]]]Z.晩餐


「え〜〜、時間が少々遅くなってしまいましたが、当旅館の板前が腕を存分に振るいました料理、存分にご堪能 下さいますよう――」  などと、体調不良で寝こんでしまった隆幸さんに代わって梅さんが夕食前の挨拶を長々と述べてから、予定よ りも三十分ほど遅れて、毎日恒例の宿泊客全員が集まっての夕食が始まった。  あれから…大急ぎで部屋に戻って、濡れた服を着替えて、大広間に戻った時には隆幸さん以外全員揃っていて、 あたしが一番最後……あぁ…梅さんの目が怖い…あとでこっぴどく怒られるんだろうなぁ……けど、今はお仕事 お仕事。今頑張れば後で少しぐらい許してもらえるかも…… 「あゆみ、たくや、わしはこれ以上失礼の無いように夏目様たちの方をみるから、お前たちは砥部様たちの方を 頼むぞ」 「わかりました。たくやくん、がんばりましょうね」 「そのたくやがサボらんように見ておくんじゃ、よいな」  ううう…もうサボりませんよ……  やっぱり多少声に棘のある梅さんに言われ、大広間の右側に並ぶ砥部さん一家と松永先生の方に近寄っていく。  でも…あっちにあたしがいたら……また面倒ごとが起こるかもしれないから、これでよかったよね。  ついさっき、あっちの男三人に酷い目にあわされそうになっただけじゃなく、昨日の夕食の時にもビールを注 ぎ掛けられるし、服破かれるし…あの時松永先生が助けてくれなかったら……  頭の中にいやな想像が浮かんでくる。みんなが見ているのにお酒まみれの身体を嘗め回されて、最後には浴衣 から飛び出たアレで……うっ…なんだか寒気が……  梅さんもあゆみさんから聞いてるだろうから…こっちにあゆみさんと一緒に来させられたのは、ひょっとした ら気を使ってくれたからなのかもしれないな……  旅館に来た初日に比べれば、スケベ親父はいなくなってる分、夕食の仕事はずいぶんと楽になっている。今日 は食事の量が多かったから準備が大変だったし、向こう側の空気が重たいのは仕方ないとしても、こちら側は明 るい食事…ちょっと違うけど、さしたる問題もなく食事は進んでいた。 「はい、あなた…おひとつどうぞ♪」 「あぁ、ありがとう栄子。おっとっと」 「うふふ♪ いっぱい飲んでくださいね…それで……」  この二人は……ちゃんと仲直りできたようね。まぁ…あんなにエッチな事をしてたんだから当然なのかな…… おかげで、手間が減って楽だけど。  目の前には、まるで新婚そのものと言う感じで真一さんと栄子さんが食事をしていた。多少隙間を空けておい てあった座布団を引っ付けて、身体をすり合わせながらお酒を注いだり、相手の口に甲斐甲斐しく料理を運んだ りしている。  一見甘々な雰囲気に見えるけど、箸を運んだりお酒を注いだりする仕草に何処か色気を感じると言うか……  よく見てみると、栄子さんの頬にはすこしだけ朱が差し、心なしか目がトロン…としているように見える。  まぁ…食事前でもあんな事してたんだもんなぁ…… 「あら、私の顔に何かついてる?」  あっ、やば…見てるのに気付かれちゃったかな……  自分でも知らず知らず、栄子さんの顔を直視しすぎていたようで、不思議に思った栄子さんが真一さんからこ ちらに顔を向けてきた。 「い、いえ…その……」 「栄子、きっとたくやさんはお前にお酌をしたいんだよ」 「そ、そうですそうです、はい、ググッといっぱい♪」  真一さんの合いの手に助けられたあたしは、慌ててビール瓶を手に持ち、差し出された栄子さんのコップに泡 立つ黄色い液体をなみなみと注いだ。 「ありがと。でもこんなに飲めないわ」  とかいって、しっかり飲んでるじゃないですか……  さすがに一気に飲み干せなかったらしく、半分ほどビールが中に残っているコップをお膳の上に乗せると、こ ちらは空になっている真一さんのコップを手にとって、あたしの方に差し出してきた。 「さ、ご返杯」 「えっ? あ、あたしは未成年ですからお酒はちょっと……」 「そんな事言わずに。いまどきお酒の飲めない娘なんていないでしょ、さぁ」  うぇ〜ん、できれば飲みたくないのにぃ〜〜!!  はっきりいって、あんな苦い味のどこが良いのかさっぱり分からない。それに、あたしってアルコールに弱い みたいだし…… 「あまり無理に勧めるものじゃないよ。たくやさんが酔いつぶれたらせっかくの夜が台無しになるじゃないか」 「それもそうね。彼女には頑張ってもらわないとね…うふふ」  ………夜って……な、なんだかイヤな予感が……  真一さんと栄子さん…二人揃ってあたしの顔を見ながら、何やらたくらんでいるような顔で微笑まれると…… 想像の行きつく先は一つ…… 「たくやさんの舌ってとっても気持ちがいいのよ…ひと舐めでイっちゃったんだもの……ああぁ…思い出しただ けで濡れてきちゃう……」  あたしがオシッコやら精液を浴びせ掛けられたところを思い出しているんだろう、栄子さんははっきりと分か るほど赤みの増した頬に右手を当て、左手を…浴衣の下半身の合わせ目の中へと潜りこませた! 「ふっ!…うぁん!…私のおマ○コ…もうグシュグシュになってる……うんっ…ああ……」  も、もしかして…こんなところでオナニーですか!?  左手は浴衣の中に入ったせいで見えないけれど、そこへと繋がる手首が動きを見せるたびにうっとりとした声 を出しながら身体を小さく震わせている。感じてしまって腰が引ける代わりに前かがみになると、あたしを挑発 するかのように、右手の指で浴衣を引っ掛け、汗の滲み出した胸の谷間をさらけ出した。 「栄子、もう少しだけ我慢するんだ。そうしたら僕のこれで――」  いきなりの誘惑に目を見開いて固まってしまったあたしの前で、栄子さんの右手を取った真一さんが…浴衣か ら飛び出した自分のおチ○チン(既に勃起済み)をそっと握らせた。 「あぁ…あなた…逞しいわぁ……でも…たくやさんを犯すところを想像してこんなに勃起させたんでしょ? な んだか悔しい……」  そう言いつつ、指を亀頭に絡めながら上下に擦り出してるじゃないですか…… 「仕方ないさ。彼女の蜜壷はまさに千人に一人の名器だからね。あの絡みついてくる感触を思い出すだけでも射 精してしまいそうなんだ……だけど…愛しているのはお前だよ、栄子……」 「あなたぁ……んん……」  あ…あのぉ〜〜…今は夕食のお時間なんですけど……  既に回りの目も忘れて二人だけの空間を作ってしまった真一さんと栄子さん……声も小さく、下の方はお膳に 隠れてるからあんまりばれてないと思うけど、そんなキスなんかしたら……  あたしがじっと見ている間に二人は顔を離し、それでも下半身は色々と…あれですけど……見た目には一応何 とか普通に食事しているように見えなくも…ないかな?  別にあたしがキスしたり、真一さんの巨根を触ったりしているわけじゃないんだけど、この場にいるだけでも 恥ずかしい……誰も見てないよね……… 「相原くん、ちょっとこっちに来てくれないかしら」  目の前でラブシーンを見せられ、どうしようかと困っている時に、松永先生があたしを手招きしてくれた。 「はい、今行きます! すぐ行きます!」  今は仕事中だった…仕事仕事……  真一さん、栄子さん、遙くん、そして入り口に一番近い場所――とは言ってもずいぶんと距離はあるけど…― ―に松永先生が座っている。距離的にそんなに離れているわけじゃないけれど、この二人の前から逃げられるの で、あたしはこれ幸いとばかりに移動した。 「松永先生、何かご用ですか?…って、あゆみさん、どうしたんですか?」  松永先生の前にはあゆみさんが正座して座っていた。しかも両手を膝の上において妙に身体を小さくするよう に固くして……あたしが声をかけると、音がなりそうなほどぎこちなく、あたしの方に顔を向けた。 「た…たくやくん……あの……」 「おぉ〜い、誰かビールを持ってきてくれんか?」  あゆみさんが口を開こうとした時に、広間の反対側から梅さんの声が聞こえてきた。 「あ、分かりました、すぐに持ってきます〜〜」  言葉尻を伸ばし、はっきりと梅さんに言葉を伝えてから、あゆみさんはまるで慌てて逃げ出すように、大広間 から出て行ってしまった。 「あらあら、あゆみさんって人妻なのに結構ウブね…ふふふ……」 「……松永先生…あゆみさんにどんな事を喋ったんですか?」  座っている人の前で立っているのもなんなので、あゆみさんが座っていた位置にあたしも座りながら、松永先 生に気になったことを尋ねた。 「ついさっきの事よ。相原くんが私のご主人様で、あそこでご奉仕させて頂いていたって」 「なっ!?」 「ふふふ…冗談よ。私がふざけて相原くんをからかっていたって説明しておいたから」  し…心臓に悪いなぁ……松永先生、冗談キツいですよ……  あゆみさんに変な事を話されなかった事にホッと胸をなでおろした瞬間―― 「相原くんがどんな風に感じてたか…全部話しちゃった」 「………え?」 「クリ○リスを摘み上げられて泣き出した相原くんを洗面台の上に押し倒して、アソコにバイブレーターを突き 立てた……何てことも全部話しておいたわよ」  そう言って嬉しそうに笑う松永先生に、あたしは呆然として何も言えなかった……  なんで…なんでそんな事を……  どうもあたしをからかっているような気がする……さっきのトイレの情事中に見せたSっ気やMっ気も見えず、 どちらかと言うと学園にいた頃によく見たミステリアスな雰囲気を漂わせ、こんなところでとんでもない事を暴 露されて慌てふためくあたしの姿を面白そうに見ているんだから。 「相原くん…今夜が楽しみね……ふふふ……」  できれば辞退したいです……はぁ……… 「お姉ちゃん、おかわり♪」  一気に気落ちしたあたしの前に、それまでパクパクと勢いよくお膳の上野料理を食べていた遙くんがご飯茶碗 を突き出した。米粒一つ残さず綺麗に食べられた茶碗はまるで洗ったばかりのように濡れ光っていて………舐め たわね…… 「早くおかわりぃ♪ 僕、今日の夜は頑張るからいっぱい食べるの♪」  顔に百点満点をあげたくなるような明るくてかわいい笑顔を浮かべながら………喋る内容はそれなのね……は ぁぁ………  どうやらもうどうしようもないほどに運命は決まってしまったらしく……諦めの溜息をついたあたしは、遙く んの小さな手からお茶碗を受け取って、ご飯をてんこ盛りに盛りつけてあげた。


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