\.逢瀬


ホ〜〜ホ〜〜、ホ〜〜ホ〜〜 草木も眠る丑三つ時(午前3時〜3時半)……じゃなくて深夜12時過ぎ…… 山に囲まれた旅館の中は闇の静寂に包まれていた。町の喧騒もここまでは届かない。虫や動物の小さな小さな 鳴き声がうるさいぐらいに響き渡る。 そんな旅館の離れの一室、布団が天井近くまで積まれた真っ暗な室内に、一人、佇む人影があった。 シルエットから女性であることが分かる。そして闇に完全には溶け込めない青を基調としたブラウス、闇に少し だけ浮かびあがる白いエプロンと髪飾り、キュッと締め上げられたウエスト、太股がほとんど曝け出されている 短いスカート。 山野旅館の仲居の正装であるメイド服姿。 その女性は和風旅館に似合いそうもない出で立ちで、何かを待つように、じっと目の前の闇を見つめている。 無音の闇の中で呼吸の音とわずかな衣擦れの音だけが響く。 ここに来てどのくらい時間が経っただろうか、長いような短いような時間を過ごした彼女の背後で、ゆっくりと 部屋の入り口が開いていく。 ピクリ 入り口の開く音に、彼女は少しだけ反応を見せる。 それは期待?それは恐怖?それは絶望?それとも…… 開いた空間の境界から一人の男性が闇の中へと入ってくる。 そして扉は閉められ、再び部屋の中は闇だけとなる。 「来て…くれたんですね……」 男は女性を後ろから抱きしめる。そしてそのまま首筋に自分の鼻を押し付け、彼女の体臭を存分に楽しむ。 「はぁぁ…もう離さない…あなたは…僕のものだ」 女性のからだを抱きしめる手が上と下に分かれ、動いていく。 一方は母性の象徴であるふくよかな胸の頂上へと、一方は神秘なる女性の泉へと、 二つの手は同時に目的の場所に到達する。 あ…… 女性の口から声にならない声が漏れる。 下へと向かった手は下着を押し込むように、秘裂に潜り込んでいく。 「もう…濡れてるんですね……」 潜り込んだ指は秘所を上下にさすりながら、同時に淫芽にも刺激を与える。 くぅ……はぁ……… 「声を出さないんですか…だったら……出させてあげますよ」 不意に男は女性を前に押し倒す。そして、突き上げられたお尻に手を伸ばし下着を掴むと、一気に膝までずり下ろす。 「分かるか…今おまえのおマ○コは俺の目の前にある。こんなに濡らして……そんなにして欲しかったのか…… やっぱりおまえは淫乱な牝豚だ…だったら……今すぐしてやる!」 グジュ! ああ〜〜〜! 男の狂喜が彼女の秘裂を掻き分け、最奥へと突き込まれる!そして、壊さんとばかりに荒々しく腰を打ち付ける! 「どうだ!これが欲しかったんだろう!泣け!泣いて喜べ!ほら!ほら!どうした?鳴いて見せろ! いやらしく喘いでみな!」 あ…あ…あぁ……一突きごとに女性の反応が大きくなっていく。背を仰け反らせ、頭を振り、自分から男を求めて 腰を振り動かす。 「…!く…ぁ!…あぁ!……いいっ!あぁぁ〜〜〜!!もう…ダメぇ〜〜〜〜!!」 ついに我慢の限界を超えたのか、女性の口から喘ぎ声が漏れ出し、徐々に大きくなっていく。そしてその声は…… 「!栄子!?」 「真一さ〜ん!!!」 「…大丈夫ですかね」 「大丈夫でしょう。結局、栄子さんもご主人のことを愛していたんだから。きつい態度はそれの裏返しの不満の 表れだったのよ」 「で…でも…あんなところでされても…その…お掃除が……それにあそこって…たくやくんが……」 「……あんまり言わないでください…忘れようとしてるんですから……」 布団部屋から少し離れた廊下に、あたしと松永先生、それにあゆみさんの三人が揃っていた。 ついでに言うと、あたしはシャツにズボンという動きやすい格好。隆幸さんに「後の仕事お休み」という許可を 貰ったので私服を着ている。これ以上制服をボロボロにされるのは嫌だもん。 あたし達は栄子さんにメイド服を着せて、真一さんと逢引きさせて仲を取り持とうと計画した。それがあたしにも、 真一さん達にも一番いい事だと思ったから…… お風呂場で松永先生にこの事を相談していると、浴衣を持ってきたあゆみさんに聞かれてしまったので、(無理やり 巻き込んで)三人で計画を練ることになった。 で、お客様から信頼されてるあゆみさんが、使っていない客間に栄子さんを連れこみ、松永先生が説得(二人っきり だったから手段は不明)した。説得後に会うと以前のツンツンした感じが無くなっていて、すっきりした感じがして いた。と言うよりも、なんだか…その…行為の後のような…… ……松永先生と二人っきりにしたのがいけなかったのだろうか……でも、先生も物凄くヤル気だったし……… その後、栄子さんに事情を説明して、洗濯されたてのあたしの制服(廃棄処分寸前)を着てもらい(ごめんなさい)、 あたしの替わりに布団部屋で待ってもらった、というのが計画の全貌である。 なぜ栄子さんにメイド服を着てもらったかと言うと、あたしや栄子さんの話から下した松永先生の診断が、 「あの人、メイドフェチか制服フェチ」 ……奥さんの前なんだからもうちょっと言葉を選びましょうよ。 ちなみに、真一さんが勃起不全になったのもそれが原因ではないか、との事。 普通の人が看護婦やスチュワーデスに惚れて結婚しても、すぐに離婚するケースがある。よくある理由の一つに、 制服や仕事の印象から抱いた男性のイメージと一緒に暮らす日常生活での姿とのギャップ、というのがあると 説明された。 真一さんは以前にはそんな趣味は無かったそうなので、ストレス等の理由による後天的なものと考えられる。 そんなわけで、栄子さんにメイド服を着てもらって、それでダメならあきらめよう、ということになったのである…… あきらめたらあたしはどうなるの? で、何はともあれ結果は…… 「あぁ!いい!凄い!あぁ!真一さんのが!あぅっ!あぁ!いい!あっ…イッ…クぅぅ〜〜〜〜!!」 「イくぞ!出る!でる!出る!グッ!ぐぅぁぁ〜〜〜〜!!」 「……なんだか物凄いですね」 「そうね、人間、一皮剥けば欲望しか詰まってないからこんなものかもしれないわね。でも、これだって一つの愛 の形よね」 あたしと松永先生は布団部屋の入り口前まで来て中の様子に聞き耳を立てていた。気分はもう出歯亀。 聞こえる声は、さっきからずっとこんな調子。もう完全に大丈夫よね。うわ〜〜、そんなことまでするか。 ちなみにあゆみさんには刺激が強すぎたらしく、すぐに真っ赤になって帰っていった。 「あの…先生?」 「あら?相原くんも興奮してきたの?だったら私達もしましょうか?」 「違います!あたし達も部屋に戻ろうッて言ってるんです!こんな出歯亀みたいなこともういいでしょう」 そりゃ、あたしのアソコも濡れてきてるけど……ほんのちょっとだけ…… 「そうね。二人とも、もう大丈夫みたいだし戻るとしましょうか」 「それでですね…遙くんの事なんですけど……」 「それはあきらめなさい。どうしようもないんだから」 「……はい」 「それじゃあ戻りましょうか」 「ああ!素敵!真一さん最高よ!」 「栄子!おまえは僕のものだ!僕のメイドだ!胸もお尻もおマ○コも全部僕のものだ!僕の自由にしていいんだ! メチャクチャにしてやる!腹も尻も口もザー○ンだらけにしてやるぞ!」 「あぁん!嬉しい!私は貴方のメイドですぅ!奴隷ですぅ!牝犬ですぅ!貴方のおチ○チン無しじゃもうだめなのぉ! ご主人様ぁ!もっと!もっとあたしのおマ○コグチャグチャにしてぇ〜〜!もっとぉぉ〜〜〜〜!!」 「栄子!栄子!出るぞ!出るぞ!お…おぉぉ〜〜〜〜!!!」 あたしは自分の部屋の前まで戻ってきた。 普通なら何も気にせず、さっさと部屋に入るんだけど、今日はなんだか入りにくい。 ………ここにいつまでも立ってる訳にはいかないし。 あたしは意を決し、ドアを開けて中に入る。 「あ…お姉ちゃん…お帰りなさい」 「…ただいま」 あたしの狭い部屋の中には二組の布団が引いてあり、その片方にパジャマを着た遙くんが大きな枕を抱いて 座っていた。 計画を実行する上で問題となったのが遙くんだった。二人がうまくいった場合、いつまでも布団部屋でエッチ してるとは限らない。そこで遙くんを誰かの部屋に預かっておき、客間の方に書置きを残しておこう、という ことになった。 で、誰が預かるか、ということになったんだけど…… あゆみさんは隆幸さんと一緒なので除外。 松永先生は夜遅くまで実験するから除外。それに、あの人と一緒の部屋に遙くんを置いておくと、とてつもなく ヤバい…… そんなわけであたしの目の前に遙くんがいる。あたしはこれから生まれて初めて、男の人と一晩、二人っきりで 過ごす事になった。 ……明日香、ごめんなさい………貴方以外の人と夜を過ごすなんて……… なんて思っても、相手は子供なんだから大丈夫。なんだけど…… 「遙くん、先に寝てても良かったのに」 「……うん」 「ごめんね。お姉ちゃん、明日早いからもう寝なくちゃいけないの。遙くんも眠たいでしょ?」 「……うん」 「じゃあ電気消すわよ。ちゃんと布団に入りなさい」 「……うん」 遙くんはあたしの部屋に来てからずっとこんな感じ。あたしの顔を見ることも無く、部屋からずっと枕で小さな 身体と顔を隠しながら、簡単な返事しかしてくれない。ここに来るときも、手を引いてあげようとして避けら れるし……やっぱりあたし嫌われてるのかな…… ぱちん 遙くんが布団に潜り込んだのを確認して、明かりを落として、赤い電球だけをつける。 そう言えば遙くんの抱いてた枕って、この旅館のじゃないわね……枕が替わると眠れないのかな?…… そんなことより、あたしも見られる前に早く着替えなくちゃ…… 遙くんが向こうを向いてるのを確認して、シャツを一気に捲り上げ、脱ぎ捨てる。下着を着けていない丸い乳房 が揺れるけど気にせず、布団の上においてあった浴衣を手早く羽織る。それから遙くんに背を向けてズボンを 脱ぎ、帯を締める。 ……見られてないわよね……… 振り返ってみても、盛り上がった布団が動いた形跡は無い。頭の先まですっぽりと隠れている。 「それじゃあ遙くん、おやすみなさい」 「…………」 もう寝ちゃったのか……それとも、口なんか聞きたくないのかな……… あたしは脱いだ服をたたんで枕元に置くと、電灯の紐を引いて部屋の中を真っ暗にして、自分の布団へと潜り込んだ。 「おやすみ……遙くん………」 最後に一声だけ、一晩だけの隣人に声を掛けて背を向けると、あたしはゆっくりとまぶたを閉じていった………


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