ○スを吐き出して顔を上げると、まだ生臭い臭いが漂っている口元を抑えながら涙目で大介をにらみ上げた。―――が、
「ん? なんで?」
 意に介した様子もなく、大介はすっとぼけてくれた。
「なんでって……じゃあ教えるって言ったのはウソだったの!?」
「ウソじゃないさ。けど俺は「口と胸でしてくれ」って言ったんだぜ。まだ胸でして貰ってないのに、情報を売るわけにはいかないだろ」
「そんな……今、射精したじゃない! だったらそれで良いはずでしょ!?」
「それはそれ、これはこれ。情報屋はそう言うところはキッチリしなきゃいけないの。さ、そんなわけで第二ラウンド、今度はパイずりだ〜〜♪」
「ひ…ひどい……これって詐欺よ!」
「じゃあどうする? また俺をぶん殴る? そしたらあの事は一生会えないかもな〜。まぁ、会えたとしても陵辱され尽くして売られた後だったりして……」
「くっ……この悪魔!」
「たくやちゃんにパイずりしてもらえるなら悪魔で結構。さ、早くしないと間に合わないぜ」
 どうして…どうしてあたしがこんな目に……くぅぅ〜〜〜〜!!
 けれど、あたしがここでやらなければ静香さんの命が危ない。―――仕方なく、あたしはシャツの裾に手をかけた。



 一方その頃――



「―――ずいぶんと遅かったな」
 たくやが大介といるのと差ほど変わりない、廃墟一歩手前の無人の建物。その二階で酒を飲んでいた男は、仲間の男が戸を開けて入ってくると、ゆっくりと椅子から腰を上げた。
「十四号と二十三号はどうした。もしやへまをやらかしたのか?」
「すまん……王女の影武者にやられた」
 そう答えたのは静香をさらった男だ。彼の肩には薬で気を失い、ぐったりとしている静香が背負われている。
「そうか。だが、構う事はない。目的は達したのだ。―――こいつがクラウディアの宝石か」
 部屋の隅に置かれたベッドに静香の身が横たえられる。息も穏やかで、誘拐されたとは露とも思えぬ安らかな寝顔を男たちはじっと見下ろした。
「確かに……ふるい付きたくなるほどの美人だ。こりゃボスが手に入れたがるのも無理ないな」
「ああ。逃げる間もこいつの胸や太股の感触がずっと体に触れるんだ。我慢するのが大変だったぜ」
 男たちの視線がゆっくりと静香の体を這いまわって行く。
 何処のゴミ捨て場で拾ったか分からないボロ布の下からは、旅の衣装だろう、些か地味ではあるが見ただけで一般人が切る者よりも手間のかかった服が覗いている。そして、その服の胸元を押し上げるのは弾力ある丸みを帯びた乳房だった。
 長旅の疲労はあるだろうが、クラウディア王国の王女として蝶よ花よと育てられてきた静香の美しさはまったく損なわれていない。純真無垢、一切の穢れを知らない穢れのない美しさは磨き上げられた宝石の如く、クラウディア王国内のみならず今いる南方の地にまで届いている。―――それを前にして、男たちになにも考えるなと言うのが無理な話だ。誘拐犯の男二人は仲間二人が捕まったと言うのに口元にイヤらしい笑みを浮かべ、捕らわれの身となった静香を見下ろしていた。
「―――けどよ、下手に手を出したら俺たちがボスに殺されるぜ」
「あの親分、サドだから。ま、処女破って研究材料にしたら俺達にも回してくれるだろうぜ。それまではお預けさ」
 部屋で待っていた男――静香を誘拐した男たちのリーダー格――は、長年その実験という名の悪行に付き合っている男の事を口にしながら、一人残った部下の肩を叩いて座っていた椅子へと戻って行った。
「けどよぉ……これだけの上玉、壊されちゃうなんて勿体無くないっすか? 顔もスタイルも、そこらの娼婦なんて目じゃないですよ」
「じゃあ手を出してみるか? もしお姫様の幕を破れば、俺達揃って「蟲」の餌だぜ」
 そう言われ、すごすごと戻ってきた男に、リーダーの男は酒をついで差し出した。
「あ、どもっす」
「それより、捕まった連中の事が心配だな。そう簡単に口を割りはしないだろうが……その、影武者って言うのは何者だ。クドーの街まではそんな奴はいなかったはずだ」
「いえ、それが何者かはよくわからないんですけど、その女、王女と顔が一緒だったんですよ。で、俺達が驚いている間に窓から飛び降りたと思ったら瞬く間に二人やられまして」
「………なるほど。それで王女だけを捕まえて逃げ出したって訳だ」
「ええ。あの場で取り逃がしたら、もう二度とチャンスは巡ってこないと思いましたし。その後も誰か追ってきましたけど、適当に巻いてやりましたよ。それでですね――」
 酒が入ってやけに饒舌になった男は、報告を聞いて考え込むリーダー格の男に自分の活躍を自慢げに話す。
 だが、既に聞くべき事は聞いた。そう言わんばかりに、部下の言葉を遮るとリーダーはゆっくりと口を開いた。
「―――それで、あの女は本当に王女なのか?」
「えっ……な、なに言ってるんですか! 兄貴だって俺達と一緒に見たでしょ。それに特徴だって!」
「そう怒るな。確かに遠めに見た印象も、顔立ちの特徴も一致している。だが、同じ顔がもう一人いたんだろう?」
「けど、あいつは刃物振りまわしてましたし、とても王女には……」
「王族ってのはな、元をたどれば大量殺人者だ。戦場で相手を一番多く殺した者が王様になってるんだぜ。どこぞの王子には冒険者になりたいといって王位継承権を捨てた奴までいる。別に刃物一つで王女じゃないとは言い切れんさ。それに――」
「ま、まだあるんですか!?」
 自分を非難されるようなリーダーの言葉にすっかり身を縮めてしまう誘拐犯。そんな様子を無視して、男は視線を眠りつづける静香へと向ける。
「部下を助けようとなりふり構わず突っ込んでくる王女って言うのも、話の種としては面白かろう?」
「じゃあ、あっちが本物の……」
「そうかもしれない、だから確かめようという話さ」
 リーダーの男は手柄顔からすっかり意気消沈した部下の肩を叩いて立ちあがると、再び静香の元へと歩み寄った。
 ―――見事な乳房だ。仰向けになってもほとんど垂れずにロケットのような形を保っている。まだまだ発育途上ではあるだろうが、それゆえの若々しい張りと先端までツンッとしたような見事な形とが男の目を楽しませ、服の下で呼吸に合わせて緩やかに上下する乳房の握れば蕩けるような弾力と柔らかさとを誇示していた。
「あ…兄貴…もしかして……」
「クックックッ……ああ、膜を破らなきゃあの男は満足なんだよ。入れても証拠が残らない穴があと二ヶ所もあるだろ」
「そ、そうですよね。へへっ…へへへっ……」
 二人も口元が吊り上がる。金よりも命が大事。だが、極上の女を前にして指を加えて見ているだけの男でもなかった。
「それに、街で仕入れた「媚薬」もある。奴に差し出す前に…俺たちが王女様かどうか、たっぷりと調べてやろうじゃないか。膜があるかどうかもな…クックック……」


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