T.着替


二日目 「うふふ、たくやったらぁ〜、もうこんなに濡らしちゃって、やらしいんだ」 「あんっ、明日香ぁ、やめてぇ」 明日香の手があたしの胸から臍、恥骨を通り、あたしのオ○ンコに向かってくる。 「ダ〜メ、今までいじめられた分、たくやの事おもちゃにしちゃうんだから」 明日香はそう言いながら意地悪な笑みを浮かべた。 そのまま指先で、あたしの体に触れるか触れないかという感じを保ったまま、焦らすような愛撫が続く。 「ああ、そんなところ触っちゃ、だめぇ」 さわさわと、内股から恥丘にかけて明日香の手が這い回る。 あたしのオ○ンコは、その微妙な快感だけで愛液が滲み出してくる。 「……ク…、……な……坊…」 「嫌がってるくせに、ココはこんなに濡れてるじゃない。…さ、いっしょにイきましょう」 「あぁ、明日香、明日香ぁ〜〜」 そして、明日香のからだがあたしの上に覆い被さってきたと思った瞬間、 「!!とっとと起きやがれ、このネボスケがっ!!」 「ふぇ?」 ザスッ! 「へ?…うわぁぁぁぁぁ〜〜〜」 目を覚ましたあたしの目の前に、いきなり包丁が突き刺さった! あたしは跳ね起きて後に逃げる! 「な、な、な…」 「何だ、起きれるじゃないか。ならさっさと起きな、手間かけさせやがって」 あたしの目の前には、包丁を布団から引き抜いた真琴さんが座っていた。 「ま、真琴さん、あ、あの、これは…」 「あん。あたしは時間になっても起きない寝ぼすけを起こしに来たんだよ」 「え、寝坊って、今は…あっ」 壁にかかった時計を見て、あたしは声を上げた。針はすでに九時を指していた。 「あちゃ〜〜」 あたしは疲れのあまり、思いっきり寝坊したのだ。この時間だと、もう朝食は終わっている。 「まったくいつまで寝てんだよ。ま、朝食は全員で食べるわけじゃないけど、一人サボれば、その分他の人間に 御鉢が回ってくるんだからな」 「…すいません」 朝から真琴さんのありがたいお説教が始まる。 それにしても、さっきの明日香は、夢だったのか…… 夢の中でも感じていた体のほうは、少し重たいが大丈夫のようだ。あれだけヤった割には、もう何ともないって 感じである。ほんとタフだね〜。 「しっかし、ここは離れとはいっても、旅館なんだぞ。いくらなんでも、そんな格好で寝るんじゃないよ」 真琴さんはあたしのほうを…正確には、あたしの顔よりも下を見つめながら、そう言った。 そんな格好って… つられてあたしは視線を下げる。最初に見えるのはあたしの大きな胸、その下には女の子座りをしたあたしの 太もも……って? 「きゃあっ!」 あたし、素っ裸じゃない! あたしは反射的に手で胸と股間を隠す。そしてあたりに視線を走らせ、敷布団の隅で丸まっていたシーツを 見つけると、それで体を覆う。 「な、何でこんな格好で……」 そうか、あたし無事部屋に帰ってきたんだけど、そこで力尽きて誰かが敷いてくれていた布団でそのまま 寝ちゃったんだ。 まあ、家でも裸で寝てたんだけど、それをいきなり明日香以外の人に見られるなんて…って、明日香なら良いのか? にしても、あたしが焦ってる割には、 「なに平然としてるんですか、真琴さん」 「別に女同士なんだから、隠さなくても良いじゃない。それよりあんた…ほんとに男?」 そりゃ、体は女でも心は男だと自負してるけど……ちょっと自信がないな。 真琴さんはあたしの体を、じっ、と見ている。やらしさはないが、なにか嫉妬のようなものを感じる。 それに何か変なことを呟いてるよ、この人。 「何で男のタク坊の胸があんなに…あたしだって結構自信あるのに、あゆみといい、こいつといい、ブツブツ……」 「あの〜、しっかり聞こえてますけど……」 あたしだって好きでこんな体になったんじゃないのに……クスン… 「おっとそうだ。梅さんが呼んでるよ、いいかげん起きろって。こりゃカミナリ確実だね、ナンマンダブ」 いきなり我に帰った真琴さんは、あたしに向かってそう言って、縁起でもなく手を合わせて念仏を唱えた。 そりゃ、仕事二日目で大寝坊したら、怒られるわよね… その事を考えるだけで、起きて早々に気分がブルーになる…… 「ま、実のところ、朝にあゆみが一回起こしに来たんだけど、起こせなかったらしくてさ。疲れてるようだから、 もう少し寝かせたげよう、て事になったんだ」 「え、そうだったんですか?」 ぜんぜん気付かなかった。あゆみさん、ありがとうございます。と言う事は、布団を敷いてくれたのも、 あゆみさんかな? 「で、朝食が終わって一区切りついたんで、次はタカ坊が起こしに行こうとしたんだけど、あゆみが顔真っ赤にして、 すごい勢いで引き止めてさ。んで、その場にいたあたしが指名されたってわけ。まぁ、その理由もよく判ったけどね」 と言って、にやりと笑う。 「ま、真琴さん……」 たぶん、あたしが夢見て悶えてたのを、横で見てたんだ… あ!ひょっとして、あゆみさんにも… あゆみさん、あたしの裸の寝姿を見てどう思ったんだろう? 想像するだけで、あたしの顔が自然と火照ってくるのが分かる… それに、真琴さんのあの目は知っている…夏美があたしに悪戯しようとする前、あんな顔をしてた…… 「若い女の子があんなカッコで寝てたら、うぶなあゆみには起こせないわね〜。手や足を、こう、ば〜んて広げてさ、 乳もアソコももう丸見え!それに「アスカ〜」とか言って体をくねらせてさ。いや〜、良いもん見せてもらいましたよ、 た・く・や・ちゃん」 真琴さんの口撃が始まる。え〜ん、やっぱり〜〜 数分の間、真琴さんによるあたしの寝相についての事細かい説明が続いた。しかも、あたしの寝言を聞いていたらしく、 「ねぇ、アスカって恋人?それじゃ今は同性愛?」とか、しつこく聞かれまくった。もう勘弁して〜 「さて、それじゃとっとと着替えな。梅さんが待ってるよ」 「はい、わかりましたぁ〜…」 あたしは疲れきった声をあげて、着替えを…って 「あ、あの服は…」 と、真琴さんに尋ねる。今朝、脱衣所で着替え一式を盗まれ、あたしには切るメイド服がないのだ。 「服?メイド服ならそこにおいてあるけど」 と、指差す方向には箪笥があり、その前に新しいメイド服がたたまれて置いてある。 何で制服がここに… 「旅館は客商売だよ、次の日も同じ服着て働くわけないだろうが」 「え?ええ、そうですね」 と言って、笑って誤魔化す。新しい服だったわけね。 当然、真琴さんが、服を盗まれた事を知っているわけがない。 「そう言えば、昨日着てた服はどうしたんだい?あゆみが探してたけど」 ぎくっ! 「あ〜、その事は後で話します。今は着替え、着替え」 再び誤魔化し、着替えを始めようと、シーツを体に巻いたまま立ちあがり、下着などが入っている大き目のリュック のほうに向かう。そして、ファスナーを開け…… 「あの〜、真琴さん?」 「ん、なに?」 「着替えるんで出ていってくれませんか?」 「やだ」 あたしの問いに対する答えは簡潔だった。 「なんで見てるんですか?あたしの着替え見て楽しいですか?」 「うん、楽しい」 再び簡潔な答えが返る。 床に胡座をかき、腕組みをしている姿は、「意地でも動かないぞ」と言っている。 「いや〜、女になった男の裸ってやつが見たくってさ。それにあたしがいないと、また寝るかもしれないだろ?」 「寝ませんって。それにあたしの裸はもう見たんでしょ」 「お尻は見てないんだよね〜。それにほら、今は女同士なんだし気にしない、気にしない」 …よく判った。この旅館では真琴さんには逆らってはいけない、逆らっても無駄だと言う事が…… あたしはあきらめのため息をつきながら、リュックの中から下着を探し始める。 え〜と、確かこの辺に…… あれ?いつも付けてたあたしの下着が、一枚もない?その代わりに入ってるのは……夏美がくれた下着!? 「どうしたの?」 と言って真琴さんがリュックの中を覗きこんでくる。ヤバい! 「いえ、別に何でも…」 と言いつつ、体で下着を隠そうとするが、 「うわっ!タク坊ッたら、こんな下着はいてんの?」 遅かった……真琴さんが手を伸ばして取り出したのは夏美から貰ったオトナの下着、赤い色のスケスケパンティである。 「うわ〜、このデザインすっごい。こんなにスケスケだとアソコが見えちゃうじゃない。あ、これも過激〜」 と言いながら、次々とあたしのバッグから下着を引っ張り出す。 「ちっ、違うんです。これは義姉さんに無理やり持たされたもので…」 「タク坊ッたらこんなの着てるんだ、やらし〜。こっちのやつなんか、股間の布ないじゃん」 と言っても聞いてくれない……ほんとにあたしのじゃないのに〜 その時下着の中から、一枚の紙が出てきた。 「ん、なんだろ?」 と言って、真琴さんが紙を広げる。気になったあたしも、横から覗きこむ。 その紙には、こう書かれていた。 『ごめんごめん ほんとの餞別はこっち 大事にしなさいよ  夏美』 その言葉を見たあたしは、バッグの中を見てみる。 オトナの下着の下には、もう少しおとなしい色とデザインの下着が何着か入っていた。 …ああ、夏美様ありがとう、ほんとはあたしのことを思っててくれたんですね… これで変態の烙印を押されなくて済む。そう思うと、様付けで夏美に感謝してしまう。 その横で真琴さんの下着鑑賞会はまだ続いていた。 「へ〜、綺麗なデザイン。あたしもこんなのほしいな。でもちょっとやらしいかな……あれ、これなんだろう?」 と言って、真琴さんがリュックから何かの箱を取り出す。表面には英語でなにか書かれている。それを真琴さんが 読み上げる。 「え〜と、なになに。co…n…dom…コンドーム!?」 へ?コンドーム?何でそんなものがあたしのリュックの中に入ってるの!? 真琴さんの首が、ギギギと音を立て、こちらを向く。それに対してあたしは、首をブンブンブンと横に振る。 知らない!あたしは知らない! あたしのジェスチャーで、どうやら真琴さんも分かってくれたみたいで、 「い、いや〜、なかなか男女の仲に理解のあるお姉さんで…」 なんて言ってる。 しかしいつの間にこんなもの入れたんだろう? 確かにリュックが膨らんだような気はしてたけど、まさか下着にコンドームとは…しかもあの箱の大きさだと中身は 十や二十では済むまい… さっき感謝したには取り消し。一体なに考えてるのよ! そう考えたとき、あたしはある事に気がついた。 そう言えば、もうひとつのかばんも荷物を詰めた後から膨らんでたっけ… かばんを見るあたしの視線に気がついたのか、真琴さんもそちらを見る。 「…ねぇ、タク坊。こっちのかばんにはなにが入ってるのかな?」 「…普通の服が入ってる…はずですけど……」 「…開けてみようか?」 「…はい」 そうして二人の間にかばんを置き、あたしの手がゆっくりとファスナーを開ける。 夏美ならボディコンやチャイナ服、ボンテージなんかを入れそうだけど…… 中に入っていた服は、前から持っていた、女のあたしでも着れそうな男物の服。スカートの類は少ない。 「良かった〜、こっちはなんともなさそうね」 「あんた自分の姉さん信じなさいって、ははは。…あれ、タク坊、これ何の薬?」 二人の安堵の息の後、真琴さんは服の間にあった、薬の入ったビンを二つ取り出した。どうやら何かの薬らしいが、 表面には、これまた英語の表記が……また悪い予感がする… 「え〜と、ピル……バイ○グラ…って…」 あぁ…読んじゃったよ真琴さん…言わなくても良いのに…… 「あ…あははは、い、いいお姉さんじゃない」 「すいません、こんな義姉なんです…」 真琴さん、声が裏返ってるよ… かばんには、まだ服とかが入っている。ここまで来たら最後まで見るか… 意を決して、荷物を出して行くあたしと真琴さん。そしてそれは出てきた…… 「これ…なにかな…?」 真琴さんが、かばんの底にあった箱を取り出し、興味半分戸惑い半分であたしに聞いてくる。 ………できれば見なかった事にしたい。 箱を開けてしまったあたしはとことん後悔した。箱の中にあったのは…… 「……バイブレーター…日本語で言うと、張型」 「そんな説明口調でしゃべらなくても」 箱の中には、大小二つのローターと、普通サイズのバイブレーター、双頭バイブなどなど、そして極め付け…… 「ほ、ほんとにこんなの入るの?」 「…あたしに聞かないで…」 ゴクリ あたしのか…真琴さんのか…つばを飲み込む小さい音があたしの部屋に大きく響いたような気がした…… 最後に出てきたのは、いぼ付、回転、振動機能付、トドメにクリ○リスとア○ルを同時に責められるように三叉に 分かれた、ほんとにこんなの存在するのかと言うような、ものすごく大きいバイブ…… …こんなのが入るほどガバガバじゃないわよ、あたしのおマ○コは…… そう思っているとき、あたしは箱の中に入っていた紙を見つけた。 その紙を開いてみると、 『いい男がいないときは これでイキなさい 溜め過ぎは体に毒よ  夏美』 …この紙を見た後 「…真琴さん、ここで見た事、忘れませんか?」 「…そうね、とっとと忘れよう」 二人は同時に肯いた…… 「これで良し、と」 タイを止めるブローチをつけて着替え終了。 あたしは、夏美からのまともな餞別である新しい下着から、少しハイレグのショーツと、デザインは良いけど胸の 上半分が出ているブラを身につけ、メイド服に着替えた。ブラは外から見えないし、パンツはまともそうな物を 選んだ。サイズが合っているので、昨日みたいな圧迫感はない。それに着心地がとても良い。 ちなみに、バイブだのコンドームだの怪しげな薬だのは、ヤバ過ぎる下着といっしょに、全部まとめて箪笥の 引き出しにしまってしまった。 この引き出し、二度と開けるもんか! ちなみに真琴さんは、あたしの着替えの間、畳に座りこんであたしのほうをじっと見ていた。 …恥ずかしい あたしが照れていると、 「なぁ、タク坊のスカート、短くないか?」と言ってきた。 「やっぱりそうですか。あたしも短いな〜って思ってたんですけど…」 今履いているスカートは、昨日と同じ長さ。動くたびに、新しいショーツに包まれたお尻が見え隠れする… 「絶対短いって。あゆみのパンツなんか、そんなに見えないもん。普通に立ってるだけで見えるようじゃだいぶ 短いってことになるね。最初からその長さだったのかい?」 「はい、昨日もこのぐらいでしたけど…」 少し照れながら、スカートの端を持ち上げてみる。どうせ全部見られたんだ、いまさら下着を見られるなど、 どうと言う事はない。 「制服を準備したのは、あゆみだったよね…ったく、こんなミスするなんて……よし、あゆみに言ってスカートを 変えてもらおう」 ほんとっ!これでこの恥ずかしさから開放される! 喜んだのもつかの間、 「ま、あゆみに会いに行く前に、梅さんのありがた〜いお説教があるから、覚悟しておくんだね」 「人一人起こすのに、一体何分かかっとるんじゃ〜〜!」 「あ、いや、タク坊の部屋でちょっと話しこんでたもんで…」 梅さんの待つ従業員室に行くなり、カミナリは真琴さんに落ちた。 うわ〜、怖〜。これは待たせた分、怒りも増大したみたいで…… 怒れる梅さんのカミナリは真琴さんを叱り付けた後、あたしに向かってきた。 「たくやも既に昨日説明を受けたじゃろう!旅館は朝が一番忙しいんじゃ!それをサボって寝過ごすなど気が たるんでいる証拠じゃ!」 梅さんの怒鳴り声に身をすくませる。 …いや、気がたるんでたわけじゃなくて、昨日露天風呂で一晩中犯されまくって、疲れきってたんです〜…… などと言えるわけがない。 横でとばっちりを受けている真琴さんはあきらめた顔をしている。 はぁ〜、カミナリが通りすぎるまで待つしかないか。 覚悟を決めたとき救いの神が現れた! 「まぁまぁ梅さん、たくやちゃんは昨日来たばっかりでまだ慣れてないし、初めての仕事で疲れたんだろう。 今回は多めに見てやって…」 あぁ、隆幸さん、あたし、あなたに一生ついていきます。 梅さんをなだめようとする隆幸さんの背中に後光が見えた。 そう思ったのもつかの間、 「…坊ちゃん。坊ちゃんがしっかり最初に厳しく説明しておかないからこんな事になるんですぞ。誉めるべきは 誉める、叱るべきは叱る、ただやさしいだけでは、旅館の主は勤まりませんぞ!いいですか………!…!」 この救いの神は頼りにならなかった… 見ると真琴さんは、道連れが増えたと言うような顔をして笑っている。 こうして、二人から三人に増えた被害者は、台風が通りすぎるまで廊下に正座する事となった…… 「そもそもこの旅館は…ケホケホ」 三十分間怒鳴りっぱなしで喉をいためたのだろう、梅さんに咳が増えてきた。 咳があるたびに、隆幸さんと真琴さんが心配そうな顔をする。 …二人とも梅さんとの付き合い長いんだな〜 などと考えていると、今度は救いの女神が現れた。 「はい梅さん、お茶をどうぞ」 と言ってお茶を差し出したのは、あゆみさんだった。 「おお、済まんの。ング…ング…ング、ふ〜」 「梅さん、そろそろ許して上げませんか?三人とも、もう十分反省してますよ。もとはと言えば、あたしが たくやくんを起こせなかったのが原因でもあるわけですし…」 「うむ、そうじゃの…では、各自仕事に戻りなさい」 ふぅ〜、やっと終わった。 あたしは、しびれた足で立とうとしているとき、梅さんから声がかかった。 「たくやは今回の罰として、昼から布団部屋にある予備の布団を干しておくように」 「はい、わかりました」 声だけは元気よく、姿勢は崩れている状態であたしは返事した。 「あゆみ、おまえさんはたくやに仕事の仕方を教えてやれ。ただし、あまり手伝うでないぞ」 「はい」 そしてあゆみさんはこちらを見て、すまなさそうに微笑んだ。 「で、あゆみ、話があるんだけど…」 足の痺れが取れた後、あたしとあゆみさん、そして真琴さんが、調理場の椅子に腰掛けて向かい合っていた。 仕事の前に、あたしのお腹の虫が鳴ったので、真琴さんがついでに簡単な食事を作ってくれると言う。 その前にスカートの長さの話を済ませておこう、と言う事になって、あたしと真琴さんは、あゆみさんに、 スカートが短すぎる事を説明した。 「え、そんなはずは、ないんだけど…」 あゆみさんがビクビクしながら答える。なにか、こっちが悪いことをしているような… 「でもほら…ちょっとタク坊、立って回ってみて」 真琴さんに言われて、あたしはあゆみさんと真琴さんの目の前で一回転する。 なんか、見世物になった気分… 「…ほんとだ、このスカート短い。…昨日の服も短かったの?」 「ええ、これと同じくらいでしたけど…」 「でも私、二回とも、チャンとサイズとか長さ、確認して準備したんだけど…」 あゆみさんは、どんどん自分が悪いんだって感じで泣き出しそうになっている。あぁ、罪悪感が〜 「あ、ほら、あゆみさんが悪いわけじゃないですよ。たまたま疲れてたとか…」 「でも二回もあゆみが失敗するなんて、考えづらいな。仕事だけはきっちりする娘だし…となると、誰かがすり替えたか」 あんたは、話しを逸らしたいのか、混ぜ繰り返したいのか、どっちなんだ。 そう考えたとき、真琴さんの言葉にあたしは、ハッとなる。 なるほど、誰かがスカートをすり替え、あたしに短いスカートを履かせ、恥ずかしがっているのを見て喜んで いたって訳だ……でも… 「でも、それじゃあ一体誰が…?」 「今この宿にいる男の誰か、と考えるべきだろうな。タク坊の部屋は鍵が付いてないから、やろうと思えばいつでも 入れる」 「でも、こんな長さのスカートなんて最初からないから、うちの旅館の制服の事を、よく知ってなくちゃダメだと 思うの…」 二人の意見で、犯人の条件が分かってきた。 「となると……この旅館で一番スケベなタカ坊かな?」 …やっぱり隆幸さんってスケベだったのか…気をつけなくっちゃ… 「隆ちゃんそんなことしないもん!」 あゆみさんがいきなり立ち上がり叫んだ! さっきまで短いスカートのことで少し暗かったので、この大声にはビックリした。いきなりだもの。 「あ…ごめんなさい」 大声をあげたことが恥ずかしいのか、あゆみさんは顔を真っ赤にして、再びいすに腰を下ろした。 「気にしなさんな、タカ坊がそんな事しないのは、あたしだってよく知ってるよ。さっきのはあたしが悪かった、 ごめん、あゆみ」 真琴さんのこうゆう素直に謝れるところはかっこいいよね。 でも、あゆみさんが、あんなに力強く否定するところを見ると、自分も少しは考えてしまったみたいね。自分自身の 考えを否定したかったんだろうな… となると、考えられるのは… 「隆幸さんじゃないとすると…梅さん?」 「それはない」「それはないと思うの」 そんな二人同時に否定しなくても… 梅さんには一度、変な目で見られてるし…… 「私は梅さんとは子供の頃からの付き合いなの。梅さんがそんな事をするとは思えない」 「あたしもそう思う。そんな人間だったら、最初っからこんなところにいないよ」 梅さんてこの旅館の人から信頼されてるんだな〜。そんな人を疑ったりしてしまって、 「ごめんなさい、軽はずみな事言っちゃって…」 「いや、いいって。となると、残りは宿泊客か…でも全員初めての客だしな」 「でも、ここの情報や制服なんかは、新館の情報といっしょに、ホームページに載ってるけど…」 「あ〜、だめ、あたしパソコンはパス。あたしが触ると煙ふくし」 一体、真琴さんてパソコンにどうやって触るんだろ?気になるな。 でも、お客全員が怪しいとなると、一番怪しいのは… 「…あっ」 「ん、どうした?」 「あ、いえ、何でもないです、はい」 ……あのおじさん三人組、あたしを犯したあの人たちならやりかねない。でも、あたしが犯されたことを話すのは 恥ずかしいし、話せば二人に迷惑かけちゃう…… 「そう言えば、たくやくん」 「…え、はい?」 考えを中断されたあたしは、あゆみさんのほうを向く。 「昨日着てた制服、どこにあるの?一応どうなってるのか、確認しておきたいんだけど…」 …あ、そう言えば話してなかったっけ? 「それにできれば今日のうちに洗濯しておきたいんだけど……」 「え〜と、あれはその〜…」 あゆみさんが困ったように、真琴さんがはっきりしないなさっさと話せ、という感じでこちらを見ている。 …これは誤魔化しきれないな。そこだけ話しても大丈夫だよね。 「実は…制服はお風呂に入ってる間に、下着といっしょに盗まれちゃったんです」


U.堕天へ