第7話


ゴーシゴーシゴーシゴーシゴーシ
 オジサンの手は絵美の裸の背中を縦横無尽に移動していく。
 「ォォォ・・・」
 遠くで男の声が聞こえたような気がした。
 (いやぁ・・・)
 目をつぶったままの絵美は、自分がどのような姿で見られているか想像せずにはいられなかった。
 (麻里子さんのときより絶対見えてるよぉ・・・)
 ガラスの曇りはどんどん薄くなってきている。外からでも絵美の裸体はかなり鮮明に見えているはずだった。
 想像したくはないが、さっきの瞳や麻里子さんとくらべても、絵美は位置的、時間的に一番悪い状況にあった。
 裸のお尻の形はもう彼らの目に焼き付けられてしまったことだろう。
 (でもこれだけじゃすまない・・・よねぇ・・・あぁ)
 このあとは仰向けにさせられる。さらに、由美子たちと同じなら、オジサンに裸の身体を揉まれて、その様子をあの男たちに観察されるのだ。
 (「すみずみまで、じっくり・・・」)
 あの言葉が思い出された。さっきの由美子のように脚を広げられて、股間を毛むくじゃらの素手で触られる、そんな自分の姿を想像するとおもわず悲鳴を上げたくなる。
 (・・・どうなるのよぉ?)
 そうこうしているうちに背中の手がウエストを越えてお尻の方へ向かう。
 「・・・!」
 絵美は両手を握りしめた。
 おじさんの手は背骨に沿って、お尻の割れ目に向かってどんどん下へ降りていく。
 「・・・や・・・!」
 危険を感じた絵美は小さな声を上げた。
 だが、おじさんの手はお割れ目の上の方をかすめただけで、そのままヒップの外側に向かうと、腰骨を両手で挟み込むようにゴシゴシと動くだけだった。
 (ふぅ・・・)
 ゴシゴシされるたびにお尻のお肉が揺れ動いたが、それ以上変なところに手が行くことはないようだ。交差した両脚を無理矢理開かせようという気配もない。絵美は少しだけ安心して、目を開いた。
 明るさに目が慣れると、頭上の久美子さんの裸体が目に入ってきた。
 度胸がすわっているのかあきらめたのか、久美子さんは胸も股間も隠そうとはせず、あおむけのまま両手を身体の脇に置いてなされるがままだ。
 今はちょうどヘアのあたりを指圧されるように指で押さえられている。
 (久美子さんは外の様子知らないからなあ)
 絵美はちょっと気の毒になった。お友達の麻里子さんもそうだったが、彼女もこの状態を外から観察している男たちの存在に気づいていないはずだ。
 絵美の作業はお尻を通り過ぎ、太ももの上のあたりに入っていた。
 横を向いてチラリと見ると、オジサンは絵美の脚先の方を向いてゴシゴシと一生懸命やっている。下から恥ずかしいところをのぞき込まれる心配もなさそうだ。
 (ふぅ)
 オジサンが移動したので瞳の姿がよく見えるようになった。
 瞳も仰向けでもちろん裸だが、久美子さんと違って胸を両手で隠し、こちら側、つまりギャラリー側の膝を立ててアンダーヘアを隠している。
 (あ、うまいなあ・・・)
 あれなら外の連中からは大事なところは見えないはずだ。
 瞳には悪いが、先に入ってもらったおかげで次にどんなことをされるか分かって、心の準備と対策はつけやすかった。
 (見させてね、瞳ちゃん)
 瞳はお腹のあたり、おへその周辺を木にヤスリをかけるようにゴシゴシとこすられていた。オジサンは瞳の立てた膝を邪魔そうにしていたが、特になおさせる気はないようだ。
 とはいえヘアはオジサンには丸見えだ。
 (・・・そこまではしかたないか・・・でも外には見せたくないわよねえ)
 絵美の作業も脚の下の方へ向かっている。そろそろ仰向けになる覚悟を決めなければいけないだろう。さきほどのアクシデントで中のオジサンたちには見せてしまったアンダーヘアはなんとなく諦めがついた。だが、外で絵美たちの裸体を食い物にしようとしているあの意地汚い男たちには見せたくない。
 (由美子ならきっと「お尻だけでもあいつらにはもったいないわよ!」と怒るだろうな)
 そんな由美子も外の様子には気がついていないはずだ。
 (ごめんね由美・・・)
 由美子の裸体はすでに外からも見られてしまっているだろう。親友の裸をあんな男たちに見られたのは悔しかった。この上はこれ以上彼らに良い思いをさせないのが唯一の対抗策だと信じたかった。
 (瞳ちゃんと私だけでも、あいつらの思い通りになってたまるものですか)
 絵美は親友を差し置いて自分だけが身を守ろうとすることの罪悪感を、そう考えて押さえた。
 
 だが、瞳のほうの抵抗はあっけなく終わりを告げた。
 「えっええっ?」
 という瞳の声が聞こえたので絵美が少し顔を下に向けると、瞳のゴシゴシはお腹の上、胸のあたりに達し、オジサンが胸を隠す手をどかせと指示しているようだ。 「ダイジョウブ」
 (ダイジョウブじゃない!大体どうしてこんな時だけ日本語なの!?)
 絵美は人ごとながら動揺して様子を見守った。
 「ぁあ・・・」
 瞳の声にならない声が聞こえた。
 オジサンは手袋をしたままで瞳の腕をつかむと、軽々とそれを引きはがして瞳の身体の横に置いた。
 (あ・・・)
 瞳の大きなおっぱいの頂点の薄い朱茶色の突起が、上からの強烈な照明に照らされた。
 手を離すときにプルンと大きく揺れた乳房は、仰向けで寝ていてもその大きさの割に形を崩していない。乳輪は大きく隆起して、その中心部にはポツリと豆粒ほどの乳首がのっている。幼い瞳の顔には似つかわしくない生々しさだった。
 「ぉぉぉぉぉ」
 今度ははっきりと男たちの声が聞こえた。
 (・・・瞳ちゃぁん)
 絵美は泣きそうだった。瞳の表情は見えないが、喜んでいるはずはない。
 オジサンはかまわずにゴシゴシを続け、そのたびに瞳の胸がタプンタプンと揺れる。
 「い・・・」
 また瞳の声が聞こえた。
 だがオジサンはその声を無視するかのように、おもむろに瞳の左のおっぱいをもろに手で押さえつけた。
 (・・・!)
 オジサンはそのまま片手で乳房を押さえて固定すると、もう片方の手でその丘を登るようにゴシゴシを続けた。
 (ええぇ・・・!)
 やがて丘を登りきると、その頂点の膨らみの周囲を回るように指先だけを数回動かす。見ているだけで恥ずかしくなる光景だった。
 「・・・プリーズ!」
 動揺している絵美に追い打ちをかけるように絵美の係のオジサンが声をかけた。どうやら表を向けということらしい。
 (ちょっとまってよぉ・・・)
 瞳の姿を見てしまったことで絵美の覚悟は崩れ去った。
 そのまま下を向いて、涙が出るのをこらえるのがやっとだった。
 「ダイジョウブ!」
 オジサンが声をかける。
 (だから何で日本語なの!)
 絵美はやっとの思いで顔を上げてオジサンを見た。「もういいです、やめてください」と言いたくて仕方なかった。
 オジサンはニコリと笑うと自分を指さし、
 「ダイジョウブ、プロフェッショナル」
 と、何度も言ってくる。
 (なにがプロなの?何の?)
 絵美は思ったが、いずれにせよ表を向かないわけにはいかない。瞳があの状態では、なおさら自分だけここでやめるわけにはいかなくなってしまった。
 (もぉ・・・もぅ・・・もぉぅ・・・!)
 絵美はゆっくりと身体を起こすと、両手で胸を隠し、ガラスと反対に身体をひねって仰向けになった。
 「明るい・・・」
 思わず声が出た。上を向くと照明は思っていた以上に強力で、まるでほんとうに「すみずみまで」隠させないように照らし出そうとしているようだった。
 (もう・・・無駄?かしら?)
 注意深く右足を上げて股間に向かうギャラリーの視線は遮っているつもりだが、それもいつまで続くことだろうか不安だった。
 横を見ると瞳の恥辱がまだ続いていた。絵美自身も、アンダーヘアは強烈な照明の下に晒されて、オジサンの視界には当然入っているはずだった。
 「オーケイ」
 オジサンは満足そうに笑うと、まるで料理の材料を吟味するように、絵美のところどころ薄くピンクに染まった裸体を眺めた。
 (あぁ・・・)
 絵美は胸を隠す両手に力を込めた。


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