第二話


 邪魔が入らない事を確信したのか、彼女を絡め取った触手はさらなる行動に出る。

「あっ……!」

 腕を捕らえた触手が両の腕を身体に寄せ、

「んあぁっ……」

 乳房を掬い上げていた触手がぐるりと巻き付いて両胸の間に更に深い谷間を作り出す。
 そこへ胸元へ向かって伸びた一際太い触手が突き込まれた。ビキニの両胸をつなぐ紐の下に潜るように滑り込んだ触手はそのまま張り詰めた胸肉の間を上下する。
 胸を寄せる様な姿勢を取らされてた上に触手で圧迫されて、これ以上ないほどに弾力を増した肉の隙間を自ら分泌した粘液を潤滑油にしてスムーズに往復する触手。

「いいな、あれ」
「パイズリかよ……」

 いやがうえにも人間同士の性行為におけるそれを連想させる動きに羨望の眼差しを送る観衆。
 目線を下に向ければ触手を締め上げる自らの両胸の谷間、顔を起こせばそこに注がれる視線、どちらを正視することができずに青い瞳が泳ぐ。
 ちゅくちゅくちゅくちゅく……
 リズミカルに濡れた音を立てて谷間を擦られているうちに、乳肉の裡に熱い物が生まれてきた。擦り付けられた際の摩擦熱とは違う、もっと深い所から沸いた熱。それを意識しまいと自分の胸元から目を離せば再び突き刺さる視線を意識させられる。
 その熱に触れると触手に寄せられてこれ以上無いほどに張っているはずの胸肉が更に張り詰めていき、さらに重みを増したような錯覚を覚える。そして乳房の中に留まりきらない熱は吹き零れるようにして……

 あ、やだ……固くなってる……

 胸の先端を押し上げた。

 柔肉をたっぷりと詰め込まれピンと張った濃紺の薄布を更に突き上げる突起。泳ぐ視線がそれを目ざとく見つけた何人かの男の好色な笑みを捉えてしまう。気付かれただろうか、気付いた者は他の者にそれを知らせるだろうか。不安に怯える間にも芽吹いた蕾は硬さと大きさを増して行く。
 乳首が尖りきったあたりを見計らって左右から胸を寄せ上げていた触手が先端で軽く突付く、それだけで意識を集中させられてより敏感になっていた乳首に痺れが走り

「ふわあぁっ!」

 レイチェルの唇を割り、喘ぎ声を上げさせる。流暢な日本語を話し、それ以上に歯切れのいい英語を話す才媛が上げる甘い声。初見の漁村の人間はおろか、同行したゼミの人間にすら聞かせたことの無い声が洞穴に響く。

「あ……や、だ……んんっ」

 自らの声に恥じ入り俯いて口を噤むレイチェル。最早水着では隠し切れないほどに勃起した乳頭、そこを触られた事、そして快楽の声を上げてしまった事、全てが恥ずかしく、観衆の視線から逃れようと目を閉じて顔を伏せる。

「ん……ちゅっ……んっ」

 俯いた顔に向けて胸の間の触手が伸び上がり、固く結ばれた唇に触れた。驚いて顔を背けようとしても本来両胸に挟まれるはずの人間の陰茎ではありえない柔軟な動きでそれを追う。目一杯顔を背ける事で得た数センチの距離を難なく詰めて再び先端が触れ、口紅を引くようになぞる。

「うぅっ……むぅんっ……」

 形の良い眉をひそめ、唇を引き結んだ顔も彼女の美貌を損ねるに至らない、むしろ見る者の欲望を掻き立てずにおかない表情だ。

「しゃぶらせる気か……」
「パイズリだけじゃなくてフェラもかよ」

 伸び上がった触手の狙いをすぐさま察した男達の間に羨望と期待が広がる。
 レイチェルの血色のいい薄ピンクの唇が粘液を塗りつけられ、艶を増していく。胸の間から伸びた触手は無理に押し開こうとせず、むしろ閉じ合わされた唇の感触を楽しむように軽く触れている。
 軽いキスを繰り返すように唇を突付くたび、触手がくねり、乳房がたわむ。顔を背ければ頬、上を向けば喉を撫でて嫌悪感を煽り、再び正面を向くようにコントロールし、あくまで本命の唇には軽く触れるのみ。
 手を縛る触手と縄を軋ませるだけで付き付けられた触手を払う事もできず、身体をよじり顔を背けるだけの抵抗。進退窮まった彼女が顎を引いたその時。

「ふぅ……くぅっ」

 身体を締め付けていただけの触手が再び胸に触れた。突き出た先端を勢いよく払われ思わず甘い声を漏らしたその瞬間

「むぅっ……ふぅう……」

 開いた唇を押し割り、触手が口内に捻りこまれる。

「んふぅ……」

 そのまま触手がうねり、口腔をなぞる。嫌悪感からそれを押し出そうとすると再び乳首を撥ねられ力を奪われる。触手が動くたび息苦しさからか鼻に掛かった吐息が漏れる。

「おお、咥えおった」
「す、すげぇ顔してるな……」

 口を大きく開いて太い触手を咥え込むレイチェル、目一杯引き伸ばされた唇が触手を包み、前後するたびに擦られて湿った音を立て、唾液と粘液の混じった物が顎を伝う。

 一際太い触手に口内を蹂躙されるレイチェル。息苦しさ故か顔にほんのりと赤みが差し、伏せられた瞳が潤む。触手がリズミカルに前後する度に鼻にかかった喘ぐような声が聞こえる。
 突かれるたびに口に広がるのは粘液の味。触手が舌に触れるたび独特の味――海水から塩気を抜いたような独特の磯の香りが満ちる。それはねっとりと口腔にまとわりつき、鼻で息を継ぐたびに香りを印象付ける。
 触手は単純な前後運動に留まらず、巧みな変化をつけて口腔を蹂躙する。引く時には捲り上げるようにしてより広い部位の感触を味わう。または舌の表面をなぞり、積極的に絡みつけようとする。歯ブラシのように歯の付け根を擦る。頬の内側を撫でる。上顎の裏を突付く。触手が動きを変えるたびに立てる水音が僅かに変わり、漏れる息もトーンを変える。
 仰け反った喉がこくん、と鳴った。触手の粘液と触手を咥える事で分泌された唾液とが混ざり合った物が口内を満たし、息苦しさから思わず飲み込んでしまう。

「く、ん……ちゅっ……んぷぅ……」

 あぁ、だめ、なんだか……変になりそう……

 口を塞がれた息苦しさからか、口内を舐め回される刺激故か、触手を抵抗無く咥えている自分に気付く、舌を絡め取るように蠢く先端は唇を貪るのみならず、舌を差し込むディープキスを連想させる。
 いや、弾力に富んだ肉質と滑る粘液がもたらす快楽は、故郷のハイスクール時代に経験した数回のキスをはるかに上回っていた。

 口の中、ぐちゃぐちゃで……気持ちよくて……すご……

 強張っていた表情も緩み、大きな瞳が潤んで目尻が力なく下がる。すっかり抵抗する気力を奪われたレイチェルはまるで自ら男根に奉仕するかのように従順に身を任せている。

「えらく旨そうに吸うのぅ」
「レイチェル……あんなに咥え込んで……」

 口を嬲られるうちに、唾液が溜まる前に呑み込んだ方が楽と気付いた彼女は本能的に触手に吸い付き、唾液と共に粘液を喉に送り込んでいく。

 ちゅっ……ちゅうぅっ……んちゅっちゅぱっ……

 呼吸を確保するための本能的な行動も、しかし呆けた表情で濡れた音を響かせて行うことで、本来以上に淫らな印象を与える。
 彼女が動きに逆らうことなく自らを受け入れる事に満足したのか、触手はより大胆に動きだす。大きくストロークを取り、捻りを咥え、スピードを増し、より激しく口内を擦りたてる。
 再び苦しげに喘ぐ彼女に構わず、変化を繰り返した後、最終的に下唇と舌を小刻みに擦りながらその動きを更に早め……

「んふうっ!んぐっ……けほっけほっ……はぁっ……」

 触手の先端が爆ぜるように跳ね、今まで表面に纏い付かせていた粘液をさらに濃く濁らせたものをレイチェルの口に吐き出した。
 堪らずむせ返り、白濁した粘液を吐き出すレイチェル。一部は思わず飲み込んでしまったが、飲み込めなかった分を咳き込んで吐き出してしまう。吐き出したそれが着乱れたパーカーや水着、露になった素肌、膝まで下ろされたショートパンツにかかり、生地に染み込み、肌を伝い落ちていく。さらに残りが唇をぬめ光らせ、糸を引いてしたたり落ちる。

「おおっ」
「出したっ!?」
「飲んだのか……大丈夫なのかあれ……?」

 白濁する粘液にまみれ、ぜえぜえと喘ぐレイチェル。俯いた頬に髪を結わえた後れ毛が張り付き、濡れ光ってるのが見える。涙に滲む視界の向こうで男達はどんな顔で私を見ているのだろう。あれが何を連想させるか、解らないレイチェルではない。故に呼吸を妨げられた疲労感以上に羞恥と屈辱に打ちのめされ、荒い息を吐きながら石柱に縛りつけられた身体をうな垂れさせた。

 飲んじゃった……私、あれを口の中に出されて……

 白濁した粘液を飲み下した喉奥には一際濃い磯臭さが纏わりついている。塩気自体は感じないものの、海水を飲み込んでしまったときの様に喉が熱く焼けるような感触。いや、それ以外にも口から溢れて零れ落ちた所にも浴びた部位が火照っていくような熱と、むず痒さを感じる。

「ほぉ、充分に飲んだようだの」

 年かさの男が彼女の様子を見やって言った。

「い、今の口の中に出した……その、あれですか?あれは一体……?」
「神酒だよ、祭りには付き物だろう?」
 冗談ともつかぬ回答に曖昧に頷く学生。
「ほれ、今にまわって来るぞ」

 ぎしぎしと縄が軋む。レイチェルは自分が無意識に身体を揺らしている事にその音で気付いた。

 なんか、ぼぅ……ってして……お酒飲んだみたいに……だめ、しっかりしなく、ちゃ……

「あ……んふぅ」

 口淫の余韻が収まらないのか荒い息を付きながら身体を揺らすレイチェル。年かさの男はそんな彼女を見て、自らの言葉の内容を確信して満足げに眺める。

「これはなぁ、強いぞ」


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