第14話「珠紅VS四十七名の女子」


今、3年の教室が連なる大廊下では凄い状況となっていた。 かって猪崎グループによって苛められた女子たちが集結し反旗をあげよう としていた。 その数、四十七名。まるで何か運命の皮肉を思わせる数字であった。 その四十七名が今、珠紅を完全に包囲し襲い掛かろうとしていた。 当然、これだけの人数が集結していたら珠紅には逃げ道はない。 じりじりと迫る包囲網に珠紅は鋭い眼光を放ちながら彼女らとの間を取って いた。 「・・・1つだけ、聞いてええか?」 珠紅は女子グループに駒目に指示しているリーダーらしき女性に声を掛けた。 「何よ!命乞いなど聞かないわよ!ふふふ..」 「あんたの名前は何や。名無しでも構へんがな..」 「・・・大石 蔵乃よ。それで満足した?」 「数が気ィなって聞いたか..おもろい偶然ってあるもんやな..  差し詰め、ここは吉良邸ちゅうことかいな..」 「・・・ふふ、そう言われると数が合ってるわね。じゃあ、もう勝負は決まっ たかもね」 「残念やけど、そや無理ちゅう答えやな。うちに勝てるほどあんたら強くないで」 「ぐっ!!どうやら、あなたの運命は決まったわ!!みんな!!いけぇぇーー!!」 大石の号令で周りの女子たちは一斉に珠紅にかかってきたのであった。 「やっちゃえー」「やああああーーー」「このぉぉぉーーー」 「うちは西堂 珠紅。 くすぐりの珠紅や。 又の名を義の西堂。義の名にお  いて、てめーらドアホを悶絶地獄に落としたるで!!!」 既に珠紅の周りには、モップや木の棒を手に持った女子たちが迫ってきた。 これだけ女子たちが迫ってくる中、珠紅はただじっと立っているだけ。 攻撃する女子たちの間に珠紅が観念したと言う甘い考えを持っている者もいた。 前後左右から襲い掛かる攻撃。珠紅に女子たちの最初の一撃がかかろうとした その時。 ドンッ!! 一撃の鈍い音と共に始めに攻撃を仕掛けた女子が空を舞う。 空を舞う彼女の服は花びらの様に細かく裂かれながら身体から離れていく。 珠紅を囲っている輪を越え、裸同然にされた状態で床に落ちた。 落ちたと同時に大きな笑い声をあげながら床を笑い転げていった。 そして、彼女が落ちた時、既に次の珠紅の動作が始まっていた。 ドドドッンン!!バババッ!!ッンンズババババッ!! 閃光の速さで動く珠紅の前に彼女らはなす術も無く、次々と空を飛ぶ。 輪の外には雨あられの様に珠紅の拳に飛ばされた女子が降り注ぐ感じで落ちて いく。 わずかな間で輪の外には笑い転げる女性たちであふれかえっていた。 その女性たちが逆に大石らの逃げ道を塞ぐようになっている。 そう、大石は思わぬ珠紅の拳で次々と倒される女子たちを前にして、ようやく 自分たちの無謀さを知った。 そしてすぐに逃げる事を考えたのだが、珠紅に退路をたたれてしまったのだ。 次々と珠紅の拳で倒されていく仲間を前に大石は呆然と立ち尽くしている。 「ど・どうするの?蔵乃?あいつ..強すぎるよ」 「わ・わかっているわよ。い・伊三美!あんたも何か考えなさいよ」 「無茶言わないで!!倉子!何とかして」 声がうわずっている大石ら3人の女子。首謀者と言える彼女らの前には、珠紅 の拳によって次々と崩れ落ち笑い転げる。 もはや珠紅の周りには包囲網はなかった。 今や大石・金堂・沖野の3人を逃がさない包囲網が逆に出来ていた。 「そろそろ、こいや..もう逃げられへんで」 「・・・ぐっ..もうやぶれかぶれよ。行くわよ!!」「ええ」「わかったわ」 3人は護身用に持ってた小型のナイフを取り出し、珠紅に向かって行った。 残った女子たちも意を決して一斉に向かって行く。 だが珠紅の前には何の効果も無かったのだ。 珠紅の連撃が次々と彼女らの身体に当たっていく。 やぶれかぶれに飛び込んできた沖野は珠紅にあっさり手でなぎ払われてしまった。 怖じ気ついて背を返し逃げようとした金堂も珠紅の拳によって大きく弾かれた。 珠紅の脇に上手く入り込んだ大石も攻撃をする間を与えられずに大きく飛ばされ てしまった。 10数分後、ようやく琉璃乃の居所を突き止めた猪崎らが珠紅がいる廊下にやっ てきたのであった。 「なっ?何なの?この裸の女子たちは?ん?西堂さん?」 廊下には失禁して裸にひん剥かれた3年の女子たちがあちこちに転がっていた。 全員、失神させられており凄まじい風景となっていた。 「ちょっときつめのお灸を据えただけや」 「こ・こんだけの人数をあなた1人が?」 「こんなん、朝飯前や。三羞牙が少し本気になればこんなもんや」 「・・・・なんて怖い子...ところで琉璃乃さんはどこなの?」 「トイレの中や。少し落ち着かせて入った方がええで」 「あ?そんな悠長な事出来ますか。琉璃乃さん。大丈夫ですか?」 猪崎は急いでトイレの中に入り大声を出したのであった。 「きゃああああーーーる・る・琉璃乃さん・・・・・」 「あちゃーだから言わんこっちゃないな...」 「あのー西堂さん?琉璃乃ちゃん、そんなにひどい状態に?」 「まあ...うちはむかついたけどな..」 「そ・そうなんですか?」 ゆっこと珠紅が話している中、猪崎が顔を真っ赤にした怒った顔ですごい勢いで トイレから飛び出したのであった。 「きぃぃぃーー!!みんな、こいつら全員、校門に磔しな!!」 「い・猪崎さん!!な・何ばかな事言ってるの?」 「こいつらーー私の琉璃乃さんをあんな風に・・・磔なんか甘すぎるわ。  やっぱ街中、裸のままでひきずってやるわー!!」 「落ち着けや。これ以上の罰はやめるんやな。互いにくだらん繰り返しをする だけや」 「そうですよ。猪崎さん。そんなに怒らなくても...」 「それならゆっこ!!あなたも中に入って確かめなさいよ。同じ気分になるわよ」 「そうですが、とりあえず誰かタオル貸してくれません?」 「ほい、タオルや。・・・中でどうなったがわかるんか?」 「猪崎さんの様子と女子トイレ。それにこのアンモニアの臭い、だいたい何され  たかは検討つくわ」 「そっか。じゃあ頼むわ。ただ尿をかけらて落書きされただけや」 「・・・はぁ...ずい分ひどい事されたんですね...」 ゆっこは1人でトイレに入った。始めに少し小さな悲鳴が聞こえたがその後は ホースの水音が聞こえ琉璃乃の体を簡単に洗っていたのであった。 ゆっこが1人で琉璃乃の体を洗ってる中、無理矢理おこされた3年の女子たち が猪崎の前に廊下に正座させられたのであった。 「さーて。あなた達は何がお好みかしら?裸で街中引きずってあげようか?」 「・・・・・・ひぃ・・・・」 「それとも徹底的に絶頂させて遊んであげようかしら?」 「・・・・・・・・・」 「猪崎...やめとき。もう許さへんか?もう反省もしてる事やし」 「甘いわね。こういうやつらは締めないと駄目なのよ」 「あかんな。そないな事ゆうてたら、いつまでも同じ繰り返しや」 「けど・・・こいつら、私の琉璃乃さんを...」 「まあ、怒るのはわかるで。けどもうええんとちゃうか?」 「そんな事言ってもこの怒りはどうするのよ」 「・・・・・・・・」 「うんっと。それなら平和的な解決でいきませんこと?」 「!!こ・この声は稚奈か!!どこだ?どこにいるんや」 「ここですよ。西堂さん」 「えっ?だ・誰あなた?いつ私の後ろに!?」 いつの間に猪崎の真後ろに稚奈は立っていた。 全体を白で統一された制服を着ている稚奈。 足元まで来る白のスカートに似合う長い黒髪、整った顔立ち、いかにもお嬢様と 言うイメージが似合う美少女が気配を出さずに猪崎の近くに現われたのであった。 その稚奈を前に、さっきまで汗1つかかない珠紅の顔に1滴の汗が流れていく。 そう、稚奈の性格を知っている珠紅は稚奈が何のためにわざわざ姿を現したのを おおよそ予想できたからであった。


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