■第七話


「さて、帰るか」
男がそう言ってカメラを鞄にしまう。

やっと終った・・・安堵の気持ちでいっぱいになる。しかし
「それは付けたままでいろよ」
ローターを指差して言った。
こんな物を付けたまま・・・でも、そんなことよりも早く帰りたかった。帰って忘れたかった。、
「あ、服! あと携帯と生徒手帳と私の鞄も」
「おう、家に着いたら返してやるよ」
「な・・・こんな格好じゃ外歩けません!」
「そうか? じゃあしょうがないな」

今度は何をされるのかと身構えたら、男は自分のコートを脱いで渡しに差し出した。
「これ貸してやるよ」
「あ・・・はい」
もっと無茶苦茶なことを想像していたので少し拍子抜けした。
「あと、これ位は返してやるか」
靴とソックスを返された。
男物のコートなので裾が長く、私の足首くらいまである。
靴とソックスを履けば、袖が少し余っている以外は見た目普通の格好である。

でもコートの中は裸のまま。しかも、
「このコート、ボタンが・・・」
前を閉めるボタンが全て取れていた。
「ああ、とれちまったんだ。気にするな」
全部が偶然とれてそのままなんてありえない。第一、朝は付いていた気がする。
私に着せるのを見越してとったんだろう。

文句を言っても事態が好転するとは思えないので(「嫌なら脱げ」とか言われる気がする)黙って着る。
私は裸に靴とソックスだけ履いてコートを羽織り、アソコにはローターが入っていると言う変態のような格好になった。

「じゃあ帰るか」
二人でトイレを出たとき、偶然近くに50歳くらいのおばさんが歩いていた。
おばさんは私たちの事を見ると眉を寄せ、早足で歩いて行った。
若い男女が一緒に公園のトイレの個室に・・・一体どう思われたんだろう。


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