第一章


 穏やかな日差しの中で、ミセえーもんは、バナナを食べながら、のんびりとしていた。  そこに、ばたばたと足音を立てて、乃瀬奈が素っ裸で駆け込んでくる。 「ふえええん、ミセえーもん。助けてぇ。」  ミセえーもんは、しょうがないという風に立ち上がり、乃瀬奈に尋ねる。 「乃瀬奈ちゃん、今日はどうしたの?」  乃瀬奈は、裸を隠そうともせず、プルンプルンとかわいい乳房を揺らしながら、ミセえーもんに話し 始める。 「あのね、バクムネ達がね、夏休みだからって、ミセえーもんに頼んでどこかへ魔境探検に行かせろって 言うの。私ね、無理だっていったんだけど、たまには真面目なアイテムも出させろって、服を取り上げら れたの。ミセえーもん、何とかしてぇ。」  乃瀬奈は、泣きながらミセえーもんにしがみつく。 「そんなこと言われても、どこかの猫型ロボットじゃあるまいし、出来る訳無いだろ。あきらめろって、 どうせ、探検する場所なんて、この地球上には残ってないって。探すだけ無駄さ。」  ミセえーもんがそう言うのも構わず、乃瀬奈はミセえーもんにしがみつく。  ミセえーもんは、たまらず逃げだし、机の下に潜り込む。  すると、ミセえーもんが不意に大きな声を上げる。 「あああ!これはぁっ!この前バナナを買おうとして無くした100円玉!何だ、こんなところにあった んだ。良かった良かった。」  安心するミセえーもんに、乃瀬奈がすかさず言う。 「ほら、ミセえーもん。探せばまだあるかも知れないじゃない。ね、お願い、なんとかしてよぉ。」  ミセえーもんは、困ったように考え込む。 「でも、そんな道具あったかなぁ・・・。」  ミセえーもんは、ごそごそとバケツの中を探る。 「うーん、これなら大丈夫かなぁ・・・、鯉町ミニ衛星〜♪」  ミセえーもんは、小さな丸い物体を取り出す。 「なあに、それ。」  乃瀬奈は、不思議そうに尋ねる。 「うん、この衛星はね、世界中どこでも好きなところを自由に写せるんだ。これで、探せば何とかなる と思うよ。」  ミセえーもんは、そう言って衛星を空に飛ばす。  受信機を取り出し、二人は次々と印刷されてくる写真を見る。 「あら、これは・・・?」  乃瀬奈が一つの写真を指差す。 「お?これは、静雄君だね。お風呂に入っているみたいだ。」  ミセえーもんは、全く興味がなさそうに次の写真を見ている。  しかし、乃瀬奈は、静雄の裸をうっとりと見つめる。 (・・・、静雄君の裸・・・、逞しい・・・。やだ・・・、おちんちんが写ってる・・・、いやぁん、 大きい・・・、乃瀬奈、変な気分になってきちゃう・・・。ああぁん。)  乃瀬奈は、素っ裸のまま、静雄の写真を見てオナニーを始める。 「ああぁっ、はあっ、静雄くぅん・・・。」  その時、乃瀬奈のママが、下から叫んだ。 「乃瀬奈ちゃん、お使い行って来て。」  乃瀬奈は、いやいやながらも返事をする。 「ええ!今、いいところだったのに・・・、はーい、今行くー。」  乃瀬奈は、そのまま行こうとして、自分の姿に気付き、慌てて服を着ると、下に降りていく。  ミセえーもんは、ぼーっと写真を見ている。  お使いからの帰り道、乃瀬奈がスキップして歩いていると、いつもの空き地の隅に、赤い首輪を つけた小さな白い犬がいるのを見つけた。  乃瀬奈は、その犬のことが気になり、近くに寄ってみる。  その犬は、乃瀬奈のことを、物言いたげにじっと見つめている。 「ごめんね・・・、そんな目で見られても、家じゃ飼えないの・・・。ママが、動物嫌いだから・・・。 ごめんねっ・・・。」  乃瀬奈は、走り去ろうとするが、その犬の切なげな泣き声に、思わず、お使い袋から、ソーセージを 一本取りだし、犬の前に置いた。  その犬は、よほどお腹がすいていたのか、すごい勢いで食べ始める。  乃瀬奈は、犬の頭を軽く撫でると、家に帰っていった。  その後を、トテトテと犬がついてくるのも気付かずに・・・。 「ただいまー、ミセえーもん。って、きゃぁっ。」  乃瀬奈が部屋の戸を開けた途端、膨大な量の写真が崩れ落ちてくる。 「いやぁん、もう!なにこれぇ・・・。」  それらの写真は、色々な角度から写された女の子の裸や、トイレの風景ばかり写っていた。  ミセえーもんは、涼しい顔をして、次々と送られてくる写真を物色しては、気に入った女の子の写真 をまとめていた。  乃瀬奈は、そんなミセえーもんの頭をぽかりと叩く。 「もう!ミセえーもん!ちゃんと探してよぉ!」  ミセえーもんは、さも面倒臭そうに、女の子の写真をひとまとめにして、頭のバケツに放り込む。  二人は、再び、魔境探しに没頭する。  そのとき、乃瀬奈は、いつの間にか隣りに、あの犬がちょこんと座っているのに気付く。 「あれぇ?ついて来ちゃったの?ミセえーもん、どうしよう、餌をあげたらついて来ちゃった。ママに 見つかったら、怒られちゃう。何か良いものない?」  するとミセえーもんは、バケツの中を探る。 「壁掛けラブホテル〜♪」  ミセえーもんは、そのポスターのような物を壁に貼る。  乃瀬奈が、興味津々で、その絵の扉を開けてみると、中は、とても淫靡な雰囲気の漂う、ラブホテルの 部屋になっている。 「ミセえーもん・・・、もうちょっと普通のってないの?」  乃瀬奈が、あきれて尋ねる。 「え?それが一番普通だと思うけど・・・。他には、壁掛け診察室とか、壁掛け調教部屋とか、あ、あと、 壁掛けストリップ劇場ってのも・・・。」 「もういいわ。ほら、ワンちゃん、入りなさい。ここがあなたのお部屋よ。ちょっといやらしいけど・・・。」  乃瀬奈は、ミセえーもんの言葉を遮り、犬を絵の部屋の中に入れる。  しばらく、絵の中に首を突っ込んで、犬の様子を見ていた乃瀬奈だが、そこで衝撃的な光景を目にする。 「うそぉ・・・、あの犬、シャワー浴びてる・・・。しかも、器用にタオルを身体に巻いて出てきた・・・。 まるで普通の女の子みたい・・・。」  乃瀬奈は、信じられないように部屋に戻り、また写真を見始める。  その時、犬がまた部屋から出てきて、乃瀬奈の隣りに座る。 「あら、綺麗になったわね。そうだ、君に名前つけてあげないと。えーと・・・、君はおちんちんが 無いからメスだね。ミセえーもん、何か良い名前無い?」  乃瀬奈は、犬を持ち上げて性別を確かめ、ミセえーもんに尋ねる。  不思議なことに、その犬は、乃瀬奈に見られたとき、少し赤くなったように見える。  ミセえーもんは、興味がなさそうに返事をする。 「え?うーん、ま○子はどう?あと、アナルルとか・・・。」 「聞いた私が馬鹿だったわ・・・。そうね、君は、シロちゃん。とても綺麗な白だから、シロちゃんに しよう。ね、シロちゃん。」  ミセえーもんの破廉恥な名前に、乃瀬奈はあきれて、自分で名前を付ける。  その犬、シロも、嬉しそうにわんわんと鳴く。  その時、シロが、一つの写真をくわえる。 「なあに、どうしたの?それは食べ物じゃないよ・・・。あら、ミセえーもん、これ、何かしら?」  乃瀬奈は、シロのくわえていた写真に、何か奇妙な壺のような物が写っているのを見つける。 「どれどれ・・・、あ、これは!鯉町博士が、シンデレラの世界にはいるのに使った、童話入り込み器 じゃないか。こんなところにあったのか・・・。」  ミセえーもんは、やっと見つけたという風に呟く。 「なに?その童話入り込み器って?」  乃瀬奈は不思議そうに尋ねる。 「うん、この装置を使うと、童話の中に入って、その世界を体験できるんだ。」  ミセえーもんがそう言うと、乃瀬奈は目を輝かせる。 「うわぁ、おもしろそう!魔境探しより、そっちの方がいいわ!ね、その装置どこにあるの?」  乃瀬奈は目を輝かせて聞いた。 「うん、乃瀬奈ちゃんの学校の裏山だよ。」  乃瀬奈は、その言葉を聞くやいなや部屋を飛び出す。 「わかった、バクムネ達を呼んでくる!」  乃瀬奈は、ばたばた足音を立てて、出かけていった。  空き地に行くと、バクムネこと、胸野牛美と、高ピーこと、嬢堂高代が乃瀬奈を待っていた。 「乃瀬奈!魔境は見つかったの?見つからなかったら、また、裸にして引きずり回すよ!」  牛美が、大きな胸を揺らして叫ぶ。  高代が、その隣でうんうんと頷いている。 「あのね、バクムネ。実はね・・・・・・・・・。」  乃瀬奈は、童話入り込み器の事を二人に話す。 「ふぅん、でも、その道具、大丈夫なのか?ミセえーもんを作った奴が作った道具なんだろう?」  牛美が、不安そうに尋ねる。 「大丈夫なんじゃない?」  乃瀬奈はお気楽に頷く。 「でしたら、私、お家からいっぱい本を持ってきますわ。どうせなら、沢山の童話を体験してみた方が おもしろいと思いますの。」  高代が、相変わらずのお嬢様言葉で言う。 「そうだな、高代。じゃあ、裏山で待ち合わせだ!」  三人は、それぞれ準備のため一旦別れる。  そして、一時間後、裏山には、乃瀬奈とシロ、牛美と高代、そして、乃瀬奈に無理矢理引っ張って こられた静雄と、乃瀬奈を見つけてついてきた笛子、渋々といった表情をしたミセえーもんの6人と、 一匹(5人と2匹?)が壺の前に集合していた。 「ミセえーもん、どうやればいいの?」  乃瀬奈が尋ねる。 「うんとね、壺の中に、童話の本を入れればいいよ。」  それを聞いた牛美が、高代が持ってきた本を全部壺の中に投げ入れる。 「えい!どうせなら、一気に入れた方がおもしろいんじゃない?」  その時、壺が赤く光り出し、ぶるぶると震え出す。 「ミ、ミセえーもん、どうなってるの?」  乃瀬奈が不安そうに尋ねる。 「ああ!入れすぎだよ。やばい!暴走してる!」  ミセえーもんが、珍しく焦って叫ぶ。  その瞬間、壺から衝撃波が出る。  その衝撃波に当たった瞬間、乃瀬奈、牛美、高代、笛子の4人の服がはじけ飛ぶ。 「え?きゃぁっ!」 「うわぁっ!どうして?」 「あらぁ、いやですわぁ。」 「いやぁん、恥ずかしいです・・・。」  4人は、いきなりのことに、恥ずかしそうに身体を隠す。  ミセえーもんとシロは、服がないので平気な顔をしていて、静雄は、なぜか服がはじけ飛ぶことは なかったが、いきなり露わになった4人の裸に、間髪入れずに卒倒してしまう。  そして、ゆっくりと乃瀬奈達は壺の中に吸い込まれていく。 「きゃああああああああ!」  そして、再び静寂が訪れる。  あとには、4人の服が散乱しているだけであった。  予告!  楽しい童話巡りのはずが、暴走した鯉町博士の道具のため  乃瀬奈達は素っ裸で、いくつもの童話が重なった世界に放り込まれてしまった!  そこは、悪の魔王コイマッチが支配する羞恥の世界であった!  羞恥にまみれる乃瀬奈達!  刺激が強すぎて気絶しっぱなしの静雄!  なにげに楽しそうなミセえーもん!    次回も、大長編ミセえーもん 乃瀬奈の大魔境  お楽しみに! 


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