第6話「フロリダから来た凄い奴」


 前回までのあらすじ。突如侵略を開始した恥竜帝国。その侵略兵器であるエロザウルスに対抗するため、  棹止博士によって集められた三人の少女達はイットマシンに乗り込み、合体してスーパーロボット、  イッターロボになって戦っていた。  敵の最初の侵攻を退けたものの、敵の猛将、キャプテン=ナメラに敗北し、メインパイロットである茜は、  暴走した触手に犯されそうになり、精神的なダメージを受けてしまう。  恥竜帝国の降伏勧告と、総攻撃までの時間は残り後わずか、果たしてイッターは再び戦えるのか!?  6・「フロリダから来た凄い奴」  「・・・そうか。ありがとう」  棹止はそう言って受話器を置いた。 「茜君の診察結果が出た。幸い身体には異常は無い・・・処女膜も無事らしい、が」 「ふっ、精神的なダメージがひどいんだね?」  葵が壁にもたれて腕組みしたお得意のスタイルを崩さずに言う。 「うむ・・・人一倍羞恥心の強い子だからな。ショックが大きかったらしい」 「ねえ、おっちゃん。茜ちゃん、もうイットマシンには乗らないのかなぁ?」  触手に散々もてあそばれてお漏らしまでしてしまったにもかかわらず、あっけらかんとした表情で緑は尋ねていた。 「うむ・・・あの子の羞恥心あってこそのイッター1なのだが・・・、最強の武器、イッタービームの発射が  できるのは茜君しかいないのだ」 「イッタービーム?」 「そう。強力な羞恥力フィールドでイッター線を収束して放つ必殺の攻撃だ。命中すればどんなに強固な装甲を  持った敵でも一撃で倒せる!」 「でも、茜ちゃんが乗らないとダメなんだよね」  緑がぽつりと言う。重々しい沈黙が落ちた。 「ハーイ、エブリバディ、何をそんなにブルーモード入ってるですカ?ミーが来たからにはエブリシングOKネ」  いきなり聞こえた元気な女性の声に全員の視線が入り口ドアの方を向く。  そこに立っていたのはグラマーな身体をアメリカ国旗を模した衣装に包んだ金髪女性だった。着ているのは  星条旗柄の皮製のベストとホットパンツ、膝までのカウボーイブーツで、おまけに白いテンガロンハットまで  かぶっている。思いっきりアメリカンなグラマー美女だった。プレイボーイ辺りのグラビアに出てきそうな  スタイルとルックスだった。 「日米安保に従い、アメリカから来ました。マイアミジェニーのパイロット、ジェニー=ローズです」  そう言って空軍式の敬礼をしてみせる。 「マイアミジェニー?もしかして、カープタウン社で造られたスーパーロボットか!?」 棹止の問いにジェニーは頷く。 「イエース!最強のセクシーバトルロボットでーす!ミーに任せてリトルガール達はスシでも摘んで待ってるよろし」 「・・・なんで最後だけいきなりチャイニーズなまりなのかな?」  緑がポツリと突っ込みを入れる。 「ジェニー君、いい所に来てくれた。実は今、イッターチームは出撃できん状況なのだ。恥竜帝国の総攻撃まで間が  無いというのに・・・頼む、力を貸してくれ!」  棹止の言葉に大きく頷くと。 「OK!その為にミーは来たあるよ!エロチックリザードなんかミー一人でOKね!」  そう言ってジェニーは見事な巨乳をブルンとゆらす。  それを見た棹止の鼻の下が三センチほど伸びていた。 「ふん、態度も胸もLLサイズだね・・・」  壁にもたれて腕組みしていた葵が言う。 「イエース!実力もナンバーワンね!」  そう言って更に胸をブルン!  今度は棹止の鼻から一筋の鼻血が流れ出す。 「おっちゃん、溜まってるの?」  緑がやんわりと凄いツッコミを入れた。 「OH!それはいけないアルね!ミーが今夜お相手してあげてもいいアルよ!」  ジェニーがそう言って身体をダイナミックにくねらせながら色っぽい流し目を棹止にくれてやる。とてつもなく  エロチックな動きだった。  棹止は鼻から盛大に血を噴き出しながら股間を押えて前のめりになっていた。 「・・・フン、スケベ親父・・・さて、わたしは茜の様子でも見てこようかな」  きつい一言を棹止に投げかけた葵は、医務室で鎮静剤を打たれて眠っている茜の下を訪れていた。緑も一緒である。 「茜・・・」  葵の言葉に、茜はうっすらと目を開き。 「御免ね、もう、私は戦えないよ・・・」  そう言ってぽろぽろと涙を流しながら泣き始める。 「茜ちゃん・・・」  緑もどう声をかけていいのかわからなかった。  イッターで戦うという事は、二重の意味で危険が伴う。  一つ目は、触手化してパイロットを襲って来るイッターマシン内壁に犯される危険。二つ目は敵との戦いで撃破  される危険である。  今まで命の危険にさらされた事の無い少女達が体験するには、あまりにもハードな状況だった。 「茜・・・アメリカから援軍が来たよ。やたらと色っぽい姉ちゃんがパイロットのスーパーロボットだって・・・  もし、あの姉ちゃんが本当に強ければ、私達は戦わなくていいかも・・・」  葵の言葉に茜は少し表情を和らげる。 「ホント?もう、あのいやらしいマシンに乗らなくてもいいの?」 「うん・・・マイアミジェニーが勝てればね・・・でも、万一、マイアミジェニーが負けるような事があったら、  その時には私達が戦わなきゃいけない。でもね、はっきり言って今の茜にはイットマシンに乗る資格は無いよ!」  葵の厳しい一言に、茜の表情が曇る。 「・・・そうだよね。わたしはもう、触手を見ただけで震え上がっちゃう。だから・・・もう、ダメだね」 「ダメじゃないっ!!」  緑がいきなり叫んでいた。横に居た葵が、ビクッ!として一メートルぐらい跳び下がる程の剣幕だった。 「茜ちゃんは、あたし達のリーダーだよ!一回負けたぐらいでリタイヤするほど弱い子じゃないよ!」 「緑ちゃん・・・わたしは負けるのが怖いんじゃなくって、いやらしい事をされるのが怖いの・・・凄く怖いのっ!」  茜は布団をかぶって丸くなりながら叫んでいた。 「甘ったれないでっ!!」  今度は葵が叫んで布団を引き剥がしていた。 「あんな金属の触手に犯されそうになったからどうだって言うの!?私はね!・・・私は兄貴の友達に集団でレイプ  された事が有るんだよ!」  衝撃の告白に、茜と緑は硬直していた。何も言えない。 「でも、私は立ち直った!もう二度とあんな目に遭いたくないから、護身術を習った。白木沢何たらって言う長ったら  しい名前の古武術をね・・・茜、あんたはまだ何にも負けてない!触手が怖かったら、それを克服すればいい!  来な、護身術の初歩を教えてやるよ」 葵はそう言って強引に茜を訓練場に連れて行った。 「・・・葵ちゃん、ここで何をするの?」  訓練室のコントロールデスクの前に座った緑がインターホンで訓練機内の葵に尋ねる。  葵はブルーのジャージの上下というスタイルだった。  羞恥力フィールドを発生させるヘルメットはかぶっていない。 「触手の捌き方を教えてあげる。緑、最大パワーで触手を起動させて!」 「えっ、あ・・・はいっ!」  訓練室のイッター線放射器は、イットマシンに登載されている物の三分の一ぐらいの出力しか持っていない。  しかし、それでも訓練機の内壁を触手の群れに変える事は可能だった。  壁から伸びだした数十本の触手が葵に殺到する。 「まず、触手は先端を叩き落すようにする。真ん中を叩くと逆に絡み取られるからね」  葵はそう言いながら、迫り来る触手を次々に打ち落としていく。  次に、わざと左腕に触手を巻きつかせていた。 「巻きつかれたら慌てない事。こいつはただの金属だ。動きが単調だから、くねくねするタイミングにあわせて  腕を振って、抜くっ!」  あっさりと触手がすっぽ抜けていた。 「葵ちゃん、スゴ〜イ!」  緑が無邪気に感心する。 「次は茜、あんたがやるんだよ」 「えっ!・・・わ、わたし・・・出来ないっ!出来ないよぉ!」 「甘えるなって言ったでしょ!?あんたはイッターの要なんだよ。あんたなら出来る。女子サッカー部の主将  なんでしょ!?後輩達がトカゲどもに犯されてもいいの?」 「・・・嫌、それも嫌!でも、その為に何でわたしが触手に犯されなきゃいけないの!」「・・・緑!あんたが  先にやって見せて」 「え〜っ、あたしは脇役じゃないの?」 「さっさとやるっ!」  葵の剣幕に押され、緑は訓練機に入っていた。 「・・・先を叩く、先を叩く、絡みつかれたらくねくねにタイミングを合わせてぶんぶんする・・・」  ぶつぶつとつぶやいているうちに触手が壁から伸びてくる。 「先を・・・叩くっ!叩く!叩くっ!叩くっ!」  葵に比べればぎこちないながらも、緑は迫ってくる触手を全て叩き落していた。  しかし、その胴を触手が巻いていた。 「ひゃぁ!巻きつかれたら、くねくねに合わせて・・・ぶんぶんするっ!」  緑はシンクロの回転の要領で全身を錐もみ状態に回転させ、触手をもぎ離す。 「やったぁ!出来たっ!出来たよ葵ちゃん!」  無邪気に飛び上がって喜ぶ緑を笑顔で見つめていた葵が。 「さあ、あんたの番だよ、リーダー!」  表情を引き締めて言う。 「・・・もし、わたしが襲われそうになったら・・・」 「ああ。ちゃんと機械を止めるよ」  茜は明らかにビクビクしながら訓練機の中に立っていた。  触手が壁から湧き出してきた瞬間にはその表情が泣きそうに歪む。 「くっ!や、やるしかないんだっ!わたしはまだ、負けてないっ!」  目の前に迫った触手を力任せに叩き落す。  手が痛かったが、奇妙な爽快感があった。 「茜、大振りしないで!隙を突かれるよ!」  葵の声がスピーカーから響く。 「・・・そう。隙を見せないっ!」  また叩き落す。 「怖がってたら、付け込まれるっ!」  触手が吹き飛ぶ。 「守ってばかりじゃ、決して勝てないっ!」  足元でくねっていた触手を思い切り蹴飛ばしていた。  吹き飛んだ触手に巻き込まれて、数本の触手が同時に吹っ飛んでいた。 「わたしは・・・攻めるっ!」  更に足が閃き、左右に迫っていた触手がまとめて弾き飛ばされる。 「すっ、すっ、すごぉぉぉぉぉぉぉいっ!茜ちゃん、凄いっ、凄いよっ!」 「ふっ、さすがはリーダー、守りから攻めに転じて触手を一掃か・・・負けたよ、やっぱりあんたがリーダーだ」  葵の声に、茜は最高の笑顔を浮かべてVサインを出して見せた。  その時、警報が鳴り響く。 「来たっ!奴らの総攻撃が始まったよ!」  緑が叫ぶ。 「行こう!葵、緑、イッターチーム、出動よ!」 「了解っ!」  三人は格納庫へ向かって走り始めた。  我が物顔で海岸に上陸してきたのは、合計六機のエロザウルスだった。AI搭載の量産型である。  その前に立ちはだかるのは、星条旗柄のコスチュームにナイスバディを包んだアメリカのスーパーロボット、  マイアミジェニー。 「ハーイ、エロチックリザード。マイアミジェニーのショーにようこそ。天国に送ってあげるあるよ!」  どういう素材で出来ているのか、豊かな胸をプルンと震わせてそう宣言すると、指をパチンと鳴らす。  その瞬間、空から落ちてきた銀色に輝く金属パイプがジェニーの横の地面に突き立っていた。パイプの高さは  マイアミジェニーの倍ぐらいで、天辺にスピーカーと、DJブース型のコクピットがあった。 「ミーの秘密兵器、ダンシングポール。ヘイ、ポール!ミュージック、スタート!」 「OK姉さん!クールに決めてぶっ飛ばそうぜっ!」  天辺にあるコクピットで鼻や耳にピアスを付けた美少年がそう叫び、コンソールを操作する。  ユーロビート系の音楽がスピーカーから流れ始めた。  同時にエロザウルスが殺到してくる。  エロザウルスの突進をかわしたマイアミジェニーは、横に立っているポールを掴んでくるっと一回転し、遠心力  で加速した膝蹴りを二匹目のエロザウルスにぶち込んでいた。  AI搭載の頭部を粉砕されたエロザウルスの身体が崩れ落ちる。  その機体を横に蹴り転がしたマイアミジェニーが残りの敵に向けて指で招きながら。 「カモーン」  と、ポールにすがりつくようにした見事なボディをくねらせて見せる。  更に音楽に合わせて星条旗の柄のブラのストラップを半ばまでずらし、豊かな胸の半ばまでをはみ出させる。  残り五体のエロザウルスが一斉に殺到していた。 「ハァン、今日のお客さんはワイルドあるね」  そう言いながらマイアミジェニーはブラを取り去って先頭のエロザウルスのアイカメラに被せていた。  視界をさえぎられたエロザウルスの動きが鈍る。 「更にサービス。バストプレッシャー!」  エロザウルスの頭部が豊かな胸の谷間に挟み込まれる。その状態で、胸が更に膨張していた。間に挟まれた  エロザウルスの頭部が空き缶のように潰れるほどの圧力だった。  前方から二機、後方から一機のエロザウルスが突進してくる。 「ママのミルクよ、ニプルスプラッシュ!」  マイアミジェニーの巨乳の先端から白い液体が凄まじい勢いで噴出していた。  正面から突進してきたエロザウルスは、その白い液体のシャワーでびしょ濡れになる。 トロリとした粘性の  ある液体はその機体表面をくまなく覆っていた。 「ブレイク!」  マイアミジェニーが指をパチンと鳴らすと、白い液体が凄まじい爆発を起こしていた。 白い液体は強力な  志向性液体炸薬だった。  衝撃で内部を粉砕された二機のエロザウルスは、マイアミジェニーの足元にひざまずくような恰好で動かなくなる。 「フィニッシュ!」  背後から突っ込んできたエロザウルスの背中に飛び乗ったマイアミジェニーは、太股でその胴を強烈に締め  上げながら、エロザウルスの頭部にキスしていた。 「デス・キッス」  真っ赤なキスマークが灼熱し、装甲を貫いてAIを焼き尽くす。  そこで音楽が終わった。  マイアミジェニーは優雅に一礼。 「ざっとこんなもんあるよ!エロチックリザードもチキンばっかりね!もっとイカス奴は居ないあるか?」 「なかなかやるではないか!」  その声に頭上を振り仰いだマイアミジェニーは、彼女の真上に滞空している、コブラのような頭部を持った  エロザウルスの姿を捉えていた。  キャプテンナメラの操る、エロザウルス、ベロがそこに居た。かつてイッターを倒した恐るべき敵である。 「SHIT!いつの間に!?」 「おまえの戦い方はなかなか面白い、しかし自分に酔い過ぎだな。目の前の敵を倒した瞬間に隙だらけになる」 「ユーがボスあるね?ミーが退治してあげるあるよ!」 「残念だが、おまえの相手は私ではない」  キャプテンナメラのその声と同時に、目の前の海中から更に十機以上のエロザウルスが出現していた。  更に、空からも二十機以上の非行型エロザウルスが迫って来ている。 「・・・ジーザス!」 「言った筈だ、総攻撃だと。さあ、さっきのダンスを踊って見せろ!それがおまえのラストダンスになる!」  キャプテンナメラは勝ち誇った声で宣言していた。  続く


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