間違えアイドル智香菜 読切


 −1− 間違えアイドル。 「ごめんなさーい。間違えましたぁぁー」回りの風景がやけに古くさかっ た事で何かに気づいた少女が大声で謝ってきた。  今、少女が居る場所は時代劇を撮っているスタジオの中であり、その少 女は必死にスタッフに謝っていた。 「ごめんなさい。私、違うスタジオに来てしまって..」 「えっ?君エキストラでなかったの?」 「違います..一応、アイドルの方をやってまして..」 「そういわれると、CMで良く見かけたような」  すでにくのいち姿にまでなっているこの少女。どうやら着替え終わって から、自分のいる場所の間違いに気づいたらしく、相当鈍い子かも知れな い。  この後で慌てて少女のマネージャがやってきてスタッフに間違えた事を 謝罪し、何とかこの場は収まった。  そして、マネージャがカンカンになって怒ってきた。 「君は今日がトークって知ってるだろ?なんでそんな格好になるまで気づ かないんだ?」 「いや、こういう格好のトークもあるのかな?って」と苦笑いをして謝る 少女だった。 「とりあえず、もう35回目だよ。いい加減間違えないできてくれよ」 「はあーい。ごめんなさい。次は気をつけまーす」  そう、この少女はよくスタジオを間違える事で有名な女子高生アイドル、 三須野 智香菜(みすの ちかな)であった。  この間違いが今後、とんでもない羞恥を呼ぶとは思いも知らない智香菜 だった。  −2− 深夜番組。  1週間後.. 「えっと、次の予定は午前2時?・・・・・あれっ?午前って?」  そのメモには確かに「AM2:00 有田Cスタジオ」って書いてあった。 「そっか!収録ものね。今もう午後10時だからこの収録後にいけば大丈 夫ね」 (ここは有田スタジオだし、Cスタは1つしかないから今度は間違えない わね)  実はこの時、智香菜は1つ大きな間違いをしていた。  そう今回は意外にもマネージャーが急ぎの中書いたメモだったためAM とPMを書き間違えてしまったらしい。  その午前2時と言う書き間違いを智香菜は気づかずに、おろかにも収録 後にCスタジオに行ってしまった。  Cスタジオにつくとまだスタジオのセットにスタッフがあわてている様 子であり、女性のADが智香菜に気がつき近づいてきた。 「よかったー。何だーやっぱ来てくれたのね。こなかったらどーしよと心 配だったのよ」 「は・はい。今日は何とか来れました」(わあ。けっこう心配してくれた んだ〜) 「じゃあ、早速準備するからこっち来て」 「はい」  智香菜はスタジオ裏手のあまり人手の無い所まで呼ばれて行った。  そこには2人の女性スタッフが紙と定規を用意して何かを待っている感 じだった。 「ここは男のスタッフがこないから安心してね」 「は・はあ?」 「さて、早速寸法を取りたいのでまず下着姿になって」 「下着姿ですか?・・・?わかりました」(服これから作るのかな?)  智香菜は下着姿になり変な木の台に乗せられ寸法計りが始まった。  だけど、彼女らが真剣に計っているのはどうやら智香菜の体の場所の位 置を計っている感じであった。 「うーん。これじゃここ取ったとたんにだめじゃない?」 「じゃあ、もう少し長くします」 (何だろ?あの紙?何か両側の棒に貼り付ける感じよね?)  智香菜の予想は見事にあたり彼女らは寸法して切った紙を智香菜の両側 の棒に貼り付けていった。  だが、その紙はなぜかいくつかに分断されており、そのうちの2つがど うも智香菜の胸部と腰を丁度隠すぐらいの長さで、智香菜の胸部と腰の前 に張ってきたのであった。 (何かのゲームっぽいね?でも何のゲームだろ?) 「うん。丁度時間ぴったしに完成よ。よかった」ADとスタッフたちが互 いに喜んでいた所にスタジオの本番用のブザーが鳴り響いたのであった。 (あっ?もう本番?あれ?私まだ衣装セットしてないのに?)  智香菜が少しあわてた様子を見せた時ADがにっこりと私に話し掛けて きた。 「大丈夫よ。落ち着いて。まだ出番は先なんだから」 「そうなんですか。よかった」(そうよね。ADさんがいるんだし。)  智香菜はほっと一息ついたが、この時よく考えるべきであった。  そう未だに下着姿で変なセットに立たされているのは何故かを。  −3− 時、すでに遅し  時間が本番より丁度15分ぐらい経ったときぐらいであろうか。  スタッフの1人がやってきて「そろそろゲームのスタンバイお願いしま す」と言ってきた。 「えっ?スタンバイ?でも私?あれ?」智香菜が少しパニックになってる 所にADが「じゃあ、そろそろ下着を脱いでちょうだい。もう出番だから」 とにっこり微笑んで言ってきた。 「あの?下着って?もしかして裸になるって事ですか?」 「そうよ。何?改まって聞いてるのよ。前の打ち合わせでも言ったでしょ? 静子ちゃん」 「静子ちゃん?あっ!しまった..」 「え?何しまったって?今日もしかしてあの日?」 「あ、いえ!ちょっと独り言で」 (あーん。間違えたぁぁぁー!。私また変なスタジオに来たんだ。それも エッチな深夜もの?) 「ちょっと何考えてるの?もうあと3分よ!早く早く!」 「は・はい。すいません」  急にADにせかされた為、智香菜は芸能人の条件反射で素直に下着を脱 いでしまった。 (あ、しまった。いつもの癖で..どーしよ。裸で何するの?)  智香菜の顔が急に真っ赤になった時、ADもそれに気がつき笑顔で言っ てきた。 「大丈夫。心配しないで。あなたの顔も声も放映では一切出ないから」 「・・・・!!それ?本当ですか?」 「ええ。そういう条件で出演した以上、約束は絶対に守るわよ」 「・・・はい。じゃあお願いします」智香菜は何かを悟った様な感じで出 番を承諾したのであった。  と言うより今さら間違いとは言えない状況だった。  仮にここで正体を言えばたちまち大問題となるのは予想できたからだ。  逆にアイドルとしてバレてない今ならごまかす事も出来ると思ったらし い。が、実際の所、頭は恥ずかしさですでにパニックとなっておりいい考 えが浮かばなかったのであった。 「じゃあ急いで両手をロックするので、バンザイをして」 「は・はい」智香菜はすでに諦めて、バンザイをすることになり、その両 手は両端の棒のてっぺんから吊るされている手錠にセットされてしまった。  おそらく、反射的に手で隠されるのを防止するものであるだろう。 「よし。これでOK。じゃあ本番がんばってね」  と両手を固定された智香菜の載った台は、そのままスタジオ真ん中まで 運ばれてしまうことになった。
読切後編
 −4− 剥ぎ取りゲーム  智香菜の目の前には多くのスタッフとカメラがこっちを向いていた。  今、前面に関してはとりあえず紙が全てを隠してはいるが所詮、両棒に ついた紙なので横側や後ろからはばっちりと見えている状態であった。  そう、まだ水着姿も披露してない女子高生アイドルが生まれたまんまで スタジオに出されたのだ。 (あーん。これじゃ横から全てが見えちゃうじゃないの!)  智香菜が恥ずかしさに困惑してる中、このゲームの司会者が現われ、ゲ ーム開始のミュージックが流れてきた。 「さあ今日もヌードショックの時間が始まりました。じゃあ、ゲームの説 明を頼むよ」  横のアシスタントガールがゲームの説明をし始めた。 「時間は60秒。その間に6問の問題を出します。1問につき制限時間は 10秒。時間切れもしくは間違えた場合、あなたの目の前に張られた6枚 の紙が1つ剥がされます。つまり最低2問は正解しないとあなたの大事な 箇所はTVの前に晒されます。また全問不正解となった場合、罰ゲームと してエンディングまでその状態でいてもらう事になります。逆に正解した 場合、始めの1問を10万円としてあとは正解する度に倍々になっていき ます。つまり全問正解だと貴方の手元に320万の現金が入ります」 「という事だね。君も是非正解してどんどんお金を持って帰ってくれよ」 「は・はい」 「おや緊張してるね。まあ素人さんだからね。じゃあ紹介もアシスタント の方で頼むよ」  司会者に言われるとアシスタントガールが智香菜の紹介を始めた。 「彼女は川下 静子。21歳短大生。今日は欲しいグッチのバックが欲し くて来ました。目標は320万だそうです」 「ふーん。短大生か。おっぱいもなかなかだね。へへ」  と司会者は平気で智香菜の横側から覗き込んできた。 「きゃっ!」思わず声を出してしまった智香菜だが、もうどうする事も出 来ない状態だった。 「うーん。可愛いね。でも全問不正解したらオールヌードだから気をつけ てね」 「・・・・・」(そうだわ。2問さえ合えば何とかぎりぎり大丈夫よね。 こう見えても私クイズ系は得意だし。うまくいけば臨時の収入もくる事だし) 「では、そろそろゲームに入ります。静子さん。準備はいいですか?」 「は・はい。お願いします」智香菜の言葉と同時に女性スタッフが片側の 棒に近づいてきた。そう紙はがしの要員として。 「ではヌードショック始めます。問題は短大の経済科に行ってるという事 で高校2年の社会科より経済の問題を出します。では開始します」 (えっ?高校2年の社会科?経済?ちょっと私、社会科苦手だしなんで2 年の?)  そう、ここに実際出てるのは高校1年の普通科の智香菜であり、まして は経済の問題などわかるはずはなかった。  だが非情にも、次々と問題が読み出されていく。  第1問「***の+++はどういう意味?」 「え?何?そんな言葉聞いたことない?」  べりっ。第2問「***の・・・・・」「あの、えっと...」  べりっ。第3問「・・・・の・・・」「あ・あ..えと..」  べりっ。第4問「・・・・の・・・」「あ・あの・・・」 (ああーだめーわからない!!!)  べりっ。第5問「・・・・を始めに行った国は?」 (!!ここはいちかばちか大きい国で!)「アメリカです」  ブブー!べりっ。ぷるんっ。5枚目の剥がされた紙からは智香菜が普段 から自慢にしていたCカップの胸が思い切り揺れながら飛び出してきた。 (あーん。まずい。後がないよー)  最後の問題「・・・・が問題で経済が崩れそうになった国は?」 (ええ?何それ?でも何か答えないと。ここはやっぱこの国で) 「日本!!」  ブブー!「答えは中国です」その最後の言葉と共に最後の1枚が大きな 音を立てて剥がされてしまった。べりりっ。  時間としてはわずか1分たらずの出来事であったが、TVカメラの前に は全てを丸出しとされた智香菜の全裸姿があった。  当然、両手がばんざいの姿で固定されてる為、どこも隠せずにただ全て を晒し続けるしかなかった。  当の智香菜は全身を真っ赤にして羞恥に耐えるしかなく、そんな中「う ーん。残念。まさか久々の全問不正解が出るとは」と司会者が智香菜に寄 って来て言ってきた。 「君には悪いが全問不正解の罰ゲームとして番組の最後までその姿でいて もらうね。まあ、ここはどうせ今モザイクになってるからこれを貼らせて もらうよ」と司会者が、智香菜の恥毛の所に大きいピンクのハートシール を張ってきた。 「じゃあ、早速この子を次のコーナーのセンターにご招待」  智香菜は裸を晒したまま、番組後半のトークコーナーが行われる真ん中 のテーブルの上に股を開かれた状態でセットされてしまった。  −5− 放映終了まで  大股バンザイ姿でセットされたと同時に、これまで前からしか撮らなか ったTVカメラも平然と寄って来て、あちこちの角度から撮り始めてきた。  結局、智香菜は罰ゲームの公約通り、最後まで全裸を晒したままエンデ ィングを迎え、そのエンディングでは女性スタッフ2人が智香菜の体を揺 らし上下に揺れるCカップの胸のアップをバックとしたスタッフロールを 撮られてしまった。  これで全ての撮影がようやく終わり、智香菜の体にはようやくタオルが 巻かれた。  その後は最初に着替えていた場所まで連れていかれ、智香菜のとこに笑 顔満点の女性ADが話しかけてきた。 「よかったわよ。静子ちゃん。これ内緒の出演料ね。今日はかなりの所ま で見せたって事で番組の方も奮発するように言われたから」 「は・はい。ありがとうございます」(何か厚さがけっこうある様な・・・) 「じゃあ、静子ちゃん。タクシーも呼んであるから行き先伝えて帰ってい いわ」 「は・はい。失礼します」  こうして智香菜の羞恥な収録は終わり、智香菜がタクシーの中でいくら もらったかを確認した。 (うわっ。これ・・・えっと簡単に数えても80枚近くあるわ...)  そう、一応かなりのとこまで見せたおかげで100万円の出演料が入っ ていたのだ。 (恥ずかしかったけど..こんなにもらえたんだからいいよね)  智香菜は自分に言い聞かして帰途についた。  後日、例の番組を録画しながらチェックしてみると確かに顔には完全に 黒のモザイクで隠されており声もボイスチェンジャーで完全に変えられて いたので、智香菜を判断する要素は1つもなかった。  だけど、それ以外の箇所は全て出されていた。(あそこはモザイクだけど)  結果として、智香菜にとって凄く恥ずかしいものになった。 「あーーん。私の胸を揺らさないで。うわぁ恥ずかしいよ」  智香菜はもう2度と、こういう間違えをおこさないと誓い、これを自分 の教訓として、収録したビデオを秘密の戸棚に保管することにした。  だが、これで間違い癖が直るわけはなく、今後もその戸棚には新たな教 訓が増えていくのであった。 <完>


「間違えアイドル 智香菜」完