第2話「花見」


月が丁度いい具合にのぼった頃から僕の部内の花見はますます盛り上がって きてきた。 花見の席では定番と言える裸踊りを課長がべろんべろんの状態で踊って いたのであった。 回りの人たちも出来上がってしまった人が多く盛り上がると言うより騒がしい と言った方が近いと言えよう。 ただ、そこにはあの渡部さんの姿はなく僕は少し寂しい感じであった。 (渡部さん。まだ手伝われてるのかな?でも先輩OLは入れ替わり来てるのに ひどい事するよな。) 僕は花見に参加させないとしている先輩OLの仕打ちに内面むっとしていた。 むっとしてる中、ガラガラと大きな音が遠くから聞えてきた。 見ると5・6人のOLが大きな台車を押してきたのであった。 その台車は一流レストランで見られる大きなパーティ用の料理を載せる台車で あり、その台車には大きな料理用のシーツがかぶせられていた。 (へえ、すごいな。何の料理を作ったんだろう。でも渡部さんはどこに?) 運んできたOLの中には渡部さんはいなく僕はまだ社内で手伝わされてると思って おり先輩OLの仕打ちにますます怒りが込み上げてきた。 「部長、それにみなさーん、おまたせの料理ですよー。」先輩OLの明るい声で回り にいた男たちが台の回りに集まってきた。 「おお、何か大きいな。これは中華料理?いやもしかしてフランス料理とか。」 「ぶぶー。もっとすごいものですよ。何せ私たちが一生懸命作ったのよ。」 「おい、早くめくれよ。俺は腹へってるんだよ。」 「あわてないでよ。これは今回のメイン料理なのよ。」 「じゃあ、みんなも注目してきたのでメイン料理を披露しまーす。」 「どうぞ、これが私たち女子一同の料理でーす。」 両端にいたOLが一斉に大きなシーツをめくった。それと同時に大きな歓声が男性たち の中で湧き上がったのだった。 「おおーすげー。これはいいー!」「まじかよ。これ!」「ヒューやるね女子。」 めくる前は何がその料理台には人みたいなのが乗ってる様な感じがしたのだが、 実際にその台に人が寝ていたのであった。 それもその人はあの渡部さんであり、まるでよくお座敷でよく見る女体盛りの様な 感じで料理が盛り付けられている様だった。 いや、よくよく見ると女体盛りの様なものでなく本当に女体盛りになっていたので あった。 僕はまさかこんなはずはない、小さな水着を着てるんだとよくよく見たがどう見ても 生まれたままの姿に直接盛り付けられてるみたいだった。 (渡部さん。なんでこんな事をやっているんだ?もしかしてこの台に無理やり..) そんな中、部長がシーツを拾いOLたちにまずそうな顔でこう言ってきた。 「君たち、ちょっと度がすぎるよ。彼女を無理やりこんな事させて後でどうなるか..」 「あら?部長?これは私たちが強制的にやったと思うんですか?」 「当たり前だ。彼女がそんな事するわけないだろ?」 「そう?でも部長いいえ他の方もよく台を見て下さい。渡部さんが何かで台に固定  してますか?嫌ならすぐにでも逃げられる状況ですよ。」 そう確かに彼女の体と台は何も固定されておらず、ビール瓶を掴んでいる彼女の 両手はいつでも動かそうと思えば動かせるものであった。 「部長、実はこれは渡部さんの案なんですよ。渡部さんって1度こういうのをやってみたい  と言ってたんですよ。ねえ?渡部さん?」 「・・・・・・・・」彼女はしばらく沈黙していた。だが少し立つと何かをふっきった感じで 「はい..かなり恥ずかしかったんですが今回思い切ってやる事に決めました..  みなさん、遠慮なく私を・・・私を食べてくださ・・・・」 彼女は明るく、いいや明らかに作り笑いをした口調で言ったのであった。 もちろんこれが彼女の意思ではなく暗黙の強制がかかっているのは間違いなかった。 だがこの彼女の宣言を待ったかの様に部長はいきなり態度を急変したのであった。 「そうか。そうか。まあ世の中こういう趣味もあるだろう。今日は無礼講だし、多少の  事は目をつぶろうじゃないか。さあみんなもメイン料理を食いたまえ。」 「さすが、部長。話がわかるー。そうだ、部長そこのさくらんぼ新鮮ですよ。」 「胸の所にさくらんぼか。なかなかいいね。ところでずい分ボリュームあるが君は何カップ  なんだい?」 「・・・・D・Dカップです...」 「ほおーDかね?こんな美人でこの胸じゃさぞかし羨まれるだろー」 部長はDカップの上に盛り付けられたさくらんぼを取るフリしてとんでもないものを つかんでいたのであった。 「!!あ・・・」 「おっ!すまんすまん。あまりにもピンクで美味しそうだから間違えちゃったよ。」 「部長、だめですよ。まだまだ余興があるんですからあわてないで下さいよ。」先輩OLが 少しアイコンタクトで注意してきたのであった。 「そうだな。いやそれにしてもいいねえ。今回もなかなかだよ。うんうん。」 (今回も?何だ?今の言葉は?まさかこんなの去年もあったのか?) 僕は部長の言葉に何かを思い出した。そうだ。あの花見のある1週間前からの部内の おかしな様子と今回の事で繋がった感覚がした。 僕の推測が合ってればあの渡部さんが断われずこんな目になったのも合点がいくので ある。 そうなんだ。これはこの部の隠された行事、いいや儀式みたいなもんなんだ。 第一、渡部さんと同じ同期の新人OLは誰もこの状態に抵抗する様子がない。 逆にみんなほっとした感じでこの様子を見ていており、まるであらかじめこうなる事を 知っている感じであった。 僕がいろいろ困惑してる中、先輩の1人が僕に急いで声を掛けてきたのであった。 「おい、平ちゃん。そこにいたが。良かった。俺お前にあれの事話し忘れていたよ。」 「あれの事?もしかして渡部さんの事ですか?」 「ああ、実はなあれはな・・・・・」 僕は先輩からとんでもない事を聞いた。そしてまだ渡部さんにはこれ以上の羞恥が 来る事を知ったのであった。


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