エピローグ


 あの恥辱な花見で失神し、先輩の背中に乗って帰った僕。  そんな僕が目を覚ますと、枕元には絶対に見たくなかった渡部さんのお 守りが置いてあった.. 「どうして、こんなをここに置くんだよっ!」  僕はお守りをつかんで思い切り部屋の壁にぶつけると1枚の紙がお守り の中から出てきたのであった。 「紙?いったい何の紙なんだ..」  僕はおそるおそる、その紙を開いて見ると数本の恥毛が入っており、ま すます開いて見てしまったことを後悔してしまった。 「ううぅ..もう、あんな会社にいくものか..」  目からは何故か涙がこぼれてくる。もう僕はあんな会社に2度と行くも のかと思っていた。  だが、そんな僕にある文字が見えてきた。 <これは絶対に捨てないでね。たっくんが再び会社に来る事を待っている から..> 「えっ..これはまさか渡部さんの字?」  そう、紙には渡部さん本人が書いた言葉があり、このお守りは皆に配っ たものとは違う渡部さん自らが作ったお守りであった。 「どういうことなんだ..あっ、まだ何か書いてある..」 <もし、私のことをまだ軽蔑しないでいてくれたなら、もう1度お話しし たいです。 渡部 結樹子>  僕はこのメッセージを見た途端、1秒も早く会社に行かなければならな いと思っていた。  すでに時間を見ると遅刻になってしまうが、そんな事はどうでもいい。  渡部さんにもう1度、絶対に会いたかったからだ。 「はぁはぁはぁ..」  全速力で走りながら会社まで着いた僕が、従業員口に入っていくと何と 渡部さんが目の前に立っていたのであった。 「こらっ♪遅刻だぞ。たっくん」 「わ・渡部さん..」 「とりあえず、課長には身体の調子が悪くて遅れてくるって嘘をついてお いたからね♪これはジュース1杯でチャラにしてあげる」 「あ・ありがと..」 「じゃあ、ジュースを飲みに行きましょう。ほら、たっくん早く早く」 「う・うん..」  いつもと変わらない明るい表情をしてくる渡部さんを見ると、昨日の恥 辱な出来事が夢に思えてくる。 (あれは、もしかして僕の悪い夢だったのか..)  ジュースを買って2人で楽しく会話をしていると、あの花見は全てなか ったような気がしてしまう。  そう、渡部さんの首からぶら下げているネームプレートを見るとあれが 現実だということを思い知らされるのだ。 「あ・あの渡部さん、それは...」 「あっ、これっ?例の新しいネームプレートよ。表のおっぱい丸出しはま だ何とか許せるけど、裏側はおま●この写真なのよっ。よくまあ、こんな 卑猥なものを用意してくれるわね」  そういって僕に裏側のおま●この写真を見せてくる渡部さんに、僕の頭 はぐるぐるし始めた。 「渡部さん..そ・そんなの付けて大丈夫なの..」 「そうね..本当は恥ずかしいけど宣言してしまったから、しばらくは諦 めてやるつもりよ」 「えっ..まさかあの宣言を守るつもりなの..渡部さん?」 「少しの間だけよっ..こんな卑猥な事、いつまでもさせてたまるもので すかっ」「いや..そういう問題じゃない気もするんだけど..」  何か僕の中で渡部さんのイメージが崩れていく気がする。  あれだけ卑猥な事をされたのだから、あのまま僕と同じで会社をやめる と思ったのに.. 「たっくん?もしかして私が会社を辞めると思ったの?」 「だって..あんな事をされたら、誰だって..」 「そりゃ、恥ずかしかったけど選ばれてしまった私の運命と思って今は諦 めているわ..けど、週3回の全裸勤務は馬鹿みたいで嫌なの〜」 (馬鹿みたいという問題じゃない気がするんだけど..)  僕はいつもより明るくなっている渡部さんを見て、本当に何が何だがわ からなくなってきた。  そんな渡部さんが、あの質問をしてきたのだ。 「そうだ、たっくん。あの時のたっくんの答えをもう1回、聞かせて」  そう、僕が花見前に渡部さんに告白をした時の返事だ。 <たっくん..  もう1度同じ事を聞くから、その時のたっくんの答えを聞かせて..> 「...たっくん?」 「変わらないよ..確かに少し想っていたイメージとは違うかも知れない けど、渡部さんのことは今でも好きだよ」  そう、どんな姿を見せられても僕の意思は何故か変わらなかった。  そんな僕の答えを聞いて、渡部さんは顔を真っ赤にしておかしな質問を いろいろしてきたのだ。 「たっくん、明日は私、全裸で仕事するのよ..それに恥ずかしい事もい っぱいしちゃうのよ..」 「少しの間だけなら、一緒に我慢するよ。渡部さん」 「いいの?私、たっくんが想ってたのとは違うエッチな女の子なのよ。こ んな事をされても平気で会社に来てしまう馬鹿な女なのよ」 「いいよ。エッチだろうが、馬鹿でも僕が想う心は変わらないよ」  そう、自分でもわからないが、渡部さんがどんな痴態を見せてきてもも う不思議なことに気持ちが変わらない自信があったのだ。 「ばかっ..まったく、たっくんは大馬鹿なんだからぁぁっ..」  僕の前で渡部さんが大粒の涙をこぼして思い切り泣き始めた..  そういえば渡部さんが泣いたのを初めて見たような気がする。  あれから、どれだけ泣いていたのか覚えていないが、ようやく渡部さん が落ち着いて、僕に向かってこう言ってきたのだ。 「たっくん..私も好きだよ。でも1つだけ約束してほしいな..」 「約束?ああ、構わないよ」 「しばらくは、ずっと個人の成績トップでいて♪」 「えっ?」  突然、仕事の話をしてしてきた渡部さんの言葉に僕は驚いてしまったが、 渡部さんにとってはかなり重要なことだったらしい。 「ちょっとたっくん!返事は?トップでいられるの?いられないの?」 「えっと..もちろん、渡部さんとの約束なら絶対に頑張るよっ」 「絶対、ぜったいぃぃ〜トップでいてくれるわね」 「ああぁ..絶対に守るよ..」  一体、渡部さんは何でこんな事にこだわるのかわからなかった。  けど、次の言葉で全て理解できたのであった。 「...オナニー、見せるのたっくんだけなんだからねっ」 「えっ..オナニーって..」 「言ったでしょ。成績トップの男子社員にはオナニーショーをするって」 「あっ..宣言の..」 「たっくんなら思い切って、私の濃厚オナニーを見せてあげるね。そうだわ!  自宅の盗撮カメラを覗く権利も成績トップだけの特典にしてもらお♪」  やはり、以前とはいろいろな意味で変わってしまった渡部さん。  けど、僕はしばらく一生懸命、仕事をしなければならない日々が続くの は間違いないだろう。  そう..渡部さんの濃厚オナニーショーをみるために.. <完>


「僕の会社」完