第3話


奥の方で瞳が身体を小さくして水着を脱ぎ始めた。こちらの視線を意識して、ずっと向こう側を向いているが、その動きははっきりと分かってしまう。
 小さな背中で結ばれていた白い紐が力なくパサリと下に垂れさがると、ゴクリとだれかが唾を飲む音が聞こえた。
 島本たちは平静を装いつつ、だが必死にガラスの向こうを透視しようとしていた。
 (マジすげぇっすねえ・・・あの瞳ちゃんのヌード!)
 男たちの中で最初にこの部屋に入ってきた島本は、淡い恋心を抱いていた瞳の無防備な水着姿をしっかりと見ていた。
 シャワーの水を滴らせた瞳の白い水着の胸には、ツンと突き出した小さな乳首はおろか、その周囲がほどよい大きさにプックリと隆起している様子まで確認できた。アンダーヘアは水着のかなり下の方に遠慮気味に黒い影を浮かび上がらせていた。
 今、その水着の上を脱ぎ去った瞳は、豊かな胸を片手で隠しながらブラジャーを壁のフックにかけている。すこし背伸びをすると僅かに横から見えるおっぱいが腕の下で、ぷるんぷるん、と揺れるのが見えそうだ。
 (揉みたいっす、マジで・・・)
 島本はDカップはゆうにあるだろう瞳のおっぱいと、その上に浮かんでいた乳首の形を必死に思い出そうとした。
 こっちを向いてもっとよく見せて欲しい・・・もはや遠慮はなかった。可憐な瞳のヌードを松山たちにも見られてしまうのは何となくくやしかったが、もともと筋違いの独占欲である。
 
 (どうしよう・・・?)
 絵美は島本たちの必死な視線と、瞳の脱衣姿とを見比べてあせっていた。
 瞳が震える手で白いビキニの下を脱ぐと、お尻の割れ目がゆっくりと顔を出していくのがうっすら分かる。
 (あれ・・・え!?)
 気のせいか先ほどまでよりガラスの曇りがうすくなっている気がする。ドアを開け放していたからだろうか、理由はどうあれガラスの仕切りは3人の男たちの欲望に沿うようにその目隠し効果を低下させていた。
 全裸になった瞳は恥ずかしそうに水着を壁に掛けると、片手で胸、片手で股間を隠しながら、おずおずと寝台の上にうつぶせに横になった。背中からお尻へとつづく滑らかな隆起がはっきりと見え、彼女が態勢を変えようとするたびに柔らかそうに揺れた。

 (どうしよう、どうしよう・・・)
 時間がない、次は絵美の番だが、それまでにこの男性陣をここから退去させないと、瞳や由美子ともども、彼らの欲望の視線に一糸まとわぬ裸体を晒し続けるしかなくなってしまう。
 (どうしよう・・・?)
 もちろん、もはや島本たちには出て行く気はないらしい。
 豊富な獲物にありついた男たちは決定的なチャンスを逃すまいと、チラチラと視線を動かしている。なかでも松山は絵美がすこしでも身体を動かすたびに胸元や下半身を探るように眺めてくる。
 (くぅ・・・)
 絵美は身体を硬くしてじっと耐えていた。すこしでもガードをゆるめたら、そこから男たちの視線が彼女の水着をひきはがし、全裸にされて辱められるようで不安だった。

 (顔や普段着からは想像つかねぇよなあ、こんなん)
 松山はディナーの時の絵美の清楚なワンピース姿を思い出し、そこからは想像もつかない大胆な水着を食い入るように見つめた。
 両脚をそろえて座っている水着のボトムは角度によってはなにも履いていないのではないかと思ってしまうほど小さい。
 (毛まで一センチもないんじゃないか?)
 信じられないほど小さなその股間の布を見て松山は思った。おそらくは上下の水着の面積を足しても、普通のビキニのボトム分の面積もあるまい。
 松山の網膜にはさっき見たばかりの絵美の乳首のふくらみがはっきりと焼き付いている。胸も乳首も、大きすぎず、小さすぎずで、絵美の繊細な美しさのイメージにぴったりだった。
 今見た瞳の全裸の後ろ姿に、絵美の姿を重ねて想像する。背が高く細身の絵美の裸身はきっとガラス越しに見ても美しいことだろう。
 (こういう子を縛り付けて、少しずつ水着を引きはがして虐めてやりたいもんだ)
 ひしひしとつたわってくる絵美の恥じらいが松山の残酷な妄想を加速させていく。

 「あの・・・」
 絵美は再び勇気を出して男性陣の退去を求めようとしたが、それよりも早くガラス戸がもう一度開き、さっきのおばちゃんが外に出てきた。
 「え?もう?!」
 思わず日本語で聞いたが当然答えはない。ジロリとこちらを見ただけで、オジサンとなにやら言葉を交わしてそのまま部屋を出て行ってしまった。
 (どこいくのよぉ?)
 絵美はどんどん不安になっていった。
 「☆※◎◆?」
 とつぜん松山が訳の分からない言葉を発した。
 「☆★?○◎△▼□☆」
 オジサンはちょっと驚いたようだったが、すぐに答えた。
 (何?)
 松山とオジサンはそのままなにやら話している。
 (そういえば、この人はどっかの言語が専攻だって言ってたっけ)
 絵美は夕食の時の松山の話を思い出した。

 「☆▼・・・マジ?」
 松山が会話の最後に日本語でそういうと絵美の方を見た。
 「なに?」
 絵美がおそるおそるたずねた。
 「女性専用時間は終わりだって・・・」
 松山はニヤニヤ笑いを隠しながら言う。イヤな予感が絵美の全身に走った。
 「彼女たちも交代の時間なんだそうですよ」
 隣でオジサンがニコニコと頷いた。
 すると、先に入ってきたもう1人のオジサンがいつの間にか横にやってきて、ガラス戸の中を指さして一言二言言葉を交わし、なにやら分かったというふうにうなずいてガラス戸に向かっていった。
 (え?ウソでしょ???)
 絵美の不安をよそに、オジサンはあっさりとガラス戸を開けるとそのまま中に入り、瞳がうつぶせに寝ている奥のベッドへ向かっていった。
 (ええっ!!!)
 絵美も驚いたが瞳の驚きはもちろんそれ以上だ、動揺して身体を丸めようとしたのが外からでもよく分かった。他の三人も当然驚いたようで、一瞬部屋の中が騒然としたが、白衣のオバサンたちはかまわずに仕事を続けていこうとする。
 そうこうしていると外からさらに二人のオジサンが入ってきた。彼らは絵美の隣のオジサンと陽気に言葉を交わすと、そのまままっすぐガラス戸の中へ入っていった。
 (えっえっ?ええっ?)
 絵美にはもう何がなんだか分からなくなった。
 中ではオバサンとオジサンの交代劇が始まった、まず部屋の左側にあるベッド、それから右側の由美子のベッド、それぞれオバサンとオジサンが交代し、文句を言って抵抗しようとする由美子たちにかまわず作業の続きに入っていった。
 (ああぁ・・・)
 由美子は仰向けに寝させられ、肩の辺りをマッサージされているところだった。オジサンの姿を見てあわてて両手で胸を隠したが、交代したオジサンに両肩を押さえられ、両腕は軽々と身体の左右に広げられてしまったようだ。
 (由美子ぉ・・・?)
 由美子の乳首と、その向こうのほうにある黒い茂みがここからでもぼんやりと見えている。もちろん中のオジサンにははっきりと全部見られてしまったはずだった。
 突如入ってきた見知らぬ男に裸を見られてしまった・・・由美子たちのショックが絵美にも伝わってくるようだった。
 (・・・!)
 絵美はガラスの向こうの光景から目をそらした。なんだか泣きそうだった。あれよあれよというまに、なにか取り返しのつかないことがおこってしまったようだった。
 松山は中の女たちの裸体とそんな絵美の姿を交互に眺めていたが、しばらくして絵美の反応を探るように、もっとショッキングな言葉を伝えた。

 「あなたの分は彼がやるそうです」

 (!?)
 絵美が思わず顔を上げると隣のオジサンが満面の笑みを浮かべて会釈した。
 松山はその様子を意地悪く観察していた。


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