第42話「ミニ露天風呂」(挿絵:たーちんさん)


※時々CGと文字が重なる場合がありますので、その時は1回再読み込みしますと直ります。

 ふえぇ〜ん〜〜売り言葉に買い言葉で恥をかきそうな沙智菜です。  周兄さん、このままだと私、玄くんの前でストリップをしちゃうよぉ〜  玄くんに連れられてお客がいない銭湯に着た私。  今ここにいるのは男女1人ずつであり、玄くんはさっさと服を脱いでパ ンイチの姿で掃除の準備を始めている。  いくら興奮しないって言ってもパンイチの男の前で服を脱ごうとするな んて危ない女のすることだよぉぉ〜。  正直、服を脱いだ途端に襲われたとしても仕方ないことだし、裸になっ た私の方が馬鹿なことをしたと思う。  そんな馬鹿な女に今の自分がなろうとは考えたくない.. (どーしよぉぉ〜このまま服を脱いだら、後戻りできないよぉぉ〜)  とりあえず、まだ一緒に男湯には居るが、私の方は服を脱いでおらず、 玄くんだけがパンイチになって清掃の道具を用意している状況だ。  果たして玄くんの挑発によって服を脱いで入っていいのだろうか?  相手は私が裸になっても一切気にしないと断言しているが、本当に正常 心を保てる保障はあるのだろうか..  まあ、どちらにしろ同学年の男子の前で自分から裸になるのには抵抗が あり、なかなか脱げない私であった。  そんな迷ってる私に玄くんが気付いたらしく、突然掃除道具を手に担い でこう言ってきたのだ。 「俺は女湯の方から清掃するから、その間に男湯に入ってればいい」 「えっ..べ・別に私は平気なんだから..」 「それなら、俺が来るまで入ってればいい話だろ?それまで1人で男湯で ゆっくり浸かってくれ」 「そ・そうね..わかったわ。待ってればいいのね..」(ほっ)  どうやら玄くんの方から気を利かせてくれたらしく、今は素直に言葉に 甘えることにした。 (やっぱり男の人の前で脱ぐなんて出来ないよぉぉ)  玄くんが女湯の清掃に行ったあとで、ようやく服を脱いでお風呂に浸か ることが出来た私。  正直、貸切のお風呂に入るとくだらない挑発などどうでも良くなり気分 も落ち着いてしまった感じであった。 「はぁぁ〜気持ちいいぃぃ〜。やっぱり、変なことをしなくて良かったか もぉぉ」  すっかり落ち着いたところで、よく考えると身体を洗う石鹸やタオルな どを持ってないことに気づく。  図々しいかも知れないけど、女湯で清掃している玄くんに向けて声を出 して聞くことにした。 「ねえぇ?あとでお金を払うから石鹸とかタオルなどを貸してくれないか しらーー」 「あっ、そうか。石鹸とタオルか!悪い、番台の近くにある商品を自由に 使ってくれ。お金は俺のおごりだと思っていい」 「でも、それは気がひけるよぉーー」 「そうか。じゃあ特別割引ってことで、あとで少しだけもらうことにしと くから」「ありがと!」  玄くんの承諾を得て、男湯を出て番台の近くにあるタオルと石鹸をもら う私にあるものが目に飛び込んだ。 「男湯の方って露天風呂があるんだ..」  何と男湯の方は更衣場の横の出口に小さい露天風呂があったのだ。 「そういえば表の看板にも露天風呂ありって書いてあったかも..」 (ちょっとだけ覗いてみようかな..)  手に持った石鹸とタオルは置いたままにして、更衣場の横の扉をガラガ ラと開けると外の空気が一気に流れ、露天風呂が目の前に現れる。  銭湯の露天風呂というせいか、本当に小さい感じとなっており、2人入 るのが精一杯な広さかも知れない。 「結構、本格的だけど..外が見えるようになってるの!?」  露天風呂の雰囲気を出すために目の前にある銭湯の壁にくり貫きの大き な穴が3つほどあり、外の景色を見ながら浸かれるようになっている。  男だからいいものの、とても女風呂ではこんな穴を付けることなど出来 ないだろう。 「目の前、裏道じゃなない..ここ通る人なら誰でも覗けてしまうかも」  ドキッ..  壁の向こうには舗装されてない裏道が見えており、こちらから通る人が わかるということは相手からもこの露天風呂を見れるということになる。 (もう辺りも暗いし、少しぐらいなら大丈夫よね..)ドキドキッ  せっかくここまで来たんだから少しぐらいは入っていきたい。  まあ、外から覗かれるという不安が私のイケナイ性癖に火をつけてしま ったのであろう。  ちゃぽんっ..「うわぁぁ〜すごい開放感があるかもぉぉ〜」  目の前の裏道を見ながら全裸で露天風呂に浸かる私に何とも言えない興 奮が身体中に走る。  湯気である程度は隠してくれるかも知れないけど、そろそろ出たほうが いいのかも.. 「さて..タオルも持ってないから早く戻ろ..」  早々に湯船からあがろうとした私に、遠くから数人の男性の話し声が聞 こえてくる。  何と、誰かがこの裏道を通ろうとすぐ近くまで迫ってきたのだ。 (ああぁっ、そんなぁぁ〜今、あがったら見られちゃうぅ)  時間的にも出ることは出来ず、入っていても見つかってしまう可能性が 高い。  けど、相手もこの時間に露天風呂に入ってるとは思わないはずなので取 る手は1つしかなかった。  ざぼんっ..ぶくぶくぶくっ..  男性たちが目の前の裏道を通る寸前で湯の中に潜って身を隠す私。  穴の方を注意深く見られたら意味のない作戦だけど、ぱっと見での誰も 居ない光景は作れるはず。  案の定、男湯の露天風呂というのを知っているらしく、こちらを見ない で普通に通り過ぎてくれた男性たち。  単純な方法だったけど、一番これがいい隠れ方だったのかも。 (はぁはぁ..もう、危ないからあがらなくちゃ)  今度こそ上がろうとした私に再び、違う人の声が聞こえる。  裏道だというのに何ですぐに人が来たのであろうか?  とりあえず、再度同じ方法で上手くやり過ごしたのだが、今度は自転車 が走る音が聞こえる。 (なんで、急に裏道を通る人が増えたの!?はっ..そういえば)  湯の中に潜りながら、ふと近くに駅があったのを思い出した私。  もしかすると電車から降りた人が、この道を使って帰っているのかも知 れない。 (ああぁっ!どーしよぉぉーー出るタイミングを失ってしまったよぉ)  人が通るたびに湯の中に潜る私だけど、このままだと限界がきてしまう。  どうして、こう次から次にと羞恥な目に遭うのであろうか.. (ふえぇぇ〜周兄さん、このままじゃ見つかっちゃうよぉぉぉぉ)  ぶくぶくぅぅ・・・  あれから何回も通行人が来るたびに潜ってやり過ごしている私。  運がいいことに誰もがすんなり通り過ぎていき、女子高生が全裸で入っ ていることには気づいていないと思う。(そう思いたいたいよぉぉ..)  さすがに何回も潜るのを繰り返していると、時たま潜るのが不十分とな って、お尻が思い切り浮かんで出てしまった時があった。  まだお尻だけならいいけど、タイミングを外してあがった時に自転車が 通り過ぎたのはヤバかったかも知れない  酔っ払いのおじさんだったらしく、咄嗟に顔だけを手で隠したけど、お っぱいははっきりと見られてしまい、目の前を通った自転車が遠くの方で 転倒する音が聞こえたのであった。 (戻ってこなかったのを見ると、きっと見間違いだと思ってくれたかも)  だけど、こんな馬鹿なことをし続けるせいか頭がくらくらする。 (ああっ..やばい..逆上せてる..どーしよぉ..)  人の行き来はどうやら収まったみたいだけど、私の身体の言うことが聞 かない。 「このままじゃ潜ったまま沈んじゃう..」  危険を感じた私はもう風呂からあがるしかなく、湯船から這いつくばる ような形で身体を外に出した。 「はぴゃぁぁぁぁ〜☆$*#」  何とか扉近くまで辿り着いたけど、そこで全てを丸出しのままで仰向け で逆上せて気を失ってしまった私。  次にここを通った人には全てを見られてしまうけど、もうどうすること も出来ないであろう。  そんな私が意識を戻したのは20分後らしく、気がつくと頭に冷タオル が乗っていた。 「あっ..そうか、私..そのまま逆上せてしまったんだ..」 「やっと気づいたようだな。新宮さん。男湯で待ってろとは言ったけど、 外の露天風呂で倒れてのには驚いたよ」 「ご・ごめんなさいっ。もしかして運んでくれたの」 「ああ、男湯の方から何かが転倒する音がしたから声をかけてみて、反応 しないから様子を見にいったら仰向けで逆上せていたよ」 「仰向けで..」(って言うことは、また全裸を見られたってことぉぉ)  恥ずかしいけど、ここは幾つか確かめなければいけないことがあった。 「あ・・・あの、仰向けってどんな風に..」 「ん?大の字に近い感じで俺の方に足を向けていたが..」  うわぁ〜と思わず叫びたくなりそうな最悪状況だよぉぉ〜。それって、 やっぱり私の..私のあそこが..けど、それはさすがに聞けないぃ〜。  と私が赤面しているのに玄くんが過激な言葉を口にした。 「おま●こか?それなら見えていたぞ。まあ、大の字で寝てたんだしな」  って堂々と言うなぁぁ〜!玄くんって本当に私の裸に興味がないのぉ〜。 「・・・えっと、今タオルが掛けられているんだけど..」 「ああ、湯冷めするとまずいからな。それがどうかしたか?」 「それはいいんだけど..頭や身体があまり濡れてないような..」  そう、頭の冷タオルの他に身体にもタオルを掛けられているのはいいん だけど、確か記憶が間違ってなければ頭びしょびしょだし、身体も濡れた ままなんだけど..それがすっかり綺麗に拭かれているような..  それって玄くんが拭いたってことで、きっと全てを晒したのは間違いな いことであろう。 「・・・あ、そういうことか」  玄くんは私が何を聞きたいか察したようで、この時はさすがに気を利か せて答えてくれた。 「仕方ないだろ。湯冷めして風邪なんか引かれたら俺の責任だしな。頭と 身体は拭いておいた。変なことはしてねーからな!」 「えっ!」(だからぁぁ〜、そういうすごいことを堂々と言ってこないで よぉぉぉ) 「こういうこと言うとまた怒るかも知れないが、新宮さんの裸を拭いても 何も変な感情が起こらないから安心していいからな」 「そう..」(ううぅ..何か頭にくるかもぉぉ)  ぼそっ「まあ、あんなに柔らかいとは思わなかったが..」 「えっ?今、何か言った?」「い・いや、今のは独り言だ..」  少しだけ玄くんの顔が真っ赤になったような?いや、気のせいね.. 「ところで他の人には..見られてないよね?」 「ん?ああ、それなら大丈夫だ。けど、露天風呂で倒れるのは危険だな。 あの裏道は結構サラリーマンが使ってるから危なかったぜ」 「ううぅ..ごめんなさいぃ..あんなに人がくるとは思わなかったのよ」 「そうみたいだな。あんだけ頭を濡らしてたんだから、何回も潜って隠れ てたんだろ?」 「うん..そのせいで逆上せちゃって、余計な恥をかいたかも..」 「俺のことか?それだったら心配しなくていい。信じてくれるかはわから ないけど、女性の裸はそんなに頭に残らないし、昨日にしたって雑誌に夢 中だったから、はっきり覚えてたのは顔ぐらいだな..確かに全身も見た が正直、記憶に残ってないな」 (ううっ..何かそう言われるのも頭にくる感じだよぉぉ〜)  けれど、この時の私はともかく、玄くんのことを知った後なら頷ける話 かも知れない。  でも、女性として何か悔しい気分もあり、思い切って素直にある事を聞 くことにした。 「えっとぉぉ、1つ聞きたいんだけど、本当に女性の裸に興味がないの?」 「俺はホモじゃないから、正直に言えば女性の裸には興味があるのかも知 れないな。ただ職業柄で見慣れたせいか、裸を見ても興奮できなくなって しまったってとこだな。あとは記憶にも残らないって感じだな」 「それって、男性として問題ありそうな気がするけど..」 「まあ、番台に座っている今の俺にはいいのかも知れないし、いずれは直 るかも知れないしな」 「はぁぁ〜、そう素直に言われるとドキドキしている私の方が馬鹿みたい じゃない..」 「それはすまないことをしたな。お礼に飲み物おごるぜ。喉がカラカラだ ろ」 「そうね..コーヒー牛乳とかフルーツ牛乳など飲んでいいの?」 「ああ、そこに入ってるから飲んで構わないぜ」 「ありがと」  玄くんに言われ、その場ですっと立ち上がってジュースを取り出して飲 む私だが、ふと飲んだあとで自分が全裸のままであったことに気づいた。 「あっ..」  今更、隠すことも出来ず、玄くんの方を見ると、意外にも平然とした顔 でこちらを見ており、興奮してないというのは十分わかった気がする。  けど、いくら露出癖のある私でも何でこんなに違和感なく裸のままでジ ュースを飲んでしまったのだろう?  それにいつもなら疼く筈の身体が何の反応を示さない。 (うそっ..私までも全然感じなくなったのかな..)  いろんな不安が頭をよぎる中、玄くんが私の裸を見ながらとんでもない ことを言ってきたのだ。 「どうやら、露出癖のある新宮さんも俺の前では興奮しなくなったみたい だな」  ドキッ..「ちょ・ちょっと私、そんな性癖なんか持ってないわよ.. まあ..多少は見られて濡れるのかもしれないけど..」 (あれっ?私ったら何余計な事を言ってるのよ) 「どちらにしろ、俺は新宮さんが露出狂だから軽蔑するわけでもないから」 「..うそ。私だったらちょっと引くけど..」 「俺は例の作家さんが沖縄でサイン会をやっても飛行機で行く気なんだが、 それを新宮さんはどう思う?」 「そんな馬鹿なこと、よくやるわねと思うけど..」 「早い話、それと露出狂も同じと俺は思うよ。要は心の内からくる衝動を 抑えきれないってことさ」 「でも、何かそれは広い解釈かも..」 「まあ、そうだけど..俺はずっと番台に座ってるせいか、そういう性癖 が抑えきれない女性の気持ちは何となくわかるだけさ。大体、例の位置を 選んで着替える女性は殆どが露出狂だったしな..」 「ううっ..」 「ここは外の露天風呂もあるし、新宮さんさえ良かったら露出狂の衝動を 発散させる手伝いを時たまでいいならしてやるけど..」 「そ・そんなの結構よっ..それほどいやらしくないわよ」 「けど、露出狂の子って危ない目によく遭うと聞くから、俺としては同じ 作家好きの新宮さんにそういう目に遭わせたくないからな」 「ううぅ..何かそういう事、言われると心が揺らいじゃうじゃない」 「実は正直に言うとな、こんなに意気投合した相手は初めてなんだよ.. 男女の性別など気にせずに新宮さんとはこれからも親友でいて欲しいんだ よ..まあ女性の新宮さんにとっては複雑かも知れないけどな」 「・・・はぁぁ〜何か私もずっと前からの知り合いみたいで変な感じがす るのよね..私からも親友としてつきあって欲しいかな..」  この後、何故かお互いに笑い始めてしまい、もう答えは必要ない感じに なってしまったようです。  こういうこと玄くんにいうと失礼なんだけど、何か男性だという気がし なく仲のいい同性の友達みたいになってしまいました。  そんな関係になってしまったせいか、気がつくと玄くんに露出癖の発散 まで甘えてしまって、噂の”おっぱい女”までやってしまった馬鹿な私で す。  周兄さん..他の男性にここまで知られてしまった私を大目に見て欲し いです。もちろん危ない関係には発展しないから。 *****沙智菜の勝手なイメージ*****************   「いや、こういう男性の協力者は今後、必要になっていくよ」   「でも、沙智菜の身体を見て何とも思わない彼はすごいな」   「いっそ、彼のツボを見つけて興奮させてみるのもいいんじゃないのか」 ********************************  いえ、もう玄くんとは本当に性別の関係は消えた感じです..  ただ、玄くんが私の露出癖発散計画に面白がってきたのには不安かも知 れないです..ああぁっ、これ以上変なことはさせないで欲しいよぉぉ


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