第二章


 爽やかな風が吹き抜ける森の中で、乃瀬奈はゆっくりと目を覚ました。 「ううーん、ここは・・・?」  乃瀬奈は、ゆっくりと身を起こし、ふと自分の姿に気付く。 「やだぁ、私、裸じゃない・・・・。そうだ、あの時、服が吹き飛んだまんまなんだ・・・。みんなは・・・?」  乃瀬奈は、裸の胸を隠しながら不安げにあたりを見渡す。  すると、森の奥の方から誰かが歩いてくるような、がさがさという音が聞こえてくる。  そして、乃瀬奈の前に、一人の少女が現れた。  その少女は、乃瀬奈と同じ年頃で、漆黒の髪を肩までの長さで揃えた、おしとやかな印象の美少女であった。  しかし、乃瀬奈と同じく、服は全く身につけておらず、真っ白な肌に、小振りな乳房や、まだ肌の色とあまり  変わらぬ乳首、丸く形の良いお尻と、つるつるの割れ目を、木々の間から差し込む日差しに照らされている。  そして、その少女の首には、真っ赤な首輪が巻かれていた。  少女は、乃瀬奈が目を覚ましているのを見て、嬉しそうに駆け寄ってくる。 「乃瀬奈さん、目が覚めたんですね。」  少女は、乃瀬奈の隣りに座ると、木の葉を上手に使った器を差し出す。 「近くの泉から汲んできました。乃瀬奈さん、どうぞ。」  乃瀬奈は、突然現れた全裸の少女に、戸惑いながらも器を受け取り、口を付ける。 「ごく、ごく・・・、うわぁ・・・、おいしい・・・。生き返るみたい、ありがとう。えーっと、あなたは・・・?」  冷たい水を飲み、乃瀬奈はほっとして尋ねる。 「はい、あの、乃瀬奈さんに助けていただいた、犬のシロです。」  乃瀬奈の尋ねに少女は微笑んで答える。 「え?シロちゃん?だって、あなた、普通の女の子じゃない・・・。」  乃瀬奈は少女の身体を見回す。  少女は恥ずかしそうに頬を赤らめ、そっと胸に手を当てて隠す。 「あ、あのう、私の名前は、白雪と言います。元々この森で暮らしていたんですが、ある日、この世界に現れた  魔王に捕まってしまい、犬の姿にされて、乃瀬奈さん達のいた世界に放り出されてしまったんです。」  少女の言葉に乃瀬奈は驚く。 「え?魔王?どういうこと?詳しく教えて?」  少女・・・白雪は頷いてゆっくりと話し出す。 「はい、この世界は、乃瀬奈さん達が童話として知っている世界なんです。私たちは、それぞれの世界で楽しく  暮らしていたんですが、ある日、恐ろしい魔王が現れて、全ての世界をごちゃ混ぜにしてしまったんです。  その混乱に乗じて、魔王は次々と童話の世界を侵略していきました。魔王は不思議な力を使って、男の人を  みんな石に変えてしまい、女の人を、とても恥ずかしい目に遭わせるんです。私は、この森の奥で静かに  暮らしていたのですが、ある日、私の元に一人の女性が現れ、私に告げたんです。  私にはこの世界を元通りにする力がある、やがて、私の元に七人の少女が集い、魔王を追い払うであろう、と。  それをどこから知ったのか、魔王に知られてしまい、私はなすすべもなく魔王にとらわれてしまいました。  魔王の城で、とても恥ずかしい目に遭わされて・・・、力が使えないように、この呪いの首輪をされて  しまったんです・・・。」  白雪は、その時のことを思い出して、顔を真っ赤に染め、悲しそうに首輪に手をやる。  乃瀬奈は、驚きを隠せない表情で静かに聞いている。 「そして、魔王は私を犬の姿に変え、乃瀬奈さんの世界に放り出したんです。私は、何日もさまよい、もう  駄目かと思ったところを乃瀬奈さんに助けられたんです。その節はありがとうございました。」  白雪は深々と乃瀬奈に頭を下げる。 「やだ、そんな、当たり前のことをしただけよ。」  乃瀬奈は慌てて白雪の頭を上げさせる。 「乃瀬奈さんにはとても感謝しています。そして、もう一つお願いがあるんです。先ほどの予言に、私の元に  七人の少女が集うとありましたよね。これって、乃瀬奈さん達のことなんじゃないかと思うんです。」  白雪の言葉に乃瀬奈は少し考える。 「うーんと、私に、バクムネ、高ピーに、才女ちゃん・・・、ねえ、4人しかいないよ。静雄君は男だし、  ミセえーもんは間違っても少女じゃないだろうし・・・。あと3人足りないよ。」  乃瀬奈は、白雪に尋ねる。 「はい、でも、乃瀬奈さん達の存在は、偶然とは考えられないんです。とりあえず、この世界を回ってみれば、  残りの3人や、私の呪いを解く方法が見つかる気がするんです。乃瀬奈さん、私と一緒に来ていただけませんか?」  白雪は乃瀬奈に頭を下げて頼み込む。 「うん、いいよ。私で良ければ、白雪ちゃんの力になるよ。どっちにしろみんなのことを捜さないといけないし、  それに、なんだかおもしろそう。」  乃瀬奈は、思いがけない冒険に目を輝かせる。 「ありがとう、乃瀬奈さん。でも、気を付けて下さい。魔王はとても強い力を持っています。決して油断しないで  下さい。」  白雪がそう言うと、乃瀬奈も神妙に頷く。 「うん、わかった。でも、恥ずかしい目って、白雪ちゃん、一体どんな事されたの?」  乃瀬奈が尋ねると、白雪は真っ赤になる。 「え?あの、それは・・・、とても口じゃ言えません・・・。」  真っ赤になって俯いてしまう白雪。 「あ、ごめん、変なこと聞いて。じゃあ、白雪ちゃん、早速みんなを探しに行こう。でも、その前に、何か着る  もの無いかな。このままだと・・・、あれだと思うんだけど・・・。」  乃瀬奈と白雪は改めて自分の姿を思い出し、顔を赤くする。 「あ、そうですね・・・。この奥に、私が住んでいた家があります。魔王にすっかり壊されてしまいましたが、  何か残ってるかも知れません。行ってみましょう。」  二人は手を繋ぎ、裸の胸をぷるぷる揺らしながら森の奥へ入っていく。  そこには、めちゃくちゃに壊された丸太の家があった。 「うわぁ・・・、ひどいことするなあ。かわいそう、白雪ちゃん。」  乃瀬奈があまりの惨状に目を潤ませて白雪を見る。 「大丈夫です。家はまた造れますから・・・。それより、何か身につけられる物を探さないと・・・。」  二人は、残骸を引っかき回して、何か無いか探す。  すると、白雪が一切れの白い布を見つける。 「あ、乃瀬奈さん、これはどうですか?」  乃瀬奈は白雪の元に歩み寄る。 「うーん、二人分には足りないんじゃない?」  首を傾げる乃瀬奈に、白雪は微笑む。 「ほら、こうすれば何とかなると思いますよ。」  白雪はそう言って、布を裂き始める。  そして、出来上がった布きれを白雪は乃瀬奈に渡す。 「これを胸に巻いて、あと、下の方はこうすれば、とりあえず隠せると思います。」  白雪は、布きれを胸にぐるぐると巻き付け、下は、腰にぐるっと布を巻き、スカートのような状態にする。 「白雪ちゃん頭良い。乃瀬奈もやろうっと。」  乃瀬奈も、白雪と同じようにして布きれを身につける。 「ねえ、白雪ちゃん、でも、これ、かなり頼りないよね。布が薄いから、私も白雪ちゃんも、乳首透けちゃってるし、  下も、すごく短いから、ちょっと風が吹けば、お尻もアソコも丸見えになりそう・・・。」  乃瀬奈は顔を赤くしながら言う。  乃瀬奈の言うとおり、その布はとても薄く、二人の胸は、どうにか隠れてはいたが、その頂点の乳首の形や、  かすかな桜色までうっすら透けていた。  また、下の方も、股下ギリギリの長さしか無く、二人のお尻は半ば見えかかっていて、少しからだをそらせば、  つるつるの割れ目かすぐに顔を覗かせてしまう状態であった。 「でも、何も無いよりはましです。とりあえず、村に行って何か見つけましょう。」  二人は、裾を気にしながら、森の外に向かって歩き出す。 「ねえ、白雪ちゃん。白雪ちゃんと七人の少女って、なんか、童話の白雪姫みたいだね・・・って、そのまま  じゃん。白雪ちゃんって、白雪姫なの?」  乃瀬奈は、自分で言っておいて驚き、白雪に尋ねる。 「ええ、乃瀬奈さんの世界ではそのように言われているんです。でも、姫なんて、恥ずかしいです。白雪で  良いです。」  白雪は、恥ずかしそうに微笑む。 「そっかー、なんか感激だなあ。白雪姫に会えるなんて。じゃあ、もっといろんな童話の主人公に会えるかも  知れないんだ。なんか楽しくなって来ちゃった。ねえ、今向かっている村ってどんなとこなの?」   乃瀬奈は楽しそうに尋ねる。 「はい、その村は、小さな村なんですが、とても強い剣士様がいて、魔王の侵略から村を守っているんです。  桃太郎様と言うんですが、ご存じですか?」  白雪の言葉に、乃瀬奈は目を輝かせる。 「ええ!桃太郎って、あの鬼退治の桃太郎?すごぉい!乃瀬奈感激!ねえ、かっこいいの?」  キラキラした目で乃瀬奈は白雪に尋ねる。 「え?あ、すみません、私、お会いしたことはないんです。でも、噂によると、とても凛々しいお方だと聞いています。」  白雪がそう言うと、乃瀬奈は期待に胸を膨らませる。 「うわあ、楽しみだなあ。桃太郎に会えるなんて、滅多にないことだよ。どんな人なんだろう。やっぱり、  犬とか猿、雉を連れてるのかな。」  二人は、この世界について話しながら、桃太郎の村に向かって歩いていく。    予告!  いよいよ羞恥の世界に足を踏み入れた乃瀬奈!  果たして、桃太郎はどんな人物なのか!  また、他の仲間達の運命は!    次回、大長編ミセえーもん 乃瀬奈の大魔境 第三章  お楽しみに!


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