第27話


 瞳のあのかわいらしい口から漏れたとは思えない獣のような声が止むと、荒い呼吸音だけがいくつも聞こえてきた。
 「すげえなおい・・・」
 「ああ、いいイキッぷりだったなぁ」
 ガラスの外からは、瞳の悶えっぷりに圧倒されていた男たちのヒソヒソ声がする。
 (・・・)
 絵美はもう何も考えられなかった。
 ただ、オジサンの指をヴァギナにくわえ込んだままの瞳が、ときおりピクンピクンと動くのを痛々しく感じながら眺めていた。
 「はぁン!」
 再び、瞳の切ない声が漏れた。
 (もうやめてよぉ・・・)
 瞳の股間に置かれたオジサンの手首の筋肉が、クイックイッと不定期に動くたび「アッ!・・・ハアッ!」という声とともに色づいた柔らかい肉体が快感に震える。
 「フフン」
 オジサンは左手を瞳の胸へとのばし、その弾力を楽しむように手のひらに包んだ。
 「ぁん・・・・・・」
 瞳は顔の位置を戻して自分の胸をまさぐる手を見つめた。
 「グッド?」
 そういいながらオジサンの指先は硬く尖った乳首をつまみ上げるように転がした。
 「ヤァッ!・・・あ・・・・あああぁ」
 逃れようとしているのか、それても耐えきれない快楽のためか、必死に身体をひねる瞳の姿を楽しみながら指先は乳首を弄びつづけていく。
 (また・・・ね・・・)
 あえぎ声が次第に激しくなっていくのを聞きながら絵美は思った。三たび、瞳は快楽への階段を登らされようとしているのだ。
 「ハァァアアッ!」
 休んでいた右手が再び膣壁を刺激しながら動き始めたころには、瞳の声からは理性のかけらさえ感じる事が出来なくなった。
 
 「・・・・・・」
 絵美のオジサンは彼女の膝の辺りをなんとなく撫でつけつづけている。その、気のない作業のおかげで瞳を思いやる余裕があるわけだが、目の前で彼女があそこまで徹底的に辱められて不安にならないわけがない。
 (あと、脚だけで終わり・・・じゃ、ないよね、きっと?)
 出来るだけ楽観的に、それでいて出来るだけ悪い方に考えて心の準備をしておくべきだった。
 実際のところ、絵美にはこのあと何が起こるのか予想できなかった。人によってやる事も全然違うし、その基準も分からない。すぐ隣で展開しているのは最悪のケースだろうとしても、自分はいったいどうなるのだろう?
 (ねぇ・・・?)
 チラリとオジサンを見る。
 その途端、絵美はハッとした。オジサンはびっくりするほど険しい表情で瞳の方を見つめていた。
 (怖い・・・)
 思わず、力の入らない身体を硬くした。
 「?」
 オジサンはその微妙な動きに気が付いたのか、絵美の方を向いてニコリと笑った。
 「グッド?」
 「う・・・うん」
 表情の急激すぎる変化が、逆に絵美を不安にさせた。
 オジサンは思い出したように絵美のふくらはぎの左右を、指先だけでツーッとさすりながら足首へと手を動かした。
 「は・・・・・・ん・・・」
 絵美の裸体を再び無数の虫たちが這い回り、自分と瞳の立場がそれほど変わらないという現実を彼女に叩きつけた。
 
 「アッ・・・アッアッアッアッ!ダメッ・・・どんどん・・・また・・・だぁめぇ・・・」
 淫魔に魅入られたかのように瞳が意味不明なあえぎ声をあげる。
 (瞳ちゃん、だめよ・・・)
 抵抗できるものではないことは絵美にも分かっているが、かといってなされるがままというのも悔しすぎる・・・。
 「ハッ・・・ン・・・・・・」
 だが、無力さを思い知らせるように、絵美の身体にもとろけるような甘い刺激が流れる。
 オジサンは絵美の足首をそろえ、ちいさなかわいい足の指の間に彼の毛むくじゃらの指を挟ませて動かした。クチュックチュッとローションが音を立て、不思議な快感が全身をくすぐった。
 (あ・・・これ・・・いい・・・)
 思わずそう思ってしまった。足の指が感じるという話は聞いた事があったが、初めての経験だ。
 「ハァア・・・」
 隣から響く瞳の喘ぎ声に紛れるのをいいことに、吐息にわずかな快楽の音色をこめて吐き出す。
 (だめ・・・)
 「ン・・・ン・・・ンン・・・」
 あわてて口を閉じるが、逆に逃げ場を失った快感が絵美の裸体をくまなく走り回るように感じた。
 (だぁ・・・めぇ・・・)
 閉じていた秘密の扉にゆっくりと何かが侵入してくるのを感じて、絵美は自分を保つのに必死だった。
 
 「アアアアッ!!!」
 突然の瞳の悲鳴で少し我に返った絵美の耳に、信じられないような淫らな言葉が聞こえてくる。
 「ダメッ!そこダメ・・・そこ・・・だめ・・・そこ、そこ、そこぉ、だめなの・・・そこぉぉ!」
 (・・・ああ・・・)
 耳をふさぐ事も出来ず、絵美は淫欲のドロ沼でもがく瞳の姿を眺めるしかなかった。
 
 「・・・○×□♪」
 ガシッ!
 隣で高まる緊張とはまったく無縁に、鼻歌を歌いながら絵美の足の指をまさぐり続けていたオジサンが、おもむろに絵美の右足首の下辺りを両手で捕まえた。
 (えっ?)
 驚く絵美にかまわず、オジサンは左手でかかと、右手で足の甲を包むと、そのままつま先まで優しく伸ばすように手を動かした。
 まるで陶土を扱うように両手が絵美の足先を撫で上げた後には、今できあがったばかりのごとき美しい足先がピーンと伸ばされておかれた。
 「ん・・・む・・・」
 むき出しの右足を10本の指が舐めるように動き回り、絵美は閉じた口に力を込めた。
 (あっ!)
 アキレス腱の辺りをつかまれたと思ったときには、絵美の右足は台の上から離れて宙に浮いていた。踵を右手で持ち上げたまま、ふくらはぎから膝への裏へと左手が走っていく。
 「んっ・・・ん」
 羞恥心を快感が追い抜いて、反射的に脚がビクッと動いた。オジサンはまるで活きた魚を抱えるように絵美の右脚をしっかりと支え、それが逆に絵美の股間を大きく広げる事になった。
 (見ないでッ!!!)
 今度こそ完全に開かれた股間の向こうに、蛇のような松山の視線を感じて絵美は愕然とした。
 (い・・・やぁ・・・)
 わざとなのか無意識か、松山がペロッと舌なめずりをした。その舌が二つに割れているのではないかと絵美は本気で思った。

 「あ・・・もうダメ・・・ダメ・・・また・・・」
 隣の台では瞳の喘ぎ声にいっそう艶がこもってきた。
 「もぉぉぉ・・・ダメッそれダメェェェ・・・い・・・いい・・・いい・・・うん・・・アッ!」
 その声が拒絶でない事は絵美にさえも分かった。もはや、もし瞳が本気で拒絶するとしたら、それは彼女の感じやすい肉のトンネルを陵辱している二本の指が動きを止める事のほうだろう。
 「あ・・・ああぁ・・・だめ・・・ダメッ!ダメダメッ!イックゥ!イク!イクゥ・・・あああぁぁぁぁああああああ!」
 反り上がった裸体がビクッビクッとけいれんするように何度も何度も動き、太い二本の指を含んだままの腰が艶めかしく揺れた。少女のように可憐だった瞳の三度目の絶頂は、その場にいる日本人全員に性の喜びの奥深さを感じさせずにはいられなかった。
  
 「チッ」
 瞳の様子をうかがっていた絵美の足下で、オジサンが舌打ちをした。
 (ん?・・・あっ!いや!)
 オジサンの方を見ようとした絵美と松山の視線がまともにぶつかった。さらに悪い事には、眼をそらした先で真っ赤な肉の棒がそそり立っているのにみごとにピントが合ってしまった。
 (もうほんとにイヤァ・・・)
 涙ですこしぼやけそうになった視界の隅では、瞳のほうをにらみつけたままのオジサンが、絵美のスラリとした右脚を少し無造作に台に置いた。
 (あ!あ!ちゃんと閉じてよぉ・・・!)
 視線でうったえたつもりだったが気づかなかったようだ。オジサンは今度は絵美の左側に移ると、もう片方の脚を同じように抱え込んで持ち上げた。
 (あっ!だめっ!)
 絵美の整った顔がこわばった。
 (イヤぁぁぁぁ!)
 抵抗むなしく、股をさらに広げられる感覚がイヤでも自分のあられもない姿を実感させてくる。
 「ほぉぉぅ・・・」
 松山の口から漏れる息が秘部に届くかと不安になるほど、彼女はまさにあの蛇男の顔に向けて股間を大きく広げてみせていた。
 (い・・・やぁ・・・!)
 チラッと見た松山の顔がイヤらしく笑っている。こぼれそうな涙を必死にこらえるのが絵美に出来る精一杯の抵抗だった。
 
 「あふぅウウ・・・」
 絵美の痴態に負けじと、瞳がうなるような声を上げた。
 (また・・・!?)
 終わりの見えない陵辱に怯える絵美の左脚を、オジサンがさらに手元に引き寄せる。
 「・・・キャッ!」
 無防備に広げられた股間に迫る危機を感じて絵美は思わず小さな悲鳴を上げた。


続く