第一章「転性」02


「ハァ……ハァ……ハァ……」  湿った地面に一歩踏み出すたびに荒く乱れた呼吸が唇を突く。  もうどれだけの時間をこの森でさ迷っただろうか。  水を吸った地面は柔らかく、泥にまみれた靴で踏みしめても踏ん張りが利かず、体力はただ歩いていくだけで 見る見る奪われていく。  踏み出すだけでズキズキと痛み、何度となくもつれて膝から砕ける両脚はもう歩けないと何時間も前から悲鳴 を発している。――けれど、あたしは決して歩みを止めず、右手で草や蔦を掻き分け、左手で物言わぬ黒い本を 抱きしめながら起伏の激しい深緑の樹海を進んでいく。 「あ…あと…少し………っ!」  柱のような大樹の脇を抜け、身の丈ほどもある巨木の根の盛り上がりを超え、足首に絡み付く草を振り払い、 ただまっすぐ前に――視線の先で白く輝く光を目指して、あたしは一心に足を動かしつづけた。 「くっ……!」  どうしてこう、光が見えてからの道のりが異様に長いのよ。――いいかげん、もう、ついた…てぇ!  ぼろぼろの体に鞭打って、豆だらけの足を踏み出し、一歩一歩、亀よりも遅い歩みで、それでも確実に出口へ と近づいていく。  そして……… 「……………は…ははは……」  最後の木にすがり付きながら、それでも首を伸ばして目を前に向けると、そこは山道だった。  地面剥き出しだけれど、わだちの跡がついた道には当然うっとうしく足に絡みつく草など生えていない。  固く踏みしめられただけの、ただの道。  けれど今のあたしにとって、それはこの世と地獄との境界線に見えてしまう。当然地獄はようやく背後になっ た暗い森。 「あはははははは………お…終わったぁ………」  そう…あたしは助かったのだ。生きてこの森を抜ける事が出来たのだ。  もう歩かなくていい、その思いは安堵感と一緒になって全身から緊張と恐怖心を取り除いていき、心も体も支 えを失って木に持たれたままズルズルとその場に崩れ落ちてしまう。 「………はぁ」  もう動けない。なにがどうなったって、今日はこれ以上一歩だって動けやしない。  自分の体重と言う重みうから解放された脚はつま先から太股までビリビリと細かい痙攣が駆け巡る。それも今 となってはどことなく心地よい感じさえする。  道に向かって少し下り坂になっている草の生えた地面に足を投げ出し、木の根元に座ったあたしは大きく息を 吐く。  上下に動くのは昨日までありもしなかった女性のような胸の膨らみだ。男物のシャツでは窮屈過ぎて軽い圧迫 感を受ける柔らかな乳房の先端は胸当てをしていないために汗で湿った服の上に形を浮かび上がらせ、息を吸う たびに白い雲の流れる青空に向けて突き出されてしまう。  ―――そういえば、この体にもだいぶ馴染んできたかな。  さっきの自分の思考は少し間違っていた。「女性のような胸」じゃない。あたしの体は女性そのものであり、こ の胸もれっきとした女性の持ち物なのだ。 「ほんと……どうしてこんなことになったんだろうな……」  ため息混じりにそう言いながら首を後ろに傾ければ、すぐにこつんと木の固い樹皮にぶつかってしまう。  それにもかまわず草の上にお尻を滑らせ、あたしは仰向けに地面に寝そべった。  ―――森を歩き始めて気がついたのは、男と女の体の違いについてだった。  元々ひ弱で体力なんて無かったあたしだけど、女になってしまったこの体はそれ以上に力が無かった。無け無 しの筋肉は全て女らしい柔らかい脂肪へと変わってしまったかのようで、歩き始めて30分もすると脚がガクガ クと笑い始めたほどだ。  けれど体は軽くなったように感じた。細い腕、華奢な肩、身長も含めて一回り小柄になった体は軽く細かくよ く動いた。  他にも程よく膨らんだ胸や後ろに突き出してるんじゃないかと思うほどに盛り上がったお尻など、重心のずれ や歩くたびに崩れそうなバランスなどには歩いているうちに否が応にも慣れて行ったけれど、膨らんだ自分の胸 を見たことで改めて再認識させられてしまった。  ―――あたしは女になったんだって。 「女の子…か」  何気なく、青空のまぶしさを遮るように右手を空に突き出した。  枝や草を掻き分けてきた右手は引っかき傷やら草の汁やらでボロボロになっている。けれど、先端に至るまで 細くてしなやかで、こんなに汚れてしまっていてもどこか白磁のような美しささえ感じてしまうほどに輝きを放 っている。  これが……あたしの手?  最初に気付いて見つめていれば、それはきっと磨き上げられた美姫のような指先だったんじゃないだろうか、 ふとそんな事を思ってしまう。 「はぁ……悪い冗談よね。あたしが女になったからってお姫様になれるわけないじゃない。まったく……」  男が女になる。――ああ…きっとあたしってものすごく不細工なんだろうな……あ〜あ……  頭の中に女装したような自分の姿を思い描く。が、そんな不気味でつまらない妄想にさっさと区切りをつける と、上げていた右手を右に倒し、まだまだ暴れている心音に耳を立てながらゆっくりと目を閉じる。  ―――全部夢だったらいいのに。あたしが女になったことも、こんな暗い森に放り込まれちゃった事も、そし て……  いままで感じたことのない胸にのしかかる重量感に眉を潜めながら、ゆっくりと息を吸い、そして吐く。  そして……あの本が魔王だなんて言うのも、何もかもが夢だったらいいのに…… 『お〜い、何を寝取るんじゃ。そろそろ起きろ〜〜』  ………夢じゃないのよね、これが。  その声を聞いた瞬間、こめかみが引きつってしまう。 『こんな森を抜けるのに何時間かかっとるんじゃ。まったく…ワシの従者じゃと言うのに鍛錬がなっとらんのう』 「だれが…あんたの従者だって言うのよ〜〜〜!!」  起きあがりざまに体の横に放っておいた魔道書をつかみ上げると、残っていた力全部を使って思いっきり地面 に叩き付けた。 『ふぎゃ!! ――な、なにをするんじゃ、たくやよ!』 「なにをって……それはこっちの台詞よ! なんで森の中で助けてくれなかったのよ。本当に死ぬような思いし たんだからね!」 『ほ、ほえ? いや、ワシ、魔力ぎれで寝てたんだけど……なにかあったの?』 「あったわよ! ――いきなり木の上から大きなトカゲが降って来たり、蔦だと思ったら長い蛇で全身に巻きつ かれたり、水に入ったらヒルにワニ! もう一生分の冒険した気分よ! なのにあんたときたらどんなに呼んで もグースカピースカ眠ってて全然助けてくれなくてっ!」 『え…え〜と』  起きあがったところへあたしに指を突きつけられ、魔王の書は冷や汗を流す。――なんとなくそんな感じがし た。 「それっていくらなんでもひどくない? あんたのせいであたしは…あたしはぁ!!」  森の中で何度も自問自答したこと――いったい、誰のせいでこんな目にあったのか!?  そんなものすぐに答えが出る。この本が悪いのだ。  その結論をこの森を出るまで繰り返して胸のうちに鬱憤として溜めていたものをまとめてぶつけると、それま でどんなに恐くても流さなかった涙が感情の爆発で耐えきれなくなり、あたしの瞳から溢れ出して頬を濡らして いく。 「ひっぐ…ひっぐぅ……あ…あたし……死ぬほど…えっぐ…恐くて…ひっく……誰も、誰も助けて……う…クス ン……なによ、せっかく、拾って、来てあげたのにぃ!」 『ぬぉぉ!? ワシを持ち上げてどうしようって言うんじゃ? 謝る、ワシが全面的に悪かったですからなにと ぞ、なにとぞそれだけはぁぁぁぁ!!』  ―――バシンッ!  涙で視界が霞んでよく見えなかった。なので、これが本当の本当に最後の一発は柔らかい草の上ではなく、あ たしがもたれていた木の根元、枕にちょうど良い具合に地面から露出した固い根っこへと魔王の本は叩き付けら れた。 「――それでこれからどうすればいいの?」  隣で本がゴロゴロ苦しそうに転げまわっているのを無視し、のんびり休憩タイムを取って一息突いたあたしは、 頃合を見て本にたずねてみた。 『……表紙が…ワシのビューチフルなデザインの表紙が木の根に叩き付けられたと言うのに、心配もせずにそん な話かい!』  この場合、こいつの表紙は顔に当たるから鼻を強打したってことになるのかな? そりゃ手元が狂ったとはい え可哀想な事をしたとは思ってるし、さっきまで怒り荒れてる本に何度も謝ったけど――  ハァ、とため息をついて喚く魔王の本から目をそらす。  視線の先には森に沿って道が左右に走っている。そのどちらを向いても村や町を見つける事はできない。―― 予想はしていたけれど、ここはまったく知らない場所なのだ。 「………ハァ」  いったいどうしたらいいのか……右に行けばいいのか、左に行けばいいのか、それすらも分からないって言う のに、あたしの横にはさっきから叫ぶだけの本が一冊、そしてあたしの体も……  森をさ迷っている間に幾分か慣れたと言っても、大きく呼吸するたびに感じる胸の圧迫感や、膝をぴったり閉 じ合わせても何もはさむ事の無い股間の空白感には未だに違和感が残っている。  まだ体には男としての感覚が残っている。――たとえ言葉遣いまで女の子になってしまっても、今の凹凸の激 しい体は拭い去れない意識とのずれを招いているらしく、それが精神的な疲れになって頭痛を引き起こしていた。  ほんと……考えるだけでも頭が痛い……  この体を元に戻す事ができるのか……村に帰ることができれば、村長のおばさんや村のはずれで魔力を蓄えな がら研究している魔法使いの人たちに解呪してもらえるだろうけど、それまではこの体のままか……  喚き疲れてようやく静かになった魔王の本が元に戻す約束をしてくれたけど、森の中ですら助けてくれなかっ たこいつに期待するのは無駄だろうな……と、横目で本を見下ろした時だ。  グルルルルゥ…… 「………えっ!?」  低い唸り声を聞いて、疲れて俯きぎみだった視線を慌てて上げる。すると少し離れた場所に一匹の犬がいて、 尖った犬歯を剥き出しにし、口の端から涎をだらだらと滴らせていた。  ストレイドッグ――いわゆる野犬だ。人の手を離れ、野生化した犬は狼ほどではなくても、時として人を襲う 強暴なモンスターと化すのだ。  しかも目の前にいる犬は尋常な目つきじゃなかった。眼球は瞳までもが血のように真っ赤に染まっていた。― ―おそらく瘴気に当てられたんだろう。そうなったら凶暴性のみが突出し、見境無く周囲の獲物に襲い掛かって くる。  この場合…獲物は当然あたし…よね? ――うわぁ、あたしはおいしくなんか無いのにぃ!  とりあえず刺激しないようにこの場を離れないと……そう判断したあたしは傍らの本をゆっくりと拾い上げる と、喉を鳴らし、こちらの様子をうかがっているストレイドッグから慎重に離れていく。――が、元々犬は集団 で生活する動物だと言うのをすっかり忘れていた。  ガサッ…ガサガサッ……  あたしの背後の茂みで草の鳴る音がする。そして同じ音が正面からも……  か、数が増えた……五匹!?  全部あたしの近くに出てきたと言う事は臭いをたどってきたのか。――新たに現れた犬たちは茂みから姿をあ らわすと半円を描くようにあたしを取り囲む。  うそ…これじゃ逃げられない!  犬と犬の間を走って逃げてもすぐに飛びかかられる。  追い詰められるあたしの背後には持たれかかっていた大木がそびえていて、森の中に入る道も塞がれている。  えっと…この木、登れるかな……木登り苦手なんだけど……  けれど、もう苦手とかどうとか言っている余裕はない。野犬たちは少しずつ少しずつあたしを取り囲む輪を狭 め、鋭い牙をぎらつかせている。もう空腹の限界なのだろう、赤い瞳はその妖しい輝きをいっそう強くし、滴り 落ちる涎の糸はその数を増やす一方だった。  いやああああっ! あたしは美味しくないですよぉ〜〜! かじらないで〜〜!!  五匹の犬に一斉に襲いかかられ、あの牙と爪が皮膚に食い込み、引き裂かれる痛みを想像して身がすくみそう になる。まだ体力が回復しきっていない体は恐怖と疲労に素直に反応して膝が震わせ、身を守ろうとしてか、本 を胸に抱く腕にも力が入る。 「………あ」  一匹の前足が一歩前に出る。それに合わせて声が漏れる。  今までにも女々しいと言われてきたけれど、それでも発した事が無いような、か細く、か弱く、まるで本当の 女の子のような声―― 「だめ…こないで……」  背中を木の表面に押しつけながら静止の声を放つが、理性を失った野犬たちにそれを聞き届ける知性も、理性 も、感情も無い。  腕の中の本は先ほどまでの出来事が嘘のように静かなままで、ただ腕とて指に固い皮の感触を返してくるだけ だった。  ――する事なら分かってる。こいつはどうせ本なんだから、ちょっとぐらいかじられても大丈夫。だから本を 放り出して木に登って……  その後のことに想像はつかない。木に登って助けを待つにしても誰が助けてくれるのか、それ以前に、あたし の力じゃ登る前に、振り向いた途端に背中から襲いかかられて押し倒され、犬たちに租借されるのは明らかだ。 「っ―――!」  息を吸う事ができない。  胸を大きな膨らみに圧迫され、恐怖で身がすくみ、混濁する意識は何一つ行動を決められないまま、  こんなときに…魔法が使えたら……  ――使えもしない力にまで頼ろうとしてしまう。 「だめ…こんなの……こんな…」  怯えた体は一切の行動を拒絶し、ただ身を固くするだけ。  こんな場所にいきなり飛ばされて……いきなり野犬に囲まれて……  一向に動かないあたしの様子を確認して、獲物が抵抗する手段を持たない事を確認したのか、一斉に犬たちが 動き出す。  ……わけもわかんないうちに女にされて、こんな…こんなのって………! 「――いやあああぁぁぁぁぁ!!」  正面の犬が足を振り上げ、爪と牙を閃かせながら飛びかかってくる。その攻撃は悲鳴と共に身を捻ったおかげ でわずかにそれるけれど、わずかに爪がかすった左肩には鋭い痛みが走り抜ける。 「くっ………!」  怒り、困惑、絶望、逃避、湧き上がっても噴き出す事のできないさまざまな感情が痛みと交じり合って顔を歪 ませる。  けれどそんな表情を出来たのも一瞬。  続く野犬は既に地を蹴り、もうすぐそこにまで迫ってきている。 「………!」  声にならない叫びと呼吸が喉を塞ぐ。  一匹目の攻撃を避けれただけでもあたしにとっては僥倖だ。だけど身をよじりきった姿勢では足を動かさない 限り襲い来る二匹目の牙を避けることはできない。  けれどあたしの体は何も反応してはくれなかった。  戦士としての訓練を一度として受けた事の無い貧弱な肉体――今は女となり筋力も衰え、長時間森を歩き通し た足に跳躍する力など残っているはずが無い。しかも背後には大木……逃げ道など最初からありはしなかったの だ。  こんなところで…死んじゃうの?  何もできない。だから口を開いて近寄ってくる犬の姿を恐れる事もできず、ただ見つめる事しかできない。  全身の力を使って強く踏みこみ、獲物へと飛びかかる凶悪な犬の姿を ―――――ドンッ 「………え?」  犬の体があたしの目の前で急に方向を変え、真横へと吹き飛ぶ。  その直前に見えたのは疾風の早さで飛んできていた野犬の側面に回転しながら突き立った肉厚の手斧の存在だ った。 「犬が群れて何をしているかと思えば……なかなかたいそうな獲物じゃないか」  重たい一撃を受けて数メートル先にまで吹き飛ばされた野犬の姿を呆然と見つめながら身を起こしたあたしの 耳に届いたのは、男、それもある程度歳の行った中年の男の声だった。  助かった。  それまで周囲に充満していたしの気配をはらうかのように現れた救世主に安堵の吐息を吐きながら顔を向ける ―――が、そこに立っていたのは背は低めだけれど筋肉剥き出しの上半身に皮製のショルダーアーマーと防具を 固定する皮ひもだけを巻きつけた、 「ご……ゴリラ!?」 「誰がゴリラだぁぁぁ!!」 「だ…だって、顔が、顔が恐いぃ〜〜〜!」 「貴様ぁ、それが助けてやった恩人に向かって言う台詞かぁ!!」 「あっ……え?」  筋肉男とその背後に連れ添う数人の武装した男が現れて仲間の一人が倒されると、他の四匹はいつのまにかそ の姿を隠していた。 「ほっ……あ、あの、ありがとうございました」  相手が人間だとわかり、今度こそ緊張を緩める事が出来たあたしは本を胸に抱えたまま慌てて頭を下げてお礼 を述べた。  身分はそれほど高いようには見えないので騎士と言う事は絶対にありえないだろう。恐らくはリーダー格の筋 肉男に習うように、後ろの男たちの装備もまちまちで鎧も着ていないか動きやすいレザーメイルなどだ。 「まったく……ワシのどこがゴリラだと言うんだ。人を馬鹿にしおって。それよりもお前、こんなところで何を しとるんだ?」 「何を…って、あたしは……」  あたしの目の前を通り過ぎ、動かなくなった野犬の躯から手斧を引きぬいた男の質問につい言いよどんでしま う。 「えっと……気付いたらこの森の中に倒れてて、それで歩いてここまで出てきたんですけど……」  魔王がどうのと言う話はしない方がいいよね。こいつも何故か今は黙ってるし、いきなり「魔王成敗!」なんて 切りかかってこられても困るし。  とりあえず嘘は無い程度に事情を説明した――つもりなんだけど、どうも様子がおかしい。眉をひそめた筋肉 男は片手を上げてじっとしていた男たちに指示を送る。 「この森で気を失っていただぁ? 嘘ならもっとマシにつくんだな」  その言葉を言い終わるか言い終わらないかというところで、筋肉男の部下の一人に後ろから羽交い締めにされ てしまう。 「きゃあっ! ちょ…いきなりなにするのよ!? あたし、嘘なんか言ってないのに!」 「黙れ! 嘘かそうでないかは隊に戻ってからじっくりと取り調べてやる。連れていけぇ!」 「はっ!」  そ…そんなぁ……あたし、なんにも悪い事してないのにぃ〜〜〜〜〜〜!!  じたばた暴れて屈強な男の腕を振り払う事なんても、男の時より細くなったあたしの腕には出来はしない。  そうして背中で手首に縄を巻かれて拘束されたあたしは背中を押され、少し離れた男たちの野営地へと連れて 行かれる事となってしまった。


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