第16話


 松山は一歩中に入って立ち止まり、四つの台がすべて埋まっているのを確かめると、その場所から獲物たちの姿を眺めた。うつ伏せの絵美と、あわてて足を組んだ由美子は、かろうじて隠すべき場所を隠してせめてもの抵抗をした。
 だが、奥に大の字に寝る瞳だけはどうしようもなかった。
 「・・・ン・・・」
 相変わらず切なげな声を上げ、開かれた両脚首のあたりを揉まれていた瞳は、新たな男の視線がその若い裸体をなで回すのをまともに見ることができず、すぐに目をそらした。
 「ほぉぉ・・・」
 松山は感嘆のため息をついた。蛇のような視線が瞳の肌の上を這いずりまわる。白い肌に生々しいまでに茂る陰毛の姿を目に収め、陵辱された乳房の上で赤々と熟した乳首の姿を眺める。
 股間は大きく開かれ、島本の見苦しい顔がそれをのぞき込むようにして瞳を見ている。
 (あのやろ・・・)
 松山は島本のポジショニングをうらやんだが、自分のために用意された生贄の存在を思い出して視線をそちらに向けた。
 「ふぅ・・・」
 ひときわ白く、スラリと伸びた絵美の裸体がそこにあった。シミ一つ無い細い裸の背中からお尻の膨らみに向けて、柔らかな稜線を描いていく。
 (芸術的だな)
 柄でもなく、松山は思った。そしてその芸術品のような絵美の裸体の、閉じられた両脚の付け根に生の女の蔭りの存在を察知して、激しい興奮を覚えずにはいられなかった。
 
 オジサンはドアを開け放したままで松山の背中を押すようにして由美子のそばへ招き入れる。
 「・・・!」
 キッと由美子はオジサンごと松山をにらみつけたが、松山はその視線を意に介せず、裸のまま座っている由美子を見下ろしていた。
 「ユー」
 オジサンは松山に奥の壁を示すと、水着を下ろすジェスチャーをした。
 「アンドユー」
 そしてそのまま由美子には水着を着る仕草をして見せる。
 「◎×○●?」
 「オウ?○×△×□?」
 松山がオジサンに彼らの言葉で話しかけると、オジサンはちょっとうれしそうに笑った。
 松山はチラチラと絵美と瞳の姿を見ながら奥へ向かい、首だけを部屋の方に向けたまま海パンを下ろした。
 「チッ」
 由美子が小さく舌打ちした。松山は彼女が着替える隙を与えないつもりなのはよく分かった。
 由美子が再び松山をにらみつけ、絵美もおそるおそるその二人の攻防を横目で見守っている。
 「!」
 (!)
 その二人の目の前で松山は躊躇なくこちらを振り向いた。
 (キャァァァァァッ!)
 絵美はあわてて目を伏せた。松山のガリガリに痩せた身体の下の方で、真っ赤になってそそり立ったアレが異様なほど目だって見えた。
 「ビンビン」とはこういう状態を言うのだろう、松山はそのイチモツを隠そうともせず、むしろ誇示するようにして由美子の座る台に近づいた。
 「ヒッ・・・」
 さすがの由美子もちょっとたじろいで、思わず身体が後ろに下がる。
 「☆○×?」
 松山はニヤニヤと薄気味悪いほほえみを由美子の方に向けたままオジサンに尋ねた。
 オジサンもニヤリと笑ってうなずくと、由美子の隣を指さした。
 「・・・失礼」
 松山はそこに由美子と並んで座った。
 勃起したペニスを見せつける松山と、必死に身体を隠そうとする由美子は、お尻がくっつきそうなほど近くに座ったままで牽制しあった。
 普段の松山は、狡猾だがそれほどの度胸は無い男である。だが今の彼にはここにいる日本人の中で唯一、これから行われることを理解しているという精神的な強みがあった。
 「・・・ふふん」
 由美子の刺すような視線を松山は鼻で笑って見せた。
 「(ちっ!)・・・・・・ぁ!」
 由美子は松山の視線が自分の裸体とともに見ているモノに気がついてハッとした。
 二人の目の前には裸の絵美がお尻をこちらを向けて寝そべっている。
 (まずい・・・)
 由美子たちの位置からは絵美の股間はかなり見える。
 両脚を必死に閉じている絵美は気がついていないのかもしれないが、細く引き締まった下半身が災いしてか、腿の付け根のあたりの隙間から、女の子の一番大事なところが顔をのぞかせる。
 一番大事なところ・・・そう、こんな男に見せちゃ行けない所。
 由美子は絵美にそれが見えていると教えようかと思ったが、教えたところでどうなるものでもない。
 「ユー?」
 オジサンが再び水着をつけろと指示をした。
 「オケイ」
 返事だけをした由美子がどうするべきか悩んでいると、目の前の台のオジサンが「ターン」と絵美に指示をした。
 
 ビクリッ
 
 絵美の動揺がはっきり伝わってくる。
 「ターン、プリーズ」
 オジサンはなおも優しく言った。
 絵美はしかたなさそうにもぞもぞと不器用に両手を動かし、裸を隠しながら仰向けになる準備を始めた。
 (・・・無理よ・・・絵美・・・)
 由美子はそれがきわめて難しいことをよく分かっていた。
 「・・・・・・」
 案の定、絵美は不安で一杯の瞳を由美子に向けてきた。

 ゴソゴソと、美しい絵美には不似合いな、まるで不器用な芋虫のような動きがなんとも痛ましい。
 「ふふふ・・・」
 横にいる松山はうれしそうに、そんな絵美と瞳のあられもない姿、そして由美子が水着を着るときに見せなければならないであろう、裸体の隠された僅かな部分を代わる代わる見つめ、見苦しいアレをおったてている。
 由美子は再び松山をにらみつけた。
 「(こいつ!)・・・」
 「・・・ふん」
 松山ももういちど鼻で笑うと、胸と股間を隠したままの由美子の裸体を下から上へとわざとらしく眺め回した。
 「・・・サイテー」
 由美子はポツリというと、意を決して立ち上がった。
 「ふ」
 松山はまったく気にもせず、目の前にある由美子の引き締まったお尻を凝視した。
 「・・・!?」
 すると、意外なことに、その白いお尻が後ろを向き、代わりに綺麗な長い指に隠された由美子の下腹部がこちらに向けられた。
 「?」
 松山は不思議そうな顔を上に向けた。
 由美子はこの貧相な男を憐れむように見下ろすと、ふぅぅ、と大きく息を一つはいた。
 (見たければ見なさい・・・!)
 座ったままの松山のまさに目の前で、隠していた手がゆっくりと外され、手入れの行き届いた黒い茂みが露わになる。
 
 ハァァ・・・

 どちらのものか、あるいはお互いのものかもしれない荒い吐息の音が聞こえた。
 それに続いて、片手でかろうじて隠されていた乳房が自由になった。
 
 プルッ
 
 細かに揺れた乳房の上に、ツンと上を向いた乳首が誇らしげに目の前の男を誘惑ずる。
 冷たい視線を向ける美しい顔の、軟らかく尖った顎先から首にかけての細いライン、浮き出た鎖骨の下から始まる、芸術家が削り出したかのようなふくよかなバストと、その上で赤く色づいた乳首。内蔵がどこにあるのかと思うほど引き締まったウエスト、柔らかく張りのあるヒップ、しなやかなアンダーヘア、スラリと伸びる白く細い両脚・・・頭のてっぺんからから足先に至るまで、あまりにも見事な肉体だった。
 「フゥゥゥ・・・」
 今度は明らかに興奮した松山の吐息だ。
 (くぅ・・・)
 由美子はその吐息が、まだ火照りの納まらない裸体をくすぐるのを精一杯無視してビキニに手を伸ばした。
 (・・・お)
 わずかに前屈みになっただけでも、乳房が自分の顔めがけて近づいてくるような気がして松山は息をのんだ。
 松山の好みは絵美のように清楚で奥ゆかしいタイプであって、由美子のように女の魅力の使い方を知り尽くしていそうなタイプは好きではない。
 だが、好みを超越して、目の前に投げ出されたこの裸体に目を奪われない男はいないだろう。
 松山は我を忘れて由美子の肌を見つめた。
 (・・・ンンッ!)
 数十センチの目の前で自分の秘部を観察される屈辱に耐えながら、由美子は必死に無表情を装って水着を着ようとした。
 
 「フゥゥゥ」

 不意に松山の吐息が由美子の乳首をもてあそぶ。口を尖らせて、わざと狙っている。
 
 ビクンッ!

 由美子の全身を悪寒と快感とが争いながら走り抜け、思わず動きが止まる。
 松山はニヤリと笑って由美子の顔を見た。由美子は視線を合わせずに作業を続けた。
 (・・・?)
 あわてているせいか、ビキニのボトムの向きがなかなか分からない。由美子は顔の前でその黒い布を何度も回してようやく正しい向きを見つけ、そのまま身体を曲げて足先から水着を着ようとした。
 (あっ!)
 身体を折り曲げた顔の目の前に、赤黒く怒張した松山の男根を正面から見据える形になってこのときばかりは由美子も後悔した。
 (イヤよ!気持ち悪!)
 見慣れたその角度が、反射的にそれをくわえるところを想像させ、由美子はゾッとして大急ぎで水着を両脚に通した。
 (ふうむ・・・・)
 ジタバタとボトムを上げる由美子の乳房が目の前でプルプルと揺れるのが、松山の性欲を激しく刺激する。
 (この肌の感触を確かめたい)
 触ることができない代わりに松山は幾度も吐息を由美子の肌に向けて吹き付けた。マッサージに名を借りた陵辱の限りを尽くされた由美子の性感は、それを敏感に察知して彼女の理性を揺るがした。
 (あぁ・・・はぁ・・・ん)
 実際の所、由美子の身体は性の歓びに解放されるときを今か今かと待っていた。
 固く尖った小さな乳首はわずかな空気の動きにさえ鋭敏に反応し、耐えられないほどの快感を由美子の脳髄から子宮の奥まで送り届けた。
 (・・・あ・・・ん)
 吐息が乳首を直撃するたび、由美子は腰のあたりから崩れ落ちてしまいそうなもろい自分と必死に戦わなければならなかった。


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