第11話「温泉どっきり」


 先日のリポートでのエッチなハプニングが巷で有名になってる中、作 山のところにある仕事の相談が持ち込まれた。  その仕事は本物のどっきり企画であり、衣愛代をだましてみたいと話 を持ってきたのであった。  ただ作山としては衣愛代にとってプラスにならないものは絶対に断る ことにしており、逆にプラスになると分かれば過激な内容でも引き受け るスタンスでいた。 (司会者は..お笑い界の大物と人気男性グループのリーダか..これ は衣愛代ちゃんを強く印象づけることに出来そうだな)  今回、作山が注目したのは人気男性グループのリーダ下落合であり、数 多くのバラエティの司会をやっている下落合に気に入られれば今後の出 演番組が増えることは間違いないと確信を得た。 (ここは衣愛代ちゃんに我慢してもらうしかないな..)  そう判断した作山はこのどっきり企画を受けることにし、衣愛代を騙 すことに協力することにした。  そんなことも知らずに衣愛代は作山から、とある有名番組の温泉リポ ートの仕事を受けるため兵庫県の有馬温泉まで来ていた。 「あの..作山さん。今度の温泉リポートの仕事って生中継なんですよね?」 「ああ、だから失敗しないでくれよ。変なハプニングは禁物だよ」 「はい..わかってます」  どうやら、これから衣愛代は有馬温泉から少し離れたとこにある秘湯 のリポートをすることになっているらしい。  もちろん、この温泉リポートは偽の仕事であり、どっきり企画として 衣愛代は出演させられることになっていた。  今回のどっきり企画「温泉ぱにっく」とは生中継としてリポートして いる衣愛代にハプニングが起こったら、どういう反応を示すかを見ると いうものであった。  そう、実はこれから行く秘湯は何と人工で作ったものであり、天然秘 湯というのは真っ赤な嘘である。  そんな人工温泉で本来だとあり得ないハプニングを起こすようであり、 それは温泉の湯がわずかの時間で抜けてしまうというものだ。  そして衣愛代には生放送で温泉を中継するという設定なので、撮り直し が出来ないというのを伝えておく。  お湯が次々と抜かれていく中で衣愛代がどんな風に慌てるのかを楽しむ どっきりらしい。  すでに秘湯の物陰にはお湯を一気に吸い込むための大型ポンプが設置さ れており、このポンプを稼動するとリポート開始から3分ほどで全てのお 湯が抜き取られてしまうのだ。  まさか、そんな装置をつけられた温泉に入るとは知らず、衣愛代は秘湯 を管理している旅館へつき、簡単な打ち合わせをすることになった。 「えぇっ!タオルをつけて入っては駄目なんですかっ!」 「すいませんね。私どもの秘湯は皆さんタオルなしで入ってもらうのが規 則なのもので..」 「大丈夫だよ。衣愛代ちゃん、秘湯の方は乳白色だから肩まで浸かれば肌 が映ることがないから」 「で・でも..入るときはどうするんです..素っ裸でなんか入れません」 「そうですね。うら若き乙女に裸で入れと言うのは酷ですから、お湯に入 ってから、すぐにタオルをお湯から出してくれるなら、目をつぶることに しましょう」 「えっ?いいんですか、それでも..」 「ここまで相手の方が許してくれたんだから、衣愛代ちゃんもタオルなし を承諾してくれるよね?」 「・・・わ・わかりました。でも肩以上は絶対、肌を出さなくてもいいん ですよね?」 「もちろんだよ。深夜の温泉番組じゃないんだから安心していいよ」 「それなら..OKです」  衣愛代もこれ以上、わがままを言えずタオルなしで入ることを承諾して しまった。  そして、ニセモノの生中継本番の30分前に現場の秘湯でリハーサルを行 うことになった。  当然ながらリハーサルでは秘湯には入らず、秘湯に入った感じで明るい 笑顔を見せながら秘湯の効能などを説明していった。 「こんにちは。光野 衣愛代です。今日は有名な有馬温泉から少し離れた 隠れ秘湯に来ています。ここの秘湯はガイドブックにも乗ってないという 地元の人にしか知らないスポットとなっており・・・・・・」  衣愛代がこれがどっきりであることをまったく気づかず真剣にリハーサ ルに取り込んでいる。 「・・・以上でこのリポートを終わります。ではスタジオさんにお返ししま〜す」 「はい、OK!ばっちりだよ、衣愛代ちゃん」 「ありがとうございますっ」  無事リハーサルが終わったことにホッとしている衣愛代はどうやらまっ たく騙されてることに気づいていないようだった。  ついに何も気づかないまま、本番10分前の声が大きく響いてきた。 「はーい。10分前です。衣愛代ちゃん、準備の方いいですか?」 「だ・大丈夫ですっ」  しっかりと全身にタオルを巻いた衣愛代が登場し、タオルをつけたまま で乳白色のお湯の中に入った。  そして身体が全部隠れたのを確認してからタオルを外して、タオルを取 りにきた女性ADに渡したのであった。 「じゃあ、タオルの方は預かっておきますね。上がる時にまた持ってきま すね」「はい、お願いします」 「じゃあ衣愛代ちゃんの準備もOKだから、スタンバイ、よろしく〜」  いよいよニセモノの生中継がスタートすることになり、本番となること になり、撮り直しがきかないということで緊張をかくせない衣愛代。  もちろん、これから衣愛代を騙すスタッフにも別の緊張が走っていた。 「こんにちは。光野 衣愛代です。今日は有名な有馬温泉から少し離れた 隠れ秘湯に来ています。ここの秘湯は・・・・・・」  衣愛代が温泉の説明を始めたところで、どっきり作戦が開始した。  そう、それは大型ポンプによるお湯抜きの開始であった。  そして、この様子はどっきり企画を行っているスタジオで生中継される ことになり、司会者の下落合が興奮ぎみで喋りはじめてきた。 「おいおい、マジでお湯減ってるべ。衣愛代ちゃん、超ヤバイじゃねー」  モニタにはお湯が確実に減り続ける有様が映っており、あと3分もすれ ば全てのお湯が抜きとられてしまうのであった。  10秒経過..お湯がすごい勢いで減ってきているが、その事に衣愛代は 気づいていない。 「ここの温泉はガイドブックにも乗ってない幻の温泉となってまして・・・」  衣愛代が一生懸命に解説している中、スタジオのモニタにはお湯が減っ てる全体図と衣愛代のズームアップを画面分割して流していた。 「おいおい、減ってる!減ってるぞっ」「何で気づかないかなぁぁ〜」 「きゃはは..これ超まずくなーい」「いや、まじでやばいべ」  ゲストたちが面白半分に騒ぎ始めてきた、  気づくとすでに1分経過し、お湯の方は何と衣愛代の胸の下まで来てしま った。さすがにここまでなれば、衣愛代もお湯が減ってることに気づいた らしく、おっぱいが見える前にちゃんと腕でガードしてきた。 「あ・あのぉぉ〜お湯が減ってきてるんですけどぉぉ」  お湯が減ってることをスタッフに言ってきたが、生中継だからそのまま 続けてとの非情な合図を出してきた。 (そ・そんなぁぁ..どんどん減ってきているのにぃぃ〜)  お湯が減っていくことに衣愛代は動揺しはじめた。その慌てぶりをまる で他人事のようにスタジオからはおかしな言葉が飛んできた。 「どうしたんですか?何かあったんですか?出来ればそろそろ効能の方を・・・」 「あっ、はい..すいません、温泉の効能ですね..あの..その..え っと、この温泉の効能は..ひ・冷え性と、それと・・・・・・」  撮りなおしがきかないということが頭にあるせいか、この異様な状況で も衣愛代は必死にリポートを続けようとした。  そして、ついに2分が経過した頃にはお湯がほとんどなく、最後のお湯 もすごい勢いで無くなってきた。 (ちょ・ちょっと..何でここまでお湯が減ってるのよぉぉ〜)  それでも何とかリポートを続ける衣愛代。  ついに1分半が経過し、お湯はまだまだ勢いよく流れ続ける。  残りのお湯はわずかとなり、衣愛代の両足が見えるところまで減ってし まった。  当然、衣愛代のおま●このとこにはお湯はなく、今は衣愛代の手が必死 に隠している状況だった。 「えっと..交通アクセスは..その..この神戸から..あの〜」 (もうだめっ!素直に言ってマイクを返さなさいと..) 「あの〜、この通り恥ずかしい姿なので!スタジオにお返ししますっ」  何とかまとめようとするが非情にもスタッフからもっと延ばせとの合図 がきた。 (あと1分頑張れって..そんなぁぁ) 「あ・あのぉ〜、視聴者のみなさん。ちょっと、こんな番組にあわない姿 となってしまいましたが、皆さんのお越しをお待ちしてますっ。してます のでぇぇ〜」  完全にお湯が抜けた状態で何とか最後の挨拶も済まして、頑張って乗り 切った衣愛代。 「あ〜ん、それじゃマイクをお返しします..みなさん本当にお待ちして ます..じゃあ、返します」  その言葉でようやくスタッフから終わりのサインが出た。 「はい、OK!おつかれ、衣愛代ちゃん」 「あ・あのっ!何でお湯が抜けているんですかっ!」 「そうかい?」 「そうかいじゃないですよっ。この通りお湯がないでしょ!」 「あっ、本当だ。いや、これは不思議だな」 「んもう、あとで説明してくだいね!あと変なとこ映ってないですか?」 「そこは大丈夫、少しも映ってないよ」 「本当ですか?」「ああ、本当だよ」  カメラに映ってないことを知って一安心し、何がなんだが分からない内 に偽の中継が終了した。  だが、スタジオの方では司会者の下落合がまだ興奮が収まらない口調で とんでもないことを喋ってきた。 「これで終わったらどっきりじゃないべ。これが最後の仕掛けだよ!」  下落合が目の前にあった大きなボタンをバンッと叩いた。  それと同時に衣愛代が座っていた湯船の底が思いきりぱかっと空いた。 「えっ!?きゃぁぁぁぁぁぁ〜」  どうやら最後のどっきりが仕掛けられていたらしく、まんまと衣愛代が どっきりの落とし穴へ落とされた。  それも、この落とし穴の先は外へつながっていたすべり台となっており、 衣愛代は素っ裸のまま転がりながら外に投げ出された。  ごろごろごろっ〜。ばしゃぁぁぁぁーーんっ!  衣愛代はすべり台の到着地である泥んこたっぷりの田んぼに恥ずかしい 大の字姿でダイブした。  まあ、田んぼに突っ込んだおかげで慌てて起き上がった衣愛代の恥部は 全て泥で上手く隠されていた。  そして見事に騙された衣愛代のとこに颯爽と赤いヘルメットを被った男 がやってきた。 「衣愛代ちゃん、衣愛代ちゃん。この看板に注目して」 「えっ..ど・どっきり?」  男は手に「どっきり大成功」と書かれたプラカードを持っており、どう やら、男の正体はどっきりでお馴染みのノロさんであった。  そして状況がまだよく分からない衣愛代にネタばらしをし、泥だらけの 衣愛代に看板を持たせてきた。 「さあ、最後は一緒に大成功のポーズを」 「えっ..あのっ、その..」 (全てどっきりだったなんて..作山さん。あとで説明してもらうからね)  今さら、悲鳴とかあげることも文句を言うことも出来ない衣愛代は番組 の進行どおりに、最後の締めとして皆で「大成功!」の掛け声をするしか なかった。  衣愛代のすごいとこは、ちゃんと笑顔を作り、手を恥部から離して掛け 声を言うところであろう。  後日、実際の放送を確認した衣愛代だったが、恥部が映ってるとこは1 つもなかったので、ホッとした。  ただ、映ってなかったのは視聴者が見るTVだけであり、どっきりの様 子が映し出されていたスタジオのモニタには衣愛代のおっぱいやおま●こ が何度も見えていたらしい。  だが、これがきっかけで司会者の下落合に気に入られたらしく、下落合 が司会をする数多くの番組にゲストとして呼ばれるようになったので今回 も結果的には良かったものとなった。


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