第3話「里奈穂の覚悟」


 部屋の中に1人だけとなった里奈穂は早速、渡された水着をそれぞれ手 にとってみることにした。 「3つの中で1つだけか..でも、この3つって肌の露出が少ないわ」  てっきり、ビキニっぽいものと想像していたが上下一体型の水着だった。 「ビキニじゃないんだ..意外だわ」  里奈穂が想像していたのは胸がこぼれてしまいそうな、お尻が丸出しの 超ビキニだったが、手にした水着はどれも学生がよく着るワンピース水着 であることに驚いた。  ただ、過激な水着だという意味は、すぐに理解できた。 「!これ、サポーターが全くついてないわ..それに生地も薄すぎるわ」  肌の露出部分が少ない3つのワンピース水着だが、胸や股間部について るサポーターが一切なく、生地が薄いことから着れば確実に肌が透けるこ とは間違いないだろう。 「そういうこと..まあ、これぐらいの下品は当たり前ってことね」  あとはどの水着を選ぶだけだが、社長の覚悟を見る意味から考えると、 紺色の水着を選んで着てはいけない気がした。 「紺色は生地が薄くても透けないわね..コントで使うって言ったから最 初に出てくる水着ってことかな..」  ピンポーン。そう、里奈穂の予想通り、これは「水着屋でどんどん変な 水着を勧められて、思わず試着してしまうコント」なのだ。 「う〜ん、覚悟っていうには紺色は外して考えるのか普通なのかな..で もでもぉ〜残り2つが何か嫌な予感がするしぃ〜」  とりあえず、残りの2つを見てから決めようと思った里奈穂だが、最後 の1つはすぐに絶対除外が確定したのだ。  何故なら、残った2つは白色とシースルーの水着であり、シースルーの 方を着た時には全ての恥部が丸見えになるからだ。 「何よ、この透明水着はぁぁぁ〜!シースルーっぽいけど、透け方が半端 ないわよぉぉ〜。これ、きっと透明ビニールでしょ!」  里奈穂はシースルー水着を部屋の片隅に放り投げて選択肢を紺か白に減 らすことにした。 「どこの世界に、あんな丸見えの水着を着る女がいるのよ。コントだから って、やりすぎでしょぉぉ〜」  しばらく里奈穂は考え込み、結局は紺色の水着を選ぶことに決めた。 「もう時間もなくなってきたし、やっぱ紺色でしょ!紺色だって十分過激 よっ!うん、そうよ。紺よ紺っ」  こうして、紺色の水着を選んだ里奈穂は服を脱いで水着に着替えようと したが、やはり白色の方がいいのではないかと迷いはじめた。 「ちょ・ちょっとぐらい..過激じゃないと不味いよね..透けるってい っても水で濡らされるわけじゃないんだし..白でもいいよね?」  やはり覚悟を見せるということなら白色じゃないと思った里奈穂はもう 1度、考え直してみることにした。 「・・・よしっ!紺は無しってことでいいわ。これに決めることにしたわ.. そ、そうよっ!こ、これでいくしかないのよ..」  30分後..社長は里奈穂と決めた時間が過ぎたので、1度ノックして 部屋に入ることにした。 (もう、紺の水着を着てるだろうな。まあ、紺でもいいから着てくれれば 覚悟があると認めよう)  社長は最初から里奈穂が紺色の水着を選ぶことを予想しており、白色は 相当の覚悟が無ければ着れないと思っていた。 (万が一、白の水着を着てくれたら、覚悟は十分すぎると判断しよう。ま あ、いくら何でもそこまでしないと思うからな) 「それじゃ..覚悟拝見と行こうか」コンコン.. 「・・・はい、どうぞ」 「もう、着替え終わっているのかい?」 「はい、着替え終わってます」  里奈穂の言葉を聞き、社長が部屋の中に入るとテーブルの上には里奈穂 が着ていた服や下着が丁寧に畳まれて置かれていた。  そして紺色の水着も一緒に置かれてるのを見つけた社長は驚いた。 (!ま・まさか..白の水着を着たのか?あんな透けそうなものを..)  里奈穂が紺色の水着を選ばなかったことに驚く社長だったが、それ以上 に信じられないものを目にしてしまった。  何と紺色の水着の横には白色の水着まで置かれていたのであった。 「!!!」(うおおおっ!ば・ばかなぁっ!?)  そう、椅子の上には顔や身体を真っ赤にした里奈穂が、何とシースルー の水着を着て座って待っていた。  あまりの展開に社長は少し動揺した。絶対に里奈穂が着ないと思ってい たので、透明ビニールでも構わんよなと究極のシースルーを用意したから だ。  さすがの社長も里奈穂がこんな透明水着を着るとは思わなかった。  ただ、恥ずかしいことをされても構わないという覚悟を見せるには、こ の水着が一番相応しいのだろうと社長は感じた。 (素晴らしい覚悟なんだが..いやぁ、これは目のやり場に困るなぁ)  実は、このシースルーの水着は想像以上に透明度が強く、正直なところ、 恥部は一切隠すことが出来ず、素っ裸で座っているのと大差が無いぐらい 恥ずかしいものとなっていた。 「えっと、こりゃ驚いたな..まさかシースルーを選ぶとは..」 「社長もそう思いますよね..私もどうして着たかはわかりません..で も、覚悟を決めた私がこれを選んで着てしまいました。こんな私、愚かだ と思いますか?」 「いや、君の決意はどうやら本物だったらしい。疑った私の方が愚かだっ たよ。すまなかったな」  真摯な謝罪をしてきた社長に、里奈穂も心を打たれたらしく、自分から 立ち上がってこう申し出た。 「謝る必要はないですよ。これは補欠レギュラーの覚悟を見せるテストな んです。さあどうぞ、写真の方を撮って下さい」 「!!いやいや〜、さすがにシースルーでの写真はTVでは使えないから、 すまんが1度白水着の方へ着替えてくれないか?」 「!そ・そうですね..すいません、今すぐ着替えます」  そう言った里奈穂は何故か、その場でシースルーの水着を脱いでしまい、 社長が見てる前で堂々と素っ裸になった。  別に社長にわざと裸を見せつけたわけではない。おそらくシースルーで 裸同然になってたせいで、感覚が少し麻痺してしまったのだろう。  白色の水着を着なおしたところで、里奈穂はようやく自分のしたことに 気づいて、今さらながら遅い言葉を出してきた。 「す・すいません..着替えるので1度外に出てもらうことを言うのを忘 れてました..」 「そ・そうだな..まあ、私も外に出るのが間に合わなくてすまん」 「いえ..構いません」 「じゃあ、そろそろ撮影に入るか。かっての清純アイドルにいつまでも恥 ずかしい姿をさせるわけにはいかないからな。それじゃ、そっちの白い壁 に立ってくれないか」 「は・はい..」(こっちの方って逆光が..)  里奈穂は逆光に照らされる壁のところに立たされて撮影することになり、 恥部が思い切り透けるのを承知して、何枚か写真を撮られたのだ。  社長は里奈穂を写しながら、すごい掘り出し物を見つけたことに歓喜が 高まっていた。 (これは予想以上の逸材だっ!演技の要求は出来ないかも知れないが、恥 ずかしい行為は受け入れてくれそうだ。まさに番組に相応しい子になるぞ)  これだけ恥ずかしいことをしてるのに里奈穂が否定しないことに社長は どこまで里奈穂が恥ずかしいことに耐えられるかを調べたくなり、少し暴 走気味になった社長が勢いに任せて、とんでもないことを言ってきたので あった。 「里奈穂ちゃん..ついでだから、最初に着たシースルーの水着の写真も 撮っておこうか?」 「えっ?さっきのシースルーの水着の写真って..そんなのは、む・無理 ですっ」 「ん?どういうことかね?今さっき着ていた水着だぞ」 「・・・そうですけど、また着ろと言われても..恥ずかしくて」 「うむ、確かにまた着ろっていうのは我がままだったな。いや、すまんす まん。ちょっと冗談で言っただけだよ」 「冗談ですか..でも、やっぱそういう要求にも応えないといけないんで すよね?」 「うんまあ〜、そういう番組だからな..」 「・・・そ、それなら、私に少しだけ我がままをくれませんか?」 「ん?我がままとはどういうことだ」 「これから社長とジャンケンをして私が負けたら、この水着を渡します。 さすがに裸にされたらシースルーの水着を着るしかないので」 「!なるほど、面白い我がままだな。私はそういうのは大歓迎だな。いい だろ〜、ジャンケンは1回勝負として負けたら恨みっこなしで、今着てい る水着を脱ぐってことだな」 「・・・はい。その通りです」 「よーし。年甲斐もなく燃えてきたぞぉ〜。里奈穂ちゃん、準備はいいか」 「・・・はいっ。OKです」 「丁度、おあつらえむきな音楽もあるから、これを流してやるとするか〜」  そう言って社長が流したのは言うまでもなく野球拳の音楽であり、里奈 穂は1回きりのジャンケン勝負をすることになった。 <野球〜するならぁぁ〜♪こういうぐあいにしやさんせぇぇ〜♪アウト!! セーフ!! よよいのっよいっっ!!>  里奈穂がグー、社長もグーで1回目は引き分けだった。 「引き分けということは、もう1回勝負だな」「はい、お願いします」 <アウト!! セーフ!! よよいのっよいっっ!!> 「ん?また引き分けか..」「・・・そうですね」  続いて2回目も里奈穂も社長もグーを出して引き分けだった。そして3回 目もまさかのグーの引き分けだった。 (う〜む..これは如何なものか..3回連続グーでくるとは..!!ま さか..もしかして..)  社長は次のジャンケンで敢えてパーを出すことを決めた。どうやら何か を悟ってこの手にいくことにしたらしい。  そして、その社長の直感は当たった。  里奈穂が出したのはグー。まるで最初から里奈穂は勝負に勝とうという 気がないような感じにも見えた。 「・・・わ、私の負けです。約束どおり、この水着を受け取ってください」 「ああ..」(すぐにグーを出すとはな..やはり、わざとなのか?)  これでジャンケン勝負は里奈穂の負けとなり、約束どおり着ている水着 をこの場で脱ぎはじめた。  再び裸を見られることになるが、それも承知して脱いだ水着を社長に手 渡した。 「・・・ど、どうぞ。白の水着です..」(あぁっ、何でこんな恥ずかしい ことをしてるのよぉ〜) 「うむ。確かに受け取ったよ。裸だと不味いから代わりにシースルーの水 着を着なさい」(って言っても裸同然は変わらんが..) 「は、はい..」  その後はシースルーの水着を着て再び撮影に入り、社長は意外な収穫を 得たことに大いに喜んでいた。 (なるほど。演技は駄目だが、こういう風な流れなら問題ないということ か。まさか、扱い方まで教えてくれるとは思わなかったな)  社長にとっては、これ以上変なことをして里奈穂を失うわけにもいかな いため、今回は撮影だけで済ますようにした。  が、ついつい里奈穂の乳首がシースルーの水着を着たことで、反応し固 くなって勃起しはじめてるのを知ると思わず凝視してしまった。 (おおっ、綺麗なピンク色の乳首が立ってしはじめてるぞ。これは実に綺 麗な薄ピンク色だの〜)  社長は今までいろんなアイドルの裸を見てきていたが、ここまで外見の イメージに勝る乳首を見たのは初めてであった。  どうしてもアイドルの裸のイメージはファンが過大に期待するため、実 際の裸を見て愕然とする場合がある。  しかし、里奈穂の裸体はアイドルの外見のイメージに勝てるほどの素晴 らしいものとなっていた。  つい、美しいものに目を奪われてしまったせいか、社長はしばらくの間、 乳首を凝視し続けてしまう。  当然ながら、その社長の視線に気づいた里奈穂は動揺しはじめた。 (ぁぁっ..乳首を見られてる..立っていることに気づかれてるぅ..)  シースルーの水着から綺麗に浮かんで飛び出ているピンク色の乳首に里 奈穂はどうしていいか分からなくなる。  だが、それよりも恥ずかしい現象が下半身に起こり始めてきたのだ。 (しまった..下が濡れてきている..ど・どうしよぉ・・・)  社長に濡れた下半身を気づかないように興奮を抑えようとするが、カメ ラで撮られていると思うと、どうしても感じてしまう。  パシャパシャ「里奈穂ちゃん。もしかして撮られて感じているのかね?」  ぎくっ「そ・そんな淫らな私じゃ..ありません」 「いや、別にそこまで言わなくてもいいぞ。カメラで撮られることは恥ず かしいからの。少しぐらい感じるのは女性の摂理じゃろ」 「い・いえ..感じてませんから..」  里奈穂はカメラで写されて感じる自分に戸惑っている。  撮影で興奮するなんて、いったいどうしちゃったんだろうと.. 「もしかして里奈穂ちゃんは汗っかきなのかね」「えっ?」 「股間が汗でぐしょぐしょじゃないか?それとも汗じゃないのかい?」 「い・いえ、あ・汗です..私、汗っかきなんです..」  股間だけが濡れてる以上、汗でないことはひと目で分かるのだが、女性 の口からは感じて濡れているなんて言えるわけがない。  里奈穂の汗という回答にニヤニヤした社長は、わざとカメラを股間に合 わせて写真を撮り続けた。  パシャッパシャパシャ..「ぁぁ..そんなに..」  ただ単純に股間を写すわけでなく、里奈穂が恥ずかしくなりそうなアン グルを次々と狙ってシャッターを切っている。  が、やり過ぎると不味いので、ある程度撮ったあとは里奈穂に服と下着 を渡して撮影を終了させたのであった。 「里奈穂ちゃん、よく頑張ったよ。今日はこれで十分OKだよ」 「はぁはぁ..ありがとうございます..」  こうして、覚悟の確認も取れたことにより、里奈穂は補欠レギュラーと しての出演が決まった。  番組サイトの方も、里奈穂の補欠アイデアをいい企画として聞きうける 事になったが、これが羞恥への階段の始まりだとは本人が知るはずもなか った。


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