第十一話「紅き花のラビアース」


 私たちは、最後の乙女の眠っている場所へと向かっていた。カルヴァナの襲撃からもうずい ぶん経つのに、あれからマラードの妨害は全然なかった。 「わたしたちに、おそれをなしたとか?」  と、水ちゃんは笑って言う。 「ま、それは冗談だけどね。アソコットに聞いた話だと、二人以外に直接の部下はいないらし いから、きっと慎重になっているのよ」 「確かに、キングが軽率に動くわけにも参りませんからね」  二人の言う通りかも知れない。でも、なんか気になるんだよね。カルヴァナも、マラードに は気を付けろって言ってたし。 「でも、三体の乙女を復活させれば、わたしたちに分があるんでしょう? だったら楽勝よ。 あとは、望が最後の乙女を甦らせればいいだけだもの」  水ちゃん、それ何気にプレッシャーなんだけど。 「そうですわね。がんばって下さいね、望さん」  もう、空ちゃんまで。なんか、だんだん緊張してきちゃったよ。 「それにしても、熱いわね」  水ちゃんは、汗だくになっている。 「当然ですわ。ここは火山地帯のようですから。ほら、あちらこちらで湯気が上がっておりま すわ」  そう言う空ちゃんも、だいぶまいっているみたい。 「そうかな? 確かにけっこう暑いけど、耐えられない程じゃないよ」  私、昔から暑いのには強いんだよね。 「本当、望は元気ねぇ」 「暑いからといって、冷房の効いた部屋にばかり篭っているのも考えものですわね」  二人とも、ちょっとふらふらしている。大丈夫かな? (ようこそ、伝説の騎士さん)  えっ? 今の声、いったい。 (あなたをずっと待ってたわ。さあ、ここからはあなた一人で来るのよ)  この声、もしかしてこれが二人が言ってた・・・。 「どうしたの、望?」 「もしかして、例の、ですか?」 「うん、そうみたい」  これが乙女の導きの声なんだ。だったら、ここからは私一人で行かなきゃいけない。 「じゃ、わたしたちはここまでね」 「そうですわね。これ以上、先へ進むのはしんどいですし」 「それじゃ、わたしたちはここで待っているから」 「ファイトですわ、望さん」  二人が手を振ってくれる。なんか、冷たいなぁ。二人が行った時、私はあんなに心配してたの に・・・。 「じゃ、行ってくる」  すでに休憩モードに入っている二人を残して、私は先へと進んだ。  一歩一歩進むたびに、どんどん緊張感が増してくる。もう、二人があんなこと言うから変に 意識してしまう。二人とも、いったいどんなことしたんだろう?  しばらく歩くと、横穴があった。ここに入れってことなのかな? 私は慎重に、そこへと入 って行く。中はさらに暑かった。なんか、むっとしている。そのはずだった。下を見ると、な んと溶岩が流れていたんだ。あんな所に落ちたらひとたまりもない。注意しなきゃ。さらに行 くと、先に赤い花が咲いているのが見えた。こんな所にも花が咲いているんだ。私はよく見よ うと、その花に近づいた。  よく見ると、それは不思議な花だった。ぱっと見は蘭の花みたいなんだけど、ちょっと違う。 でも、なんか見覚えある形だ。それと、外の花びらはゆらゆらと揺らめいていて、まるで炎の ようだった。ううん、炎のようじゃなくて、炎で出来ていたんだ。 『珍しいでしょう? 火炎花っていうのよ』 「えっ」  突然の声に振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。赤い髪に赤い瞳で、耳はとがっ ている。胸は小さくて(人の事は言えないけど・・・)、あそこの毛も生えてない。女性っていう より、女の子って感じだった。  でも、一番目を惹いたのは、背中に生えている羽だった。形は蝶々の羽みたいなんだけど、 絵本で見かけるものみたいに透き通ったのじゃなくて、赤く揺らめいていた。そう、この花の 花びらみたいに炎で出来ていたんだ。そうか、この人この花の精なんだ。 『初めまして。羞恥騎士さん』  親しげに語りかけてくる少女。この声、外で聞こえたのと同じだ。それじゃ、この人が、 「伝説の、乙女なの?」 『そう。わたしの名前はラビアース。あなたをずっと待ってたわ』 「えっと、私は伝説の乙女を甦らせるために、今まで旅して来てて・・・」 『名前、なんていうの?』  ラビアースが尋ねてくる。そうだ、それが最初だった。なんか、緊張して上手く話せない。 「私は、望。花火 望」 『望、か。素敵な名前ね』 「あ、ありがとう・・・」  もう、私はいったい何をやっているんだろう。 『で、ここで何をするか、わかっているでしょう?』 「えっ、全然知らないよ。水ちゃんも、空ちゃんも何も言わなかったから」 『ふぅん、なるほどね。さては、メロウとセイレーンの仕業か。二人して口止めしてたってわ けね。全く、堅いんだから』  軽い口調で話すラビアース。伝説の乙女なんていうから、もっと神々しいと思っていたんだ けど、そうでもないみたい。 『ここではね、試練を受けてもらうことになっているの。わたしが力を貸す相手に相応しいか どうか、確かめるためにね』 「じゃ、水ちゃんや、空ちゃんも?」 『そう。この試験を受けたはずよ』  そうだったんだ。そして、二人ともそれを克服したんだ。私に、それができるんだろうか。 『で、望にもそれを受けてもらうわけなんだけど・・・』  ラビアースが体を絡めてくる。背中の羽が触れそうになって、私は手を引っ込めようとした んだけど、その必要はなかった。 「熱く・・・、ない」  炎の羽は、触れても全然熱さを感じなかった。 『それは、望がきれいな心を持っているからよ。邪な者が触れたら、下のマグマよりも熱く感 じるんだから』 「そ、そうなんだ・・・」  私は、下を流れる溶岩を見てぞっとする。 『でもね。その前に、もっと望の事が知りたいの。望の全て、見せてちょうだい』 「え、えっ?」  ラビアースは、私のブラを外してしまう。こ、これも試練なの? 『ほら、そんなに緊張しないで』  さらに、下も脱がされてしまう。私は、あっという間に裸にされてしまった。ラビアースは、 私の体をいろんな角度から見ている。 『それじゃ、望のはなも見せて』 「私の、鼻?」  鼻なんか見てどうするんだろう。私は、鼻を突き出す。 『あはは、違う違う。その鼻じゃなくて、女の子の花のことよ。脚の間にある、望の大切な処』 「それって、私の・・・」 『そう、女の子だけが持っている大切な花。すべての男を、ううん女性さえも惹きつける、魅 惑の花よ』  それで、ふと思い出した。あの火炎花の花、なんか見たことあると思ったら、女の子のあそ この形をしてたんだ 『ね、見せて! 望のア・ソ・コ』 「えっ! ちょっと・・・」 私の答えを待たずに、ラビアースは私を押し倒して、脚を広げてしまった。 『あは。見えた、望のお花』  ラビアースは、私の秘密の場所を簡単にまる出しにしてしまう。相手が伝説の乙女だから、 強く抵抗もできない。 『でも、花びら閉じちゃってる。中はどうなってるのかな?』  ラビアースは、さらにびらびらも広げてしまう。 『わぁ。望って、ここもきれいなのね。肌もきれいでなめらかだし、望の体って本当に素敵ね』 「そんなことないよ。私、胸小さいし、それに・・・」  幼児体型だし・・・。 『ふぅん、なるほどね』  ラビアースは、なんか意外そうな顔をする。 『望の試練、決まったわ。そろそろ始めるわよ。準備、いいわね?』 「うん」  もちろん、大丈夫だった。そのために、ここに来たんだから。 『それじゃ、目を閉じて。いくわよ!』  ラビアースの声が遠くなっていく。私の体が、宙に浮いたように感じられた。 「えっ? ここは」  目を開けると、周りの景色が一転していた。今居る場所は、どこかの控え室みたいだった。 ラビアースの力で飛ばされたみたい。 「ほら、なにやってるの? みんなもうとっくに行っちゃったわよ。あなたも早く!」  いきなり現れた女の人が私を急かす。 「えっ? 行くってどこに?」 「なに寝ぼけた事言ってるの。はい、これ。さ、早く早く」  そう言われて、8という数字の書いてあるプレートみたいなものを渡される。これなんだろ うと思う間もなく、私はその女性に手を引かれて連れ出されてしまった。  連れて来られた所は、ステージみたいな場所。 「ほら、それ腰に付けて。私についてきて」  わけもわからないままに、私はステージに引き出される。私がそこに出ると、いきなり拍手 で迎えられた。見ると、他にも女の人が何人もいる。その女の人は、列の一番端っこに立った。 「ほら、早く私の横に並んで!」  私が言われるままに横に行くと、それを待っていたように大きな声が聞こえた。 「ようやく、全ての参加者が到着致しました。それではそろそろ始めたいと思います」 「えっ、始めるってなにを?」  おそらく、魔法を使って大きくしてあると思うその声を聞いて、私は疑問の声を上げる。 「はあ? なに言ってるのよ。ミスコンに決まってるでしょう?」 「み、ミスコンって」  よく見れば、他の女の人はみんなきれいな人ばかりだ。私、コンテストの会場に紛れ込んじ ゃったんだ。でも、なんでいきなり。もしかして、これが試練? 「それでは、まず水着審査から始めます」  水着審査? そういえば、みんな露出度の高い格好をしていた。胸と腰に布を巻きつけてい たり、ビキニみたいな形に切った布を付けていたり、葉っぱみたいなもので体を覆っていたり する。ちょっと私たちの世界の水着とは違うけど、確かにそれっぽい格好だった。 「それでは、1番の方から、前に出て来て下さい」  列の逆の端にいた人が、前に出て行く。細長い葉っぱを上手くビキニのような形に巻いてい る。なんか、野性的な感じがしてかっこよかった。  前に出て、まずはくるっと回ってみせる。そして、前にいる審査員みたいな人に言われた通 りに、正面をゆっくり見せて、そして後ろも見せてから戻ってきた。  二人目、三人目と同じように続く。そして、私の隣に立っている人が前へと出て行く。 「えっ、うそ」  私は思わず声を洩らしてしまった。その人、胸と腰に布を巻きつけているんだけど、前に出 ようとするとき、下が少し捲くれてお尻が見えたんだ。そう、その下に何も履いていなかった んだ。下半身には、タオルみたいな小さな布を巻いているだけ。あんなのじゃ、すぐに捲れ上 がっちゃう。  そして、私の心配はすぐに現実となった。前に出て、一回転した時、布が思いっきり捲れ上 がってしまった。お尻だけじゃなく、ヘアも見えている。そして、再び正面を向こうに向けて 立つ。しかも、脚をけっこう広げた形で立っていた。ステージは少し高い所にあるから、審査 員や他の人は下から見上げていることになる。あんな角度だと、あそこだって見えちゃてるよ。  でも、その人は全然気にしている様子もなく、正面と、そして後ろからもじっくりと見せる と、何事もなかったように戻ってくる。 「ほら、次あなたよ」  その人は、少しも心乱れた様子もなく、私を促した。  私は緊張しながら前に出る。そこでくるりと回ろうとして、初めて自分の格好に気が付いた。 そうだ。私、今すごく恥ずかしい格好している。この前成長した時に、私の防具は限界まで小 さくなってしまってたんだ。今はただの紐をまとっているのと同じ。布地の大きさは、ここに いる他の誰のよりも小さかった。 「くるりと回ってみて」  審査員は、私が何をするのかわからないんだと勘違いして、言葉を掛けてくる。 「あ、はい」  私は、急いで一回転した。そして、再び正面を見ている人たちに向ける。 「もう少し、脚開いて立って」 「えっ?」 「他のみなさんのように」  そうか、開くことになっていたんだ。だからさっきの人も。でも、脚開いたら股の部分が見 えちゃう。たぶん、すごく食い込んじゃっているから・・・。 「どうしました?」  審査員が急かしてくる。もう、わかったよ。私はやけくそになって脚を広げた。 「ほお、すごい食い込みですね」 「本当。大陰唇がまる見えですよ」 「さっきのもろ見えもよかったですが、こういうのもなかなか」 「それにしても、ヘア薄いですねぇ」 「胸もまだ小さいですしね」 「でも、これはまた・・・」  胸のこと、気にしてるのにわざわざ言わなくたって・・・。だいたい、こんな所私には不釣合 いだよ。周りの人、みんなきれいだし。  そして、私は後ろを向いてほとんどまる見えのお尻を見せる。やはり小振りだとか言われて、 私は元の場所に戻った。 「それでは、今度はヌードになってもらいましょうか」 「えっ?」  私はその言葉に驚いた声を出してしまう。でも、他の女の人たちは当然のように脱ぎ始めた。 「ほら、8番の方も早く」  急かされるけど、私は脱げない。だって、人前で裸になるなんて。あの村の時もすごく恥ず かしかったのに、今度はあの時とは比べ物にならないくらいの人がいるんだから。 「どうしたの。裸にならないの?」  隣の7番の人が話し掛けてくる。 「えっ、だってみんなの前で裸になんてなれないよ」 「ふぅん。じゃ、あなたはここで降参ってわけ。いいんじゃない? わたしもライバルが減っ て嬉しいわ」  うっ、なんか嫌な言い方。別にそんな風に言わなくたって。でも、それで思い出した。これ は、私の試練なんだ。水ちゃん、空ちゃんもきっとこんな試練を受けたに違いない。だから、 私がここであきらめるわけにはいかないんだ。  私は防具を脱ぎ始める。ゆっくりだと恥ずかしくて手が止まってしまいそうだから、一気に 服を剥ぎ取った。 「それじゃ、そこに並んで」  係員に指示される。今度も一人ずつ前に出るのかと思ったけど違った。私たちは4人ずつス テージの左右に別れて立たされたんだ。 「なによ、その格好は。もっとサービスしないといい点つかないわよ。客席投票が審査の1番 大きなポイントなんだから」 「そんな、私・・・」 「勝負をあきらめたっていうの?」  もう、いちいちトゲのある言い方するんだから。私は、腕を下ろし脚を開いて全部が見えち ゃうような格好をとった。それで絶対に動かないように指示されるとお客さんがステージに上 がってきたんだ。 「えっ、えっ?」 「こら、喋らない」  後ろから叱責される。そんなこと言ったって。でも、他の人は別に動揺していないみたい。 ステージに上がったお客さんは、私たちの体を眺めまわし始めた。  お客さんたちは、私の体を値踏みするように見ている。もちろん、胸やあそこも。その体の 隅々にまで入ってくるような視線も恥ずかしかったけど、何よりも他の人と比べられているの がつらかった。周りはみんなきれいな人ばかり。そんな人たちと比べられているのが、子供っ ぽい私の体を強調しているみたいで恥ずかしかった。  そういえば、部活の作品を展示する時も、こんな感じだったっけ。私、不器用だから、いつ も上手く生けられなくて。先輩たちのものと比べられるのが嫌だった。今も同じ。どうして、 私っていつもこうなんだろう。 「へえ。こんな子も出てるんだ」  いつの間にか、私の前に若い人のグループが集まってきていた。 「まだ、胸薄いよな」 「あそこの毛だって、あんまり生えてないわよ」  みんな好き勝手なことを言っている。私は、逃げ出しそうになるのを必死に耐えていた。 「ほら、見てこの割れ目」 「うわぁ、まだぴちっとしてる」 「なんか、かわいいよね」 「これ、開いちゃいけないのかな」 「ダメよ、触っちゃ。決まりでしょ?」 「頼んでみたらどうだ?」 「そうね。ねえ、花びら開いてくれる?」  急に言われて、私はとまどう。そんな、ここでいきなりあそこを開けなんて。 「そのくらい、サービスしてくれよ」 「そうそう、みんな自慢気に見せてるぜ」 「ねっ、ほら早く」  みんな、興味深げに私を見ている。私のこと、平気でそういうことが出来る女の子だって思 ってるんだ。でも、仕方ないかも。こうして、自分の裸を見世物にしているんだから・・・。 「じゃ、じゃあ、開くよ」  もう、しょうがないんだ。私はあきらめてあそこのひだに指を掛けた。 「早く、早く!」  興味津々に見ている女の人、下心丸出しの男の人。私はそんな中で、あそこを開いていく。 「うわっ、まっピンク」 「きれい・・・」 「女の子のここって、こんな綺麗なんだ」 「なんかの花みたい」  みんな、私のそこを食い入るように見ている。私の大切な所を、全部見られているんだ・・・。 「でも、すごく濡れてるよな」 「それが、また綺麗なのよ」 「でも、見られただけで濡らすってのも」 「だから、こんなとこ出てるんだろ?」  こんな風に人前に晒すのって何回目だろう? ここに来る前は、誰にも見せたことなかった のに。この世界には、私のそこの構造を知っている人が、もう何十人もいるんだ・・・。  その若いグループがいった後も、いろんな人が私の裸を見ていった。結局、私はそのほとん どの人にあそこを開いて見せた。みんな、私の恥ずかしい部分をじっくりと見て、いろいろ感 想を残していく。それが、あそこの隅まで見られているってことを実感させて、かえって私の 羞恥心を高めていった。ヌード審査が終わった時、私は体中を真っ赤にしていた。  観客が席に帰り、私たちも再び元の列を作る。そして、場内に声が響き渡った。 「それでは、これから集計に入ります。参加者のみなさんは、そのままでお待ち下さい」  ふう、これで終わりなんだ。もっと恥ずかしいことさせられたり、歌とか歌わされたりした らどうしようかと思った。  観客たちが、さっきの評価を元に投票をしていく。審査員たちの評価も決まったみたいだ。 そして、結果発表が始まった。


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