第22話「悪夢のコンサート」


 衣愛代は今、眠っている。  だが寝る前に安希のあのセリフを思い出したせいでうなされているのだ。  そう、あの安希のセリフを.. 「おい、いいか。色気を出して人気を集めてるお嬢アイドルども。あんた らの肌全部世間に晒しちゃるから楽しみにしてなさいよ」  思い出した衣愛代は、しばらく不安で眠れなかったが、何とか眠りにつ く事が出来た。  だが、またこの安希のせいでとんでもない悪夢を見ていたのである。  zzz.....「ぅぅぅ...ぁぁ..」 ********************************** ***********  衣愛代の夢の中  ************ **********************************  衣愛代は今、ステージの上でミリオンヒットを出して各賞をもらったあ の代表曲”愛は私を変えていくの。”を歌い始めようとしている。  今夜は衣愛代のスペシャルコンサートが開かれる日であり、それを待ち どおしにしていた全国のファンがここに集ってきてくれたのである。  会場の中はすでに大満員となり、外には入れない多くのファンの為に特 設の大型モニタまで設置されていた。  何万人というファンの前で今、衣愛代は元気に大声で歌っている。  その声に負けないぐらいのファンの声援もすごく、前でロープを張って いる警備員たちをすぐにでも押し倒すぐらいの勢いがあるぐらいだ。  声援がコンサート会場に響き渡る中、衣愛代はヒット曲を歌っているだ が、何か変な違和感を感じているのだ。 ”衣愛代の水着を見て。いつの日かボーイフレンドの前で言ってみたいの♪” (あ・あれっ?これ私の歌だって?私こんなの歌った覚えないけど...)  夢の中にいた衣愛代はその歌詞が全く自分に覚えのない曲であることに 不思議に思いながらも、その曲を歌っていたのである。  1番の歌詞が終わり2番までの長い間奏となった所で袖口より大きな花束 をもった女性がこちらに向かってきたのであった。 (あれっ?花束なんてあったかしら?ここはトークだった気が?)  衣愛代は予定外の花束贈呈に少し驚いてしまう。本来の進行だとここは ファンに感謝のトークを言うはずだったからであった。 (ん?女性だわ?あの花束がじゃまになって誰だがわからないわ?)  ステージの真ん中に立ってた衣愛代の位置からは大きな花束を持った安 希はわかるはずはなかったのである。  袖口のマネージャーを見てみるといつの間にかその姿はなくどっかに消 えていたのであった。 (あれっ?作山さんがいないわ?どこ行ったんだろ?)  作山に目で確認したかった衣愛代だったが作山の姿はなく自分でその花 束の人物を確認するしかなかった。 (いったい、誰なのかしら?わからないわ...)  衣愛代が誰だが検討つかない間に、もうわずか2mの位置まで安希は接 近してしまい、花束をゆっくり降ろし顔を出してきた。 「衣愛代ちゃん。おめでとう。」 「!!あ・安希さん。あのなんでここに?」 「今日はお祝いで来たのよ。」 「あ・ありがとうございます。」  衣愛代が素直に花束を受け取ろうとした時、安希はとんでもない事を言 ってきた。 「そう、あなたの素っ裸のお祝いにね!」安希は花束を衣愛代の顔に思い 切り投げつけたのであった。 「!!きゃ!!安希さん。な・何を?」衣愛代が投げつけられた花束に気 を向けたと同時に安希は素早く衣愛代の後ろに回り込んだのであった。 「衣愛代ちゃん。さあ洋服を脱ぎ脱ぎするお時間よ。」  安希は衣愛代が着ている白いドレスの首の襟元を掴んでそれを一気にず り落としたのであった。  いろいろな衣装に早着替えする関係でこのドレスは上下一緒になってお り、それを把握していた安希はそのドレスを見事に足元まで下ろしてしま ったのであった。  だが、その下ろしたドレスの中に純白のパンティと小さなレースをつけ たブラジャーが一緒にそこに見えたのであった。 「ふふっ。ちゃんとうまく脱げたわね。衣愛代ちゃん」  安希が上を見上げるとそこには衣愛代のアンダーヘアーとCカップの胸 が丸見えとなった姿が見えたのであった。 「ふふっ。お似合いね。裸のアイドルさん」  衣愛代は一瞬の間に何万人のファンの前で眩しいスポットライトの中で 全てを晒されてしまったのだ。  会場外の特設モニタにもその映像が流れてしまい、皮肉にも同時に2番 の歌詞の始めのフレーズが画面下に文字として流れていた。  そのフレーズに合わせて安希が衣愛代の耳元で歌ってきたのであった。 「衣愛代の裸を見て、いつの日が愛する彼氏の前で言ってみたいのー♪」 「きゃあああああああぁぁぁぁぁーーー見ないでぇぇぇぇーー」  キキキキィィィーーーーンンンンーー  衣愛代はものすごい大声で悲鳴をあげた。その音響はマイクによってす ごい音を出して安希の耳に大きく響いたのであった。 「あたたた・・・こ・このーウブ娘。大声あげないでよ!!」  耳がきーんとなってカッとした安希は何と衣愛代の足を掛けてひっくり 返してしまった。 「きゃああああーー」足を掛けられた衣愛代は後ろに倒れ、あろう事にも 股を大開きにして倒れてしまった。  何万人のファンの前や特設モニタには衣愛代の大事な所がズームアップ で映し出されてしまった。 「あらー衣愛代ちゃん。だめよ。そんなはしたない格好をしちゃ..丸見 えじゃない?」  安希がくすっと笑ってる中、衣愛代はあわてて両手で股間を隠したので あった。 「いやぁぁーこんな所、映さないでーーー」 「あらら、今ごろ遅いわよ。もう全部ながれちゃったわよ。丸出し衣愛代 ちゃん。」 「きゃあああああああぁぁぁぁぁーーだ・誰が助けてーー」  いつのまにか袖口にいた作山がその声を聞いて大急ぎで走ってきたので あった。 「!!やばっ。衣愛代ちゃん。私が逃げるまで時間稼ぎになってね。」 「えっ?どういう事ですか?」 「こういう事よ」  安希は一瞬にしてバーベルの様に衣愛代の体を思い切り軽々と持ち上げ しまった。 「な・何をするつもりですか?」 「せっかくなんだからファンサービスしなさいよ。」  安希は何と思い切り衣愛代をファンに向かってその姿のまま投げ飛ばし てしまった。 「きゃあああああああーーーーいやぁぁぁぁーーー」  衣愛代はすごい事に会場の真ん中まで大の字で飛ばされてしまい、まる でコントで出てくる様な飛び方であった。  そして、そのまま手を差し出している熱狂ファンの中に全裸のまま落ち てしまった。  一瞬にして落ちた場所にファンが集まり黒山の人だかりになってしまった。  まるで甘い砂糖に群がる蟻の様な勢いで衣愛代に迫っていたのだ。 「衣愛代ちゃんの裸だーーー」 「へへへっ、思い切りもんじゃえーー」 「大事なとこもいじっちゃえー」 「いやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー・・・・・・・・・」 ********************************** **********  衣愛代の夢の終わり  *********** ********************************** 「いやあぁぁぁぁぁぁーーー!!」ガバッ!!  衣愛代はやっと悪夢から目を覚めた。 「はあ・・はあ・・・また私なんて夢を見てたんだろ・・・」  全身は汗でびっしょりとなり衣愛代にとって2度目に見た恥ずかしい夢 であった。 (そうか私、夏代奈さんと同じ目に遭ったんだ...でも夢でよかった..)  汗を拭いながら衣愛代はこれが夢であった事にほっとしていたのであった。 (・・・汗、びっしょり・・・またシャワーあびなくちゃ・・・)  衣愛代はぼーとしながらベットからおりようとした時、何か変な違和感 を感じたのであった。 「あっ!?なんで私、下を・・・」  衣愛代が下半身を見るとパジャマのズボンとパンティが足元までおろさ れていた。  何と寝てる間にいつの間にか自分で下ろしてしまったのであろう。 「・・・・・うそっ?・・・どうして下ろしたんだろう?」  丸見えになってる下半身を見ながら衣愛代の顔は真っ赤に染まっていた。  こんなはしたない事をやったのは衣愛代にとって初めてのことであった。 (あんなワイドショー、見なきゃ良かった。馬鹿だわ。私って・・・でも、 気になったし仕事もちょうどなかったからつい・・・)  どうやら、衣愛代があちこちのワイドショーでその羞恥な流れを見てい た為、その内容が見事に夢で再現されてしまったのだろう。  しかし、まだあの飯塚 安希が全く懲りておらず、これからも何かをや ってくると思うと衣愛代はものすごく不安だった。  そう、安希の恥辱な作戦はまだ序の口であり、これからまだまだとんで もない事が起ころうとしていた。


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