「ソドムの向こう側」


 男のもとに面白なものが届けられた。

 よせられた手紙に、眠るには惜しいほどの内容が書かれている。
 映り出される映像を前に、ワイルドターキーを一気に飲み干した。
 この世には便利なツールがある、
 同じ嗜好を持つ輩を集めることに特段、苦労をしたことはかった。
 逸材とも思える内容だ、
 一見、ただのレイプ作品にも思えた。

 薄暗い明かりのなかに、しっかりとしたビジョンがある。
 音声より動画、
 それ以上の興奮を煽るには静止映像が一番だ。
 男は音声を切るなり深々と椅子に腰掛けた。
 映像は途切れておらず、ありのままの姿が映り出されている。
 二杯目のワイルドターキーが酔いを早めそうだ。
 真新しいペンションとも言える豪邸だ。
 血相を変えた女が階段を駆け下りるシーンから内容が始まっていた。
 男はモードを倍速にするなり、ただただ女の顔を眺めた。
 サディズムにとっての高揚感は女の恍惚とした表情にある。
 責めに入るなり、じっくりと倍速を緩めた。
 後ろ手に手錠を嵌められた女の下着を荒々しく引き下げるなり、うつ伏せにされた女の顔に焦りだけが浮かんでいる。

 かすかに覗かせた尻の間に、舌を這わすたびに女の顔が苦痛に歪みだしている。
 三杯目のワイルドターキーに、手を伸ばすことさえ忘れてしまうほどだ、映像に映り出される男の手つきは慣れていた。
 仰向けにされた女は渾身の力を振り絞ろうとする、だが、うつ伏せにされた姿勢のなかではなにもできないに等しい。
 女にとって始めての感触なのだろう、
 眉間に皺をよせたまま足を開くことも閉じることさえできないなかで、一瞬の戸惑いが徐々に下着が荒々しく引き下げられていく瞬間だ。
 露にされた下半身を男は満足げに見ることはない、
 女の前に投げ出すように無数に玩具が転がった、
 誰さえ、見知らぬ男に処女を奪われることは屈辱的だ。
 大きく映りだされた女のアヌスは綺麗な締りをしている。
 太ももに縄が通されるなり、男の願望が手に取るようだ。
 ただのレイプなど巷に無数に転がることだ。
 映像は二時間に納められている、
 このなかで男の求める世界観を出せると言うのだろうか。
 それ以上に興味を惹いたのは女の表情だ、
 泡立つ石けん水がシリンジによって流し込まれるたびに、今にも身体が跳ね上がりそうだ。
 なかなか、はじめてにしては感度が良すぎる、わざわざ手紙をよこしただけのことはあった。
 男は魅入るように映像に釘つげになった。
 エノマはなにも羞恥を引き出すばかりではない、アヌスの拡張を潤滑にする意味もある。

 シリンジが抜かれるなり、大ぶりのアナルパールが差し込まれた。
 石けん水のお陰で挿入はスムーズだ。
 うっすらと溶かしだけの石けん水では嫌でも固形物を吐き出すだろう。
 男は排泄を即すように電動アナルパールをゆっくりと動かすたびに、女の額に嫌な汗が浮かびあがってもいった。
 その様相を助長するように振動するアナルパールの隙間に指を差し込んでもいく。
 緩やかな拡張だ、
 送りつけただけの価値はある。
 男が書き示すように「上玉」としか言いようがないだろう。

 女はを捕獲することは簡単だ、
 なにが難しいかと聞かれたなら隠し通すことだろう。

 腹痛に耐えかねた女はついに耐えた臭気を差込便器に吐き出した。



     *


 微弱な腹痛は自然排便にも等しい。
 女が吐き出すたびに男の指が荒々しくアヌスを抉った。
 アヌスほど擬似的なセックスを楽しめる場所はない。
 ヴァギナいじょうの熱さがある、
 拡張させすぎては意味がない、古傷を抉るように時間を空けてこそ意味がある。
 痛みを忘れた頃が最高だ、
 拡張に楽しみを見出すか、挿入に酔いしれるかは相手次第だ。
 排泄が止まない腹痛に拍車をかけるのも一計だ。
 挿入と排泄を繰り返せば嫌でも感覚は麻痺してくる。
 そこが女の狂いどころだ。
 排泄しようとすれば嫌でもアヌスは拡張するものだ、
 加えこむ指が二本になるなり、女の反応が大きく変わりだした。
 緻密に計算され尽くされた調教にも思えてくる、腹痛を徐々に助長させるように、挿入感のある嵩を男は選んだ。
 まっすぐ直立した直線を描くアナルバイブは、さぞかし苦しいだろう。
 グリセリンを振り掛けては女の直腸へとアナルバイブを押し当てるたびに、女の顔が大きく引き攣った。
 だらりと床に寝そべった身体が、大きく息を吹き返すようだ。

 男は女の反応を窺うようにアヌスに舌を這わせ始めた。
 もっと反応のいい場所を探るためだろう。
 覗きこむように男の舌がクレバスをなぞるたびに、男は思わず目を閉じた。
 夢精にも似たドライオーガズムだ。
 男の舌が軽やかにクレバスをなぞるたびに濡れたヴァギナを彷彿させる。
 三杯目のワイルドターキーを男は味わうように飲み干した。
 貪りたいほどの欲情を強く駆り立てられるようだ、男は荒ぐ息遣いを大きく吐き出した。
 この先のビジョンが気になる、
 送りつけてきた男の存在がなによりも気になった。
 これほどの女をどう選んだのか、嫉妬さえも覚える。
 刻々と映り出される映像が男の意識を焼きつけてやまない。
 男の舌がクレバスから離れるなり、仕上げにかかるつもりなのだろう。
 微かな拒みを残したまま、ぐったりと横たわった女の腕を引き上げるなり、上着を引き裂いていった。
 丸裸に近い女の出来上がりだ。
 痛いほどに尖った乳房の尖りが女の欲情を物語っている。
 微かな腹痛が女の腹部を小刻みに揺らしてもいた。
 これからの代償を求めるように女の舌を男が絡みあげようとしている。
 女は解放を求めるように男の求めに素直だ。
 見せつけるような舌使いが妙に艶めかしい。
 荒ぐ舌使いが止むことはない、
 粘りつくような舌使いが女をさらに欲情へと駆り立てようとしている。
 なにも知らない女らしい。
 これからが本番だ、
 男は再生時間を見た、無常にも女の目前に置かれたのは並々と注ぐことができる大きなボールだ。

 うっすらと男は笑った、
 怯える顔つきと身体が裏腹だ。
 並々と注がれた希釈なしの原液を注ぐ男の心理が手に取るようだ。
 甚振るように試したくもなるだろう。
 膨張ポンプが大きく膨らむなり、エネバルーンから大量のグリセリンが送りこまれるたびに、直腸が大きな喘ぎを漏らすようだ。
 波打つように女の顔が揺れる、まるで全身を躍動させるかのようだ。
 希釈なしでは激震さえも覚えるだろう。
 生き生きとした活魚のようだ、
 のたうち回る女の顔つきをさらに引き出したくなるのがサディズムと言うものだ。
 恍惚としたまでの男の顔がドライオーガズムを迎えようとしている。
 射精ばかりのセックスになにがあると言う、男は笑った、映りだされるビジョンを前に浮遊感に苛まれそうだ。

 男は荒々しく梱包を解いた、
 送られてきた女を掴みあげるなり、大画面を見せた。
 犯されていく自分を見てどう思う、
 雁字搦めの梱包いじょうの丁重さを施された緊縛が最高だ。
 塞がれた口が悲鳴をあげた、
 大きく嵩を広げたペニスの挿入を乾いた肉襞が強く拒んだまま、深く飲み込まされていった。
 見知らぬ男たちに替わるがわる犯される気分はどうだ。
 叩きつけるよな肉声が響く、
 背後から鋭利な刃物でも加えこんだ気分だろう。
 映像のなかの叫び声が、くぐもった声となって男の耳に届く。
 最高のシチュエーションだ。
 男は映像をコマ送りにすると、見比べるように女の顔を覗いた。
 吐き出させるまでに、そうとうな時間を掛けそうだ。
 男は映像にあわせるように激しく腰を突き上げた。
 痛みに呻く女の声が男をさらに高みへと引き上げ、吐き出し、吐き上げた。
 映像のなかの女が吐き出し終わるまでに、男はすべてを吐き出しきった。
 映像はまだ終わっていない、
 男はコマ送りの映像のなかで送りつけた男にコールを鳴らす。
「来いよ」
 受話器の向こうで、ほくそ笑む男がいる、
 送りつけた生贄がこれからの明日を決めるだろう。

 男は映像を標準に戻すなり、女を床に叩きつけた。
 続きが気になる。
 痛みに狂乱した女が映像のなかで羞恥すべてを吐きあげようとしては阻まれ続けてもいる。
 吹き上げたエノマを差し込んだ指が強いストッパーと化していた。
 徐々に、のめり込んでいく指の太さにさえ気づかない。
 男は四杯目のワイルドターキーを一気に飲み干した、
 ラストは今からだ。
 受話器の向こう側が今に繋がった。
 男の到着とともに女の顔に焦りだけがある。
 新たな住人を迎えての朝日をもう女が見る日はないだろう。

 男たちは強く握手を交し合った。


<完>