後編「クラブと俺」


あれから1ヶ月..クラスの中がとりあえず平穏のままでいるのが奇跡と 思える。 露出狂宣言をした彼女..アミモは相変わらず、ぶっ飛んだ言葉を出して くるが、その言葉に乗ってくるクラスメイトはすでにいない感じだ。 「つまんないな..ちょっとでいいから胸、揉んでいいよ」「揉めるか!」 「おま●この写メ、おかずとして送って欲しい?」「いりません!」 「もしかしてインポ?」「違う!」 俺は何でこいつとこんな馬鹿な会話を繰り返しているのだろうか.. ふと気付くとクラスの中で、アミモとここまで話せるのは俺しかいなく なっていた。 そのせいで俺と親しくなろうという女子も激減している。まあ、それほど モテる男でもなかったから、気にはしてないがな。 このアミモも遠目から見れば、正直ハイレベルな容姿を持っているから 自慢するにはいいのかも知れないが、完全にこいつと会ってない奴にしか 言う事が出来ないだろう。 こんな可愛い顔をしている癖に、堂々と官能小説顔負けの台詞を言って きやがる。 綺麗な声で卑猥な言葉を聞くことに一時は夢を見た時もあったが、実際 聞いてみると相当疲れてしまうことを学習した。 ぐぅぅ〜きゅるきゅるきゅるぅぅ〜「ああんっ..おま●こが疼くぅぅ〜」 お前はおま●こで弁当、食べる気かって言いたかったが、そこまでつっ 込む気はない。 こいつは何でもかんでも日常会話に卑猥な台詞を入れるのが得意みたいで、 それら全てに答える俺ではないぞ! しかし..こいつを露出狂と言っていいのか?俺はたった1度もこいつの 恥ずかしいとこを見たことがない。 まあ、全然ないと言えば嘘になるのだが、証明が出来ないからはっきり とは言えん。 それは、こいつが授業中に時たま行うことであり、今日も堂々と手を あげて、先生にこう言ってきたのだ。 「先生〜。おしっこが漏れるので、放尿していっていいですか〜」 お前は..どうして、そう卑猥な言葉で言うのが好きなんだ.. そう心の中で思うのは俺だけじゃないはずだ。多数決を取れば大圧勝を 取れる自信があるぞ。 「ああ、早く済ましてこいよ..」「はぁぁ〜いぃ♪」 そう明るく返事したアミモの上の階へ登る足音が教室内にわざと響いて いる。 何で上の階のトイレに行くのかをいつの日でいいから誰かこいつに問い 詰めてくれ。 まあ、その前にもっと聞きたいことが山ほどあるんだがな.. しばらくするとアミモの足音も聞こえなくなり、窓を見ると言葉を失う 光景が目に映る。 窓に映る1本の水らしきものが地面に向けて流れる光景.. 俺に勇気があったら、クラスのみんなとこれについて討論したい! 一番危険な答えは避けるとして、俺はこれについてあえて違う意見を 出してやる。 まずは、誰かが偶然に!本当に偶然に屋上から下の土に向かって水を やっている。 もちろん、下の土に何の種も埋めてはないのだが、それは考えないこと にしよう! 第2として誰かが、またまた偶然にペットボトルの水を捨てている。 屋上で飲みきれなくなった水の捨てどころがなくて、捨ててるのだが 屋上に排水溝があることなんて気にしてはいけないのだ。 第3として、少し危険な答えに近い気もするが..たまたま酔っ払い のおやじが屋上で粗相をしてしまったんだろう。相当無理なもんだとは わかっている。わかっているさ! しかしなぁ〜このジャァァージョボジョボって感じと、その流れている 時間などを考えると一番、思ってはいけない的確な答えが出てしまうん だよぉ〜。 誰でもいいから、この3つの中から答えを選んで欲しい!いや選んでくれ! そんな俺の悩みなど気にしてない張本人が謎の水が終わった後に帰ってくる。 「はぁぁ〜晴天を見上げながらするおしっこは気持ちいいわよぉ〜♪」 そっか..きっと天井に穴が開いたトイレなんだなぁ〜修理した方がいい と思うぞ。 「突き出してするから、下から覗いたら丸見えかもね」 床すれすれに突き出すだよな..そりゃ下の隙間から見えるよな.. 「で、どこでおしっこしたと思う?」「トイレだ!」 「はぁ〜、つまんない!」 こいつはこういう奴なんだ!俺に一体、何を期待してるというんだ。 誰か教えてくれ。 「ところで〜もうすぐ仮入部の季節だよね?」「ああ..」 突然に自分勝手に話を切り替える奴..何で急にクラブの話になるんだ? 「あんたはどっか体験してみた?」「いや..どこも」 「私はいろいろ体験してみたけどいまいちだったわ」「そうなのか..」 そういや、こいつは目ぼしいとこは全て体験入部して、そこにいる先輩 部員たちを驚かせているという噂があったな.. 何せ、運動神経は抜群!頭脳は明晰!手先も器用で容姿端麗と言うのだから、 非の打ち所がない完璧少女と言っても過言ではない。 ただ1つ、このぶっ飛んだ性格だけが最大かつ最悪すぎる欠点だろう。 天は二物を与えずという言葉があるが、たった1つの欠点でここまで他の 全てを台無しにするのはある意味、不幸なような気がするぞ。 「どこの部もエロくないのよね〜」「そんな部があるか!」 「演劇部にはすごい劇があることを期待したんだけど、原作で輪姦シーン などがあってもカットしちゃうのよ。いい加減すぎるわ」 その前に輪姦シーンを忠実にやる演劇部に入る奴はいないと思うんだがな。 「けど、SM部ってあるみたいだよ。SM部♪」「それはスノーモービル部 だ..略すな」 「あっ、そう。同じようなもんね」 どこが同じだと言うんだ..説明してほしい。 「そういや..スノーモービル部は結構、やばい噂があるみたいだな」 「こっそり蝋燭を垂らしてるとか♪」「違う!まあ、火は使ってそうだが」 そう、スノーモービル部は何故か不良の溜まり場となってしまい、そこにいる 男子や女子は普段、近寄りがたい存在の方々らしい。 迂闊にスノーモービル部に入部届けを出しに行った日には中に連れ込まれて、 こいつが好きそうなことをオンパレードでやってくれるみたいだ。 もちろん、そんなことを説明した日にはこいつの事だ。 仮入部届けを持っていって堂々と中に入っていくだろう。確信できる!だから 余計な説明をするつもりもない!以上だ。 「そっか...SM部じゃないのね..せっかく、ほら♪こんな「SM縛り 大全集。貴女でも簡単にできる」本を買ったのになぁ〜」 買うな..お願いだから、その可愛い容姿でそういう本を買わないでくれ.. 大体、ここは健全な高校だぞ!どこの世界にSMをするクラブがあると言う んだ。最近のエロゲーでもここまでの無謀な設定は避けるぐらいだぞ! しかし、この時に俺は気付くべきであった。 こいつが、あっさりと諦めるはずがない奴だとな... 翌朝、俺は目の前に見える光景に何も言う事ができなかった。 いや、周りにいる奴もこの光景について、どうしていいかわからないので あろう。 今、俺は例の危ない噂が絶えないスノーモービル部の前に居る。 もちろん、石橋を叩いて渡り、急がば回れの俺が、こんな部の近くを通る 事は絶対にないのだが、あまりの野次馬の多さを見て、つい足を向けて しまったのだ。 先日も1年の女子を無理やり連れ込んで、いろいろやってしまったスノー モービル部の前にこんなに普通の生徒が集まるのは珍しいことであろう。 とりあえず、要約して言っちゃえば、目の前には亀甲縛りが見える! 他にもあぐら縛り、海老縛り、逆海老縛り・・・さながらSM大全集 公開場と言った淫猥な世界が広がっている。 もちろん、縛られてるのは中に居た男子と女子たちであり、目を背き たくなる男子たちの適当な縛りは部室の中で、いっぱい吊るされてる らしい。 目立つとこに吊るされているのが全裸の女子たちだから、こうやって 人が集まるのであろう。 さながら、これは制裁のつもりなのか? 昔、悪行をした奴らに辱めを与える形で、晒して裁く番組があったよう だが、そんなイメージで捉えていいのだろうか。 まあ、こっちの方が無修正でおま●こ丸出し、バイブでぐりんぐりん〜 だから、俺としては朝から有難いものを見せていただいて感謝したい。 問題はスノーモービル部の連中をSM風にした奴のことを気にしたい ところだが、どっかの女子がたまたま「SM縛り大全集。貴女でも簡単 にできる」本を持っていてスノーモービル部の事をSM部だわぁ〜と 言ってたのは、ただの偶然にしておこう。 そう偶然なんだよ。偶然ってすごいよなぁ〜。 スノーモービル部の近くのゴミ箱に「SM縛り大全集。貴女でも簡単 にできる」って本が捨ててあるのを発見したのも偶然だろう.. あいつがたまたま捨てたんだろうな。余った縄と一緒にな..はははっ ここは朝から素晴らしい至極のものを見せていただいたことだけを思 って、あとは全てを水に流すとしよう。 何度も言うが、くだらないトラブルに巻き込まれたくない平穏な3年間 を過ごしたいのだよ。 目の前にぶっ飛んだ女子が居るけど、あと数日もすれば席替えとなって 俺の夢みたエンジョォォーイな生活が戻ってくるんだよ。嬉しいじゃ ないか。 ...そうだよ。 嬉しいことが来る予定だったんだよ... 数日後の今の俺はあの時の浮かれていた俺に忠告したい!世の中はそう 甘くない! どうして、俺の目の前に竜宮 アミモが座っているのだ。 「何か文句ある?」「いや..何も..」 これはクジで決めた事だろ?回りの奴のちょっとした笑みに何か謀略を 感じてしまう。 細工をしたのか?こんな偶然は夢の中だけにしてほしい。 いや夢なら、アミモと同レベルの容姿を持ち、クラスの人気者で性格も 良い委員長の国龍(こくりゅう)さんと一緒になりたかった。 そんな国龍さんが俺に向けて、くじ引きの結果に申し訳ない顔をして くれた。いや、そのごめんなさいっていう表情だけで救われた気がする。 しかし、次の定期席替えまでどれほどあるんだろ..いや、次に期待する 自体も俺には許されないことなのか! やはり、俺にはアミモから離れられない変な縁になっているかも知れない。 「そういえば..あんたクラブ決めたの?」「いや、まだだけど..」 「やっぱり、エロいのがないから?」「お前と一緒にするな!」 「はぁぁ〜どっかにエロい部がないのかなぁ」「あるわけないだろ」 「何で無いって言えるのよ。あるかも知れないじゃない」 そんなクラブがあったら、俺も入部してやるよ。絶対にあるわけないがな! 「大体、エッチな部活なんておかしいだろ?」 「う〜ん、おかしいのかな..う〜ん..」 「大体、そういう部をどうやって作る気だよ。学校が認めるか?認めない だろ!」「・・・・・・・・・認める..」「えっ..」 「そっかぁぁ!そっかそっかぁぁぁぁぁ〜認めない!認めます!認める! 認めるとき!認めれば!認めろ!認めてぇーか!」 「おい..アミモ..お前、まさか」 「作ればいいのよ!作れば!そう、露出部をね♪」 俺はこいつの頭の中を調べてみたい!どこの馬鹿でもそんな事を思いつ かないぞ!それに露出部って何だ..エロゲーの中に出てきそうなクラブ だけど、実際にそんなのを作れるわけないだろ? どうやって、申請するときに説明するんだ。 露出癖を持った女子生徒たちが露出行為をする部なんです〜って言うつもり なのか。 いや、こいつなら誤魔化すことなく言うだろう。いや、もう申請書を作って やがる。 「えっと、やっぱり野外活動は外せないよね。ここのクラブに入会すれば 必ずすっぽんぽんで外で散歩する事ができますって事で」 おい..それが学校に提出する申請書に書く言葉か..俺だったら、見た 途端に破いて捨てる。いや、焼却炉まで行って跡形もなく燃やしてやらな いと気がすまないぞ! まあ、しばしの夢を見させてやるのもいいだろう。 「あっ、そうそう。部が出来たら、あんた即入部決定ね。男手はやっぱ 必要だから」 俺がいつの間に部員にされている..こいつの部が成立したら俺の高校 3年平穏生活は早くも終焉の時を迎えるであろう。 上機嫌で新規クラブの申請書を作っているアミモに言いたい。 お前のその馬鹿な申請書が通るのなら、俺はロト6で最高4億円を5回 ぐらい当ててるだろう。 まあ、そんな露出部が出来るなら、万歳〜って言って入部してやるよ。 いや、こいつならいつの日か作りそうな気もする.. そう..竜宮 アミモの露出はこれからが本番なのかも知れない。 <完>


「竜宮 アミモの露出」完