第二章「契約」01


―――パシャ  昼の高い日を受けて白金のようにきらめく川に身をひたし、両手ですくった水を体にかける。すると水の冷た さに弾力のある肌が緊縮してしまうけれど、それ以上に汗や土ぼこりが流れ落ちて行く感触に体が震え、あまり の気持ち良さにため息まで漏らしてしまう。  ふぅ……こんなに気持ちのいい水浴びは初めて……  梅さんたちと別れ、フジエーダの街を目指して歩き続けていたあたしは途中で清らかな流れを見かけ、休憩を 取っていた。  幸い、ここは街道から側の森へ少し入った場所だ。道を歩いているときでもなんだか注目されているようで気 の休まる暇もあんまりなかったけれど、ここだったらそんな人々の好奇の目を心配しなくていい。ちょっと気恥 ずかしくはあるけれどこれからしばらくはこれが自分の体なんだと割りきって女になったばかりの肌をさらし、 朝から昼過ぎまで歩きつづけて疲れきっていた体を綺麗に洗い流した。  この辺ってアイハラン村よりも暑いのよね。それにこんなに長い時間歩いたことなんて無かったし……はぁ… あと何時間歩けばいいんだろ……  残念な事にタオルを使う事は出来ない。梅さんからもらった背負い袋の中には何枚か新しいタオルが入ってい たけれど、清潔な布はこの先何かと必要だ。怪我をすれば包帯代わりにも使うし。  そういうわけで、代わりにあたしは自分の手の平を水にひたしては柔らかくはあるけれどほとんど無駄な贅肉 のついていない体のラインを撫で回して粘りのある汗を拭い取って行く。  …………なんだか…ほんとにこれがあたしの体なんて信じられないな……この胸なんて本当におっきいし、お 尻だってキュッとしてて…………って、うわぁ! あたしはなんつー事しちゃってるのよ! 柔らかいとか気持 ちがいいとか、なんでこんなところがぷにぷにしちゃってでもついつい触っちゃうのよね〜〜…ち、違う、あた しはなんだかそんな変態チックじゃないのよぉ!―――バシャ!  あたしは水飛沫を立てて頭まで水につかると、自分の体を触っているうちに興奮してきた頭を強制的に冷やす。 「…………………ぷはぁ! ――ふぅ……一人で何やってるんだか」  落ち着いて考えれば、何にも恥ずかしがる事無いじゃない。ううん、恥ずかしがっちゃいけないのよ。自分の 体にいちいち興奮してたらお風呂にも入れないじゃない。  とはいえ、昨日まで男だったあたしにとって、この体は反則的なまでに「女の魅力」を持ってしまっていた。  視線を下に向ければ水面から上がったばかり、表面を冷たい水の膜に覆われた乳房が目に入る。  結構巨乳よね。う〜ん…明日香よりも大きいかな? 村のおばさんみたいに垂れてなくてプルルンッて感じだ し、前に大きく突き出てて綺麗な形してるし……うわ、胸って重たい。  何気なく胸の下に手を当ててみると、滑らかな曲面に触れた手の平にはかなりの重力がかかり、まさに「たわ わに実った」と言う表現がぴったりだ。まるで果実のようにみずみずしい丸みの先端にはピンク色の小さな突起 がついていて、白い肌とのコントラストに思わず目を奪われ、自分の胸だと言う事も忘れてついつい触れてしま いたくなる欲求にかられてしまう。  もしこの胸の膨らみが太っているのが原因だったとしたら、ここまで興奮したりせず、落胆はするけれどそれ なりに割り切って物事を考えられただろう。けれどあたしの手足はほっそりしているようで結構肉感的なのだ。 指で触れればたっぷりと量感のある乳房とはまた異なった弾力を返してきて、透けてしまいそうな白さをしてい る肌をあたしは何度も何度も撫でまわしてしまう。そしてそのままちょっとだけプニッと吸いついてくるウエス トラインをなでおろすと、次は胸と同じくらいボリュームのあるお尻に到達してしまう。  たしかお尻が大きいのは安産型……だっけ? ああ……女でいる間に子供生んじゃうような事だけはありませ んように……  今まで信じた事も無いような神様に真剣にお祈りするけれど、それもヒップラインをなぞるまでだ。まるで高 級陶器のように滑らかな表面をしたお尻は胸よりも多少は引き締まっている。水面下で浮かしたお尻を指を広げ て円を描くように撫でまわしてみてもお肉がたるんでいるところなどどこにも無い。胸同様にかなり良い形をし ているみたいだ。  そして―― 「んっ……」  あたしは小さく鼻を鳴らすと、胸の先端が沈むまで川に身を静める。  女の子って触られると感じちゃうんだ……これだけ触れていれば心地よいくすぐったさも、肌をほんのり赤く 染めるようなエッチな気持ち良さへとすり替わっていく。お尻の感触のあまりの滑らかさについつい撫でまわし ているうちにお尻の穴がクッと窄まるような下半身の筋肉の緊張を覚えてしまい、あたしはつい、昨晩の事を思 い出してしまう。  あれ……あれがエッチ………なのよね。昨日は思い出せなかったけど………  「エッチ」と頭で思っても、知識の方はそれが「性行為」で、いわゆる子供を作っちゃう行為だって事まで連鎖的 に思い出してしまう。 「お…思い出さなくても良かったのに……あんな筋肉男の子供を産んじゃうかもしれないなんて…思い出したく なかったぁ〜〜〜!! やだ〜〜、子供なんて産みたくない〜〜!! あたしは男の子なのに〜〜!!」 「はぁ………なんか余計に疲れちゃった。あ〜あ……」  パシャパシャと水を跳ね飛ばし、あたしは荷物を置いてある岩の側に近寄ると川から上がり、服の上に置いて おいたタオルを手にとって体にまとわりついた水滴をぬぐっていく。  乾いた布が大切だと言ってもさすがに濡れたままで服を着るわけにもいかないし。 「さて……またこれを着るのか……」  全身を拭くには小さいタオルで後は放っておけば自然に乾いちゃうだろうと言うところまで拭くと、あたしは タオルよりも小さめの布を拾い上げた。  それは……なんていうかその………女物の下着だった。 「梅さんたちには本当に感謝してるけど……男物は無かったのかなぁ……」  そうすれば下を履くだけで良かったのに……でも梅さん、「そのような立派なものを持ちながら男物じゃと! ? いかん! なにがいかんと言うと、下着をしなければ胸の形が崩れるではないか! そんな事は神が許した としても娼館を経営して美しい女性の味方であるこのワシが絶対に許さん!」って言ってたし……  何を隠そう、この長方形の布に紐を取りつけただけの下着は梅さんたちのお手製だったりする。あの隊商、行 きには女の人がいたらしいんだけど目的地で別れたときに下着類は全部持って行ったらしくって一枚も残ってお らず、いらないって言うのに……ま、まぁ、とりあえずいつまでも全裸じゃ恥ずかしいから着てみるとしますか。  一応つけ方は教えてもらってるけど……女の子ってこんなに面倒くさいものを毎回つけたり脱いだりしてるの かな……こんな小さな布切れを……  手に持って広げてみると布の全長は30センチも無い。幅も手の平ほどしかなく、四隅に紐が縫い付けられた それを脚の間に通すと、あたしは股下まで引っ張りあげて前後に動かして位置を調整した。  こうやって股間にきちんと密着させて…っと。なんだか隙間が無くて変な感じ……とりあえず左の紐から…… よっ。  布が股間から滑り落ちないように注意しながら布を細く裂いた紐を手に取るとウエストのくびれの横で蝶結び にする。そしてもう片方も結んで―― 「………本当にこれって下着?」  その装着感に疑問の言葉をここにはいない誰かに向けて放ってしまう。  いろいろとあって廃棄処分になったあたしのトランクスに比べれば布地と股間の間に隙間は無いし、布地の量 もものすごく少ない。それよりもっと気になるのは股間やお尻への食い込み方だ。Vの字を描くように紐を腰の 左右に引いているので、よじれようとする布の端はおチ○チンを失った代わりにふっくらと盛りあがった股間に 鋭く食い込んでいる。こうして下着だけの姿ならば股間を隠すどころの話ではなく、形や大きさをくっきり浮か び上がらせているどころか逆に左右から圧迫して強調しているようにさえ見えてしまう。  さらにお尻の方は前とは逆に布がよじれて太い紐のようになってしまい、歩いているときもそうだったけれど 丸々としたヒップの谷間に深々と食い込んで、身をよじりたくなるようなくすぐったさに襲われる事がある。な んども指を射し入れて位置を直そうとしたけれど動けば動くほど食い込みはキツくなり、お尻を直せば股間が、 股間を緩めればお尻が、悪戯な布切れに食い込まれてたまらず身をよじってしまう。  これじゃあ布地の少ないふんどしよ。とほほ〜〜……  なげいていても仕方が無い。水着もかくやというように股間に密着する下着に、とりあえず困りはするけれど 今はどうしようもないと諦めたあたしは腰を屈めて胸に巻く下着――いわゆるブラジャーを拾い上げる。 「んっ……!」  あんっ……もう、なんでこんなに食い込むのよぉ……  こんなのが本当に女性用の下着なのか、それとも即席下着だからなのか理由はわからないけれど、身を屈める と布地がグイッと引っ張られ、お尻の谷間から前の割れ目までしゅるっと柔らかい布地に擦り上げられてしまう。  まだそこに触れるのは慣れてないのに……これじゃこの先歩いてるだけで……んっ…やだぁ……  午前中の事を思いだし溜息をつく。だって歩いているだけでも布はよじれて股間やお尻に食い込んできて、布 が前後に小さく動くにつれてなんだかくすぐったいような感じになっちゃって……こうして森に踏み入ったのも、 その感覚を少し紛らわせたかったからでもある。 「あ〜あ……女の子って本当に大変よね。まさか歩いてるだけでこんな気分になっちゃうなんて……」  さて、いつまでも下ばっかり気にしていられない。今度は胸の方にも下着を着けないと。  即興品とは言え、こちらの方が下のそれより幾分手が込んでいる。材料は紐と布だけとパンツと同じだけれど、 幅や長さは二倍以上もあり、そして布の中央と両端には胸の谷間に合わせるかのように縫い目を入れて丸い膨ら みが作ってある。 「ここに胸を入れるのよね」  梅さんの下着装着講座(身振り手振り付き)を思い出しながら下端の紐を背中で結ぶと、体を動かすたびに重た げに揺れる乳房が下を向くように身を屈めて布の持つ曲線に乳房を納めると首の後ろでもう一組の紐を縛る。 「んっ……やっぱり少しキツいな。梅さんはそんなはず無いって言ったのに……一日で大きくなっちゃったのか な?」  梅さんの見立てで作ってもらったブラにサイズ違いは無いって言われてるんだけど、あの後寺田に変な事され ちゃったから……もしかするとアレのせいで少し大きくなっちゃったのかもしれない。 「やっぱり触ったり吸われたりされちゃったからかな……」  だとしたら、この急激な発育はちょっとイヤだ。何しろ相手はあの筋肉男なんだから……  それにしても本当に大きい……これがあたしの胸だなんてまだ信じられない。  豊満な乳房、下着に圧迫されてむっちり感を増した谷間、そして意識をすれば意識をするほど白い肌の下で血 管の脈動と共に満々と張り詰めていくこの感覚……  あたしの体って…本当にとんでもないなぁ……  目を瞑って胸に溜まった空気を長く吐き出す――そうでもしなければ川の水でも冷やしきれない肉体の火照り で気分がどうにかなっちゃいそうだったから――と、背負い袋の側の小さな岩に腰を下ろした。  朝からずっと歩きっぱなしだったので、背負い袋の中身をまだ見てなかった。ただで貰ったんだから高価なも のなんて入っていないだろうけど、ちょうどいいから中身の確認をしとこうと思ったのだ。  ――とまぁ、理由はどうアレ、なぜかプレゼントの箱を開けるようなうきうきした気分で背負い袋の口を開く。 するといきなり、 『うがあぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!! なんでワシがこんな狭いところに閉じ込められなきゃならんのじゃい!!』 「あ、ごめんごめん。そういえばあんたを仕舞いっぱなしだったっけ」  開け放たれた袋から本のくせに全身をばねにして飛び出てきたのは魔王の黒本だった。長い時間歩いているう ちに手に持ってるのが面倒になったんで袋に押し込んでそのまま忘れてた。 『ワシは魔王だぞ? 偉いんだぞ? デリシャスなんだぞ? なのにあんな暑苦しい袋に入れられぶんぶん振り まわされ、目が回ってヘロロ〜〜ってなってたらいきなり固い地面にドスン。挙句に自分ばっかり水浴びして、 悩ましい鼻歌を聞かせるくせにそのシーンを見せないなんてものすごい放置プレイ〜〜〜〜!! ――ワシ、泣 きたい……』 「あ…あはははは…完璧に忘れてた。だからそう落ち込まないで、ね?」 『ううう……全裸での水浴び……ワシも一緒に入って、それで、それで水をしぶかせながら一日で大きくなっち ゃったって言う豊満バストに――』 「んじゃ今から全裸で水浴びね。あんただけ」  ポイッと、あたしは背中(背表紙?)を見せてしょぼくれている黒本を手に取ると、横を流れる川に放り投げた。 ―――ぽちゃん 『ぬああああああああああっ!! 水が、水が紙に染み込む、紙にぃぃぃ!! 助けて助けれ助けぬる時ぃぃぃ 〜〜〜!! いや、だめ、水はダメェェェ―――!! なんか脳味噌に直接こうり見ず流し込まれてる気分と言 えば例えようが、ア――――――!!!』 「あそこまで思考だだ漏れで誰が一緒に入るって言うのよ。――さて、持ち物検査持ち物検査♪」  あたしの視界のおもいっきり端っこでバシャバシャ水を跳ね上げてる魔王の本をあっさり無視すると、手前の ものから順に袋内のアイテムを引っ張り出し、シート代わりに地面に引いた外套の上に並べて行く。  えっと…タオル数枚に着替えの予備がもう一着と下着が二組。それに干し肉に乾パン。調味料とかは入ってな いな。これは…火打石と油のビン、こっちの小さいのは魔よけの結界杭四本ね。うん、この辺は定番。毛布は外 套を使えばいいし。野宿セットはこれでOKね。  こう言うときは道具屋の知識が役に立つ。あたしの店でも売っていた冒険の必需品を手際よく品定めしていく。 思った通り高価なものはあまり無いけれど、それでも質の悪いものが入っているわけでもなく、ちゃんとした冒 険の必需品が揃っているみたいだ。  それと……うわ、このナイフ、結構大ぶり! ――もしかして、これでモンスターから身を守れと?  次に出てきたのは普通のものよりも幅広の片刃ナイフだった。刃渡りが10センチ以上、柄にはすべり止めの 布もしっかり巻いてあり、日用品としても武器としても使える一品だ。  あたし自身は武器としての刃物は苦手としているけれど、それでもナイフは服なんかよりもはるかに冒険の必 需品だったりする。食事をする時には干し肉を削ったり材料を切ったりと包丁代わりに使えるし、戦闘では武器 にもなる。他にも、森で枝を払ったり、木を加工して矢を作ったりと、手先が器用ならこれ一本でいろんなこと が出来るのだ。  あたしが手にしているのは短剣と言うには短めだけれどそこそこ肉厚で頑丈そうだし、片方だけを砥いで刃に してある。包丁と同じ刃の作りだけれど砥石で手入れするのは普通のナイフに比べればかなり簡単だ。  できればあんまり使いたくは無いけれどとりあえず武器も確保っと。ベルト付きの鞘もあるし腰か肩にでも巻 いた方が良いよね。それから――これは皮の水筒か。後でこれに水を補給してっと…ポーチに…裁縫セット…… ん、なにこれ?  小物入れのポーチなどと一緒に袋の底の方から出てきたのは布が巻かれた平らな物だった。冒険者セットでは あまり見ない物の登場に首を捻りながら包装の布を解くと、中からは小さいけれど装飾が施された手鏡が現れた。  ――たしかこれって、あたしが初めて顔を見た時の……結構値打ち物なんだけど貰っちゃっていいのかな?  ダメと言われても今更返しようが無いんだけど……  今更引き返すわけにもいかず、せっかくだからと餞別代りに受け取る事に決めた。きっと、女になったんだか ら身だしなみに気を使え…っていう梅さんのメッセージだろう。  これで背負い袋の中身は全て取り出した。あとは小さなポケットがいくつかついているけれど――そのうちの 一つから、あたしは一通の手紙を見つけてしまう。  梅さんの返したはずの、「娼婦推薦状」だ。 「これは梅さんに返したはずなのに……そんなにエッチな事をさせたいのかなぁ……」  梅さんってスケベだけどいい人だと思ってたのに最後の最後でこんなものを入れられていては…なんだかもの すごく裏切られた気分になってしまう。  でも…捨てちゃうのも悪い気がするのよね。一応、下心はあってもあたしのことが可愛くて、そうした場所で も働けるって言う証明みたいなものなんだし、いざとなったらそこで路銀を稼げって言う意味なのかも……しば らく持っておこうかな。  捨てるのならいつでも出来る。でもこの先何が役に立つかわからないんだからと考え直したあたしは、その推 薦状を二つに折ると袋内側の小さなポケットへと押し込んでしまった。  まぁ…出来る事なら人に見せたくないし見られたくないしね。さて、とりあえず手持ちのアイテムはこれで全 部かな。ナイフとポーチは装備するから外に出しておいて、後はまた詰め直し。これにもちょっとしたコツが必 要で ―――――フハハハハハハハハハハッ!!  ………この声…ものすごく聞き覚えがあるんだけど……  なんの意味も無い高笑いを耳にしたあたしはアイテムを拾う手を止める。 ―――こちらが甘くしてやればつけあがりおって。だが、そんな思いあがりもここまでだ! その体は奪えなかっ たが、見よ! これがワシの…新たなる究極のボディー! 恐れおののけ泣いて謝って許しを請え〜〜!!  今なら大また開きのオナニーショウあたりでご満足してやるぞ、うむ!  ふぅ、と息を吐き、痛み始めたこめかみに指を当てる。  ―――いっその事、こいつの方を捨てたくなってきた……  すると穏やかだった水面がいきなりコブのように盛りあがる。その正体が何か……いまさら考える必要などい るわけが無い。どうせあのバカ本がなんの根拠も理由も無しにバカみたいに笑っているだけなんだから――  いつまでも続く馬鹿笑いにうんざりしながら首を回し、本を投げ入れた辺りの水面に目を向ける。――と、そ こであたしは目を見開いてしまう。  普通なら平らなはずの水面がコブのように大きく盛りあがっていた。透明な水の隆起の中には黒い本が浮いて おり、それが自然現象の類でないことをあたしに教えていた。  魔力――しまった、魔王って言っても本だからなんにも出来ないと思ってたのに…… 『くっくっくっ…その焦りの表情……美しい…なかなかに美しいぞ。――だが、下僕としての心構えがまだ出来 ていないようだ。早速どちらが上かを体の隅々に教え込んでやる…教え込んでやるぅ! では、お楽しみのイッ ツアショウタ――イム♪』


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