第8話


 オジサンはニッコリと笑うと。絵美のお腹のあたりをゴシゴシとこすり始めた。
 (あぁぁん・・・)
 絵美は涙が出そうだった。
 仰向けになると自分の置かれた状況がはっきりと認識できてしまう。それが絵美の羞恥心をさらに刺激した。
 オジサンの手は絵美の裸の身体の上を好き放題に動き回っている。時折お腹の横にそれるのがくすぐったいが、それに反応するほどの余裕もないほど絵美は固まっていた。
 (助けて・・・)
 細いウエストがこんなときには災いしてか、そうこうしているうちにどんどん作業はすすみ、オジサンは次の場所を探しに入った。
 (もう・・・)
 心の準備をする暇もなく、オジサンの眼は絵美が必死に隠している柔らかい二つのふくらみに向いた。
 (・・・!)
 「(腕をどかしてくれないか?)」
 眼で訴えながら絵美の顔を見たオジサンに絵美はおびえながら首を振った。
 (・・・イヤよ!)
 オジサンは困った顔をしてまた「ダイジョウブ」と繰り返した。
 (イヤ!)
 絵美はなおも首を振った。
 ガラスの方をチラリと見ると、すぐそこに人間の影が3つも見えた。いうまでもなく、ガラスに張り付くようにして絵美を見る西田たちである。
 (えっ!なんなのぉ・・・!)
 男たちのデリカシーのなさに心から愛想がつきた。
 「ダイジョウブ」
 オジサンがまた言った。
 裸の胸を両手で隠したまま、ひたすらに首を振り続けた。次第に涙が瞳にたまり始めた。
 (い、イヤよぉ・・・イヤぁ!)
 絵美はダダをこねる子供のようにオジサンに懇願した。
 「・・・・・・オォーケェイ」
 オジサンは困ったような顔をしていたが、泣きそうな絵美を見てついにあきらめたのか、胸を隠す両手をそのままにして肩の方で作業を始めた。
 「セン・・・キュー」
 手がふさがっている絵美が涙を拭くこともできないまま礼を言うと、オジサンはニッコリ笑ってうなずいた。

 「ああ!?」
 「なんだよ、もっとがんばれよオッサン!」
 絵美の乳首が拝めるのを今か今かと待っていた西田たちは口々に悪態をついた。
 さっき奥の台で瞳のおっぱいが撫で回され(西田たちにはそうとしか見えなかった)、プルンプルンと揺れるのはここからでもしっかりと見えた。
 ぼんやりと見える瞳の幼い顔が、真っ赤に染まって羞恥に歪む姿も男たちを興奮させた。
 もともとたいして持ち合わせていなかった理性は早々に砕け散り、欲望の赴くままに西田たちはガラスにへばりついて中の様子を眺めていた。島本たちも遠慮気味に場所を変え、鑑賞に一番いいポジションを確保しようとうろうろしている。
 絵美の裸体が提供されようとしたのはそんなタイミングだった。
 「おおお」
 「来たよ!」
 「良いねぇ!」
 「(絵美さんもイイっすね)」
 「(ううむ・・・)」
 「(ほぉ、流石だ)」
 6人の男たちの眼は生贄の台のうえで必死に身体を隠す乙女に一斉に注がれた。
 絵美は両手を身体の上で組んで乳首をかくし、膝を立ててヘアを隠していた。
 さぞや薄いのだろう、角度を変えてどうにか見ようとしても股間の黒い影を覗くことができない。だが、その姿はまちがいなく全裸だ。
 オジサンがアカスリを始める。
 何もない台の上に孤立無援で置かれた真っ白な肌に、毛むくじゃらの男の手が襲いかかる姿がはっきりと見えた。
 「ようし、いけ!」
 瞳の台よりもずっと近いせいもあるのだろうか、絵美のおへその形や、落ち着かない表情の動きまでもうかがい知ることができる。
 「腹はいい、もっと上だ!」
 「早くせんかい!」
 男たちは応援とも罵倒ともつかない歓声を上げた。あとは瞳と同様に、胸を隠す両手をどかさせ、そこにあるはずの二つの小さな突起を拝ませてくれさえすれば、当分夜のおかずには事欠かないはずだったのだ・・・。

 オジサンは絵美の鎖骨にそって丁寧にゴシゴシとやっている。
 「まったく、いいとこでやめやがってよ」
 西田の言葉に初めて6人ともが同意していた。
 涙の懇願もこの男たちには全く効果がなく、むしろ泣きそうな顔で必死に許しを請う姿が興奮を誘うだけだったようだ。
 普段の絵美の物腰からは、深窓の令嬢や姫君のような、楚々とした気品が漂っていた。それだけに、いま彼女が置かれている状態は、異国の賊どもに掠奪された姫君が、まさに淫らな辱めにあおうとしている姿を想像させるものがある。
 曇りガラスの向こう、手を伸ばせば届きそうな距離に横たわる、白磁のような滑らかさをたたえた絵美の裸体は、それが美しければ美しいほどある種の破壊的な衝動を呼び起こさせるのだった。
 めちゃくちゃにしてしまいたい・・・。
 汚れを知らなかった乙女が、野蛮な欲望の餌食となる。それこそ、男たちが求めている絵美の末路であった。
 
 「やべ・・・!」
 西田たちがあわててガラスから離れ、島本たちの座る台へと戻ってきた。
 胸を隠し通した絵美が、涙に濡れた瞳でガラスごしに彼らをにらみつけたのだ。
 「ちっ、一時撤退かよ、もう少しだったのによ」
 「だな、まったく根性無しのオッサンが!」
 あてのはずれた男たちは恨めしそうな眼を、横たわった絵美の裸体に向けた。
 「おい、久美子さん見ろよ」
 原口が絵美の頭上の台を指さした。
 久美子さんの辱めの時間が終わりを告げたようだ。
 台の端に腰掛け、しばし下を向いて動きを止めている。茫然自失というところだろうか。
 無理もない、まさに突然降りかかった災難だった。友達の麻里子さんはまだ裸を見られるだけで済んだが、彼女は突然入ってきた男に全裸の身体を文字通りすみずみまで観察され、まさぐられたのである。胸と言わず股間と言わず、乳首からヴァギナのすぐ近くまで、まだ男の指の感触が残っていた。
 「ふう・・・」
 久美子さんの口からもれるため息の音が聞こえたような気がした。
 彼女は身体を隠す気力もないという風によろよろと立ち上がると、花柄のビキニを身につけはじめた。
 濡れた水着のボトムはなかなかお尻を覆うことができなかった。
 やせた身体に赤黒く実をつけたような乳首は、硬さを失わないまま、窮屈にビキニのカップの中に収まった。
 もちろんその様子はそこにいる全ての人間から丸見えだった。
 「ふう・・・・・・」
 着替え終わったあと、久美子さんはもう一度ため息をついた。
 久美子さんの裸体を陵辱したオジサンは、黙々と使い終わったベッドを洗い流していた。


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