第2話「くすぐりの珠紅」


琉璃乃、猪崎、みちよ、ゆっこの4人は理科準備室の中で裸で吊るされて いた土田をようやく降ろし、野次馬できてた女生徒たちに不審な事があっ たがどうかを聞いていた。 「ねえ、誰かここに来てた人がいない?ちょっとした事でもいいから」 「そ・そう言えば私、転校生の西堂さんが出て行ったのを見たわ」 「そういや、私も西堂さんを見たわ。あの子目立つしね」 「西堂さん?どこのクラス?」 「3年の・・えっと3組よ。関西から来てるからよくわかるわよ」 「3年3組ね。ゆっこ、私そこに行ってみるから土田さんをよろしく頼むね」 「琉璃乃ちゃん。1人で大丈夫なの?」 「心配しないで。私にはこの腕があるわ」 不安そうに見るゆっこの横で猪崎さんも私を心配して言ってきた。 「助川さん。1人では危険よ。2組に柔子先輩がいるから彼女を誘って行って」 「柔子先輩ってたしか女子柔道部の..」 「そうよ。黒帯の彼女なら充分助川さんの手助けになるわ」 「ありがとう。猪崎さん。じゃあいってくるね」 私は急いで3年のクラスがある4階まで駈けて行った。 猪崎さんに柔子先輩を誘うように言われたが私は1人で充分だと思いまっすぐ 3組に向かったのであった。 ガラガララッ!「すいません。転校生の西堂さん、いますか?」 「・・・・・・・」「・・・・・・・・・・・・・」 「?なんで黙っているんですか?西堂さんはいないんですか?」 「・・・・西堂さんの行方ならあなたが知ってるんじゃないの?助川さん」 「えっ?なんで私が?どういう事ですか?」 「あなた?知らないの?」 「知らないって・・それはどういう事なんですか?」 「・・・・・・・・」ぼそぼそ「・・・・・・・・・・・・・」ぼそぼそ 「あのー急いでいるのではっきり言って下さい」 「・・・西堂さんなら、かなり前に屋上に連れていかれたわ...」 「屋上に連れていかれた?」 「そうよ。あなたの所の猪崎グループが連れていったんじゃない!」 「猪崎グループが?な・なんでですか?」 「生意気だから連れていかれたのよ!あなたとぼけているの?」 「とぼけてません。まだ猪崎グループって・・・そんな事をしてるんですか?」 「あなた、知らないの?猪崎さんはすっかりあなたに骨抜きにされたけど  3年の連中はいろいろやってるのよ」 「そうよ。助川さんってあのグループのトップでしょ?なんでこんな事 知らないの?」 「そんな話し先輩たちは言ってなかったので...」 「呆れた子ね。レズ行為ばっかやってるからわからないんじゃない?」 「・・・すいません。先輩たちには後で私がきちんと話しをしますので...」 「助川さん。3年だけじゃないわよ。駒つかいの教育もしなさいよ」 「!?それって土田さんの事ですか?」 「そうよ。朝だって3年の駒つかいで土田が西堂さんに因縁つけてたわよ」 「土田さんが・・?」 (土田さんが逆にやられたって事?その転校生に?) 「そう言えば、その土田について話しがあるって屋上に連れていったはず じゃない?」「あっ。そうよ。あの黒帯女すごい血相をきて来たもんね」 「それって2組の柔子先輩ですか?」 「ええ、他にも3人ほどいて4人で西堂さんを無理やり連れていったわ」 「でも、さすがの西堂さんももうぼろぼろにされてるわよ」 「相手があの柔子じゃね。あの女手加減しないからね」 「そ・そんな...」 「助川さん。行くなら早く行きなさいよ。西堂さんをちゃんと保健室に連 れていってね」「そうよ。西堂さんが入院したらあなたのせいでもあるん だからね」「わ・わかったわ。今すぐ行きますから....」 私は3組を後にし、急いで屋上にあがりそのドアを開こうとしたがどうやら 鍵が掛けられていた。 ドンドンドン!!「柔子先輩!!そこにいたら開けて下さい。琉璃乃です」 ドンドンドン!!「柔子先輩!!西堂さんを私に渡して下さい」 「琉璃乃・・・あんたがほんまの琉璃乃さんか?」 「!?そ・その声はに・西堂さんですか?」 「そや。今空けるさかい。待っとてや」 ガチャ。ドアはすぐに開きそこには見慣れない女の子が立っていた。 「ほぉ、思ったよりずい分ちゃんとしてる子やないか?」 「あなたが西堂さんですか?怪我はしてませんか?」 「怪我?見ての通りピンピンしとるで」 「・・・・・・・?」 よく見ると西堂さんの体はどこも傷ついてなく服にもほとんど乱れがなかった のであった。 「嬉しいなあ。琉璃乃さんってうちの思った通りのええ子やな」 「思った通り?」 「そや。こんなええ子なのに上の連中はなんであないにアホなんやろ」 「!!先輩の事ですか?柔子先輩たちはどこにいるんですか?」 「ああ、あのアホどもか。あそこで仲良く日光浴してるで」 西堂が指したその先には屋上の柵に大の字で裸で磔されている4人の姿があった。 外の方に仰向けで磔しているので校庭から覗けば4人の裸がはっきり見えてしま うのである。 その上、4人とも土田と同じ様に失神させられており、その床にははしたない 大きな水溜りが出来ていた。 「琉璃乃さん。見てみい。床から溢れた尿が下に徐々に落ちてるで。そのうち  雫に気がついで人がぎょうさん集まってくるで」 「な・なんてひどい事を。なんでこんな事を?」 「ひどいのはあっちや。4人ががりで来るのは卑怯やないんか?」 「・・・それはその...」 「あのアホども。うちをスッパにしてあの柵に磔するってほざいたから逆に返し  ただけや」 「・・・土田さんも同じ感じであなたがやったんですね」 「そうや。今時、根性焼きなんて流行らんで」 「根性焼き?」 「あそこの毛を焼くことや。あんた、そこまでやられた事ないんか?」 「そこまでは・・・」 「まあ、うちかてあんたみたいな嬢ちゃんならもっと他にするわな。生意気な  うちとは仕打ちも違うやろな」 「・・・土田さんがそんな事してきたんですか?」 「そこまでいっとらんが脅してはきたで。いちおー正当防衛ってとこやな」 「でも、あんなになるまでする事は!!」 「琉璃乃さん。あんた、もっちっと、子分の教育はちゃんとせんとあかんで」 「子分?私はそんな事思ってません」 「甘い!甘いで!そんな考えやから勝手な事するんやで。あんたの評判3年生  の間では最悪やで」 「評判?私の?」 「そや、こいつら虎の威をかるくずや。頭が変わってもやる事は同じや」 (やっぱり、猪崎さんの言ってた通りなのね・・・) 猪崎は琉璃乃に3年の締め付けをきつくしてくれる様に頼んでいた。 でも、琉璃乃の性格上そんな事は出来ずほおっていた所であった。 「あんた、いじめを無くすのに一生懸命なんだってね。けど、これじゃ無意味や」 「そのうち、何とかするつもりだったわ。あなたにそこまで言われるつもりは」 「悪いけどあんたにはうちを使えるかがかかっているんや」 「あなたを使う?何のこと?」 「ふふっ。ちょっとお喋りがすぎたな。悪いがこの続きはうちを負かしてから  聞いてくれへんか」 西堂は琉璃乃に対して急に身構えてきた。 「西堂さん。私とやるつもり?」 「そうや。うちを倒さへんといつまでもあの4人は磔やさかい」 「いいわ。あの4人があなたに酷い事をしたかも知れないけど助けてみせるわ」 「ええな。そう言う所、うちは好きやな。けど悪いけど助けさせへんで」 「こっちもあなたには悪いけど少し痛い目に合う事になるわ」 「痛い目?ちゃうやろ?気持ちいい目やろ?けど無理やな」 「私を甘く見ない事ね。引くなら今のうちよ」 「・・・・・ふっ。引くのはそっちや。負けたらどうなるか知らへんで」 「どうなるって言うの?」 「晒すだけや。うちをがっくりされた罰やさかい。覚悟せえや」 「・・・・・望む所よ!来なさい。西堂さん!!」 「そうか。じゃあやる前に一応うちの事紹介させてもらうで」 「・・・?紹介?」 「うちは西堂 珠紅(にしどう すく)。 くすぐりの珠紅や。   又の名を義の西堂。よぉく覚えるんやな」 バシューン。西堂は大きく左右に展開移動しながら素早く琉璃乃の後ろに回り 込んでしまった。 「!!は・早い!!」 「ほな!行くで!!」 珠紅の素早い動きであっという間に琉璃乃は翻弄されてしまった。 そう、勝負は琉璃乃の不利で始まり、この勝負が琉璃乃に新たな羞恥を与える とは思ってもいなかったのであった。


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